「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

アスラン散る

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『また、こうなってしまったか…』
愛機のコックピットの中で、アスランは一人呟く。
交渉は決裂した。統一軍はミハシラへの武力介入にて意を示す事となった。
眼前では既に幾つもの光芒が瞬いている。
事態の推移を嘆いている暇は無い。

「アスラン・ザラ。ジャスティス、出る!」
巨大なスラスターから莫大な推進剤の尾を引きながら、アスランは戦場へと飛び込んでいく。
最大望遠で確認できるコロニー。
その一点を目指して流星のように。

「敵機!?」
モニターが戦闘機動を行う光点を捉えると同時に、アラームが鳴った。
「ッ!?…機数6!?」
間髪入れずアスランは機体を滑らせる。
すぐ脇をビームの火線が通過していく。
「M1Aと…データに無い機体?ミハシラはこんな物を…ッ!?」
散開した敵機は左右からミーティアを更に追い続ける。
小型艦艇の様なミーティアにはMSの様な複雑な機動は出来ない。
懐に入れば勝機は有る。

「行かせるなッ!ミハシラに取り付かれたら終わりだぞッ!」
新型機…シグナスⅡがミーティアの正面へと回り込む。
ミーティアの機首から放たれたビームを回避しつつライフルを向けたその刹那。
「何ッ!?」
ミーティア側面から無数のミサイルが打ち出された。
一瞬で雨の様な弾幕が形成されていく。
とっさに回避運動を取るものの、敵機は捌ききれずに弾幕に絡み取られ砕け散っていく。
光芒に照らされながら、ミーティアは尚も突き進んでいく。

レーダーが高速で迫る機体を捉える。
疾風迅雷の如きスピード。
ミーティアと同等。
それ以上かもしれない。

「何だ!?…速い、こいつは?」
データには無い。
恐らくは新型。
モニターを最大望遠。
右上方より接近する光点。
「…ッ!まさか…いや、間違いない!」
確信にも似た予感に導かれて、アスランは光点へと進路を向ける。
光の翼を纏うMSへと。

「見つけたか、流石だな。アスラン」
新たなMSの中で、シンは一人呟く。
完熟飛行すら行わないままだったが、
この機体は予想以上に自分の勘に馴染んでいた。
ダストとは違う。
思いのままに動いてくれる機体にシンは感謝していた。
レーダーでは既にミーティアを捉えていた。
アスランも同じだろう。
アラーム。跳ねる様に回避。
大出力のビームが行き過ぎて行く。

「仇は討つさ…俺はもう、負けない!」
シンの目に決意の火が灯る。
それは誓い。
散っていった旧友との。
共に戦う仲間との。
己が歩んできた過去との。
そして、作り上げていく未来との。
ミーティアを捕捉。トリガーを押し込む。放たれた光がミーティアに迫る。

「あの機体…やはり。シン!」
似ていた。
かつて戦ったあのMSと。
降り注ぐビームをかわしつつ、アスランはミサイルを発射する。
「運命」は速い。
距離を詰められたら一気に不利になる。
弾幕を張りながらスラスターを全開にする。
…振り切れない!?ビームとミサイルの弾幕を飛び回るように回避しながら、確実に距離を詰めてくる。
間違いない。
あの機体はミーティアよりも速い。
あの運動性にミーティアでは対応できない。
「ちぃぃッ!」
迫る「運命」にビームを集中する。
右へと回避運動を取った「運命」を大型ビームソードで薙ぎ払う。
居ない。
「運命」はビームソードを掻い潜り、上方に回りこんだ。
アラーム。
間に合わない!
「運命」から放たれたビームが、ミーティア中央を撃ち抜き、巨大な火球に変える。

「やったか!?…ッ!」
根拠は無かった。
直感に従い、シンはDBを後退させる。
その直後、目の前をビーム刃が通り過ぎていく。
発射体勢だったタスラムが中ほどから切断される。
上へと通り過ぎた影を捉える。
アレは…
「リフター!?ッ、来る!」
タスラムをパージし、アンサラーを両手に構える。
四肢からサーベルを発生させながら、真紅のMSが突撃してくる。
「シンッ!」
「アスランッ!」
互いにパイロットの名を叫びながら、二機は刃を交えあう。
ビーム同士の干渉で凄まじいスパークが飛び散る。

「何故お前は俺達と戦う!?お前は誰よりも戦いの無い世界を望んでいただろう!」
「望んでいるさ。だから今、こうして戦っているッ!」

怒涛のように繰り出されるジャスティスのサーベルを受け止めながら、シンは機体を回り込ませる。
ビームシールドを持つMS同士の戦闘では、ライフルでは有効打を与えにくい。
上、下、左、右。
目まぐるしく動き回りながら、互いにサーベルで斬りかかって行く。

「ならもう辞めろ!平和を望むのなら、こんな事は!」
「アンタの言う平和は誰の為の物だ!?何故俺達が戦いを選んだのか、考えた事があるのかよ!」

ビームの干渉による衝撃で、両者の間合いが開く。
ジャスティスは再びリフターをパージし、ビームを浴びせながら突撃させる。
「このッ!やらせるかッ!」
シンはビームを回避しつつ、ライフルをリフターに向ける。
トリガーを引く瞬間…目の端に光を捉える。
『ッ!?』
ジャスティスから放たれたブーメランがDBのライフルを切り裂く。目の前にリフターが迫る。
「このぉぉぉッ!!」
とっさに機体を倒し、空いた右腕でフラガラッハを掴む。
目の前に有るリフターの下部に向け、渾身の一撃を叩き込む!
長大な対艦刀は易々とリフターを貫き、爆散させる。
爆発を背に、DBが対艦刀を構え突撃する。
残された武装はフラガラッハとアンサラーが一振りずつ。
ジャスティスも又、両手、両足、腰部左右のサーベルを抜き放つ。
互いに必殺の気迫を込めて、機体をぶつけ合って行く。

二つの光点が重なり、離れ、また重なる。
光の翼を持つMSと、全身に刃を持つMS。
「お前達が銃を取るから戦いは終わらない!憎しみの連鎖を広げているだけだと、何故気付かない!」
ジャスティスのサーベルを、左右に動きつつ回避しながら、シンはフラガラッハの一撃を叩き込む。
「それが独善だと言っているんだ!アンタ達だけが正しいと思うな!」

アスランは脚を振り上げ、大振りなその一撃をかわす。
AMBAC機動。その勢いのまま脚部サーベルで
打ちかかってくる。
「当たるかァッ!」
シンはとっさに機体を後退させる。
その眼前をビームの刃が薙ぐ。運動性はDBの方が上、
だが手数ではジャスティスの方が優れている。
両者は共に決定的なチャンスを掴めずに居た。
「流石に手強い…」
シンは息を荒げながら眼前の相手を見据える。

かつての仲間。
そして、恐るべき敵。
未だ戦闘は続いている。
これ以上時間はかけられない。

シンは最後のアンサラーを放ち、光の翼を全開にして後を追う。
長大なビームの翼が宇宙を駆ける。
アスランはサーベルでアンサラーを打ち払い、DBへと肉薄する。フラガラッハをシールドで受け止め…
「何ッ!?」
そのままシールドごと左腕を切断される。
「ッ!まだだッ!シンッ!」
バランスを崩しながらも右腕のサーベルを叩きつけて来る。
シンは驚異的な反応でその斬撃を左腕シールドで受け止め、弾き飛ばす。
左腕シールドのエネルギー供給が切り替わる。

「アスランッ!!」
ジャスティスの腰部隠し腕のサーベルが翻る、その刹那。
一瞬速く、DBの左腕が光り輝く。
ブリューナクによって増幅されたパルマ・フィオキーナがジャスティスの胸部を貫いていた。
『…メイリン』
一瞬の間をおき、ジャスティスが火球へと姿を変える。

「…バカ野朗…」
火球を見つめる真紅の瞳に様々な感情が浮かぶ。
怒りにも、悲しみにも、後悔にも似た色。
シンは一瞬目を伏せ、再び前を見据える。
まだ戦闘は終わっていない。
光の翼は、無数の光芒の中へ舞い戻っていく。

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