「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

2クル目辺りでイザとシホが戦った場合

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匿名ユーザー

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「気を付けて下さい、しつこく言って申し訳ありませんが相手は元ザフトのエリート、ヘリオポリスでのGATシリーズの奪取に関わった一人で旧シリーズにも関わらず当時連合の最新鋭の機体を…」
「わあってるつーの!要はやたらめったら強いって言いてえんだろ?」
小言にはうんざりだと言わんばかりに少尉は大声でシホの言葉を遮った。
「ヤキン・ドゥーエの生き残りか……。」
イザーク・ジュール、ユニウスセヴンの攻防の時に見たあの巨斧がシンの脳裏にちらつく。
「悪いけどね、それに関しては私だって同じよ。」
「それよりおめぇシホ、わかってんだろうなあ目的はあくまで…」
「少尉こそ勘違いしていませんか、目的はあくまでみなと同じ。彼とはたまたまこうなっただけで私怨もなにもありません、
 一時は大尉とリーダーは出撃を止められましたがやはり私が一番適役でしょう…」
「私は彼をよく見てきましたから。」
切れ長の瞳をいっそう細めシホは呟いた。
その言葉を聞き大尉は一瞬目を落としたがすぐに頼もしそうな笑みに戻りウィンドウに目を戻した。
「上出来だ、行くぞ。」


「野郎、随分はりきっているじゃねえか。」
皮肉げに口の端だけを吊り上げて呟く大尉の視線の先には友軍機であるマサムネを引き離しこちらへと近づいてくるストライク・ブレードの姿だった。
「おい、イザーク!慌てなくてもむこうさんからやってくるんだ、離れんなよ!」
ディアッカの言葉が聞こえていないのかイザークは目の前にある獲物を見据えたまま口の端を吊り上げ「ヒッ」とヒステリックそうに笑みともなんともいえない奇声をあげた。
平和の名の下、嘗ての同士すら葬ることに慣れてきた不思議さと嫌気さを感じた時と同時にいつの間にかイザークにこの様な癖が出来てきたことをディアッカは覚えている。
しかし今回のそれにはどこか嬉々とした笑みが含まれているように感じ、彼はどうしてかそのことに不安を覚えた。
「奴か?」
「ええ、間違いないわ…」
シンの小さな呟きにシホもまた小さく答えた。
白兵戦を意識した装備なのか対艦刀を携え左腕に巨大なハサミのような武装をつけているそれは
後続をさらに追い放しこちらへと迫ってくる。
「貴様等ァァァァ!」
ストライクブレードはイザークのその慟哭とも言える叫びに応えるかの様に禍々しいほどに巨大な対艦刀を袈裟切りに振りかぶるとさらなる勢いを増し突き進んだ。
「耳にタコが出来るくれぇご大層な噂聞かされたけどよォ!ただの切れたガキじゃねぇかオイ!」
少尉は威勢良く啖呵を切って飛び出し、巨大な斧を振りかざすと同じく対艦刀を構えたストライクブレード目掛け一気に斬りかかる。
一見力任せに見えるが上手く間合いを狙って放たれた互いの一撃は轟音を立て、刃が衝突したであろう空間にまばゆい閃光を作った。
そして申し合わせたかのように振りきった刃を間髪いれずにぶつけ、両者は一歩も引かずなおも強引に押し合った。
「ケッ、中々やるじゃねか!けどよ!」
鍔迫り合いの形のままシグナスに取り付けられたガトリングビームガンの標準をストライクブレードに合わせる。
巨斧で相手の動きを止め、自由を奪う、その間にガトリングガンを叩きこみ相手をしとめる攻撃は少尉の必中のパターンであった。
必中の攻撃パターンであるはずだった。
しかしイザークの駆るストライクブレードは瞬間的に対艦刀から手を離しワンステップ退き双肩に備え付けられたマイダスメッサーを抜くと対艦刀ごと巨斧を二つに割り、ガトリングを逃れるように低姿勢から当身を喰らわせた。
「クソがッ!気をつけろ!このイカレ野郎ムチャクチャに見えて的確な動きをするぞ」
少尉は吹き飛ばされた勢いを大地を踏み込んで殺し次の攻撃に備えたが、シグナスを押し切ったストライクブレードは、あっさりと見切りをつけ後方へと潜り込んだ。
すかさずシンと大尉はライフルを放つがストライクブレードは獣を思わせる動きでそれを掻い潜り予め見定めていたかのように飛び掛るように一機の方へと飛び掛っていった。
「野郎ッ!こっちは無視かよッ!」
歯をむき出して悔しそうに叫び目標を変えていったストライクブレードを睨みつけたが少尉は気配を感じすぐに視線を前方へともどした。するとやはり目の前には数機のマサムネが立ちはだかりライフルをこちらに突きつけているではないか。
「クソがっ!」
しかしそれに気づいたと同時にマサムネの腹部は次々と光が差し込まれると瞬く間に爆破し背後からシンの通信が入った。
「少尉、他の奴等もこっちに追いついてきたぜ。」
「ケッ、みてぇだな、アレ見逃すしかねぇってのかよ。」
「陣形的に俺らはこいつ等を片付ける方がいい、今は中尉とシホに粘ってもらうしかない!」
「っせえッ!わかってっから文句言って勘弁してやってんだろうが!」
「だったら助かるぜ少尉殿! チッ、来たかッ!」
通信から聞こえる舌打ちを笑みで返す間もなく二人の間へと戦艦クラスのビームが割って入ってきた。
二人は左右へと飛び散るように飛び交い撃たれた方向へとライフルを返す、その先には巨大なキャノン砲を両腕で構えたストライクブレードが立ちはだかっていた。
「毎度毎度危なっかしい相方が不安で睡眠不足になりそうでね、悪いけどさっさと片付けて安心させてもらうぜ。」
肩をすくめながらまるで友人に話しかけるような口調でディアッカはそう言うと、その口調とは正反対に巨大な二つのキャノンを連結させより凶暴そうに見える超超距離狙撃ビームカノンの標準を
ダストガンダムの方へと向けた。
「そうかい、だったらぐっすり寝させてやっても構わないぜ、二度と目覚めなくてよければなッ!」
狙いから逃れるようにしてシンはすばやく左右に飛び交いマサムネをなぎ払いながら敵陣の懐へと飛び込んでいった。


一方後方へともぐりこんだストライクブレードは目当ての獲物が見つかったのか、勢いよくマイダスメッサーを投げ、相手が受ける隙を逃さずに確実に間合いを詰めもう一つの対艦刀を抜いた。
しかし、その獲物であるシグナスもまたその動きを読んでいたかのようにマイダスメッサーをシールドで弾き飛ばすと同時に対艦刀を受け流した。
「隊長、以前のように説得するつもりもありません、そちらが攻めてくるならこちらも全力でお相手します。」
「今更そんなぬるいことをほざくかこの腰抜けがァ!」
イザークはすれ違い様振り返る動き利用し戻ってきたマイダスメッサーをキャッチするとそのままシグナスに斬りかかった。
「クッ、、隊長。」
肩アーマーを削られつつも何とか避けたシホは次にくるであろう対艦刀の一撃を逃れるためにワンステップで下がるとすぐ様ライフルを打ち込んだ。
今までの戦場では常に背中を見て来た相手、反面教師的な要素も含め彼からいろいろなことを学んでは来たがこうして向かい合い戦うことでかつての隊長の実力を改めて思い知った。
そしてかつての隊長へのかつての思慕をこの戦いに挟むようならそれは死を意味するであろうことも同時に感じていた。
「中尉!!シホについてる相手はかなり厄介だぞ!何とか撃てねェのか!?」
上空から攻めてくるマサムネを追撃しながら大尉は背後にいる中尉に声をかけた。
「今はかなり際どいです……」
中尉の覗くオルトロスの標準には、ストライクブレードはシグナスの後ろに隠れるようにしてしか捉えられない。
如何に精密な狙いで敵を撃ち落す中尉といえど他の敵機も相手にしながら同時にコレを仕留めるのは難しいであろう。
「オオオオオォォ!」
イザークはまるで豹を思わせる動きでシホのビームライフルをほぼギリギリのところでかわし、実際には数箇所の掠り煙を立ててはいるが、それでもなんら臆することもなく、むしろ白目がちの鋭い目を見開き怒号のような声を荒げシグナスの方へと間を詰めていく。
しかしシホもそれに怯むことなくサーベルを抜き前へと突き進んだ。
ぶつかり合う刃と刃は二人の気持ちを代弁するかのようにヒステリックな悲鳴を上げまばゆい閃光を放った。


「どうしたのソラちゃん、浮かない顔して、確かに準備が終わったら何かあるまでわたし達はただ待つことしか出来ないわ。
けれど大怪我をして戻ってくる人は私たちの処置を頼りにしているのよ、私たちに頼ることしか出来ないの。
それなのにそんな顔されてたらその人たちも不安になってしまうわ、だから、ね?」
俯いているソラの顔を覗きこむようにしてセンセイは子供をあやすように笑顔で笑いかけた。
「いえ……、確か作戦の時ユウナさんが言っていたイザーク・ジュールって言う人……」
ソラはシホがレジスタンスに加わる前の話を語ってくれた時のことを思い返していた。
「ええ、かつての仲間だったって人ね。」
「でもきっとそれだけじゃ、センセイにだってわかるでしょ。」
「フフ、ソラちゃんまだちょっと子供っぽく見えるけどやっぱり女の子ね。」
からかうかのようにクスリと笑うセンセイのしぐさにムッとしたソラは怪訝そうに眉をしかめた。
「でも!今は恋愛とかそんなこと言ってられないのは私にだってわかります、今わたし達は何のために戦っているかも。
 けど……憎しみあっているワケじゃあないのに、きっとおかしいって!おかしいですこんなの、絶対おかしいよ!!」
目尻にうっすらと涙を浮かべながら感情的に叫ぶソラに対してセンセイはあくまで優しい笑顔で微笑み返した。
「あたし達が元々いた場所ではテレビでも映画でも一人の恋人のためなら世界だって敵にまわせる、そんなのばっかりだったわよね…」
そのあとしっかりCMでラクスさんが平和を訴えるんだけどねと少し皮肉そうに笑って付け足した。
「あの子って芯が強そうだけど、その分周りはおろか自分にまで
 取り繕って接しちゃうところありそうだからそっちのほうでは損しそうよね。その性格が選択肢を狭めてしまったのかもしれないけれど、でもそうでなくても彼女には他にもたくさんの選択肢があったはずだわ。けれど昔の想い以上に道を外れたかつての上官との決着を付けるために立ち向かい、いいえ、私たちと同じ志を持って未来のことを考えて戦う道を選んだのよ。いろいろな犠牲を払ってでもね。」
「同じ女として尊敬するわ。」
何故この時センセイは何かを思い返したようにふと遠い目をしていたが、ソラにはそれがどうしてかはわからなかった。

「隊長ォォォォォ!!」
「シホォォォ!!」
なおも刃をぶつかり合い轟音を鳴らすストライクブレードとシグナスの争いはより激しさを増していた。
戦場を通し学んできたもの、教えたもの、互いの手の内をよく知っているだけにより熾烈な戦いとなっているのだろう。
ただ機体性能を考慮すれば統一連合のストライクブレード、経験から見てもイザークに一日の長があると言うものなのだろうか、
引けを取らずに戦っていたシホも見事なものでもあり、また対艦刀に比べて小回りの効くサーベルのほうが有利であるのだが、真っ向でぶつかっていけばその力の差は圧倒的なものである。
機体の重量ごと載せて切りかかるストライクにシグナスは完全に押されていた。
「シホ!仮にもザフト、ジュール隊の一人であった貴様はこの程度かァ!!」
「ならザフトを誇りとしていたあなたが何故裏切ったのですかッ!?」
転倒を耐えるようにして機体を踏ん張らせながらもシホはイザークに感情に任せて言葉を吐いた。
その言葉を聞きよりいっそう眉間に深い皺を寄せイザークは激昂した。
「賊に成り下がった貴様が言うことかァ、プラントを守るために戦うのが何故悪い!平和のため、ラクス様のために戦うそれの何が悪い!
 気にいらなければ口先だけでなく力ずくでも俺を否定して見ろ!」
怒号と共にシュゲルトゲベール改をガードしているシグナスへと無理矢理叩き付けた。
その猛攻に後方へと押されながらもシホはイザークが対艦刀を振り切った隙を逃さずにライフルを構え放つ。
しかしそれにいち早く気づいたイザークは右肩アーマーをマイダスメッサーごと持って行かれはしたものの、とっさに対艦刀を離し右腕で左肩のマイダスメッサーを構えつつ当身を食らわした。
「くあっ!!」
強引なタックルでシグナスは地面に叩きつけられ吹き飛ばされる。
その勢いで背中を叩きつけられ苦しげに息をしながら細めた目でウィンドウに目をやると
ストライクブレードが悠然とマイダスメッサーを携えこちらを見下ろしていた。
もうここでおしまいなのか、揺らめくマイダスメッサーを見つめながらシホは思った。
「シホ……、お前でもダメなのか………。」
先程とは打って変わり抑揚のない口調でイザークは呟いた。
言葉そのもからでは何の意味も成さないであろう。
しかしその虚しさすら漂うその呟きにはシホがやっとのことで取り付けられた面会でも得られなかった一つの答え、彼の本心なのだと思った。
それならば、だからこそ自分は今ここで倒れるわけには行かないのではないか。
「隊長………。」
「覚悟はいいな!」
しかし次の瞬間にはその呟きをかき消すかのようにシグナスに狙いを定めマイダスメッサーを振り上げた。
「ッ!?」
シホは何とかサーベルを構え次にくるであろう衝撃を覚悟したが、
その振り下ろされるはずのマイダスメッサーはストライクブレードの右腕ごと無残に爆破した。
「なッ!!」
イザークは右手があるはずの場所を苛立たしげに一瞥した後一層瞳をぎらつかせ眼前の敵を睨みつける。
その視線の先には銃口から熱気を漂わせたオルトロスを構えているシグナスの姿があった。
「不幸中の幸いといったところか、かえって狙いやすくなった……。」
「中尉………。」
「この、賊どもがァァァ!!」
激昂したイザークは残った左腕で大地に突き刺さっている対艦刀を抜き襲い掛かる。
中尉もオルトロスを構えるがわずかなさで間合いに入られたしまった。
「クソッ!」
だが体制を直したシホはすかさずライフルを構え対艦刀を打ち抜く。
ライフルを構えるその瞳には以前にも増して強い意志が感じられた。
しかしイザークもまた刀をすべて失ってもその鬼神の如き眼光を失ってはいなかった。
左腕に取り付けられたデストロイ・バイスが獲物を欲しがるようにバックリと口を開け、ストライクブレードはなおも煙を巻き上げてシホのシグナスへと襲い掛かる。
「貴様、この程度で勝ったとでもいいたいつもりなのかァ!」
その叫びは敵意と殺意を露にしたかのように禍々しいものであったが、この時シホはイザークが嬉々として自分の元へと向かっているような不思議な感情を抱いていた。
「先に言ったはずです!来るなら全力で相手になると!」
シホもそれに答えるようにサーベルを抜き突き進む。
半壊しかけてもいまだ勢いを絶やさないストライクブレードは力任せな動きでバイスをシホの肩口めがけて挟み込む。
デストロイバイスの薬莢が弾けバキッとシグナスの肩から鈍い音と火花を散らした。
「グッ!」
その衝撃にシホは苦しそうに声を漏らしながらも怯まずにサーベルを斬りつける。
そしてイザークもまた手を失った右腕を削がれながらもデストロイバイスでシグナスに襲い掛かった。


一方ディアッカはシンの駆るダストに苦戦を強いられていた。
「チッ!シホと同じレジスタンスにいると聞いていたが、ディスティニーのパイロットだな!」
「だったらどうしたよ。」
ディアッカが放つ拡散砲をギリギリの間合いで避け、シンはライフルを打ち返した。
「クソッ!」
機敏な動きのシンに対しては下手に深追いしてしまうと逆に攻撃のチャンスを与えてしまう、
特に火力に特化した半面至近距離に対して弱いバスターパックを付けているディアッカにはなおさらだ。
本来なら白兵戦を得意とするイザークと組むことでその本来の実力を発揮するのであろう、その心強い相棒も今は向こうの方でボロボロな姿になっている、その事も気になってか余計に苦戦を強いられていた。
「シン、その逃げ腰だけは一丁前な砲撃野郎を潰せば、こっちのほうは大体片付くぜ!」
少尉はそう叫びながら二つに折られたアックスの柄の下の鉤状になっている部分でマサムネの首を引っ掛けると地面に叩きつけ、もう一方のアックスで真っ二つに叩き割った。
確かに数は圧倒的に勝っていたはずの統一軍の機体はほぼ減っており、追撃されたマサムネは無残にも黒ずみ瓦礫の荒野を作り、青く広がる空を灰色の煙で染めていた。
「副隊長、このままでは全滅も時間の問題です。」
「わかってる!」
悲痛な叫びで訴える部下の言葉に、流石のディアッカも声を荒げた。
恐らくは自分も今気を抜いた瞬間に目の前にいるこの無骨なつくりのMSにスクラップにされてしまうだろう。
「おいイザーク!聞こえているか!このままだとマジで全滅しちまうぜ!撤退命令を出せ!」
偏執的と言っていいくらいに戦闘に魅入られているようなイザークであったがディアッカの言葉を耳にすると思い返ったように辺りを見回した。
確かに周りには残骸とかしたMSが煙を上げている。
間合いから離れ状況を見渡すイザークにシホも警戒は一切解かないものの呼吸を整えながら落ち着いた口調で口を開いた。
「隊長、あなたの部隊、そしてあなた自身にももう戦力は残っていないはずです。それでもまだ辞めないつもりですか?」
「イザーク!」
二人の言葉を聞きイザークはぼんやりとした口調で呟いた。
「………そうだな、撤退するか。」
その言葉を聞きディアッカは安堵の表情を浮かべた。
「ディアッカ、俺が時間を稼ぐ、お前はその間にに部隊を引き連れて撤退しろ。」
「なッ!イザーク!」
「副隊長!」
その一言にディアッカは怒りとも悲しみともいえない表情を浮かべイザークを説得しようとしたが、通信から入る部下の切実な訴え、
そして今こうしている間にも目の前で仲間のマサムネが落ちていく姿を目の当たりにし苛立たしげにコックピットを叩いた。
この時ほど自分の感情任せに戦場を駆け巡ることができなくなった荒唐無稽な若さのなさ、そして今の立場を恨まずに入られなかった。
「撤退するぞ……しかしいつか必ずここにかえってくるッ!!絶対にだ!!」
やり場のない怒りと切なさに任せ力いっぱい叫んだ後撤退信号を発しディアッカ率いるマサムネも次々と後退していった。
シンは先ほど銃をつき合わせた相手があっさりと撤退していく姿を見つめ大尉のシグナスに通信を開いた。
「どうする大尉?」
「いや、深追いする命令は出されていないはずだ。」
「んじゃあ、あとはあのイカレ野郎の始末ってとこか、まあそれも時間の問題って奴だろうけどよ………」
「そうだな………」
肩越しに片腕を失いより無残な姿になったMSを見つめながらシンは小さく呟いた。
そしてその視線の先にいるイザークは後退していく友軍機を一目見るとシホのほうへと向き直った。
「シホ、俺がこの程度で逃げるとでも思ったか?」
「いえ、それが私の知っている隊長ですから。」
「ですが……あなたの部隊は撤退しました。これ以上戦う意味があると言うのですか?私は隊長には…」
「そんなぬるい考えで世界を変えるつもりかァァ!!」
「隊長。」
シホの言葉を遮るようにしてイザークは叫ぶとデストロイバイスを構えシホの駆るシグナスへと一気に飛び込んだ。
砂塵を吹き上げるようにして突き進むストライクブレードにシホのシグナスも応える。
MSだったガレキが散らばり黒い煙を噴き上げる大地には更に砂埃が舞い上り、鈍い金属音がかすかに鳴り響く。
立ち上がる砂埃が引くとそこには飢えたワニが獰猛に獲物に食らいつくかのようにシグナスの頭部をデストロイデバイスで捉えたストライクブレードの姿があった。
ひひゃげたシグナスの頭部からは火花が飛び散り金属を曲げる時になる低い獣のような音を立てている。
「ハァ…ハァ…」
シグナスを捉えたイザークは今までの勢いがぷっつりと切れたように俯き肩で大きな呼吸を繰り返していた。
対してシホは衝突した時の勢いにやられたのか目尻に涙を浮かべ苦しそうにうめくが、ふいにフフッといたづらっぽい笑みを浮かべた。
「隊長って意外と甘えん坊さんだったんですね……早く気づけばよかった……。」
「すまない………。」
イザークは俯いたまま小さく呟いた。
そしてシホはその少女っぽい笑みから普段の凛とした表情に戻るとストラーブレードの腹部に当てているライフルの引き金に力を込める。
「ザフトジュール隊隊長イザーク・ジュール、五年前の行動における処罰を私ジュール隊シホ・ハーネンフースが下します。」
光に包まれていくイザークは依然として俯いたままであった。
(ニコル、ラスティ、ミゲル………俺をまだザフトとして………)
シグナスの前で腹を貫かれ爆散するストライクブレードの姿をシンはただ黙って見つめていた。



そのあと帰って来たシホさんはうれしそうに駆け寄って来たみんなに囲まれると困ったように笑い返し、ついでに擦り寄ってくる少尉をいつもどおり軽くいなし、倉庫でサイさんとシグナスの修理について話し合った後、キャンディクラシコを空けようが泥水を啜ろうが優雅に食事を取るのがモットーというユウナさんのマナーを余所にぺロリと食事を平らげていった。
遠巻きから見てみるシホさんはいつも通りなんら変わりがないように見える。
そして私が食器を片付けに行こうとしたところでバッタリとシホさんに会った。
シホさんは私に気づくとおどけたようにして笑いかけた。
「あ、シホさん、あの…お疲れ様です。」
こんな時本当はもっと違う言葉を掛けてあげるべきなのに言葉が見つからなかった。
「うん、ありがと……、ソラちゃんもうお仕事終わり?」
「いえ、まだ……。」
「あ、そっか……ソラちゃんだって忙しいもんね。」
そういうと疲れたような寂しいような表情を浮かべた。
「いや、ソラ休憩していいぞ。」
頭の後ろからシンさんの声が聞こえてきた。振り返るとシンさんと少尉さんシゲト君らが立っていた。
「えっ、けどやらないと………。」
「仕事は後何があるんだ?」
「えっと、今から食器洗って片付けたら、先生の手伝いを……。」
それを聞くと少尉はおもむろにソラの頭をわしゃわしゃとなでた。
「ようし!わかった休憩!オメエは休憩!!1時間ばかり休憩!」
「でも…」
「上官命令!いいな!」
そう言い放つといたずらげに歯をむき出しながらソラに敬礼をした。
「やったじゃんソラ!俺ももう今日は仕事ないんだ。」
パッとした笑みを浮かべるナラであったがその耳を少尉は引っ張る。
「いーや、残念ながら貴様には仕事が出来た。」
「えー、何でだよ。」
「シゲト、悪いけど俺からも頼むよ。」
シンの一言を聞き耳を押さえながらナラは渋々従った。
「じゃあ二人ともちょっと休んどきな。」
キョトンとした表情で見つめる二人を後にしに三人は厨房へと向かった。
「しかし少尉、アンタまでこうしようとするとは思ってもいなかったよ。」
「バカヤロウ、ジェントルメンな俺にはわかるんだよ。あのベッピンさんの性格からして今支えになってるやれるのはアイツだろ?」
その言葉を聞いてシンは静かに笑った。
「まあソラを行かせた俺にプラス評価、その間に俺は先生の手伝いをしてまた高評価!イッセキニチョウって奴だろ?
「うわっ、少尉きったねぇ、最悪だよアンタ。」
そういってシゲトは意地悪そうに笑った。
「少尉、ニトヲオウモノハイットモエズって言葉知ってるか?」
「オメエに言われたくねえんだよこの赤目の黒ウサギ野郎が!…んじゃあ、ひとまずコレ片付けっか…。」
「……だな。」
「ソラっていつもコレやってるのかよ……」
三人は広いテーブルに積まれた食器の山をを見てため息をついた。


どういうわけか休憩を言い渡されて私はシホさんと一緒の部屋で座っていた。
二人ともただ黙ってぽつんと座っているだけであたりは静まり返っている。何か言って元気付けてあげなきゃと思いながらもただシホさんの人形を思わせるように端整な横顔を見つめるだけで、何も言葉が見つからずこうしてただ時間だけが過ぎていった。
シンさん、いや、ここにいる人の多くが大切な人を失っている。私にはそんな時なんていってあげればいいのかわからない。
もし本当にあの人のことが好きでその人を自分の手で撃ってしまったなら……
「あの、シホさん………。」
「何?」
私の言葉にシホさんは優しく微笑みかける
「その……ありがとうございます。」
何に対してなのかわからない、考えるだけ考えてコレしかでないのか、そんな不甲斐ない自分に腹が立った。
けれどその言葉にうん頷きと笑ってシホさんは私の方によってきた。
「ソラちゃんさ、可愛いわよね。」
「ええっ!」
驚いた私の後ろ髪をそっとなでた。
「可愛いって、もうちょっと大きくなったら絶対に色々な男の子からアプローチがくるわ…。」
「だけど、コレだけは覚えておいて…、女の子は男の子を振り回すものなのよ。」
普段のシホさんからは思いもよらない言葉に驚く私を見つめニッコリとシホさんは笑った。
だけどその後にぷっつりと切れたように切れ長の瞳から涙が溢れ顔をしわくちゃにして私を力いっぱい抱きしめた。
「私は振り回されてバッカリだったわ……」
「伝えることすら……。」
私は少し驚いたけど涙混じりに呟くシホさんの頭をそっとなでた。
「大丈夫だよ………。」
シホさんのおかげでまた助かる人だっていっぱいいます。口に出すと決めていた言葉をしまってソラはただ黙ってシホの背中に手を回した。

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