「どういうことなの？」
思わず聞き返してしまった。目の前には意気揚々と瞳を輝かせたシゲト君が座ってる。
「いや、だから西ユーラシアへの電力供給を行っている変電所を襲撃するんだよ」
そういうシゲト君はちょっと興奮気味に見える。ちょっと前にブリーフィングルームから出てきたところでばったり鉢合わせをしたとたんに、手をつかまれてそのままシゲト君の隠れ家まで連れてこられたんだ。隠れ家といってもハンガーの脇の物置なんだけどね。
「これでみんな助かる。やっと……」
「でも、何で？ 変電所を襲ったりしたら、また怪我をする人がいっぱい出ちゃうじゃない。そんなの良くないよ」
「俺たちは怪我なんて怖がってないさ」
「シゲト君だけじゃないよ！ 変電所の人だって怪我したら困るじゃない！」
言ってからちょっとだけ後悔した。その瞬間にシゲト君の目つきが変わったんだもん。
「……じゃあ、ソラは俺たちが何のために戦ってると思ってるの？」
「なんでって……」
言葉に詰まってしまった。というか前から分からなかったんだ。なんでこの人たちは戦ってるのか。前にユウナさんに言われた『みんなで』幸せになるためっていうのもよく分からなかったし。
「なんでなの？」
素直に聞いてみたかった。なんでシゲト君は戦ってるんだろう？
「……おいで、ソラ」
シゲト君は急に立ち上がって、私の手をつかむとそのままどこかに歩き出した。つかまれた手がちょっと痛かった。
「ちょっと、どこに行くの！？」
「すぐにつく。黙ってついてきて！」
いつものシゲト君じゃなかった。少し怖かったけど、その真剣な雰囲気が私を逆らいづらい気持ちにさせていたのも本当だった。いったい、どこに行くんだろう？
思わず聞き返してしまった。目の前には意気揚々と瞳を輝かせたシゲト君が座ってる。
「いや、だから西ユーラシアへの電力供給を行っている変電所を襲撃するんだよ」
そういうシゲト君はちょっと興奮気味に見える。ちょっと前にブリーフィングルームから出てきたところでばったり鉢合わせをしたとたんに、手をつかまれてそのままシゲト君の隠れ家まで連れてこられたんだ。隠れ家といってもハンガーの脇の物置なんだけどね。
「これでみんな助かる。やっと……」
「でも、何で？ 変電所を襲ったりしたら、また怪我をする人がいっぱい出ちゃうじゃない。そんなの良くないよ」
「俺たちは怪我なんて怖がってないさ」
「シゲト君だけじゃないよ！ 変電所の人だって怪我したら困るじゃない！」
言ってからちょっとだけ後悔した。その瞬間にシゲト君の目つきが変わったんだもん。
「……じゃあ、ソラは俺たちが何のために戦ってると思ってるの？」
「なんでって……」
言葉に詰まってしまった。というか前から分からなかったんだ。なんでこの人たちは戦ってるのか。前にユウナさんに言われた『みんなで』幸せになるためっていうのもよく分からなかったし。
「なんでなの？」
素直に聞いてみたかった。なんでシゲト君は戦ってるんだろう？
「……おいで、ソラ」
シゲト君は急に立ち上がって、私の手をつかむとそのままどこかに歩き出した。つかまれた手がちょっと痛かった。
「ちょっと、どこに行くの！？」
「すぐにつく。黙ってついてきて！」
いつものシゲト君じゃなかった。少し怖かったけど、その真剣な雰囲気が私を逆らいづらい気持ちにさせていたのも本当だった。いったい、どこに行くんだろう？
つれてこられたのは小さな家だった。街中に出るのはすごく久しぶりな気がする。前は町の様子をみる余裕なんてほとんどなかったけれど、改めてみてみるとちょっと寂れてたように見えた。
そんな寂れた町の中でもこの家は相当な痛みようだった。というよりもまったく手入れをしていないんじゃないかと思えるくらいに。
「……この家？」
恐る恐る聞いてみる。
「この家、何だと思う？」
「何って……普通の家じゃないの？」
「ああ、普通の家だよ。中にいる人以外はね」
「中にいる人？」
シゲト君は何も答えずに中に入っていった。私も後をついて中に入るとなんともいえないようなすえたにおいが立ち込めていた。思わず手で口を覆うくらいにこもったにおい。
「……シゲト君、ここ何？」
「ここはお墓さ」
「お墓！？」
「ああ、ここはストリートチルドレンのお墓さ」
ストリートチルドレン。前に本で読んだことがあった。確か親に捨てられて道端で暮らす子供達のこと。その子達の……お墓？
目の前にあるのは無数の壷。素焼きの無骨で小さな壷がたくさん置いてあった。
「ホントならちゃんと土葬にしてあげるべきだろうけど、今はそんな余裕がないから、火葬にしてこんな壷に入れておくんだ」
シゲト君は静かに言った。静かに言ったけれど強く聞こえたのはきっとこの場所のせいかもしれない。ここはなんとなく落ち着かないし、気味が悪かった。
「これ、全部子供……？」
「そうさ。ここじゃ普通のことさ」
「普通って……」
「ここじゃ、金がなきゃ死ぬんだ」
「！？」
お金が無いと死ぬ？食べられなくて死んじゃうってこと？
「いいかい？ソラ。俺、もしかしたらここにいたかもしれないんだよ」
「……ここに？」
「そう、俺もストリートチルドレンだったからね」
初めて聞いた。そういえば、シゲト君のお父さんとかお母さんって知らなかった。
「お父さんやお母さんは？」
思わず聞いてしまった。普通に考えたらおいそれと聞いていいことじゃないのに。
「死んだよ。父さんは戦争で。母さんは病気でね」
「……ごめんなさい……」
「母さんは俺のことを育てるために必死に働いてた。それこそ夜も昼もなく働いて、見る見るやせて行ったよ。父さんが死んでからはなおさらだった」
シゲト君は怒るでもなく、落ち込むでもなく淡々と話した。
「働いて、働いて、病気になっちゃって、それでも働いて……」
聞いている私のほうが悲しくなってきた。
「そんなのって……」
「だから、俺は生きなきゃいけないんだ。父さんや母さんの代わりに」
シゲト君は顔を上げて私のほうを見つめてきた。私の体がビクッと震える。
「みんな同じなんだよ。みんな生きなきゃいけないんだ」
生きなきゃいけない。
そのために人を傷つけるって事？
そんな……そんなのって……
「そんなの許せるはずがないじゃない！」
思わず叫んでしまった。狭い家の中で私の声が響き渡る。
「じゃあ、ソラは俺たちに死ねっていうのかい？ここの子供達のように！！」
「！！」
私は何も言えずにうつむくしかなかった。
涙がにじんできた。
そんな寂れた町の中でもこの家は相当な痛みようだった。というよりもまったく手入れをしていないんじゃないかと思えるくらいに。
「……この家？」
恐る恐る聞いてみる。
「この家、何だと思う？」
「何って……普通の家じゃないの？」
「ああ、普通の家だよ。中にいる人以外はね」
「中にいる人？」
シゲト君は何も答えずに中に入っていった。私も後をついて中に入るとなんともいえないようなすえたにおいが立ち込めていた。思わず手で口を覆うくらいにこもったにおい。
「……シゲト君、ここ何？」
「ここはお墓さ」
「お墓！？」
「ああ、ここはストリートチルドレンのお墓さ」
ストリートチルドレン。前に本で読んだことがあった。確か親に捨てられて道端で暮らす子供達のこと。その子達の……お墓？
目の前にあるのは無数の壷。素焼きの無骨で小さな壷がたくさん置いてあった。
「ホントならちゃんと土葬にしてあげるべきだろうけど、今はそんな余裕がないから、火葬にしてこんな壷に入れておくんだ」
シゲト君は静かに言った。静かに言ったけれど強く聞こえたのはきっとこの場所のせいかもしれない。ここはなんとなく落ち着かないし、気味が悪かった。
「これ、全部子供……？」
「そうさ。ここじゃ普通のことさ」
「普通って……」
「ここじゃ、金がなきゃ死ぬんだ」
「！？」
お金が無いと死ぬ？食べられなくて死んじゃうってこと？
「いいかい？ソラ。俺、もしかしたらここにいたかもしれないんだよ」
「……ここに？」
「そう、俺もストリートチルドレンだったからね」
初めて聞いた。そういえば、シゲト君のお父さんとかお母さんって知らなかった。
「お父さんやお母さんは？」
思わず聞いてしまった。普通に考えたらおいそれと聞いていいことじゃないのに。
「死んだよ。父さんは戦争で。母さんは病気でね」
「……ごめんなさい……」
「母さんは俺のことを育てるために必死に働いてた。それこそ夜も昼もなく働いて、見る見るやせて行ったよ。父さんが死んでからはなおさらだった」
シゲト君は怒るでもなく、落ち込むでもなく淡々と話した。
「働いて、働いて、病気になっちゃって、それでも働いて……」
聞いている私のほうが悲しくなってきた。
「そんなのって……」
「だから、俺は生きなきゃいけないんだ。父さんや母さんの代わりに」
シゲト君は顔を上げて私のほうを見つめてきた。私の体がビクッと震える。
「みんな同じなんだよ。みんな生きなきゃいけないんだ」
生きなきゃいけない。
そのために人を傷つけるって事？
そんな……そんなのって……
「そんなの許せるはずがないじゃない！」
思わず叫んでしまった。狭い家の中で私の声が響き渡る。
「じゃあ、ソラは俺たちに死ねっていうのかい？ここの子供達のように！！」
「！！」
私は何も言えずにうつむくしかなかった。
涙がにじんできた。
私……子供だ……。
どうしようもない子供だ……。
総カウント： -
本日 ： -
本日 ： -
- ご意見お寄せください -- 名無しさん (2005-11-17 08:31:51)
- どうしようもない現実ってありますもんね。 -- 名無しさん (2005-11-20 14:12:17)
- ↑のつづき＾＾；その中でも皆のムードメーカーで居られるシゲトの強さを見たような気がします。ぜひこのエピソードが本編に入ってもらいたいです -- 再生者 (2005-11-20 14:14:07)
