「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

囚われのお姫様

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その日、治安警察省のメイリン・ザラのオフィスには『珍客』が訪れていた。
誰あろう、アスラン・ザラその人である。
「御用件はなにかしら?」
口をついて出るそんな言葉にメイリンは自己嫌悪に陥る。
(折角訊ねてくれたのにね)
「俺が君の顔を見に来るのがそんなにおかしいか?」
そう言って苦笑するアスラン。
「大丈夫なのか?」
「おあいにくさま。今の所、『世は並べて事も無く』よ。ソレとも、治安警察省に任せるのは不安なのかしら?」
「そうじゃない」
そう言ってメイリンの元へ歩み寄り、そして。
「疲れてるんじゃないか?」
そっ、とメイリンの頬に手を触れる。
そんな夫の態度に、メイリンは一瞬虚を突かれる。
(この人は・・・)
アスランの優しさを素直に嬉しく思うと同時に、
(アスラン、貴方は誰にだって優しいのよね?『彼女』に対しても)
嫉妬を感じてしまう。同時に、そんな風に感じてしまう自分自身への嫌悪感も。
「そう言えば、主席は今日は?」
ポツリと聞いてしまってから、禁句を口にした事を自覚する。
「いや、俺は特に聞いていないが?」
アスランはそれと判るほど表情を固くし、すっ、と身を引く。そして、二人の間に奇妙な緊張が走った。
が、次の瞬間、その緊張は微塵に砕かれた。その『彼女』によって。
「メイリン!」
息を切らせて走ってきたカガリが、ノックもせずにドアを開け放った。
「メイリン、大事な話がある!」
ふと、メイリンの脳裏に「アスランを返してくれ!」と直談判に来たカガリと言う絵面が浮かび、その発想の馬鹿馬鹿しさに苦笑が漏れる。
「?何がおかしいんだ?」
「ごめんなさい、コッチの話よ・・・で、大事な話って?」
「ソラ・ヒダカの事だ!」
一瞬、話の前後が不明になる。
「どう言うこと?」
「どう言うことって・・・あのな!私は・・・もしかして、聞いて無いのか?」
今度はカガリが驚く番だった。
「だから、何の話?」
「ソラ・ヒダカが治安警察に逮捕された。・・・本当に知らないのか?」
「私は聞いて無いわよ!?」
「ちょっと待て、ソレはどう言うことだ!」
アスランとメイリンがほぼ同時に声をあげた。
「反政府組織に参加したらしい。詳細は私も知らない」
(キサカね!)
カガリの後見人として未だに陰に日向に奔走する男を思う。
少なくともメイリンに情報が上がって来る前に捕捉出来るだけの情報力は今だ健在と言うことだろう。
メイリンはデスクの端末を操作、逮捕者リストを検索。
モニターを顔を突き合わせて覗き込む三人の前に、その名はあった。
「『オーブの実態を考える会』?なによコレ、ランクDじゃない」
「なあ、どんな組織なんだ?」
「市民サークル」
「はぁ?」
呆気に取られるアスランとカガリ。
「要するに、放置しても問題無い連中って事よ」

「まったく!なんて人騒がせな『お姫さま』なのかしら!」
「メイリン、口が悪いぞ」
治安警察省の中をアスランとメイリンが進む。
向かうのは警察省内の会議室のうちの一つだ。
ソラが逮捕された事を知ったメイリンの反応は素早かった。
即座に治安警察省本部へ当日逮捕された全員~他にも複数のグループが逮捕されていた~を移送。そして、他のグループはそのまま素通りで抑留施設へ移し、ソレと気づかれない様に『オーブの実態を考える会』のみ治安警察省へ残した。
その際、抑留施設では無く会議室を取調室替りにしたのはそれなりの訳が有った。

ガチャリ

会議室のドアが開き一人の女性が会議室内に入ると、治安警察の職員の背筋がピン!と張り、同時にソラ達は室温が1、2度下がったような錯覚を感じた。
(あの人が・・・)
『治安警察の魔女』そう呼ばれる女性はソラが思っていたほど恐ろしい印象は無かった。むしろ逆に・・・
そんなソラの思いをよそに、メイリンの刺すような視線が遠慮無く一人づつ向けられ、ソラの所でひたり、と止まる。
その瞬間、無表情と言って良かったメイリンの顔が微笑みを浮かべた。同時に威圧的な圧力も霧散する。
「皆さん、ご協力有難うございました。もうお帰りなられても結構です」
そう言って微笑むメイリン。
一瞬、言われたことの意味が判らず『オーブの実態を考える会』のメンバーは硬直する。
「あの・・・何らかのペナルティーは?」
メンバーの一人がおずおずと尋ねると、メイリンは微笑んだままキッパリと否定する。
「いえ、特にありません。・・・あ、一応、皆さんのIDは控えさせて頂きますが」
そう言われて安堵する一同。
「でも、個人的に一言だけ。こう言った勉強会を開催なさるのは結構ですが、次回からは反政府活動と間違われるような開催方法は避けて下さいね。また捕まっちゃいますよ?」
冗談めかして言うメイリンに空気が緩む。
「でも、なんでテロリストじゃないって判るんですか?」
誰かがそう口にして、メンバーの間に(余計な事を言うな)と言う空気が流れる。
「彼女ですよ」
そう言ってメイリンがソラを指し、ソラへ一行の視線が集まった。
「彼女は、皆さんご存知の様に、ガルナハンのテロリストに誘拐され、つい先日解放されたばかりです。そんな人が自分からわざわざ反政府組織のような危ない連中と関わりを持つはずがありませんもの。そうでしょう、ソラさん?」
ソラはそうメイリンに問われ、咄嗟に頷いてしまってから(悪い人達じゃないんですけど・・・)と胸の中で付け足した。

その後、治安警察職員の案内で『オーブの実態を考える会』のメンバーが出口に向かう途中、ソラを呼びとめる声がした。
振り向くと、其処にはアスランが居た。他のメンバーもアスランの姿に気づいてざわめく。
「大変だったね。折角オーブへ帰って来たばかりなのにこんな騒ぎに・・・」
「い、いえ!へイきでス!」
そう労われて、ソラは緊張の余り声が裏返ってしまった。
そんなソラに苦笑を浮かべながら、アスランは着いて来る様に促し、その後をぎこちない歩み方でソラがついて歩く。
着いた先はメイリンのオフィス、そしてソコには。
「ひさしぶりだな、ソラ・ヒダカ!帰国騒動以来か?」
カガリと、メイリンが応接セットに腰を下ろしていた。
(な、なんでこんな人達が?!)
あまりと言えばあまりの事態にソラの自意識はパンクしかけ、眩暈に襲われた。と、そんなソラの肩を背後から支えてくる腕が。
「君、大丈夫か?」
アスランに支えられ、ようやくソファーに腰を下ろすと、アスランに苦笑される。
「帰国騒ぎの時のセレモニーの時も倒れかけてたな、あの時はキラが支えたけど」

「一つ、君に頼みたい事がある」
ようやくソラがパニックから回復した頃合いを見計らい、アスランは本題を切り出した。
「俺は近々、ガルナハンへ向かう。ソコで、君に同行して欲しいんだ」
「え?!」
「アスランは私の指示で東ユーラシア連邦へ査察に入る。そこで、そなたにオブザーバーとして同行して欲しいのだ」

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