68-866『Virtual Insanity』

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SIDE K キョン「………………」 古泉「カップ蕎麦も、なかなかですねぇ。」 12月31日。年の瀬。SOS団の年内の活動は終了。俺は喜び勇んで引きこもっていたんだが………何故か訪ねてきた古泉と一緒に過ごしていた。 妹や家族は二年参り。古泉だって他に予定がありそうなもんだがね。 こうしてカップ蕎麦を啜りながらTVを見て過ごす。古泉は何が楽しいのか、満面の笑顔である。 「………初めてなんですよ。こうした、友人と過ごす年末なんて。」 「そうかい。」 こいつもいつも大変だからな。どうせ暇だし、付き合ってやるのも吝かでないか。 いつもがイカれ過ぎてるからな。たまにはこうした時間も必要だ。 SIDE S 「佐々木さーん、蕎麦が出来ましたよ。」 「………ありがとう。でもわざわざ私を招待してよかったの?年の瀬なのに。」 「はい!」 橘さんは、私を見る。…………満面の笑みなんだけど、なんかね………。 あの世迷い言のような話もそうなんだけど、彼女はどうにも私を実像以上に評価し過ぎているきらいがある。 盲目的といっていいのだろうか。私みたいに退廃的な精神状態だと、それはそれで危険なんだけど。 せっかくの同級生のお誘いに、こんな考えが浮かぶ自分も、大概まともだとは言い難い。 今を楽しむべきなんだろうな。 僕達(俺達)は、奪うばかりで与えようとしていないのだから。 SIDE K だらだらとTVを見て、ゲームに興じる。男友達同士の退屈な時間。古泉は笑顔だ。 「…………つまんねぇだろ?」 「いえ?新鮮ですよ。日頃が日頃だけに、ちょっとした非日常です。」 ハルヒの事で、こいつは本当に大変だからなぁ。こいつの日常ってのは、やはり大変なものだ。だからって、俺が何かしてやる資格もないんだがな。 「そうかい。………すまねぇな。あんまり盛り上げてやる事も出来なくて。」 「いえいえ。」 古泉は、また笑顔を見せた。………古泉の携帯が見える。待ち受けにあるのは……… ………やっぱり、こいつも高校生なんだな。安心すると共に、親近感が湧く。 何故か、不意に同窓会の時に親友に言われた一言を思い出した。 SIDE S 日頃親しいとはいえ、何故年末に彼女の家にいるのだか。 それだけ彼女に親しい友人だと思われているのか、それともまた、あの世迷い言の続きなのだろうか。 春のあの狂気じみた時間。あの続きは御免被りたい。親友と過ごした非日常は、楽しかったが、私は…………… いや、よそう。 彼女がいない時に、携帯にメールが入る。………待ち受けの画面を見て、私はつい笑みを洩らした。 「くつくつ。」 私は、同窓会の時に親友に言った言葉を思い出した。 ここのところの物事は、もっと悪い方へ変わりつつある。 発狂した世界なのさ、僕たちが暮らしてるのは。 僕が納得行かないのは、罪に手を染めてる半数の奴らに、僕たちみんなが捧げなきゃいけないことだ。 この仮想狂気でできた未来に、いつだって振り回されてるのさ。 SIDE K 除夜の鐘が鳴り響く。 炬燵に入り、TVを見てだらだらと過ごす時間。 「古泉。」 「なんでしょう?」 「待ち受け………見えちまった。すまん。」 古泉の顔がみるみる赤くなる。…………すまん。他に触れ回る趣味はないから、許してくれ。 「…………あなたって人は…………!内緒ですよ!」 勿論だ。俺の待ち受けだって似たようなもんだからな。 「俺は、お前に親近感を抱いたよ。まさかお前が、も………」 「ふんもっふ!」 SIDE S 除夜の鐘が鳴り響く。今頃、親友は何をしているんだろうか。SOS団で、二年参りだろうか。 チリつく痛みの中、TVを見る。TVでは芸人さん達が大変な事になっていた。 「時に橘さん。」 「はい?」 炬燵に並んで蜜柑を食べている橘さん。 「応援しているよ。頑張って。」 「……………………?」 無数の?マークを浮かべた橘さん。………気付かないなら、気付かないでいいよ。ただ………私は応援する。それだけだから。あの笑顔の少年と、彼女が並んで歩けるように。 ―帰り道― あまり遅くなるのも、親に心配をかけてしまう。そろそろお暇するべきだろう。 「送っていきますよ。」 「助かるけど………大丈夫?」 「はい!佐々木さんに何かあったら、私が悲しいのです!大切な私の親友ですから!」 …………橘さんの満面の笑みを見て、私は自分の考えを恥じた。 「そろそろお暇しますか。」 「そうか。俺はコンビニに用があってな。途中まで着いていくに吝かでないぞ。」 そう言った俺に、古泉は笑みを浮かべた。 「では甘えましょう。」 ………最近物騒だからな。古泉なら大丈夫だと思うが、用心に越したことはない。………見透かされてんだろうな。今日一番の笑顔だ。ああ、イラつく! SIDE I 彼も律儀な方だ。本当に僕をコンビニまで送ってくれた。 ………涼宮さんにとっての鍵………それが皆の一致した彼の見解だ。しかし…………彼は本当にそれを望んでいるのか、疑問符が付く。 長門さんの改変にしても、春の騒動にしても……いや、言うまい。 それに、彼の待ち受け。それを僕は知っている。残念ながら、それはSOS団ではない。 僕個人としては、それを尊重したいが…………。 機関に連絡し、迎えに来て貰おうとしたところ、目の前に見覚えのある二人が歩いてきた。 「おや。奇遇ですね。」 ………あなたに、返しますよ。あなたの僕への厚意をね。 SIDE S 人通りが少ない道を過ぎ、コンビニに差し掛かろうとしたところ………携帯を持っている男から声をかけられた。確か、彼は…… 「古泉くん、だったかな?」 「ええ。覚えて頂いていて、光栄です。」 如才ない微笑みを見せる彼。橘さんが前に出る。 「待ち伏せかしら?」 「とんでもない。僕も帰り道でしてね。今日はSOS団の会合もなく、暇でしたので、彼と過ごしまして。」 ……古泉くんの言葉に、胸を撫で下ろした自分がいる。 「彼は、コンビニにいますよ。貴女は彼に送って頂きましょう。僕は、彼女を送ります。」 願ってもない申し出だが………私は古泉くんに耳打ちした。 「何故?」 古泉くんは……… 「僕は、彼の親友でもありますから。」 とだけ言い、後は如才ない微笑みでごまかされた。 「なんであなたと帰らないといけないのです!」 「仕方ないですよ。流石に夜道を女性一人で歩かせるわけには。」 ………文句を言いながらも幸せそうな橘さん。微笑ましいものを感じながら、私はコンビニに急いだ。 SIDE double コンビニには、キョンがいた。少年誌を読み、手には夜食であろうお菓子とジュースを持っている。 「キョン。久しぶりだね。」 精一杯の勇気を持って。私はキョンに声をかけた。 「佐々木?!」 唐突に声をかけられ、心臓が跳ね上がった気がした。 「お前、なんでまたこんな遅くに?!」 女一人で、真夜中に歩くのは流石に自殺行為だぞ!二年参りにしても、集団行動するべきだ! 「くつくつ。さっきまで橘さんと一緒にいてね。奇遇にも古泉くんと会い、君がコンビニにいると教えられて、君に声をかけた次第さ。」 「古泉?じゃあ、あいつが橘を送っているのか?………まぁなら、心配はないか。」 キョンは、古泉くんを相当に信頼しているようだ。 「送り狼にならないといいんだが。僕の心配が杞憂に終わることを願うよ。」 「お前らしくないミスだな。送り狼なら、かえって安全だろ。」 大真面目に答えるキョン。何も変わらない彼に、私はいつでも安心する。 「くつくつ。ニホンオオカミならば、ね。」 「お前、古泉はいい奴だぞ?橘に手を出すのは無いと思うが。」 やれやれ、と手を上げるキョンに、私はまた笑った。 考えてるんだ、僕たちはなんて酷い混乱の中にいるんだって。 どこから始めればいいのか分からない。 明らかにされるべきこの未来には、何かが在るんだ。 「帰るんだろ?送るぜ。」 「お願いするよ、僕の親愛なるニホンオオカミ。」 減らず口に、つい笑みが溢れる。佐々木。オオカミは、いい奴ばかりじゃないんだぜ。 もしも、仮に。自分が生きて過ごす世界が、何者かの思い通りになる世界だとしたら。 自分の抱く気持ちの全ても、作り物になるのかも知れない。 私の携帯の待ち受けにいる、自転車を引きながら私の隣を歩く彼も。 私の被る、仮面も。 別れ際に、キョンは私を見詰めた。九曜さんは、キョンの目が綺麗だと言っていたが……同感だ。 「……………またな。」 「うん………。」 また離れ行く距離。手を伸ばせば触れられるのに、距離は離れていく。 次はいつ会えるのかな……。また私は、あなたを親友と呼べるかな……。 佐々木と離れていく。俺はどうやらニホンオオカミだったらしい。 佐々木。お前は、この世界を仮想狂気の世界だって言ったな。………俺もそう思うぜ。 お前の思いに応えられない自分も。自分の思いを伝えられないことも。 ハルヒとの未来が確定しているっていうこともな。 そうさ仮想狂気の中で僕たちは生きてる。 変わるべきなんだ、物事がずっと同じってことはありえない。 僕はやってけない、仮想狂気の中で生きてくなんて。 この世界は変わるべきなんだ。 もう僕はやってけない、仮想狂気の中で生きてくなんて。 仮想狂気なんだよ、僕たちが生きてるのは。 そう僕たちが暮らしてるのは仮想狂気の中、まさにそうなのさ。 END

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