35-38「親友と釣りをしました」

『親友と釣りをしました』
期末試験も終わり授業が午後だけになった日、親友と二人で釣りに行った。
夏の日差しが痛い。この調子なら真っ黒に日焼けしちゃうな。

「釣れたか?」
「いや、全然」
話の流れで、クラスメートの恋愛相関図の話や俺達の過去の恋愛話になる。
どうして世間の連中は男も女も恋愛話がやたらと好きなんだ?
「そういや、クラスメートの女子で俺達の仲を詮索する連中がいるのを知っているか?」
はっきり言うと、俺と親友が恋仲という酷い噂だ。噂を怖がって親友と疎遠になるのは更に嫌だ。
「その噂を消す良い方法があるけどね。僕が良い方法教えてあげようか。くつくつ」
国木田も岡元も中河も良い方法があると言ったきり、教えてくれない。どういう方法なんだ?
「それだけでなく、君が幸せにもなるという、一石二鳥の方法だよ」
お前がそれをやるとキモい。いい加減止めろ。



「やあ、キョン」
突然背後から呼び掛けられて振り向くと、案の上、佐々木がいた。
「釣りかい?僕も参加させてくれないかな?」
そのキラキラした目で頼まれると、断り切れない。
「しかし、竿は2本しか無い」
「急用を思い出した。俺は帰るから。じゃあ、また明日」
「おい須藤」
須藤の奴勝手だな。



「キョン、釣りは初めてだから優しく教えてくれないか?」
「ああ良いぜ」
佐々木は一応女だ。二人きりだと若干緊張する。
「なあ、佐々木。須藤と俺のホモ疑惑を解消する方法有るはずだが、知らないか?」
「僕と一緒に釣りをすることだよ」
冗談だよな。
「土曜日の塾の帰りに映画を奢ってくれれば更に良い」

「自転車で塾に送り迎えしてくれれば、最高だね」
遠回しに、それだけやってくれれば教えてくれるということを言っているんだな。やれやれ

佐々木が来てからというもの、今までの不景気が嘘のように、ガンガン釣れまくった。
大量の魚を山分けして、夕暮れの中、それぞれの家に帰る俺達。

その後、佐々木の言う通りのことをしたが、間抜けなことにホモ疑惑を解消する方法を聞くことを失念した。
ただ奇妙なことに、佐々木と一緒に釣りをして以降、須藤と俺がホモだという噂が流れることは二度と無かった。
(おしまい)

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最終更新:2008年07月29日 20:38
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