キョン「こんな時間に、湖?って最初は思ったが‥、なかなかいいもんだな。」
佐々木「ふふ、思いつきで言ってみたんだが、その甲斐はあったみたいだね。」
とある湖、二人の男女が会話をしている。
その腰から下は水に浸かっており、二人は足を投げ出す形で並んで星を見ていた。
キョン「‥露天風呂みたいだな。」
佐々木「くっく、確かにそうだね。しかも混浴だよ、‥二人の貸切になってるけどね。」
いつもの調子の会話、だがここ最近、二人の関係はわずかだが確かに変わりつつある。
しかし、それに気づいているのは少女のほうであり、その変化の原因も自身であると理解していた。
キョン「‥こうやってると、本当に温泉に行きたくなってくるな。もっとも、もう少し寒くなってからのほうがありがたみはあるが。」
佐々木「‥‥。」
わずかな変化、それは少女を悩ませていた。
しかしその悩みは決して苦しいだけではなく、時に少女はせつなさ、時には心地よささえ感じていた。
ザバアッ
キョン「!?お、おい、髪まで浸かるとあとで大変だぞ!?」
佐々木「‥‥いいんだ‥、それより‥温泉、僕も一緒に行ってもいいかな?キミさえよければ‥」
キョン「‥‥。」
ザバァ
キョン「もちろんだ、というより当然お前も来るものと考えてたぞ。‥っ、気持ちいいけど、あとで絶対後悔するな‥。」
佐々木「‥‥くっく、‥だね。」
満点の星空の下、二人の男女が仲良く浅瀬に寝転んでいる。
二人の関係、その変化の行き着く先が二人にとって良いことなのか、またはその逆か‥
月明かりに照らし出された少女の顔は、そんな悩みなど微塵も感じさせない満足そうな笑顔をしていた。