第三章

第三章 スピリチュアリズムの存在意義

1.どんな意義があるのか
 第2章で述べたように、スピリチュアリズムは主に物理的心霊現象による科学的要素と、精神的心霊現象による道徳的、または人生哲学的要素の二面を併せ持っている。このことによって、我々は今まで倫理観や道徳観を、宗教的慣習や文化的慣習に頼っていたものを、科学的な立場から立証することに至っていることが分かった。このことに、どんな意義があるのかみていきたい。

2.物証による霊魂説
 霊魂や死後世界の存在を説くものといえば従来までは宗教の範疇であったが、スピリチュアリズムの登場によって物証による霊魂説の証明が可能になった。今までは宗教者のみ霊魂説を唱えていたのが、科学者によって霊魂説が唱えられるようになったのである。
 このことは、先進国である日本にとって非常に重要な意味を持っている。現代日本においては、霊魂説などは馬鹿げた説とされ、科学で証明されていないものを信じることは、無知で教養のない人々がする愚かなことだと考える風潮がある。いわゆる現代人の宗教離れである。特に日本は無心論者の占める割合の大きな国トップ5に入っており、無心論者は全体の64%~65%に上っている(図表5参照、Adherents.com、2007)。宗教離れするということは、宗教が持っていた道徳的要素や、精神主義的価値観から離れてしまうということである。そんな科学信仰とも言える現代人に、科学者側からの霊魂説が唱えられれば、宗教者側から唱えられるよりも比較的受け入れやすいのではないか。スピリチュアリズムが持つ科学的側面は、現代人が霊魂説を受け入れる際、非常に有利に働くと思われる。
 スピリチュアリズムの歴史においても、心霊研究をする際にウィリアム・クルックスをはじめとした科学者のほとんどは、強く懐疑的な態度で心霊現象の真相を暴こうと研究を始めた。そして、研究を進めて実際に心霊現象に触れていうちに、生々しい霊の証拠を見せ付けられ、その真実性に気づいたのである。懐疑主義者でも、まっとうな理性を持っている者であれば、実際に心霊事実を目の当たりにすると、霊魂の実在を認めざるを得なくなるということである。
 このように、スピリチュアリズムは科学者による物証を持った立場から霊魂説を唱えているがゆえに、スピリチュアリズムの思想は唯物主義者や無神論者にも比較的受け入れやすいという特徴を持っている。

3.正しい人生観
 先ず、正しい人生観とはどんなものだろうか。米国の生活哲学者、ノーマン・ヴィンセント・ピール博士は、我々の持つ「思想の性質」によって正しい上手な生き方があることを、次のように指摘している。

「われわれが住んでいる世界の様式は、我々を取り巻く環境、条件よりは、むしろわれわれが内に持っている『思想』の性質によって決まるのである。重要なことは、われわれの周囲に何が起こるかということではなくて、周囲に起こる出来事をわれわれがどう考え、どう解釈するかということである。」(春川、2005、P276)

 ここでピール博士が指摘していることは、人間がより正しい人生観を身に着けることとは、より正しい思想を見につけることだということである。人間の生きる幅を決めているのは、人間の思想の他ならないのである。そこで、その思想を我々はどのようにして捉えなければならないのか、世界的碩学カレル博士は次のように主張している。

「『心霊科学』を含め、すべての科学を統合して考えなければならない。」(春川、2005、P277)

 また、今日学問的に解明されている「人間」が人間の縮図であると信じられているが、それはどうみても表面的、皮相的、外面的、単なる現象的なもので、その本質的生命についての解明はされていないため、いわば足のない、空中の楼閣といった人間を真の人間としているのであるとカレル博士は指摘している。
そこで重要なのが、その誤った人間像を、より正しい角度から、正しい人間観を解明しようとしているのがスピリチュアリズムであるということである。我々は、自然科学、生理学、生物学、心理学などの学問を総合してより正しい人生観を構築しなければならないが、心霊科学がそこから抜けてしまっていてはカレル博士が指摘している今日のような状態になってしまうのである。
このことから、スピリチュアリズムを学ぶということは正しい人生観を身に着けることに繋がるのである。

4.2つの意義
 以上のように、スピリチュアリズムは科学的側面を併せ持った思想という特徴により、我々にとって2つの意義があるのである。ひとつは、唯物主義者へ有効な科学的アプローチによる倫理、道徳観のであり、もうひとつは、我々の人生を決定付ける最大の要素である「思想」を、より正しく構築することが出来るということである。
 次の最後の章では、これらを総括し、スピリチュアリズムを人生観に取り入れた生き方とはどんな生き方なのか、我々にとってのスピリチュアリズムの意味を見ていく。序章で述べたように、一次的定義のスピリチュアリズムを見ていく。

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最終更新:2008年01月19日 23:56