天より降りし、白霜の竜(前編)
まずは順調な滑り出しと言えた。私・槇野晶の前で簡易充電を受けている
“妹”達の長女、アルマの話だ。剣の神姫を、先程見事に撃破せしめた!
この快挙は、ロッテとクララ達にも非常によい刺激となっている様だな。
“妹”達の長女、アルマの話だ。剣の神姫を、先程見事に撃破せしめた!
この快挙は、ロッテとクララ達にも非常によい刺激となっている様だな。
「──と……射撃管制プログラム、アジャスト完了ですの。準備OK!」
「こっちも“魔術”用アーカイブのチェック完了、問題ないみたいだよ」
「すぅ……すぅ……えへへ、マイスターそんな所なでなでしちゃ……♪」
「そうか。にしてもアルマめ、どんな“夢”を見ているのか……むぅぅ」
「こっちも“魔術”用アーカイブのチェック完了、問題ないみたいだよ」
「すぅ……すぅ……えへへ、マイスターそんな所なでなでしちゃ……♪」
「そうか。にしてもアルマめ、どんな“夢”を見ているのか……むぅぅ」
幸せそうな寝顔を浮かべて簡易クレイドルに身を任せているアルマを、
私はそっと撫でてやる。流石に初めてだけあって、意識していない所で
アルマに負荷が掛かったらしい。健気な娘……と、放送が聞こえるな。
私はそっと撫でてやる。流石に初めてだけあって、意識していない所で
アルマに負荷が掛かったらしい。健気な娘……と、放送が聞こえるな。
『槇野晶さん。ロッテの対戦相手が見つかりました、オーナー席へ~』
「む……出番ですのっ!マイスター、わたしも頑張ってきますの~♪」
「有無、往こう!クララや、アルマの面倒を見ながら観戦出来るか?」
「構わないんだよ。キャリアの上から、十分フィールドは覗けるもん」
「む……出番ですのっ!マイスター、わたしも頑張ってきますの~♪」
「有無、往こう!クララや、アルマの面倒を見ながら観戦出来るか?」
「構わないんだよ。キャリアの上から、十分フィールドは覗けるもん」
という訳で再度キャリアを引きずってオーナー席へ付き……先程同様に
サイドボードへコンテナを搭載、ロッテをエントリーゲートに降ろす。
パステルカラーの“フィオラ”を翻して、彼女は華咲くが如く笑った。
……この笑顔に弱いのだ、私は。力強く親指を立て、“妹”を見送る!
サイドボードへコンテナを搭載、ロッテをエントリーゲートに降ろす。
パステルカラーの“フィオラ”を翻して、彼女は華咲くが如く笑った。
……この笑顔に弱いのだ、私は。力強く親指を立て、“妹”を見送る!
「よし、存分に蹴散らしてこい!普段とは違う環境、遠慮は要らぬ」
「はいですの♪精一杯華麗に、カゲキなワルツを踊ってきますの!」
「ちょっと表現が意味不明だけど頑張ってね、ロッテお姉ちゃん?」
「はいですの♪精一杯華麗に、カゲキなワルツを踊ってきますの!」
「ちょっと表現が意味不明だけど頑張ってね、ロッテお姉ちゃん?」
程なく全てのセットアップは完了し、ゲートの扉がゆっくりと開く……。
その先は……なんと青空だった!そう、ゲートの外は高々度空域なのだ!
調べてみると、気弱そうな少年がオーナーの相手神姫は“バイザー”派。
しかも空の王者“ストームバイザー”の後継機を元とした改造品なのだ!
恐らくはロッテも飛行型と判断されて、“大空”が選ばれたのだろうな。
その先は……なんと青空だった!そう、ゲートの外は高々度空域なのだ!
調べてみると、気弱そうな少年がオーナーの相手神姫は“バイザー”派。
しかも空の王者“ストームバイザー”の後継機を元とした改造品なのだ!
恐らくはロッテも飛行型と判断されて、“大空”が選ばれたのだろうな。
『ロッテ、万一墜落してしまったらリングアウトになる。気を付けろ』
「はいですの~。でも、ダイビングも楽しませてほしいですのっ♪」
『ダイビングだと?お前、まさか……!?』
『ロッテvsハニエル、本日の重量級リーグ第6戦闘、開始します!』
「ふふ、久しぶりの大空……満喫しますのッ!」
『3……2……1……GO!!』
「はいですの~。でも、ダイビングも楽しませてほしいですのっ♪」
『ダイビングだと?お前、まさか……!?』
『ロッテvsハニエル、本日の重量級リーグ第6戦闘、開始します!』
「ふふ、久しぶりの大空……満喫しますのッ!」
『3……2……1……GO!!』
私が窘めるより早く、ドレスを靡かせてロッテは大空へと撃ち出された!
彼女がゲートを通過した瞬間に入口は消え失せ、雲海と僅かな浮島のみが
在る蒼穹の空間が、ロッテを迎えた。彼女は気持ちよさそうに降下する。
その姿はまるっきり、スカイダイビングのそれであった……暢気な娘め。
彼女がゲートを通過した瞬間に入口は消え失せ、雲海と僅かな浮島のみが
在る蒼穹の空間が、ロッテを迎えた。彼女は気持ちよさそうに降下する。
その姿はまるっきり、スカイダイビングのそれであった……暢気な娘め。
「ふふ~ん……♪この浮遊感、狭いお店だとあまり体感出来ませんの♪」
『ロッテ、あまり遊びすぎるなよ?相手が迫ってきて……危ないッ!?』
「──────ッ!」
『“W.I.N.G.S.”……Execution!』
『ロッテ、あまり遊びすぎるなよ?相手が迫ってきて……危ないッ!?』
「──────ッ!」
『“W.I.N.G.S.”……Execution!』
だが、優雅なスカイダイビングは一瞬で終わった。レーザーがロッテを
狙って撃ち放たれたのだ!ロッテは一瞬で“フィオラ”から、戦闘用の
“セイクレール”付き“シルフィード”に換装して、そこに内蔵された
急速移動用ブースターを活用しつつレーザーを回避……まるで曲芸だ。
狙って撃ち放たれたのだ!ロッテは一瞬で“フィオラ”から、戦闘用の
“セイクレール”付き“シルフィード”に換装して、そこに内蔵された
急速移動用ブースターを活用しつつレーザーを回避……まるで曲芸だ。
「っとと、流石にここからは本気でいかないとダメですの……」
「そうですよ“先輩”ッ!アタシは本気ですから、困りますッ!!」
『せ、先輩だと!?待てロッテ、相手の神姫と知り合いなのか?』
「い、いえ知らないですの~……とりあえず、ウィブリオっ!」
「キュィィッ!」
「そうですよ“先輩”ッ!アタシは本気ですから、困りますッ!!」
『せ、先輩だと!?待てロッテ、相手の神姫と知り合いなのか?』
「い、いえ知らないですの~……とりあえず、ウィブリオっ!」
「キュィィッ!」
初撃を回避したロッテは、翼竜タイプである相棒の“プルマージュ”……
霜天龍ウィブリオを招喚し、背に跨る。脚をファフナー同様にロックして
竜の胸と背にマウントされていた小型盾と槍型のマシンガンを装備して、
相手を迎え撃つ準備は整った。だが、空中戦ならば待つだけではダメだ!
霜天龍ウィブリオを招喚し、背に跨る。脚をファフナー同様にロックして
竜の胸と背にマウントされていた小型盾と槍型のマシンガンを装備して、
相手を迎え撃つ準備は整った。だが、空中戦ならば待つだけではダメだ!
「……相手のお尻を捉えますの。大丈夫、ウィブリオならできますの!」
『キュイ……キュィッ!!』
「来ましたね!先輩は越えるべき壁……手合わせ、お願いします!」
『キュイ……キュィッ!!』
「来ましたね!先輩は越えるべき壁……手合わせ、お願いします!」
そう!ドッグファイト(闘犬)という通称がある様に、高機動飛翔体同士の
戦いでは相手のバックを取る事が重要なポイントだ。本来は天使型である
ロッテもそこは重々承知しているらしく、飛竜の機動力をフルに活かして
バイザーの後ろを狙う。そして、ストームバイザーを土台としたと思しき
“超音速戦闘機”型のバイザーに跨る海豚型神姫は、振り解こうとする。
この駆け引きこそが、空中戦の醍醐味と言えるだろう……にしても、だ。
戦いでは相手のバックを取る事が重要なポイントだ。本来は天使型である
ロッテもそこは重々承知しているらしく、飛竜の機動力をフルに活かして
バイザーの後ろを狙う。そして、ストームバイザーを土台としたと思しき
“超音速戦闘機”型のバイザーに跨る海豚型神姫は、振り解こうとする。
この駆け引きこそが、空中戦の醍醐味と言えるだろう……にしても、だ。
「せ、先輩ってどういう事ですの~?わたし、貴方と会った事……」
「はい!でもアタシは、勝ち上がっていく先輩を見ていたんですっ!」
「う、う~ん……とりあえず名前とか、教えてもらえますの?」
「“天空騎士(パラディン・ダイバー)”のハニエルです!」
「ハニエルちゃんですの?……“後輩”でも、手加減はしませんのっ!」
『キュイィ~ッ!!』
「はい!でもアタシは、勝ち上がっていく先輩を見ていたんですっ!」
「う、う~ん……とりあえず名前とか、教えてもらえますの?」
「“天空騎士(パラディン・ダイバー)”のハニエルです!」
「ハニエルちゃんですの?……“後輩”でも、手加減はしませんのっ!」
『キュイィ~ッ!!』
暫く追いつ追われつの“ダンス”を披露した後、いよいよ本格的な戦闘が
開始される。先に仕掛けたのはロッテだった……“ウィブリオ”の胴体に
仕込んでおいた多目的ランチャーを開いて、高機動型マイクロミサイルを
無数に斉射したのだ!白線と共に迫る弾から、ハニエルが必死に逃げる!
更に追い縋る様にして、ロッテは右手のマシンガンから弾丸をバラ撒く。
開始される。先に仕掛けたのはロッテだった……“ウィブリオ”の胴体に
仕込んでおいた多目的ランチャーを開いて、高機動型マイクロミサイルを
無数に斉射したのだ!白線と共に迫る弾から、ハニエルが必死に逃げる!
更に追い縋る様にして、ロッテは右手のマシンガンから弾丸をバラ撒く。
「くっ、ミサイル!?こっちの装甲が薄いと見ましたか……!」
「はいですの。ストームバイザー系列は、機動性重視ですからっ!」
「なら、その特性を見せてあげますっ……奥義、竜鳥飛びッ!」
「え……!?自由落下で、ミサイルをかわしていますの……ッ!」
「先輩、まだ驚くのは早いです……よッ!!!」
「はいですの。ストームバイザー系列は、機動性重視ですからっ!」
「なら、その特性を見せてあげますっ……奥義、竜鳥飛びッ!」
「え……!?自由落下で、ミサイルをかわしていますの……ッ!」
「先輩、まだ驚くのは早いです……よッ!!!」
だが逃げてばかりではいなかった。相手は乱気流に身を任せて、正確に
飛来するミサイルを誤導し、結果的に直撃せず回避してしまったのだ!
そしてその隙を狙ってアフターバーナーを噴かしたハニエルは、急激な
旋回軌道を描いて一気にロッテの背後へと回る。バイザー付属の大口径
レーザーキャノンが、ウィブリオに照準を定めた……これは、拙いな。
飛来するミサイルを誤導し、結果的に直撃せず回避してしまったのだ!
そしてその隙を狙ってアフターバーナーを噴かしたハニエルは、急激な
旋回軌道を描いて一気にロッテの背後へと回る。バイザー付属の大口径
レーザーキャノンが、ウィブリオに照準を定めた……これは、拙いな。
「うわぁ……無茶な機動で混乱しないのは流石、海戦型神姫ですの」
「空も海も、三次元の自由空間である事は変わりませんからっ!」
「ふふ……ですけど、わたしだってこのままじゃ済ませませんの~♪」
『キュ、キュィッ!』
「空も海も、三次元の自由空間である事は変わりませんからっ!」
「ふふ……ですけど、わたしだってこのままじゃ済ませませんの~♪」
『キュ、キュィッ!』
──────天を舞い踊る姫達は、何処までも可憐だね。