我が意思よ、より遠くより高みへ
“妹達”の決意は確かで、自分達の質を高めようと日々努力している。
そうなれば、彼女らの“姉”である私・槇野晶とて負けていられない。
マイスター(職人)を自認し、神姫用アイテムの工作精度は既に十分だ。
だがそれで満足してはいないし、何より私には欠けている所があった。
そうなれば、彼女らの“姉”である私・槇野晶とて負けていられない。
マイスター(職人)を自認し、神姫用アイテムの工作精度は既に十分だ。
だがそれで満足してはいないし、何より私には欠けている所があった。
「……ふむ、この関数を使えばこう。いや、これはもう少し早く……」
「マイスター。そっちのインクルード関数なら、解析速度が速いもん」
「これか……おお、確かにCSCのパターングラフが!?……流石だ」
「マイスター。そっちのインクルード関数なら、解析速度が速いもん」
「これか……おお、確かにCSCのパターングラフが!?……流石だ」
それは、神姫にまつわる精密部品の情報処理能力。自ら作った武装の
制御関数はこれまで独力で作れたが、それとて満足する物ではない。
更にその先……CSCの専門的解析や、ディープな制御系に至っては
“ちっちゃい物研”や“エルゴ”に頼らねばならなかった。側にいる
クララの装備……“魔術”の為の装備も、動作原理は日暮の設計だ。
制御関数はこれまで独力で作れたが、それとて満足する物ではない。
更にその先……CSCの専門的解析や、ディープな制御系に至っては
“ちっちゃい物研”や“エルゴ”に頼らねばならなかった。側にいる
クララの装備……“魔術”の為の装備も、動作原理は日暮の設計だ。
「では、この命令を組み合わせて……どうだ?これならいけるか?」
「障害検知精度、96.18%。うん、マイスターも上達してきたんだよ」
「流石に何時までも、クララや周りの人を頼ってばかりではな……」
「障害検知精度、96.18%。うん、マイスターも上達してきたんだよ」
「流石に何時までも、クララや周りの人を頼ってばかりではな……」
頼る事を悪いとは思わん……“適材適所”という言葉もある。だが、
“独立独歩”という言葉も同時に存在する。頼るのは良いが、それは
依存する理由にはならぬ。最低でも、戦闘中の神姫をリアルタイムで
データ補佐出来るだけの事はしたかった。“妹”の情報を自分自身で
メンテナンス・改良出来る技術力が、私には必要だったのだ。有無。
“独立独歩”という言葉も同時に存在する。頼るのは良いが、それは
依存する理由にはならぬ。最低でも、戦闘中の神姫をリアルタイムで
データ補佐出来るだけの事はしたかった。“妹”の情報を自分自身で
メンテナンス・改良出来る技術力が、私には必要だったのだ。有無。
「……でも、無理しなくてもマイスターには自分の役割があるよ」
「それはそれで大事だが、日暮に啖呵を切ってしまったのでな?」
「啖呵を切った?……あっ!確か“神姫犯罪”で何か、って……」
「それはそれで大事だが、日暮に啖呵を切ってしまったのでな?」
「啖呵を切った?……あっ!確か“神姫犯罪”で何か、って……」
そう。『“神姫犯罪”撲滅の為、手伝う事があれば何時でも言え』。
以前私は、日暮に向かって言っている。それでいざ助力を請われて、
『出来ない事がありますごめんなさい』ではまるっきりバカの所業。
恐らく“犯罪という怪物”に対して、そんな泣き言を吐く暇はない。
既に助力自体はクララも、そして現在クレイドルで寝ているロッテと
同じく就寝中のアルマも了解している。私が及び腰ではダメなのだ!
以前私は、日暮に向かって言っている。それでいざ助力を請われて、
『出来ない事がありますごめんなさい』ではまるっきりバカの所業。
恐らく“犯罪という怪物”に対して、そんな泣き言を吐く暇はない。
既に助力自体はクララも、そして現在クレイドルで寝ているロッテと
同じく就寝中のアルマも了解している。私が及び腰ではダメなのだ!
「そうだ。いざとなれば神姫の為にあらゆる物を作る事になるだろう」
「……警備用アーマーがどうとか、以前零していたけどそれなのかな」
「有無、その機構制御系が良い例だな。それ位は自力で作りたい物だ」
「……警備用アーマーがどうとか、以前零していたけどそれなのかな」
「有無、その機構制御系が良い例だな。それ位は自力で作りたい物だ」
何故なら、装備だけでなく……了解済みとは言え“妹達”を死地に
送り出さねばならない時が訪れるかも知れない。私がフヌケでは、
そんな時に何も出来ず……下手をすれば皆を失うリスクすら伴う。
……自分が不甲斐ない為にそんな想いをするのは、真っ平御免だ!
送り出さねばならない時が訪れるかも知れない。私がフヌケでは、
そんな時に何も出来ず……下手をすれば皆を失うリスクすら伴う。
……自分が不甲斐ない為にそんな想いをするのは、真っ平御免だ!
「ただ見ているだけ等、私の魂が赦せないからな……もう少しだ」
「……それなら、マイスターももっと頑張って。上達は早いもん」
「任せろクララ!腕を磨き、立派なマイスター(職人)となるッ!」
「……それなら、マイスターももっと頑張って。上達は早いもん」
「任せろクララ!腕を磨き、立派なマイスター(職人)となるッ!」
エールを送ってくれる“教官”クララに、私は頬ずりをしてしまう。
実際彼女の知性がなければ、もう少し私の学習度合いは遅いだろう。
感謝の表れだった……お互いに照れくさいが、純粋な想いの発露だ。
……貴様、私の顔がそんなにおかしいか?!そこにいろ、逃げるな!
実際彼女の知性がなければ、もう少し私の学習度合いは遅いだろう。
感謝の表れだった……お互いに照れくさいが、純粋な想いの発露だ。
……貴様、私の顔がそんなにおかしいか?!そこにいろ、逃げるな!
「マイスター、それよりも……あのフォートブラッグタイプは一体?」
「う゛……ああ、まだ眠っているぞ。引き取り手が見つかりそうだな」
「う゛……ああ、まだ眠っているぞ。引き取り手が見つかりそうだな」
クララのドライな切り返しで、私は平静を取り戻した。“あの”神姫。
猪刈に蹂躙されかかり、今度はアルマの如く壊される前に救い出せた、
あのフォートブラッグタイプ先行販売品、昔の名は“かまきりん”か。
AIPTDの発症パターンも殆ど無く、微調整のみで再起動が可能だ。
猪刈に蹂躙されかかり、今度はアルマの如く壊される前に救い出せた、
あのフォートブラッグタイプ先行販売品、昔の名は“かまきりん”か。
AIPTDの発症パターンも殆ど無く、微調整のみで再起動が可能だ。
「しかし本人が望んだ事とは言え、よく未熟な私の為に……なぁ」
「それだけ救ってくれた“人”への恩義がある、って事なんだよ」
「恩義、か……私が養えない事を、少々残念がっていた様だしな」
「それだけ救ってくれた“人”への恩義がある、って事なんだよ」
「恩義、か……私が養えない事を、少々残念がっていた様だしな」
今、私はCSC解析の勉強をしていたが……その実験台は彼女だ。
側にいられないなら、せめて役に立てる様に……という事かもな。
今は“かまきりん”の厚意に預かりつつ、自らの腕を磨くまでだ。
側にいられないなら、せめて役に立てる様に……という事かもな。
今は“かまきりん”の厚意に預かりつつ、自らの腕を磨くまでだ。
「せめて今度のマスターは、真っ当な人間であってほしい物だ」
現在まで、彼女を引き取りたいという申し出を2~3受けている。
実験台となってくれた彼女を引き渡すまでに、恥じぬ腕を磨こう。
私の意思は硬く、そして間もなく結実しようとしている所だった。
実験台となってくれた彼女を引き渡すまでに、恥じぬ腕を磨こう。
私の意思は硬く、そして間もなく結実しようとしている所だった。
「ゆくゆくはあのミモザみたいな神姫も、自ら治せる様になりたいな」
「……大丈夫、マイスターもきっと日暮さんの様に、技術が身に付く」
「その手応えは私も感じている。さ、もう一頑張りしようかクララや」
「……大丈夫、マイスターもきっと日暮さんの様に、技術が身に付く」
「その手応えは私も感じている。さ、もう一頑張りしようかクララや」
ミモザという神姫は、以前私が常連から預かった裏バトルの犠牲者。
彼女を自力で治せないのが歯がゆかった。犯罪に抗いたい私の本心を
一層強化したのはミモザのデータロスト事件があったればこそ、だ。
先日の祝勝会の後、日暮から修理を終えたミモザを引き取った時に、
その想いは更に強まった。故に今、短期集中コースで勉強中なのだ。
彼女を自力で治せないのが歯がゆかった。犯罪に抗いたい私の本心を
一層強化したのはミモザのデータロスト事件があったればこそ、だ。
先日の祝勝会の後、日暮から修理を終えたミモザを引き取った時に、
その想いは更に強まった。故に今、短期集中コースで勉強中なのだ。
「……猛勉強位でへこたれてはいられん、私は前に進まねばな」
元から想いはあったのだが、それは今“妹達”以外に言う気のない事だ。
話すべき時が来れば、その時は貴様にも話してやろうとは思うが……な。
というわけで私は、クララの指導を受けつつ……更なる猛勉強を始めた。
話すべき時が来れば、その時は貴様にも話してやろうとは思うが……な。
というわけで私は、クララの指導を受けつつ……更なる猛勉強を始めた。
「データ制御はこの関数よりも、自力で構築した方が早いんだよ」
「ふむ。基礎は昨日学んだが、その応用で組めるか?例えば……」
「ふむ。基礎は昨日学んだが、その応用で組めるか?例えば……」
──────全ては信念の為。自らの義を貫きたいからなの。