SHINKI/NEAR TO YOU
Phase01-4
Phase01-4
色取り取りのレーザーで造られた地平、そのフィールド上を白い翼が舞った。数ある武装神姫の中でも最もオーソドックスなタイプ、天使型MMSアーンヴァルモデルだ。
天使型神姫は持ち前のスピードを活かしライトマシンガンの射撃で相手をけん制する。相対するもう一体の神姫は、天使型の攻撃に防戦一方のようだ。
反撃してこない相手を見て好機と判断したのか、天使型はすかさずライトセーバーを抜き放ち距離を詰める。
天使型神姫は持ち前のスピードを活かしライトマシンガンの射撃で相手をけん制する。相対するもう一体の神姫は、天使型の攻撃に防戦一方のようだ。
反撃してこない相手を見て好機と判断したのか、天使型はすかさずライトセーバーを抜き放ち距離を詰める。
一瞬の交叉。
勝利の女神が微笑んだのは、優勢に見えた天使型の方ではなくもう一体の方だった。天使型の斬撃を鋭い動きで避けたその神姫は、体勢を崩した天使型に後ろから組み付き力でねじ伏せると、そのまま天高く飛び上がる。
天使型は相手を振りほどこうとするものの、相手のパワーがそれを許さない。
天使型を完全に捕らえたその神姫はそのまま大きく身を反らせ、そのまま天使型神姫を大地へと叩きつけた。
フィールドを揺るがすかと思うような轟音の後、その場に立っているのは天使型を打ち倒した迷彩模様に身を包んだ大柄の神姫だった。
天使型は相手を振りほどこうとするものの、相手のパワーがそれを許さない。
天使型を完全に捕らえたその神姫はそのまま大きく身を反らせ、そのまま天使型神姫を大地へと叩きつけた。
フィールドを揺るがすかと思うような轟音の後、その場に立っているのは天使型を打ち倒した迷彩模様に身を包んだ大柄の神姫だった。
「おおっ、デッカイ方が勝ったじゃん! 途中まで負けてたのに」
「ふむ。反撃しなかったのは、ワザと劣勢に見せかけて相手の油断と隙を誘うためですか。あちらの迷彩の方もなかなかやりますね」
目の前で繰り広げられたばかりのバトルの様子に、シュンとゼリスがそれぞれの感想をもらす。
「どうどう? やっぱりバトルは武装神姫の華よね。センターの最新型バトルマシーンでのバトルは、そこらの増産型のちゃちなモノとは違うでしょ?」
伊吹の言う通りだった。最新のゲーム筐体というだけあって、三次元モデリングによるバトルフィールドの精緻さ、各種モニタリング機器によりリアルタイムに戦況の変化が判るバトルシステム、一般的なゲームセンターに出回っている既製品とは比べものにならない。何よりもそこに集う猛者たちのレベルが違う。
「これが本場の武装神姫バトルか」
「ふっふっふ~、すごいっしょ? じゃあ早速カウンターに行ってサクッと登録すませましょう」
「カウンターで登録?」
オウム返しに尋ねるシュンに伊吹とワカナコンビが答える。
「センターに来たらまずはサンカトウロクだよ~」
「そ、神姫センターでのバトルはすべて戦績が記録されて、神姫BMAの公式クラシフィケーションにも反映されるから、施設内のゲーム筐体で遊ぶ前には参加登録をするようになってるの」
「ふ~ん、なんか面倒そうだな」
「ダイジョーブ、ダイジョーブ♪ 登録っていっても不正改造パーツでも使ってない限りオーナー登録をデータベースに参照するだけですぐに終わるから」
「シュン、横着しようとせずにここは伊吹さんに従うべきです。というか早く行きましょう。いわゆる〝善は急げ〟ってヤツですね」
「ふむ。反撃しなかったのは、ワザと劣勢に見せかけて相手の油断と隙を誘うためですか。あちらの迷彩の方もなかなかやりますね」
目の前で繰り広げられたばかりのバトルの様子に、シュンとゼリスがそれぞれの感想をもらす。
「どうどう? やっぱりバトルは武装神姫の華よね。センターの最新型バトルマシーンでのバトルは、そこらの増産型のちゃちなモノとは違うでしょ?」
伊吹の言う通りだった。最新のゲーム筐体というだけあって、三次元モデリングによるバトルフィールドの精緻さ、各種モニタリング機器によりリアルタイムに戦況の変化が判るバトルシステム、一般的なゲームセンターに出回っている既製品とは比べものにならない。何よりもそこに集う猛者たちのレベルが違う。
「これが本場の武装神姫バトルか」
「ふっふっふ~、すごいっしょ? じゃあ早速カウンターに行ってサクッと登録すませましょう」
「カウンターで登録?」
オウム返しに尋ねるシュンに伊吹とワカナコンビが答える。
「センターに来たらまずはサンカトウロクだよ~」
「そ、神姫センターでのバトルはすべて戦績が記録されて、神姫BMAの公式クラシフィケーションにも反映されるから、施設内のゲーム筐体で遊ぶ前には参加登録をするようになってるの」
「ふ~ん、なんか面倒そうだな」
「ダイジョーブ、ダイジョーブ♪ 登録っていっても不正改造パーツでも使ってない限りオーナー登録をデータベースに参照するだけですぐに終わるから」
「シュン、横着しようとせずにここは伊吹さんに従うべきです。というか早く行きましょう。いわゆる〝善は急げ〟ってヤツですね」
伊吹とゼリスのふたりに急かさつつ、シュンはカウンターに向かう。受付自体は伊吹の言う通り神姫のオーナー登録やオーナーの本人確認などをネットワークからデータベースに確認するだけで、シュンはホッとした。
「なんだ、結構簡単なんだな」
「ね? 別に慣れればどうってことないでしょう。後は……そうね。シュっちゃんはここを利用するの初めてだから、このセンターのメンバーカードも作っておくと次からは照会手順を省略できるし、ポイントでいろいろなサービスもついてお得なんだけど。……どうする?」
登録を済ませたシュンに続けて伊吹がいろいろ教えてくれる。どうもここは常連である伊吹の言うことを素直に聞いておいた方がよさそうだ。そもそも今日はずっとこんな調子でうまくいったんだし。
「うぅぅぅ~ん。……それもやっとくか」
「じゃあ、あっちで手続きしてもらいましょう。ワカナとぜっちゃんはここでちょっち待っててね?」
「なんだ、結構簡単なんだな」
「ね? 別に慣れればどうってことないでしょう。後は……そうね。シュっちゃんはここを利用するの初めてだから、このセンターのメンバーカードも作っておくと次からは照会手順を省略できるし、ポイントでいろいろなサービスもついてお得なんだけど。……どうする?」
登録を済ませたシュンに続けて伊吹がいろいろ教えてくれる。どうもここは常連である伊吹の言うことを素直に聞いておいた方がよさそうだ。そもそも今日はずっとこんな調子でうまくいったんだし。
「うぅぅぅ~ん。……それもやっとくか」
「じゃあ、あっちで手続きしてもらいましょう。ワカナとぜっちゃんはここでちょっち待っててね?」
シュンと伊吹は連れ立ってカウンターの前を離れる。ゼリスとワカナはひとまず天板の隅に腰掛けた。静かに佇むゼリスに比べ、ワカナの方はジッとしているのは苦手らしい。すぐにソワソワし出す。
「ふにゅ~。タイクツだよ~」
「ワカナさん、まだふたりがここを離れてから2分37秒しか経過していません。しばし静粛にしているべきです」
落ち着き払ったゼリスに対し、ワカナはひとしきり足をバタバタさせた後、ピョコンと立ち上がった。
「うんしょっ、ひらめいた~。ふたりが戻ってくるまで、ボクはちょっとボーケンの旅へ出かけてくるよ。とっても楽しいよ~」
「斥候任務ですか? ふむ、なるほど。確かにここの地の利についてはワカナさんの方が熟知しているようですからね。この場は私に任せて、どうぞ大役を果たしてください」
「わかったよ~。それじゃ、ちょっと行ってきま~すだよ~」
「気をつけてくださいね」
ワカナはカウンターから飛び落ちると、くるくる宙で回転しながら身軽に着地、意気揚々と人だかりの方へ向かう。ひとり残されたゼリスはその様子を見送った後、その先のゲーム筐体の方へと目を向けた。
「ふにゅ~。タイクツだよ~」
「ワカナさん、まだふたりがここを離れてから2分37秒しか経過していません。しばし静粛にしているべきです」
落ち着き払ったゼリスに対し、ワカナはひとしきり足をバタバタさせた後、ピョコンと立ち上がった。
「うんしょっ、ひらめいた~。ふたりが戻ってくるまで、ボクはちょっとボーケンの旅へ出かけてくるよ。とっても楽しいよ~」
「斥候任務ですか? ふむ、なるほど。確かにここの地の利についてはワカナさんの方が熟知しているようですからね。この場は私に任せて、どうぞ大役を果たしてください」
「わかったよ~。それじゃ、ちょっと行ってきま~すだよ~」
「気をつけてくださいね」
ワカナはカウンターから飛び落ちると、くるくる宙で回転しながら身軽に着地、意気揚々と人だかりの方へ向かう。ひとり残されたゼリスはその様子を見送った後、その先のゲーム筐体の方へと目を向けた。
筐体の周りは観客や野次馬で一杯だった。筐体上部に設置されたモニターに、今行われているバトルの光景が映し出されている。
「戦の風……其は美しく舞い散る天使の翼……」
すぐ側から聞こえる謳うような朗々とした声にゼリスは横を向く。そこには見知らぬ白い神姫がひとり佇んでいた。
「はじめまして。あなた独り?」
「いいえ、現在メンバーカードの手続き中のシュンを待って待機中です」
「そう。見ない顔だけど、新人さんなのかしら?」
「そうなりますね。神姫センターを訪れるのは今回が初です」
白い神姫はゼリスの返事に微笑んだ。白く長い髪に白い肌、簡素な素体のスーツも白、純白の神姫だ。彼女は屈託のない笑顔でゼリスに語る。
「ここはまさしく幻想の舞台。人間たちの想いで機械仕掛けの妖精たちに心を吹き込む、真夏の夜の夢の世界ね」
「……心を吹き込む?」
彼女はモニターの神姫バトルに恍然とした瞳を向ける。
「ふふ。妖精はね、心を持っていないのよ。だから誰かが与えなければならないの。……素敵じゃない? 人間たちの心を受け取り、妖精たちは初めてプシュケになれるのよ」
スクリーンから漏れる明かりが、彼女の顔に様々な光を落とす。そんな彼女が出し抜けにこちらを振り向いた。つられてその紅い瞳が見つめる先をゼリスが目で追うと、カウンターの向こうからシュンと伊吹のふたりが戻ってくるところだった。
「ぜっちゃん、お待たせ」
「ちょっと時間かかったな。何か変わったこととかあったか?」
話しかけるふたりに、ゼリスは知り合ったばかりの白い神姫を紹介する。
「ふたりの不在中に知人がひとり増えました。こちらの方です」
「こちらって……何処だよ?」
おかしな顔をするシュン。ゼリスはさっきまで隣に座っていた少女を振り返るが、すでにそこには誰もいなかった。
「……意外とせわしない方のようですね」
ゼリスがお決まりの仕草で小首を傾げるのと、三人がワカナの叫び声を聞いたのは、ほとんど同じタイミング。
「戦の風……其は美しく舞い散る天使の翼……」
すぐ側から聞こえる謳うような朗々とした声にゼリスは横を向く。そこには見知らぬ白い神姫がひとり佇んでいた。
「はじめまして。あなた独り?」
「いいえ、現在メンバーカードの手続き中のシュンを待って待機中です」
「そう。見ない顔だけど、新人さんなのかしら?」
「そうなりますね。神姫センターを訪れるのは今回が初です」
白い神姫はゼリスの返事に微笑んだ。白く長い髪に白い肌、簡素な素体のスーツも白、純白の神姫だ。彼女は屈託のない笑顔でゼリスに語る。
「ここはまさしく幻想の舞台。人間たちの想いで機械仕掛けの妖精たちに心を吹き込む、真夏の夜の夢の世界ね」
「……心を吹き込む?」
彼女はモニターの神姫バトルに恍然とした瞳を向ける。
「ふふ。妖精はね、心を持っていないのよ。だから誰かが与えなければならないの。……素敵じゃない? 人間たちの心を受け取り、妖精たちは初めてプシュケになれるのよ」
スクリーンから漏れる明かりが、彼女の顔に様々な光を落とす。そんな彼女が出し抜けにこちらを振り向いた。つられてその紅い瞳が見つめる先をゼリスが目で追うと、カウンターの向こうからシュンと伊吹のふたりが戻ってくるところだった。
「ぜっちゃん、お待たせ」
「ちょっと時間かかったな。何か変わったこととかあったか?」
話しかけるふたりに、ゼリスは知り合ったばかりの白い神姫を紹介する。
「ふたりの不在中に知人がひとり増えました。こちらの方です」
「こちらって……何処だよ?」
おかしな顔をするシュン。ゼリスはさっきまで隣に座っていた少女を振り返るが、すでにそこには誰もいなかった。
「……意外とせわしない方のようですね」
ゼリスがお決まりの仕草で小首を傾げるのと、三人がワカナの叫び声を聞いたのは、ほとんど同じタイミング。
「タイヘンだよ~っ」
ワカナは小さい体で精一杯叫びながら、慌しく駆け寄る。
「ゲーム機で、神姫ばとるがタイヘンでバーンでドーンだよ。男の子がわんわんだよ~っ」
慌てるワカナの意味不明な説明に、シュンたちが頭に?マークを浮かべたとき、ゲーム筐体の方から一際大きな歓声が沸き立った。
「ゲーム機で、神姫ばとるがタイヘンでバーンでドーンだよ。男の子がわんわんだよ~っ」
慌てるワカナの意味不明な説明に、シュンたちが頭に?マークを浮かべたとき、ゲーム筐体の方から一際大きな歓声が沸き立った。