【リレー小説企画】ゆっくらいだーディケイネ 第18話-3


「……………………それで、どうする?説得なんて無駄だぜ?ならさっさと帰った方が」
「こうするのよッッッッッッ!!!!!!!!!!!!」
 紅里はそう叫んで思いっきり全握力をもって拳を作り可燐の頬を殴りつけた!!!
虫故に体重が軽いのか可燐はそのパンチで大きく吹き飛んでいく。
「はっっ!!誰があんたに同情するだって!?ふざけんじゃないわよッ!!まだあんたにやられた傷残ってる!
 とにかく今まであんたをぶちのめすことだけを考えてきたわ!!!どうしてやろうかしら!
 揚げてイナゴのように竜田揚げにしてやろうかしらッッ!!ゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ!!!!!!!!!」
 それはもはや鬼子母神。優しさと恐怖に満ちた神の表情である。
そんな様子を影から見ていた伝子とまりさはその圧倒的威圧による恐怖で怯えてきっている。しかし可燐の方は頬を殴られながらもとてつもなく良い笑顔をしていた。
「あっっっははははははははははは!!!!いいじゃねえか!!!でもさ勝てるの!?針にびくびく怯えていたあんたがさ!!」
 その時の紅里の瞳には鋭さがあった。そしてその目で可燐を睨みつけながら紅里は上の作務衣を脱ぎ始めた。
「……………そう、これは「試練」よ。
 過去に打ち勝てと言う「試練」と私は受け取った」
「…………………?あんた、そんなに胸…………あった?」
「人の成長は……………未熟な過去に打ち勝つことだとな…
 え?あんたもそうだろう?ビーブーン・カーレーン!!!」
「びーぶーん・かーれーん!!!」
 脱ぎさると共に作務衣の下からりぐるが飛びだし、紅里はペンダントに一枚のメダルをはめ込んだ!!
『ユックライドゥ!!ディケイネ!!』
「いくわよっ!!!りぐる!!!」
 変身するやいなや紅里は続けざまに次のメダルをペンダントにはめ込む。
『ファイナルフォームライドゥ!!!りりりりりりりりりぐる!!!!』
「りぐるは!今こそ飛び立つよ!!!」
 すでに心の成長は果たした。りぐるは自分の未熟な過去と決別を果たすために今こそ戦う。
りぐるの体が光り、次々と幾つかのパーツになっていく。それは鎧、籠手、ブーツ、肩アーマー。
そしてそれら全てがディケイネに装着されて、ディケイネはまるで体付きゆっくりのようになった。
 緑色に光る鎧はかつての初代ライダーのように雄々しく輝いている。
「…………………さぁ主役の凱旋よ。」
『覚悟してね!!!』
 そしてディケイネは肩に付いていた赤いマントを首に巻き付けた。
「……………は、主人公も一緒で最初っからクライマックスという事カァ!!!いくぜぇ!!!」
 可燐は楽しそうに叫びながらポケットから一枚のカードを取り出す。
そして耳障りな羽音が突如森中に響きそうなほどの大音量となり可燐の姿は五つに分かれていった。
「分符『クイーン・B・B』!!」
 そして五つに分かれた可燐は赤い本体を中心に陣を取る。
「わたしの名前はビーブーン・サーレーン。どんな敵の中だって切り込んでいって見せよう。マゾ?それでいいのだ」
「私の名前はビーブーン・ターレーン。私じゃなきゃこの有象無象の集団を纏められないわ。でも分身体なのはご愛敬」
「ええと、私の名前はビーブーン・ナーレーンです。あんまり積極的じゃないけどみんなの為に頑張ります。〆ちゃいます。」
「私の名前はビーブーン・マーレーンですよ。コミュニケーション能力抜群。いつでも何処でも戦闘以外では引っ張りだこです。」
「そして私の名前がビーブーン・ハーレーン。サディスティックだけどなんか動く気しないのよね。でも言葉の刺でちくちく刺すわ」
「「「「「私たち!!ビーブーン突撃隊!!」」」」」
「相変わらずじゃかましいわっっっっっっ!!!!!!!!!!!!」
 一昨日も鳴り響いた5.1chサラウンドは今回もディケイネの耳をつんざいていく。
さらに妙な自己紹介が余計に紅里のかんに障った。紅里は頭を抱えて一度は気が滅入ったが顔を上げて可燐たちを見据える。
「…………行くわよ」
『わかったよ!』
 ディケイネは腰に装着されていた虫取り籠みたいな銃を構え、そのまま五人に向けて発砲していく。
可燐たちは本体を残して散り散りになり、本体もその弾丸をたった一本の指で跳ね返していった。
「ああ、何にも変わってないように見えた。成長してるの?」
 そして昨日と同じ様に可燐分身体達はディケイネの上空を飛び回りそこから弾幕を放っていく。
一見回避不可能のように見えるその弾幕だがディケイネは背中の羽を動かし真上に移動することで回避した。
「飛べるのか!」
「空はあんた達だけの物じゃないわ!!バグ!!シュート!!!」
 ディケイネは空を飛ぶと同時に銃の照準を分身体に向けて、発砲した。
銃身から放たれる弾丸は数こそ少ないが速度は通常弾幕の比ではない。だからこそ、高機動の蜂には効果がある。
「サーレーンとマーレーンは攻撃を続けて!ナーレーンは本隊の護衛をお願い!!」
「「イエッサ!!」」
 三つ編みの分身体の掛け声の通りに可燐たちは動いていく。
相手が空を飛べると分かった以上やたら弾幕をばらまくのは同士討ちの危険性がある。
なら出来るだけ少数で仕留めに掛かった方がいいと考えたようだ。
「ああもう!行動速過ぎよ!!」
 流石軍団と言うべきか。
可燐分身体達は空を飛んでいるディケイネを追い続けながら弾幕を放っていった。
「いつまで逃げ続けるんですか?いくら空を飛べても慣れないでしょうに」
「くぅっ!!バグ!シュート!!」
 ディケイネは逃げつつも弾丸を放ち応戦するが、速度を持った弾丸を持ってしても大量の弾幕に相殺されてしまう。
弾幕は相対速度がある故に避けるのは難しくなかったが速度の差もあってディケイネと可燐たちの距離は次第に縮まっていった。
「どうにかなんないの!?」
『これは蜂さんのスペカの中でもじょういにはいるほどのつよさだよ!!対策たててなかったの!?』
「…………………あ。」
 いままでずっと自分の恐怖について考えていたからすっかり忘れていた。
ここぞとばかり碌でもないことが起きる物だ。
「前はゴリ押しだった………でも一応仕組みは理解したつもりだけど」
「だったらはやくやろうよ!」
「仕組みが分かってもこいつら強すぎなのよ!!!!」
 と、そのように話し合っている内にいつの間にか視界から可燐たちが消えているのに気付き、ディケイネは空中で制止する。
「だから速いっつうの!!!」
「そら!!!」
 真下からの声に気付いた時にはもう既に弾幕がディケイネを襲っていった。
上昇しながら弾幕を撃っていたようでその速度は半端無く一発二発避けるのが精一杯であった。
「こ、この!!!!」
「………………………これが、チェックメイト」
 ディケイネの首に冷たいながらも肌のような感触が走る。
完全に後ろを取られた。真下からの弾幕に気を取られていた隙に可燐分身体の指がディケイネの首に触れていた。
この距離では逃げる余裕もない。その上ディケイネは例え一発であったとしてもこの零距離弾幕に耐えきれる自信は無かった。
「これが軍団。分かっていただけましたでしょうか?」
「『オープンゲット!!!』」
「なっ!!!」
 ディケイネの頭部と胴体が分解し迂回して逆に可燐分身体の後ろを取って再び合体する。
そしてディケイネは虫取り籠みたいな銃を可燐分身体の背中に押しつけた。
「形勢逆転ね」
「う、う、うあああああ!!それでは皆さん!私はこれまでです!ありがとうございました!!次回作も宜しくお願いします!」
「バグシュート!!!」
 二丁の銃が連続して零距離で発砲され可燐分身体の体を抉っていく。
そのまま分身体は力なく落ちていき、落ちていく過程において消滅していった。
「まず一人ッ!残る分身体は三人だッッ!!」
『え!?まず本体からやっちゃった方がいいよ!』
「いえ!分身体がいる状態じゃきっとアイツにダメージすら与えられないわ!
 一昨日見たのよ!分身体が全員やられたとき本体の色が変わるのを!きっとそう言うタイプのスペカなのよ!」
 それは敗北したときの記憶。かなり印象的であったため朧気ながらにも紅里の脳裏に焼き付いていた。
そしてそれがまるで事実であるかのように可燐たちは動揺の色を隠しきれていなかった。
「ああ、ばれちゃってるなら護衛は必要ないわね!ナーレーンちゃん!サーレーンさん!三人で行くわよ!!」
「「いぇすまいろーど!!」」
「………寂しいわ」
 本体が完全に蔑ろにして分身体はディケイネを囲むような形で襲いかかってくる。
一体倒したことによってある程度有利になるかと思われたが、逆に相手が本気を出して三人で襲いかかってきたため寧ろ不利になってしまった。
「相手の上を取れば同士討ちの危険は無いの!いくわよ!!」
 その命令に従って可燐分身体達はディケイネの上部に回り込む。
今度は真上に飛ばれないように三つ編みの分身体がディケイネの真上に配置していた。
「一斉照射!スタンバイ!?」
「「OK!!」」
「くぅ!!オープンゲット!!!」
 ディケイネは再び分離して弾幕のスキマをくぐり抜けていく。
そうしてまた可燐分身体の後ろを取るが既に察知され、可燐分身体はディケイネから距離を取る。
一応包囲状態からは脱出できた。しかし猛攻はこんな事くらいでは止まらない。
「私は上、ナーレーンちゃんは真ん中、サーレーンさんは下で攻撃よ!」
「「Yes!Yes!Yes!」」
 可燐分身体達は上下一列になって弾幕を放つ。ただでさえスキマが少なく速度が速い弾幕が全てディケイネのいるポイントで重なるように放たれたのだ。
避けるスキマが見つからず、また動いても状況そのものを変える事が出来ない。
 ディケイネは本格的にこの蜂妖怪の圧倒的パワーに恐怖した。そして目の前の弾幕に対し、覚悟を決めた。
その時ディケイネの前に何者かの姿が降り立つ。
『ユックライドゥ!!!!ディエーーキ!!』
『ユックライドゥ!!!るーみあ!!!』
『スペルライドゥ!罪符「彷徨える大罪」!!!』
 それは森定伝子、いや、ゆっくらいだーディエイキであった。
ディエイキはるーみあに乗ってディケイネの前に降り立ち、可燐たちに向かって弾幕を放っていった。
「!!!で、でんこ!あんた!」
「あんただけにいいかっこはさせないんだから!!あとでんこっていうな!」
 そして勢いよく放たれたディエイキの弾幕は、
全てが全て可燐の弾幕をすり抜けていった。
「へ?」
 いや、それどころかその弾幕はディエイキの体さえもすり抜けてディケイネに向かっていく。
さらに悪いことにディケイネはディエイキの体で視界が遮られたせいで弾幕に上手く対応することが出来ず、弾幕が見事ディケイネの顔面に被弾した。
「うぎゃぶ!!」
『ぎゃん!!!』
「……………………ええと………………………外した?」
 伝子はこの森に渦巻く仮想現実に対応することが出来ない。聞く事も出来なければ触ることすら敵わない。
だからいくら弾幕を放とうが罪を裁こうがHENTAIしようが可燐や可燐の放った弾幕にさえも一切干渉できないのである。
「……………………………」
 俯いて弾幕が当たった部分をさすりながらディケイネは含み笑いをしていた。ただし物凄く黒い笑い方だが。
そしてディケイネは顔を上げるとそのままその腕でディエイキをぐわしと掴んだ。
「もう二度と邪魔すんな!!今度家に来て家のゆっくり罰××罰していいから!!あと!」
「マジ!?じゃあもう二度と邪魔しない!!」
 やけに聞き分けが良くディエイキはそのままゆっくりとるーみあと共に地面に降り立っていく。
そんなディエイキを一瞥して視線を元に戻すと可燐たちは二人の様子を大いに笑っていた。
「さ、流石にこれはちょっと滑稽すぎというか、妙に聞き分けが良いのもまた……あはははは」
 かんに障るような笑い方では無かったがただでさえ邪魔されて腹が立っているディケイネは余計に苛ついた。
ディケイネは感情に身を任せ可燐たちを睨みつけながら怒りと共に銃身を向ける。
「……………ああもう、慣れないのよスペカ無しの戦闘は!」
 そうぼやいてディケイネは可燐たちと距離を取りながら弾丸を発射していく。
だが可燐たちはいとも容易くそれらを躱していき速度を緩めずにディケイネを追っていった。
「くっ!!」
 長期戦になるかもしれないけれどこの広い空間で戦うのは不利と感じたディケイネはそのまま森の中に突入していく。
可燐たちもそれを見てディケイネを追っていった。
「弾の数を少なくして精密射撃!いいわね!」
「わかりました!」
 可燐たちは少し速度を弱めて森の中に入るがそれでもディケイネを見失わずに追い続けディケイネとの距離の差は依然縮んでいく。
相手は小回りが良い上にこの森を知り尽くしている。ディケイネもそれなりの速度、小回りを持っているが可燐には到底及ばない。
逃げてる間でも可燐分身体達の弾丸と化した弾幕がディケイネを襲っていく。
「くっ!!オープンゲット!!!」
 ディケイネは分離して攪乱を目論むが弾幕は正確にディケイネに向けて発射され、可燐たちの前では全く無意味であることを思い知るだけであった。
そして何回か周りを迂回した後再び合体しディケイネは木々のスキマから空に向かった。
「追うわよ!!」
 三つ編みの可燐分身体を先頭に可燐たちは同じ様にそのスキマからディケイネを追っていく。
そして三人は距離があるにも関わらずディケイネの後頭部に向けて照準を合わせた。
「一気に高速弾で仕留めるわよ!」
「「わかった!!」」
「1・2・3・SHOOT!!!」
 一斉に三人の指先から弾丸が放たれ、空気を切り裂きながらディケイネの後頭部目がけて飛んでいく。
だが弾丸を放った直後、司令塔の可燐はディケイネの姿に違和感を覚え、そして気付いた。
「し、しまった!あれはディケイネじゃない!」
 そう、そのりぐるの体に乗っていたのはディケイネではなくディエイキだった。
三人が放った弾丸はそのままディエイキの体をすり抜けていく。ディエイキが可燐に干渉できないのと同様に、可燐もまたディエイキに干渉できないのだ。
「後で森に入ったときにりぐるに乗れって言われたから乗ったけど………これで良いのよね」
『ばっちりだね!!』
「ああ、りぐるちゃんに乗れて、し、あ、わ、せ~~~」
 気持ち悪く微笑んでいるディエイキを無視して可燐たちはディケイネの姿を探す。
あの身体無しに飛べないことは知っている。だから絶対何処かの地上にいるはずだ。
「引っかかったわね!!!私はここよ!!」
「!!!そこか!!!」
 地上からディケイネの声がして三人ともその方向に体を向ける。
と、そこで司令塔の可燐はまた不思議な違和感に襲われた。

  不意打ちするなら静かに行えばいいのに何故わざわざ声を出した?

 そしてその可燐は振り向くまでにその真意を読み取った。
しかし振り向いた頃にはもう遅いのだ。
「体も本体…………」
『ばぐしゅーとしゅーとしゅーーーと!!!!!!』
 りぐるの手元にある銃から放たれた弾丸は容赦なくその可燐の背中に襲いかかっていく。
背後からの攻撃に避けることも振り向く事も出来ず司令塔の可燐は羽を潰され地上に落下していった。
「み、みんな………頑張ってね……………」
「たーれーんさん!!!!!!!!!」
 何でこうみんな散り際の言葉残せるんだ?ディケイネは地上からその光景を見てそう思った。
「くっ!司令塔のターレーンさんがいなくなったら私たちはどう動けばいいのだ!」
「頑張ろうよ、何てったって私たちは分符『クイーン・B・B』で生まれた分身体だよ。
 名前通りちゃんと統制が取れ……………あれ?」
「その通りだ!私たちは統制が取れるぞ!いくぞ!!」
 分身体が次々消え去っていくというのにも関わらず二人は迷いもなく真っ直ぐりぐるに向かって弾幕を放つ。
りぐるはそれを舞いながら躱していく。ただ上にいるディエイキは支えが殆ど無いのでりぐるの上で揺さぶられていた。
「ちょっ!ゆれるゆれるぅ」
「りぐる!!!一度こっちに戻ってきなさい!!」
 そのディケイネの言葉に応えりぐるは大きく可燐たちから迂回してディケイネの元に戻ってきた。
りぐるが戻ってくるとディケイネはすぐにディエイキを叩き落としてりぐると再び合体する。
「ああんもっと乗っていたい!」
「まりさの所にでも行ってろ!!」
 ディエイキはもう用済みだぜ!てな感じに無視してディケイネは再び大空を舞い、二人の可燐の間に入った。
「わざわざ懐に入り込んでくるとは!いくぞ!!」
「あ、ええと、うん…………凄く不安」
 可燐達は二人同時に弾幕を放っていくがディケイネは慣れているのか機敏に動いて避けていく。
そして予想できたことだがその弾幕は互いに向かい側にいる方の可燐に命中していった。
「うひゃうん!」
「ひゃああん!!!!」
「全然統制がないわね!!行くわよ!!」
 二人が怯んだ隙にディケイネは腕を伸ばしてどっかのMSのように弾丸を放つ。
それは決定打にはならなかったが二人にかなりのダメージを与えたようだ。二人は被弾したところを抱えながらディケイネから距離を取っていく。
「……やっぱりおかしいよ、前はこんなざまにはならなかったよ。いまのはひどい」
「そんな苛めないでくれ………でも確かにその通りだ…………全然統制が取れない」
「……………設定が変えられてる……………」
 その発言にこの場にいる存在(でんこ除く)に少し反応した。
設定という言葉が皆の心に引っかかり辺りは羽の音しか響かない、そんな中ディケイネはふとあることを思いだした。
「……………統符だった、よね」
『…………だね』
 一昨日発動したときは『統符』だった。しかし先ほど聞いたばかりだと『分符』であったと思う。
『でも、それがなにかかんけいあるの?』
「名前ってのは大事な物なのよ。名前があるから存在が確認できる、名前は色々縛るとともに価値を与えるのよ
 そんな事、だと思うけど」
 統という名前の縛りが無くなったから、相手は統率が上手く取れなくなり今のこの状況がある。
 では、一体誰がその設定を変えたというのだろうか。紅里の頭に一人の女性の姿が浮かんだ。
「………………………稗榎……さん?」
『え、えのちゃん?』
「…………数文字くらいなら………出来るって言ってたよね、設定を変えること」
 この世界、この異変、目の前にいる敵は全てあの原稿用紙の上にある文字で成り立っている存在だ。
だからあの原稿用紙を名前だけでも修正すれば、全てが変えられる。
『でも!さっきはあの火花のせいで出来なかったよ!』
「きっと彼女は全力であの火花に耐えながらやってるんでしょうよ!くぅ!」
 あの稗榎さんと言えど猛烈な火花に何回も耐えられるとは思えない。
だからこれ以上の設定変更に期待することは無理そうだ。
「……………………りぐる」
『?なに、おねーさん』
「稗榎さんも全力で頑張ってる!!!だから私たちも全力で行くわよ!!!」
『……………………うん!!!!』
 ディケイネは羽を大きく奮わせておどおどしている可燐に向かって一直線に突撃していく。
それに対しその可燐はディケイネに向けて広角の弾幕を放つがその直後にディケイネは止まりその場所で発砲した。
「ああ当たらないぃ」
「もう何回も同じ様な弾幕ばっか見せられたらそりゃ簡単に避けられるっての」
 そしてディケイネの弾丸は次々とその可燐に命中し、何か言いたそうに涙を流しながらその可燐は空中で消滅していった。
「残るは一人!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」
 背後からの咆哮に気付きディケイネはその方向に向かって発砲する。
しかしその可燐は弾丸を腕で弾き散らしながらかなりの速度でディケイネに迫りつつあった。
「効くかぁ!こんなの!私たちを舐めるなぁぁぁぁぁぁ!!!」
「もう残る一人じゃん!!」
 ディケイネは何度も何度も発砲するも一直線に突撃することによってかなりの速度と力を持った可燐の前ではそれらはいとも容易く弾かれる。
そしてとうとう可燐はディケイネの懐に入りその指をディケイネの腰に押しつけた!
「十連弾幕砲!!!零距離斉射!!!」
「オープンゲット!!!」
 弾幕が放たれようとするその瞬間ディケイネは自らの上半身と下半身を分離させる。
飛行能力のない下半身はそのまま重力に引かれ落下していき可燐の弾幕はそのまま目標を見失い空に消えていった。
「ば、莫迦な!!」
「殴られないかとヒヤヒヤしたわよ…………でも、これで私たちの勝ちね」
 ディケイネは伸ばした手に握られた銃ををゆっくりゆっくりと動かし可燐の額に押しつける。
引き金を引く瞬間、可燐の表情がどこか悟りを開いたような、何故か悦としたようなものに変わっていったように見えた。
「………全然正義の味方っぽくない」
 そんな事つまらなそうに呟いてディケイネはほんのちょっと指に力を入れて引き金を引く。
消滅していく可燐分身体から目を逸らしディケイネは地面に落ちていく下半身を取りに行った。

 最後の分身体をやっつけたという事でディケイネは気が抜け達成感と共に一気に倦怠感に襲われる。
しかしこれでこのスペカが終わりというわけではない。まだ本体が残っている。
「出てきなさい!何処かにいるんでしょう!!」
「…………………よくもやってくれたわね」
 そのディケイネの呼びかけに応え森の中から一人の蜂が出てくる。その色はかつての危険の赤ではなく警戒の黄色であった。
「……予想は当たったわよ、りぐる」
『本当だね』
「あら、何を言ってるのかしらこれは所謂脱色よ。無敵の力は変わって痛ッッ!!!」
 ディケイネの銃から煙が上り、可燐の膝に弾痕が出来ていた。
可燐は傷ついたところを抱えながら鬼気迫るおぞましい形相でディケイネを睨みつけた。
紅里の予想どおりあれほどの無敵能力はもう持っていないようだ。
「もう一つのスペカにだらだらやるのもメンドイのよ!!最後は一気に行くわよ!!!」
「あとでこの借りは全て返すわよ…………この」
 可燐は発狂弾幕並の弾幕をディケイネに向かって放つ。
だが多方向からの弾幕に慣れきっていたディケイネにはそんな物easyクラスの物しか思えずスキマを器用にくぐり抜け攻撃していった。
「きゃあああああん!!!!!!!!!!」
 避けることもせず可燐は弾丸を全身に受けまくってそのまま地上に落ちていく。
 このあまりにも長く、そして強固であったスペルカードもようやく終焉を迎えた。
「………………ふぅ…………」
 紅里はかつて無い安心を得ると共に激しい疲労に襲われる。
トドメ用に使っていたファイナルフォームライドをこうも長きにわたって使い続けたのだ。
まだ戦えることには戦えるがいつまで保つかさえも分からない。
「………………カ、ァ!!!やってくれたじゃねーか!!!このやろー!!」
 再び可燐は空を飛びディケイネと向かい合う。髪型も口調も元の可燐に戻っているからどうやら本当にあのスペカは終了したようだ。
「……いい気になるなよ、私はまだ戦える」
「そ、私達だって戦えるわよね」
『まだまだ頑張れるよ!!』
「……………は、は、ははははははは!!!!!!!!!」
 可燐は突然大声で笑い出しディケイネからある程度距離を取る。
中距離と言えるような所で可燐は止まりそこで尻の針をディケイネに向けた。
「…………………」
「試練って言ったよな……じゃあ大切な物はちゃんと克服できるのかぁ?この針をよぉ」
「……………………撃ってみなさいよ、このハチ女」
 ディケイネはそう言うが針が向けられてから体は震え始める。
所詮虚勢に過ぎないのだがそうでもしないと恐怖そのものに押しつぶされてしまうのだ。
「毒符『ヘルニードルカノン』」
 何の言葉も躊躇いもなく、しかめ面をしながら可燐は尻に付いていた針をディケイネの顔面に照準に合わせ発射した。
それに対しディケイネは体を震わせはするものの避ける行動を一切しない。
「ま、任せるわよ。りぐる」
『ゆっくり了解したね!!!』
 この針が威嚇でないことはディケイネも承知している。恐らくこの針はディケイネに眉間を正確に射ることだろう。
だが針はディケイネの間合いに入った瞬間大きく逸れディケイネに当たることなく彼方に飛んでいった。
「ナニッ!!!このっっっっ!!!」
 可燐は驚き次から次に針を発射する。それらは全てディケイネの急所を狙って発射されたがやはり先ほどと同じ様に大きく逸れていった。
「……………刺さるのが怖いなら……当たらないようにしてもらえばいいのよ」
「………………てめぇ………それは………りぐるの力か?」
『そうだよ!!!』
 注意して見なければ分からなかった。あまりにも速く、そして小さい虫たちがディケイネの周りを回っていたのだ。
「りぐるの能力で………虫たちに弾道を逸らさせて貰ったわ……私は震えて何も出来ないけどりぐるなら大丈夫よ」
『虫さん達頑張ってね!!!』
「……………はっ!頼り切りで何も出来ないのかよ」
 ほんの少し興ざめしたような顔をして可燐はディケイネを見つめる。
その言葉と視線に少し物怖じしながらも、ディケイネは口を開き可燐に向かってこう言った。
「そうよ、仲間って………助け合うものでしょう?」
 誇らしげな顔をしてディケイネは手を震わせながらも銃を構える。
震えて正確に照準を合わせることは出来なかったけれど、それでも引き金を引いた。
「うぎゃっ!」
 銃から放たれた弾丸は針によって相殺されることなく可燐に命中し、可燐はその衝撃で大きく吹き飛んだ。
「……………結局、恐怖なんて、ね」
 恐怖の克服のことばかり考えていた今日は一体何だったんだよ、とディケイネは自嘲した。
こんなことならちゃんとスペカ対策しとけば良かった。マジで。
「だぁ!ケツに向かって撃つなんてどうかしちゃってるんじゃねぇの!?」
「あんたがケツ向けてるからいけないんでしょうに」
「あーもう怒った。今から本気!まじだぞ!!!」
 そう子供っぽく喚き、可燐はポニーテールを逆立てながら服のポケットから一枚の札を取り出した。
「正義直『火憐蜂』!!!!」
 なんの愛着もなく宣言しただけでその札を捨て可燐は今までと違った体勢を取る。
間違っても弾幕を撃つような構えじゃない。強いて言うなら、そう、格闘技をするときのような構えだ。
「………………」
 でも空中で格闘なんてするはずがない。ディケイネはそう思ってあまり警戒をしなかったが次の瞬間可燐は高速でディケイネの真上に移動し
両腕を振り上げ一気にディケイネを叩き落とした!!
「ぎゃあああ!!!」
 そのままディケイネは羽を動かすこともままならず地面に落ちていく。
胴体部分の体重が軽いから地面に落ちたときの衝撃はそう激しくはなかった。
ディケイネは追撃があると思ってそのままその位置から離れた。 
「が、がぁ!!」
「ははは、大丈夫か~生きてるか~」
 可燐はそのまま追撃はせずそのままゆっくりと地面に降り立っていく。
そして地面に足を付け再び格闘技のような構えを見せた。
「今朝言ったよな、虫ってのは自分の何倍もの重量を運べるパワーがあるってな」
「でもそれは数の前にはそれさえもって………」
「かぁ!!分かってないな!そのパワーを持った軍団がいたら!!どうなると思う!?」
 そう言い放って可燐はディケイネの前まで大きく跳躍し拳を勢いよく振り上げる。
ディケイネは紙一重で回避することが出来たがその拳は地面を震わせ、衝撃でディケイネは宙に吹き飛んだ。
「うそッ!?」
「もらったァ!!!」
 可燐は宙に浮いたディケイネの体目がけて拳を突き出す。それに対しディケイネは空中でガードの体勢を取り可燐の攻撃を何とか防いだ。
ただ勢いは殺しきれずそのまま背中を前に空を飛ぶように吹き飛んでいった。
『いたいよ!!!』
「あ、ごめ……」
「まだまだまだまだまだぁ!!!!」
 なんと可燐はディケイネが吹き飛ぶよりも速く空を飛び、再び両腕を振り上げディケイネを叩き落とす。
今度も腕で防ぐことが出来たがやはり勢いは止まらず地面にぶつかる。何故かは知らないけど背中の方を地面に向けていたはずなのに頭の方から落ちた。
「ちょ!!りぐる!!」
『もうかんべんしてよ!!』
 腕でガードしたと言っても腕そのものがりぐるなのだ。つまりりぐるにとってはガードでも何でもなく、ダメージをダイレクトに喰らっていることとなる。
頭から落ちたのもりぐるの自己防衛手段なのだろう。
「……………でも二発も耐えたってことはそれなりの防御力はあるって事ね」
『でもこれ以上やるとりぐるも怒るよ!』
 ディケイネは起き上がりすぐさま可燐からかなりの距離を取る。
このスペルカードは完全に近距離に特化している。予想だが絶対弾幕は撃ってこないだろう。
「……りぐる………あんたも、虫よね」
『そうだよ!!きらきらかがやく蛍さんだよ!!』
「なら、頑張れるわよね。格闘戦」
『ゆっっ!!!そんなの!』
 りぐるの不安が体を通して伝わってくる。誰だってあの規格外の蜂と近くで戦いたくない。
でもそんな不安は何処かに捨て去れ。戦いに赴くとき覚悟は決めたはずだ。
「……………ここが正念場、これでヤツを倒せばきっと勝てる!!」
『……………ほんと?』
「私を信じろ、おまえをしんじてやつをしんじ………ええと。とにかく!!全力全開で行くわよ!!!」
 そのうろ覚えで適当な言葉でりぐるも完全な覚悟を決めたようで可燐と同じ様に格闘戦の体勢に入る。
だが可燐はいっこうに近づく気配もなくただ拳をそのままワケもなく突き出している。
「………………………?」
「はあああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
 可燐はその体勢のまま地面が揺れるような雄叫びを上げ、空気が震えるくらい羽を動かしている。
ディケイネはその光景を見て果てしない危機感を覚えた。
「避ける準備を…………」
「おらあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
 そして可燐はディケイネに向けて一直線に拳を突き出して突撃してきた。
その速さは風そのもの、近づいてくるのに気付いた頃にはもう二人の距離の半分まで迫ってきていた。
「オ、オープンゲット!!!」
 焦りからディケイネは分離し、その直後二人の間を可燐の拳が通り抜けていった。
少しでも反応が遅れていたらあの拳に完全に体か頭部、もしくは両方破壊されていただろう。
「ぬおっ!?」
 可燐の拳は木を一本貫通したところでようやく勢いが止まった。
そして難なく木から拳を引き抜き、怪しげな笑顔でディケイネの方を見る。
「………やばいわね」
『こ、こわいよ!!はやくたおしてかえりたいよ!』
「でも攻略法は見えた。分離したらアイツの側面に向かって一気に銃をぶっ放しなさい!」
 あまりにも力に任せた暴力的な攻撃だが直線的で小回りがきかないことが弱点だ。
そこをつけば簡単に打ち崩せる、と思った矢先可燐は先ほどとは違った構えを見せた。
「おい、一つだけ言ってやるよ」
「……何よ」
「あたしの必殺技は193個まである!!」
…………………………………………………そのあまりの多さに言葉が出なかった。
なんて設定考えてるのよ、稗榎さん。
 可燐はその場で大きくドリルのように回転し始めその矛先を私たちに向ける。
羽の音が回転の音と共にいつもよりけたたましく森中に鳴り響く。私たちはその異質さに今までにない恐怖を覚えた。
「必殺技その11!腕勇破幻影!!!」
 その言葉が羽の音と重なり可燐は再び私たちに向かって回転しながら突撃してくる。
先ほどの攻撃とは違って体全体を武器にしてるため攻撃範囲が異常に広い。その上速度は先ほどとあまり大差がないのだ。
『あ、あ、分離じゃ………にげられな……』
「諦めんじゃないわよ!!覚悟決めなさい!!」
『スペルライドゥ!蠢符「リトルバグ」!!!』
『!?スペルカードじゃ相殺できないよ!!!』
「いいから!!」
 ディケイネから放たれた弾幕はそのまま一直線に可燐に向かって飛んでいく。
だがその弾幕はあのボムバリアによってすぐに掻き消されてしまった。
 そう、それが狙いなのだ。
「跳ぶわよ!!痛いと思うけど我慢しなさい!!」
『え、え、ええええ!??!』
 何を血迷ったのかディケイネは回転してくる可燐に向かって跳んでいく。
そしてまだ残っていたボムバリアに体を打ち付けてそのまま可燐の後ろに吹き飛んだ。
 ダメージはあったがこれでいいのだ。あの回転に巻き込まれたらただでは済まない。
だからわざとスペカを放ちボムバリアを形成させそれを盾代わりにしたのだ。
 だが後ろに跳ぶ瞬間、ディケイネの背後にあった木の陰に変身を解いた伝子とまりさがいたのが目に入りディケイネの背筋に冷たい物が走った。
「でんこーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!まりさを地面に置いてふせてええええええええええ!!!」
「え、ああ、わかったけど……」
 ディケイネの言うとおりに伝子がまりさを地面に置いた瞬間、伝子の背後にあった木は文字通り『木っ端微塵』となった。
「…………………え?」
「うわあああああああああああああああああ!!!まりさのサイン入り帽子がぁぁぁぁ!!!」
 可燐の体は回転を続けながら伝子の体を貫いていた。
まりさも地面に置かれたおかげで直撃は免れたようだが帽子は回転に巻き込まれ見事に襤褸切れとなってしまった。
「………………な、何が起きたのよ。何が起こったのよおおおお!!!!」
「あーあー、触れなくて良かったなぁ」
 可燐はようやく回転が止まり切り株と成り果てた木の上に立ち、狼狽え続けるでんこ達を気にせず再びディケイネの方を向いた。
「しかし羨ましいくらい頭の切れが良いなぁ、こりゃ大技はダメだな」
「…………………」
 常人ならもう何回も逃げ出したくなる状況だろう。しかしディケイネはその感情を一心に押し込めた。
架空と言ってもあのゆっくり達のために、自分の物語に苦しめられる稗榎さんのために、そして愛すべき同居人れいむのために。
クソゲーをやり続けた紅里にとっては!こんな事ではへこたれないのだ!!!
「掛かってきなさいよ!ピルナス!!」
「あんなロボにもならないボインと一緒にすんじゃねぇ!!」
 可燐は大きく跳躍しディケイネの目の前まで迫り拳を振るう。
それに対しディケイネは一歩退いて躱すが可燐は続けて攻撃をし続ける。
「ああもう!!全然手応えがないんだよ!!!弱い物イジメしてるようでさ!!」
「今までそれを続けてたんでしょうに!!!」
「仕方ないだろ!!!それもこれもあんたのせいだよ!!!!!!!りぐる!!!!」
 その言葉にりぐるは一瞬だけど動きを止める。その隙に可燐は足を広げ一気に二人を挟み込もうとした。
「必殺技その77!!ホッチキス・クラブ!!」
「ぐっ!オープンゲット!!」
 ディケイネはそれを上半身と下半身を分離させることで回避したが上半身を可燐に捕まれてしまった。
「いい加減ウザいんだよッッ!!その分離!!」
 そして可燐はそのまま手をぐるぐる回して一気にディケイネを地面に叩きつけた。
「ぐぎゃああああああああああ!!!」
「あたしはなぁ!!!もっと強いヤツと戦いたいんだよ!!だからあの腐ったような物語をとっとと終わらせたかった!!
 そのためなら喜んでゆっくり共を病気にしてやる!!」
「かぁ………かぁ………そ、れは……もうBADEND………よ」
「じゃあ誰がハッピーエンドにしてくれるっつうんだよ!!
 それにこの物語じゃハッピーエンドだとあたしが死ぬじゃねぇか!!あたしはまだ死にたくない!!」
 ………………………根本的に悪い奴じゃない、あんな事言ってたけどやっぱこいつも被害者なんだ。
ディケイネは薄れゆきそうな意識をフル稼働させて下半身を動かし可燐に攻撃を加えた。
「くそっっ!!!!!」
「…………ハッピーエンドとかバッドエンドとか…………そうじゃないのよ…………
 『ゆっくりエンド』………皆がゆっくりできるそんな終わり方を……目指してる」
「………………………こんにゃろうがああああ!!!そう言うことはあたしに勝ってから言えぇぇぇぇぇ!!!!!!」
 可燐は腕を振り上げて上半身に拳を振り下ろしたがディケイネはそれを躱し再び下半身と合体した。
そして可燐の懐に入り込み拳を可燐の土手っ腹に突き上げた!!!
「………………………………………ぐ」
「虫の装甲をなめんな、あんたの攻撃なんてへでもない!!!」
 最強クラスの攻撃力、防御力、速度。故に最凶最悪。
可燐はその体勢のままディケイネを遠く蹴り飛ばした。
「ぎゃあああ!!!」
「あたしは!!こんな所じゃ終わらないんだよ!!!」
 そして追撃を掛けるように可燐は両手を手刀の形にしてディケイネに振り下ろした。
「必殺技その78!レイニーギロチン!!!」
 ディケイネはその両手のスキマにちょうど入りこむようにその攻撃を躱す。しかし先ほどと同じ様に地面に衝撃が走りディケイネの体が宙に浮いた。
「とりゃああああ!!」
 しかしディケイネはその宙に浮いたのを利用して可燐の顔を蹴りその反動で再び可燐から距離を取った。
『スペルライドゥ!灯符「ファイヤフライフェノメノン」!!』
「効かないんだよ!!その攻撃が特大であればあるほど!!私の巣のバリアはそれに比例する!!」
 その言葉の通りディケイネの放った弾幕は可燐のボムバリアに全て防がれた。
しかしその隙にディケイネは可燐からほどよい距離を取ることが出来た。
「………ふぅ、最凶最悪だけど、最強で無敵ってわけじゃないようね………」
『………体への攻撃は全然効かないよ、やるなら関節だよ!!』
「だめよ、きっと関節に対しての攻撃はあっちもナーバスになってる。でも逆に言えばそれ以外への攻撃は手薄なのよね」
 先ほど腹に攻撃が当たったのもそれがあるからだ。
でもりぐるの言うとおり関節以外の打撃攻撃はほぼ効かないと言っていいだろう。
「弾幕は効くんだけどね………ねぇりぐる」
『何?おねーさん』
「もう一回、アイツの懐に入れる?」
『ねーよ』
 一蹴されてしまった。でも紅里本人は至って真面目である。
「お願い、これが最後だから」
『最後最後詐欺だね!どうせ次のスペカがあると思うよ!』
「いや本当に終わらせるから!!」
「何ごちゃごちゃ言ってんだよぉぉぉ!!!」
 可燐は空気を読んでとりあえず黙っていたがとうとう痺れを切らし二人に迫ってきた。
「お願い!!!」
『………………分かったよ!!』

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最終更新:2009年10月27日 19:46