ゆっくらいだーディケイネ 第19話-1

むか~し、昔、どこかの山奥のそのまた奥にある深い森の中で一人の女の子が暮らしておりました。

女の子はまえは魔界、と言う世界で平穏な暮らしをしておりました。

しかし、人間界からやってきた人間二人と悪霊と妖怪にコテンパンにやられてしまいました、

そして彼女は彼女らに復讐するために人間界へとやってきたのです。

…しかし、彼女とその人間達の実力の差は正に天と地の差、

その差を埋めるために森にこもって必死の思いで魔法の修行をこなしているのですが…。


「…う~ん、でろっ!炎ッ!」

ポッ。

「…だめだぁ、こんなマッチみたいな炎じゃあ枯れ草一本燃やせないよ…。」


…見ての通り、成果は芳しくないようですね。

もう日が暮れてきたので女の子は今日の練習を引き上げておうちに帰ろうとします。

しかし…。


「…う~ん…。」


その途中で、変な女の人が倒れていました。

胸も背もおっきくて、短めの黒髪が特徴の女の人です。


「…あ、あの大丈夫ですか。」


一見冷たいようで居て、目の前で困っている人を放っておけない性分のその女の子は
その女の人に話しかけました。

「…助けて…何だか力が出ない…。」

「お腹好いてるんですか?今すぐ食べ物ならもって来れますけど…。」

「違う、お腹がすいてるんじゃない…。」

「え?じゃあ怪我してるの?じゃあ傷薬を…。」

「…それもいらない…。」

「じゃあ何を持ってくれば…。」

「…ゆっくりを…。」

「え?」

「ゆっくりをつれて来てぇえええええ!ゆっくり分が切れたのよぉおおおおおお!」

その女の人の奇声を聞いて、女の子は少し引いてしまいました。




ゆっくらいだーディケイネ

第19話「ゆっくらいだーディロリス!?」




山の奥の奥のほうに、その人々から忘れ去られた神社があった。
その神社は人が立ち寄らない所に立っているのに、寂れてはいるがボロボロにはなっていなかった。
なぜかって?その理由は簡単。
その神社に、一応人が住んでいるからだ。

「…ふう、境内の掃き掃除終わり、お茶にしましょ!」

紫色の長髪に赤いリボンをつけた少女は、神社の境内を掃除し終わった所だった。
いかにも巫女としか良いようの無いその格好から、彼女がこの神社に住んでいる巫女であることは容易に想像が付くであろう。
掃除を終えた彼女は、お茶にしようとして神社の方へと向かっていく。
そして、賽銭箱の傍を通り過ぎようとして、ふと賽銭箱のほうを振り向いた。

「…?」

彼女は賽銭箱に違和感を覚え、賽銭箱のほうをじっと見つめた。
人が来ないせいでいつも空っぽの賽銭箱、
しかし、彼女は今この賽銭箱から妙な違和感を感じていたのだった。

「…賽銭箱に…何か居る?」

そう思った彼女は賽銭箱を覗き込もうとした。
その次の瞬間。

「…どっせぇええええええい!」

バコォオオオン!

やたらと気合の入った声と共に、賽銭箱の蓋が吹き飛んだ!
「がはあっ!」
少女の顎に賽銭箱の蓋が直撃、少女、吹っ飛ばされた~!

「…あ~やっとでられた。」

「良かったね、おねーさん!」

「ドアを開けたら変なもので塞がれてたときは、どうしようかと思ったぜ!」

蓋が吹っ飛んだ、賽銭箱から出てきたもの、
それは、眼鏡をつけて裟務依を身につけた女と、生首としか良いようが無い二組の物体であった。


「それにしても、ここは一体何処なの…?」

「パッと見、どこかの神社みたいだぜ。」

「あ、見て、誰か倒れてるよ!」

「え?」

女はそう言って生首の声がするほうを見る。
…どう見ても巫女さんにしか見えない少女の上で生首が飛び跳ねていた。
「おお、巫女さんだぜ、何で倒れてるんだ?」

「…なんか、嫌な予感がするんだけど。」

女の予感は的中する。


ムクリ。


「ゆゆっ!?」

少女が、ゆっくり起き上がった。
その弾みで地面に転がり落ちたな生首を無視して、少女は女に近づいていく。
…この時点で、女は嫌な予感しかしていなかった。


「…あの…。」


女は、恐る恐る少女に話しかける。


「悪霊退散!」


次の瞬間、女は、問答無用で物凄い弾幕に襲われた。


~☆~

その頃、森の奥にある一軒家では。

「…ほふぅ~堪能~…ハァハァ。」

ベッドの上で黒髪のショートヘアの女性がクッションを抱きしめていた。
…いや、正確に言うなら抱きしめているのはクッションではない。
生首のお面が被せられたクッションだ。
「…え~と、それで良いんですか?」
そんな女性の様子を椅子に座りながら眺めていた金髪の少女は恐る恐る黒髪の女性にそう問いかけてきた。

「ええ、お陰で何とか助かったわ、ありがとう、アリスちゃん。」

黒髪の少女は金髪の女性――アリスに向かってお礼を言った。
「それにしてもこのお面、ホントにうまくかけてるわね、後で持って帰っても良いかな、このお面。」
黒髪の女性はクッションに取り付けられたお面を見て感心している。
「え?そうなの?私は出来るだけウザ可愛い生首を意識して描いただけ何だけど…。」

「あんな抽象的な説明だけでこれだけ見事なゆっくりが描けるなんてたいした物よ。
 あなた、そっち方面の才能があるわよ、溢れてるわよ。」

「そ、そうなんですか?」

褒められて嬉しそうな顔をするアリス。
…と、そこでありすは肝心な事をまだ聞いてない事に気づいた。
「…あ、ところであなたは…誰?」
森の中で倒れていた黒髪の女性、
とりあえず、助けなくちゃと家に連れてきて介抱はしたものの、肝心の素性は聞いていなかった。
アリスの問いかけに、黒髪の女性は答える。

「私?私は伝子、ゆっくりを求めて世界を渡るゆっくらいだーとは私の事よ!」

…黒髪の女性の答えを聞いて、アリスは首をかしげた。

「…ゆっくり?ゆっくらいだ~?何ですかそれ?」

「え!?あなたゆっくりの事知らないの!?」
アリスの言葉を聞いて信じられない顔をする伝子。
「見たことも聞いた事もありません。」

「ホントに知らないの!?あの愛らしくて可愛くて抱きしめると肌触りがモチモチしていて思わずキスしたくなるあの生き物を!」

「…とりあえず、あなたがその生き物の事が好きなのはわかりました。
 それもおかしいんじゃないかって思えるくらいに。」

「…むう、まさかゆっくりの事を知らない人がいたなんて…
 これはゆっくり愛の伝道師としては見逃しておけない展開ね!」

「…あの、何言ってるんですか?」

アリスの言葉を無視して伝子は何か考え事を始めている。
「…どうすれば、ゆっくりの魅力を伝えることが出来るのかしら…。」
時折、そんな事をブツブツと呟いている。
「どうしよう…やっぱり助けるのはやめて放って置けばよかったのかな…。」
後悔するアリス、しかしいくら後悔しても失った時は戻ってこないのだ、
頑張れ、アリス!

「あ、そうだわ!あの手があった!」

…と、突然伝子が立ち上がってポンと手を叩いた。
「…何を思いついたんですか?」
嫌な予感があったがアリスは恐る恐る伝子に問いかけた。

「アリスちゃんだっけ、これからあなたに良いものを見せてあげるわ。」

伝子は、にっこりと笑ってアリスにそう言った。


~☆~


とりあえず、伝子とアリスは家の外に出た。
こうして並んでみると、伝子の方がアリスよりはるかに背も胸も大きなことが解る。
「…あの、何するんですか?まさか怪しいことするんじゃ…。」
アリスが不安げな表情で伝子にそう問いかける。
「そんなんじゃないわよ。」
伝子はそう言って胸の谷間からある物を取り出した。
それは、変わった造形が施されたキーホルダーであった。

「これからあなたに、ゆっくりと言うものを見せてあげるわ。」

伝子はそう言って、一枚のメダルを取り出した。


「変身!」


キーホルダーを開く、メダルをはめ込む。
「ディ・エィーキ!」
キーホルダーを閉じると、機械的な声と共に伝子の身体が光に包まれた。
「きゃっ!」
その眩しさに、アリスは思わず目を閉じてしまう。
…暫くして目を開けると、そこには伝子の姿が無く、変わりに



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         //出\\   
    、 ー| l 永  | |‐-.,,_        
  iv::||ヽ::| l 器  | | / ||:::゛''‐ ..,_/| 
   |,r'二ハ二ハ二7ニトァ-r_::::::::/::::::|  
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  [>|| :|| :||_O_.|| :|| :|| :||:゙i:::゙i':-<i/ン. 
  ヽ j||-||-||-||-||-||-||-||ヘ:'J!、::゙iiY .  
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    |::人   ヽ _ン    ハ::!゙i:::::'/   
  |:::ノ >., ,_____ 、, <イ;_トノ.       

変な生首が置いてあった。
「見参!ゆっくらいだー、ディエイキ!」
しかも喋った、動いた。
「きゃああああああ!?」
アリスは思わず後退ってしまった。

「何よ、そんなに驚かないでよ…。」

アリスの行動にショックを受けて落ち込むディエイキ。
「そ、その声…もしかして伝子さん?」
声を聞いたアリスはディエイキの正体に気が付いた。

「他に誰が居るって言うのよ。」

「え?で、でも…身体は何処に言ったのですか!?」

「例外はあるけどゆっくりってのはこんな生き物よ、で、本番はこれからよ!」

ディエイキはそう言うと、キーホルダーとメダルを取り出した。

「そ、それってどうやって持ってるんですか?手も無いのに…。」

「さあ?そんな細かいことは気にしたこと無いからわからないわ、とにかく、良く見ていなさいよ!」

ディエイキはキーホルダーにメダルをはめ込んだ!

「ユックライドゥ!れれれれれれいむ!」

キーホルダーから声が聞こえたかと思うと、光の弾がキーホルダーから飛び出した!

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  'r ´          ヽ、ン、
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 レリイi (ヒ_]     ヒ_ン ).| .|、i .||
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  L.',.   ヽ _ン    L」 ノ| .|
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   レ ル` ー--─ ´ルレ レ´

「ゆっくりしていってね!」

次の瞬間、アリスの目の前にまた別の生首が現れた!
「どう?これがゆっくりよ!」
ディエイキは誇らしげにそう言った。

「これが…ゆっくり…?」

アリスは恐る恐る、現れたゆっくりに近づく。

「あの…始めまして…。」

「…。」

「…な、名前は?」

「…。」

「何処から来たのかな…。」

…アリスはゆっくりに話しかけてみたがゆっくりは無言のまま、何も答えない。
「…?」
ゆっくりを持ち上げて降って見たけど、やっぱり何の反応も示さなかった。

「…あ、忘れてた。」

「え?」

アリスの様子を見て、ディエイキは何か思い出したような発言をする。

「そいつ、喋りもしないし、何の反応もしないから。」

「え?そうなんですか?」

「本物のゆっくりなら何か反応するんだろうけど、そいつは私が生み出した偽者のゆっくりだからね、
 残念ながらそのゆっくりには意思ってものが無いのよ。」

言われてみればこのゆっくり、目に光がこもっていない、まるで人形かぬいぐるみのような目だ。

「じゃあこのゆっくりは動かないんだ…?」

「そうでもないわよ、こいつに自分の意思は無いけど、その代わり、命令すれば何でも聞いてくれるの
 れいむ、踊りなさい!」

「ゆっ!」

ディエイキの命令を受けて、それまで何のリアクションも示さなかったゆっくりが激しく踊り始めた!
「うわ、凄い凄い!」

「凄いのはこれだけじゃないわよ。」

ディエイキはまたメダルを取り出した。

「アリス、危ないからゆっくりから離れていなさい!」

「え、あ、はい!」

ディエイキの忠告を受けてアリスはゆっくりから距離をとる。
それを確認してディエイキはメダルをキーホルダーにはめ込んだ!

「スペルライドゥ!れれれれれいむ!」


霊符「夢想封印!」


またも光の弾がキーホルダーから飛び出したと思ったら次の瞬間、光の弾はゆっくりに吸い込まれる!
「ゆっくりしね!」
ゆっくりがそう叫ぶと同時に体中から大きな白い弾が幾つも飛び出した!


ドガガガガガガガガガガガ!


「キャッ!?」


音と光に驚いてアリスは思わず頭を抱えてしゃがみこむ。
ゆっくりから飛び出した光の弾は周りの木々を一気に吹き飛ばした!
「…ス、凄い…。」
音と光が収まったのを確認し、アリスは恐る恐る顔を上げた。
そして彼女は驚愕する。
ゆっくりの周りの木は全て吹き飛んでいたのだから。


「まぁ、これはあくまでもこのキーホルダーの力でゆっくり全員が出来ることじゃないんだけどね…。」


ディエイキはそう言ってキーホルダーからメダルを取り出す。

しゅうぅううう…。

ディエイキから煙がでたかと思うと、その姿は元の伝子の姿に戻っていた。
それと同時に、ディエイキが呼び出したゆっくりも元のメダルに戻っていた。

「さて、これでゆっくりの事がよく解ったかな?」

伝子はアリスにそう問いかける。
「…ええ、良く解りました。」

「そう、それならお姉さんも頑張った甲斐があったわ!」

「…あの、一つ聞きたい事があるんですけど。」

と、アリスは伝子に質問を投げかけてくる。
「ん?何かしら?」
伝子はアリスの質問に耳を傾ける気満々のようだ。

「あのゆっくりって何匹も呼び出すことが出来るんですか?」

「う~ん、三匹までなら呼び出した事があるんだけど、それ以上は解らないわ。
 まぁ、やろうと思えば、百匹位は呼び出せるんじゃないかな。」

「呼び出したゆっくりの強さは?」

「さあ、種族によってまちまちだと思うけど…でもま、そんじょそこらの連中には負けないわね。」

「ディエイキって、誰でもなれるんですか?」

「…ん~キーホルダーがあれば誰でもなれるんじゃないかな~…って言うかさっきから変な質問ばかりね。」

「あ、ごめんなさい!どうしても気になったものだから…
 それより、お腹空いていませんか?」

「え?」


ぐぅ~…。


次の瞬間、伝子のお腹が派手に鳴り響いた。
…相当空腹になっていたようだ。
「…え~と、何か食べさせてくれないかな?」
伝子はアリスにそうお願いした。
「あ、良いですよ、じゃあ一旦お家へ戻りましょう!」
そんなこんなで家のもどって行くアリスと伝子。
先に歩いていく伝子の後をアリスがついていく。
アリスは伝子の背中を見て、ある考え事をしていた。

(あのキーホルダーさえあれば、魔界を滅茶苦茶にしたあいつらに復讐できるかも・・・!)

そう言ってアリスは実に怪しく微笑んだのであった。


~☆~

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最終更新:2009年10月10日 00:54