時の滞在者達

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 戦場や船上。旅の終着点。平和な日常。過去。未来。

 神の創り賜うた聖域の中から果ては地獄の釜の底まで

 時も世界も分け隔てなく、この場にいる彼等は出会う事の無かった筈の者達────────





 しかし気が付けば、皆一様にこの寒々しい日の光も届かない海底のような暗闇に立ち尽くしていた。何故こんな場所にいるのだろう?
 幾ら思い返した所で全く検討がつかない。知覚出来るのはせいぜい戸惑いや憤怒の声、或いはただただ不満気な吐息が吐き出される音……
 そしてそれ等の協奏曲が示唆する大勢の人々の存在と、この場の異常さぐらいのもの。
 不意に薄明かりが点された為に、ようやく周囲の認識が出来るようになると、どうやらここは広めのホールのような場所らしい事が解る。
 観客席こそ取り払われているが、舞台に垂れ幕、舞台照明と来ればここは劇場なのだろう。
 壁面からの間接照明は優しく観客達を照らし、スポットライトは時代錯誤も甚だしいモーツァルトのような長髪と
 全身白尽くめの格好をした男を鮮明に映し出していた。
 そいつは軽く叩いてマイクテストを行ったあと、こう切り出した。

「一先ずは突然の招待に対して非礼を詫びよう。私の名はファニーバレンタイン、一国の主とだけ言っておこう」

 案内役と思しき男は紳士的な一礼をした後、姿勢良く身なりを正し、真っ直ぐな眼差しで声高々に謳いだす。


「神をも恐れぬ大罪人達よッ!!君等を呼んだのは他でもないッ!!今からある催し物に参加してもらうためだ…………
 殺し合い、所謂『BR(バトルロワイアル)』というやつにな」





* * *






「たいした度胸だな、始める前にテメェが殺られるとは思わなかったのか?」
 乱暴な誰かの怒声を皮切りに、他の者達も騒ぎ立て始めた。罵詈雑言の嵐が吹き荒れる中で落ち着き払った態度で男は告げる。

「お前達に拒否権は無い。首元を触ってみろ、いつもとは違うモノがあるだろう? それは君等の行動を束縛するためのモノだ
 逆らえばその首に嵌めている『首輪』を爆破させ────殺す」

 言われて初めて各々は首周りの違和感に気付く、確かに金属製の冷たい何かが触れている感触があることに……。
 人々は誰一人として動揺を隠しきれず、その場の空気が先程とは質の違う音を立てて軋み始めていた。
 舞台上からの「形状は『首輪』だけとも『首に付いている』とも限らんがな」という言葉に我に返り声の元を辿れば
 何時の間にやら一組の男女が入っている状態の檻が用意されている。

 一人はタンクトップに眼鏡と帽子、一人は髪を団子に纏めたナースだった。

 鉄柵に近寄る案内役のゆっくりとした歩みと、人を見ているというよりモノを見ている様な残酷さ漂う無表情は
 それを見守る誰も彼もに不吉な予感を抱かせるには十分であろう。

「いいか?首輪が爆発する条件は3つ、まずこの私が直々に手を下す方法。次に、無理に外そうとした場合。
 そして最後に6時間毎に放送する禁止エリアに侵入した場合。威力の説明は見た方が早いだろうからな、用意しておいた」

 声色を変えずに親指を上げ、今正に『手の中に握っている起爆ボタンを押すぞ』という気配を見せる。
 しかし、見据えられた男の眼に星を見る囚人のように絶望の色は薄い。
「クッ……僕を殺したところで正義は潰えたりしない!諦めなければ前へ進める事を教えてくれた彼等と、三四さんがきっと…………」
 言い終わる前に指示は降され、檻の男の首は小規模な赤い閃光と共に爆発しその命と共に刈り取られた。
 殺し合いを画策する者は倒されると言外に物語っていた瞳も色褪せて、もはや何も語ることはない。




誰も、声すら発する間すら無い────────ある少女からすれば彼らしい、呆気ない死に様だった。




「ま、こんなところだ。そして重要なのが、不死身の化け物だろうが殺す事が可能ということ。
 つまり吸血鬼やゾンビだろうとうかうかはしていられないというわけだな」

 これについては、内容に追い付けず困惑する者と苦虫を噛み潰したような顔をする者、その二者に別れざわめきが起こった。
 しかしその声は主賓の男がおもむろに銃を取り出して中にいたナースの額を撃ち抜くというえげつなさを伴う行為によって
 いとも容易く掻き消した。混乱して右も左も解らないまま眉間を撃ち抜かれた女性は少しの痙攣の後、最早ピクリとも動かない。
 何故彼女は死なねばならなかったのか?不死者とは何の事か?平和な日常を謳歌してきた者達の精神は着実に乱れてきている。
 それに反して司会役は平然と客席に向き直り、進行を続ける。

「この『BR』はこの後午前0時ッ!貴様等を会場へおくり、最後の一人になるまで殺しあってもらうゲームである!!
 総人数約70人、優勝者にはどのような望みも叶える権利が報酬として支払われる!不可能はないと明言しようッ!!
 次に殺し合いに必要な道具だが、参加者の名簿、地図等々と共にデイバックに入れこちらで用意した。
 会場に移ったら好きに使ってくれて構わんッ!
 詳しくは後でルールブックを読んでくれ…………そろそろだな、首輪の説明に戻らせてもらうぞ」


 一息にルール説明を終えると司会役は檻へと向き直る。真意の解る者は固唾を飲んで、解らぬ者は息を飲んで。
 今まさに始まっている壇上の出来事を見守っていた。
「…………彼女を撃ったのはこの為だ、説明が必要だからな。絶対に殺せるということと、本当にいるという事を解らせることはな」
 その場に居るものは、それを、その現象を知っているもの以外皆目を丸くして釘付けになった。その視線の先には
 ついさっき死んだ筈の女性が、肌も死人のそれになっている彼女が………

────────赤い血の涙を流し、壊れたように笑っていたのだから。


「さて、彼女は体内に『赤い水』という『不死になるが知性を失う』薬物のようなものが入っていた。つまり、いくら撃っても死なないという訳だ」
 (ちなみに感染経路は傷口からだ)
 確認のためか何度か発砲する。肉が爆ぜ脳髄を穿たれても、一瞬後には既に傷口は塞がり怯むことさえない。
 しかし首に着弾し爆発が起こると一通り動き回った後、客席に響き続けていた悲鳴と共にそれは沈黙した。
 どうやら話はうそではない様だ、主宰は話を続ける。


「だが、首輪を爆破すればこの通り。ただ通常の人間諸君への注意事項は『元々不死の者は首輪が首についていない可能性が高い』
 という事を覚えておけ。
 これで伝えることは全て…………いや、すっかり忘れていた。協力者からゲームを面白くするための提案があってな」



 面倒くさそうに緩慢な動作で胸ポケットから紙切れを取り出す。直ぐに読むかと思われたが、何故か一瞬嫌なものを見たような表情で止まった。
 特に観客席を見ていないことから、今なおこのゲームの破壊を求める憎悪の視線を捉えたからではないようだ。ちなみに最前列では
 照明の関係でピンク色の紙切れに可愛らしい似顔絵とか縁取りとかが透けて見えているが気にせず続けるようだ。


「…………各施設に12本の『刀』を安置してある、それ等をすべて集めたものにはこちらからボーナスをやろう。
 バックの中に安置場所と『刀』の説明を書いた紙をランダムに支給する、奪うなり協力するなり好きにしろ。
 追伸────鑢七花、精々死なないようにしておけ、生水飲むべからず。否定姫より」


 この提案にあるものは面倒臭そうに頭を掻き、あるものは微笑んで、そうして次の言葉を待つ。


「新しい時代の幕開けの時にはかならず立ち向かわなければならない『試練』がある、『試練』には必ず「戦い」があり
 『流される血』がある。試練は「供えもの」だ立派であるほど良い、お前達がそれだ、味方も敵もこのBRに参加した者は………
 そろそろ時間だ、それでは会場に移って貰おう。最後まで諦めず、君らが無事『ナプキン』をとれるよう幸運を祈るッ!!」

 参加者達が最後に見た光景は、天井からの六角形の光と敬礼を送るバレンタインであった。







【富竹次郎@ひぐらしのなく頃に:死亡確認】
【恩田美奈@SIREN:死亡確認】




    ー EVENT ー



   12本の刀を集め、ボーナスをゲットせよ



※マップ各所に刀が配置されました。
※刀の在りかを書いた紙がランダムに支給されています。以降の状態表には
 『、刀の在りかを書いた紙(地図上の地点・建物名、刀名称)  』
 を追加して記入してください。




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最終更新:2013年07月04日 09:18