第1章 団長の帰還

マンダラ城の、とある酒場にてTS7は雨を降らしている空を窓から見上げた。 TS7「嫌な天気ですね^^;」 そう独り言のように呟くが目の前には落ち着いた感じの青年が二人座っており、 同じく窓の外を眺めながらコップに入った蜂蜜酒を煽っている。 窓側に座っているのは、こじろうと言った。彼はマンダラ城でもトップクラスの戦士であり、 かつ博識であることからヨールン王国からの信頼も厚い男だ。 そして通路側に座っているのはsea。こちらもマンダラではトップクラスの魔法師であり、 ヨールン魔法学院の教鞭もとっている。 そして先ほど天気について呟いたのはTS7。 彼はロボットでありながらエクソシスト(退魔師)をしており、 同じくマンダラではトップクラスの実力の持ち主である。

どうしてこんな職業も違うマンダラのトップクラスが3人も酒場の窓際の席に集まっているか。
それは彼らの所属するギルドが同じだからである。
この世界には3つの勢力があり、彼らが所属するヨールン王国、デリスカ領、聖フリージ公国がそれにあたる。
この3つの勢力は常に争いを続けているが、ひとつだけ例外があり、それがギルドと呼ばれる組織である。
同じ目的を持った者同士で集まり、その目的を遂行するために動く。
彼らが所属するギルド「ヨールン一般市民」というギルドにもヨールンだけではなくデリスカ、フリージに国籍が
ある者も何人も所属している。

そして彼らヨールン一般市民の創設者であり現在のマスターであるハルメリアは昨年終結した戦争後、
行方がわからなくなってしまった。
仮にTS7がマスター代理を務めるという形になっている。

TS7「団長、かえってこないかな~^^;」
こじろう「会ってみたいですね。」
sea「会ったことあるのTSさんだけ?」
TS7「いえ、ヨールン女王とクリステルさんもあるはずです>w<v」
sea「そうなんだ。」

ハルメリアがいなくなった当時、ギルドには4名しか所属していなかった。
しかし現在ではすでに50名前後のメンバーが終結している。
そしてなんと、ギルドメンバーの中の一人にヨールン王国の女王が混ざっているのである。
彼女は公務に追われる身分だが、たまにギルドに姿を現す。
TS7がこじろうやseaなどメンバー集めを続けこの世界において蒼の騎士団に次ぐ第2位のギルドにまで発展した。
ただし、マスターが消息不明という緊急事態ではあるが。

むちむち「まあ、考えていても仕方がないので飲みましょ。」
こじろう「むちさんそんな飲んだら体壊すよ?」

人数分の酒を持ってTS7の隣に座ったのはむちむちと呼ばれる戦士であった。
彼も一流の戦士であり、何より話術に長けていた。
現在のギルドメンバーのほとんどが彼のスカウトによって入団していると言っても過言ではない。
現にこの酒場のマスターともすぐにうちとけて仲良くなりギルドの公式な溜り場とさせてもらっている。

そうこうしているうちに、任務中であったメンバーや様々な用事を終わらせたメンバーが集まり始める。
酒場は一般客も混じってはいるもののほとんどの席がヨールン一般市民のメンバーで埋められ、
次第に酒もまわりはじめいつものように宴状態となっていった。

ハルメリアのことをTS7が「団長」と呼ぶため、いつしか彼の愛称はギルド内で「団長」となっていった。
しかし数名を除いて誰も会ったことがないため、噂が噂をよび、伝説化してしまっている。

ウェイトレス「きゃああああ!」
ガチャガチャーン!!

酒場の一角でウェイトレスの叫び声とグラスを落として割れる音が聞こえた。
しかし宴と化している酒場では見慣れた光景となっており、誰も注視するものはいなかった。
一般客が起こしたトラブルではなく、ギルドメンバーだと完全に全員が思い込んだのだろう。
またチャトゥルティあたりが酔っ払ってウェイトレスの尻でも触ったか、というある種の話の種になりながら。

ウェイトレス「なにするんですか!あなた誰ですか!」

この叫び声が酒場の空気を一瞬で凍りつかせた。
ギルドメンバーの仕業ではないことが意外だったというのもあるが、これだけギルドメンバーがそろっている酒場で、
粗相をした人間がいるのだ。

sea「どうしたんだろう。」
こじろう「行ってみる?」
むちむち「おもしろそうなのだったらうちのギルドに入れちゃおうよ。」

そのテーブルに座っていた4人は騒ぎの方へ酒を片手に人だかりをかきわけながら歩み寄る。
そこには一人のアサシンのように見える者が笑いながら、怒るウェイトレスとやり取りしていた。

sea「何者だ?」
こじろう「おい、ウェイトレスが困ってるじゃないか!」

二人が止めに入る。
むちむちは面白そうにその光景を眺めながら隣にいるTS7に声をかけた。
しかし返答がなかったのでTS7の方を見た。
その瞬間、TS7は持っていた蜂蜜酒のジョッキを床に落とした。

seaとこじろうも怪訝そうにTS7を見る。

TS7「だ・・・団長!」


そのTS7の言葉にこじろうとseaとむちむちは団長と呼ばれたヘラヘラしている男にすぐさま視線を戻した。
sea(まじか・・・)
こじろう(まじか・・・)
むちむち(面白くなりそうだ)

約1名を除き、おそらくそのとき酒場にいたほぼ全員が頭をかかえそうになった。
なにしろ、これだけ注目を浴びているにも関わらず、そんなことを気にする様子もなく
ウェイトレスのスカートを強引に捲り上げようとしているのだ。

TS7「団長、おしさしぶりです!!」
ハルメリア「モス」
TS7「紹介しますね、この人がこのギルドの団長です^^」

sea「ど・・・どうも・・・」
こじろう「はじめまして。」

seaとこじろうを筆頭にメンバーが次々とギルドマスターに「はじめまして」の挨拶をするという異様な光景である。
ハルメリアは思いのほかちゃんとこちらに体と顔を向け、それに対応する。
だが、発する言葉は「モス」のみなのだが。

TS7「団長、いままでどこに??」
ハルメリア「おぼえとらん。というか人いっぱいになったね!」
TS7「がんばりました^^」
ハルメリア「さすがてっちゃん」
TS7「てっちゃんっていうのは私のことでしょうか??」

ハルメリアは特にTS7の質問に応えるわけでもなく、自分を取り巻いているギルドメンバーを見回した。

ハルメリア「おっけー、了解。大体把握した。」
ハルメリアは独り言を言ったがTS7を除いて誰も理解ができなかった。

sea「TSさん、団長は何を把握したの?」
TS7「このギルドの体制や組織の感覚ですよ^^v」
こじろう「まさか~。」
TS7「その、まさかなんですw」

ハルメリア「最近は蒼きが幅を利かせてるみたいだな。」
sea「そうなんです、エリック、ブラックドラゴン、ザーブはすべて彼らの手中にあります。」

seaが言ったエリック、ブラックドラゴン、サーブとはヨールン王国、デリスカ領、聖フリージ公国のそれぞれの首都、
マンダラ城、レッドストーン城、ナシャー港の中心にあるカモス平原という場所に建てられた3つの城であり、
この3つの城が各拠点の攻略において有効な中継基地となる。
また、カモス平原にあるダークムーンなどの今でも宝が眠っているとされているダンジョンの攻略の足がかりとしても利用されている。

ハルメリア「んじゃ、エリックから取り返すか。」

ハルメリアのそんな軽い言葉が酒場をざわめかせた。
そして続いてこう言った。

ハルメリア「総指揮てっちゃん、軍師しーやん、部隊長こじこじ、ぜんさん、むっちゃん、チャトさん。んでしーやん、各部隊のメンバー構成はまかせる。部隊長は各部隊の部隊名を決めておいて~。」

急に帰ってきた団長が、疾風怒濤の勢いで指示を出す。
確かに、誰もがその任命は適任だと思ったが、それ以上に誰もが思った。

全員(あんた何するんだ?)



第2章 エリック城奪還作戦

sea「以上が、今回の作戦です。作戦開始は本日1600。各自部隊へ戻って作戦開始まで作戦内容の確認をお願いします。」
TS7「以上、解散します^^」
TS7がそう締めくくると、酒場のテーブルに座っていた6人は一斉に各テーブルへ戻った。
6人とは総指揮であるTS7、軍師sea、部隊長であるこじろう、zehn、むちむち、チャトゥルティである。
このギルドのマスターであるハルメリアの姿はなかった。
彼は昨日ふらっと戻ってきて指示を出し、なにかあったら連絡をくれとだけ残して酒場に飲みにきていた女性数人と出て行った。
もちろん連絡先などまったく言わずに。

こうしてエリック城奪還作戦はギルドマスターであるハルメリア抜きで始まったのである。

sea「妙ですね。静かすぎる。」
こじろう「待ち伏せかな?」
チャトゥルティ「いいじゃん、残ってる奴ら殺しまくろうw」
むちむち「昨日の今日だよ?敵も準備なんてできていないでしょう。w」
TS7「なんにせよ、伏兵に注意してください^^全軍突撃!」

城門はすでに開いている。
普段は閉じており、まず城門を開けることから始まるのだが、今回はそのまま城内に侵入することができた。
やはり城に残っている敵の数があまりにも少ない。
4つの部隊をさらに二つに分け、zehnとむちむちの部隊が伏兵の確認にまわったが、伏兵の心配も杞憂に終わった。
TS7「何にせよ、このまま一気に落としましょう!zehnさん部隊は城門を閉めて援軍のシャットアウトをお願いします!」
sea「むちさん、城門の上から援軍の警戒をしてください。ぜんさんのとこは城門を閉めた後にむちさんと合流して引続き警戒を。」

そう指示を飛ばし残った部隊で城旗前まで兵を進めた。
さすがに無人というわけではなく旗前には蒼き騎士団のメンバーと城を防衛する兵士たちが柵をかまえて待ち受けていた。

「敵襲〜〜〜!!!」
「総員戦闘配備!!」
と敵が身構える。全力でこちらを迎え撃つ態勢だ。

チャトゥルティ「死にたい奴はどいつだ!!」
チャトゥルティが部隊の戦闘に立ち、武器を掲げて敵の中に突撃した。
続いて従っている兵たちも突撃し、乱戦となった。
乱戦の中にこじろうがさらに突撃を行い、1対1を2対1、3対1とし数の有利で押し進める。
こうなってしまえば乱戦において無駄に兵を死なせることになってしまうので守りを固めていた兵も乱戦に加入する。

矢や魔法が飛び交う中、TS7は思慮した。
TS7(やっぱりおかしいですね。まさか、、、)
TS7とseaは乱戦の外から弓と魔法で援護を行う。
彼らの腕はやはり一流ということもあり、前線は旗の方へと押し進められていった。

そこへ伝令が入る。伝令兵は肩で息をし、事実のみを伝えた。
伝令兵「TS様、情報が入りました!サーブ城が陥落したとのことです!」
TS7「!!!!!!」
sea「!!!!!」
二人は驚いた。蒼き騎士団に対抗できるギルドなんてヨールン一般市民くらいしか考えられない。
その全部隊がここエリックにいて、何故サーブが落ちる。
TS7「サーブを落としたのは???」
伝令兵「猫厨というギルドだそうです。」
sea「カレンのいるギルドですね。彼女は確かに強いが、あのギルド自体人数が少なくて太刀打ちなどできないはずだが。」
伝令兵「どうやら複数のギルドでまとまって攻めたようです。」
sea「よくギルド同士でまとまれたな。落ち延びた兵たちはどうなった?」
伝令兵「落ち延びたメンバーや兵はブラックドラゴン城に向かったそうです。」
sea「そうか、でもなぜエリックに援軍がないんだ。」
伝令兵「詳しい事はわかりませんが、サーブのカレンより伝言を承っております。」
TS7「カレンさんから?」
伝令兵「もしエリックを落とす事ができたら、守りの兵をエリックへ置いてすぐさまブラックドラゴンへ向かってほしい。ハルメリアが独りで戦っているはずだ。と。」
TS7「!!!!!」
sea「!!!!」
TS7「なんで先にそれを言わないんだ!!!!」
温厚なTS7が珍しく怒っている。
そんなTS7を初めて見るseaも驚いている。
TS7は馬を反転させ、駈けようとしたが、その進路にseaが立ちふさがる。
sea「よせ、TSさんがいなければ総指揮はどうなる!」
TS7「団長を助けるんです!どいてください!」
sea「無理だよ!TSさんだけ行っても無駄死にになるだけだ!」
TS7「いいんです!団長だけ死なせるわけにはいかな」
とまで言い、TS7は顔に水をかけられ話を続けることができなかった。
seaがTS7に魔法の水をかけたのだ。
sea「団長を助けに行くのはみんないっしょだ!いまはエリックを落とす事を考えよう。」
TS7「•••」
sea「いこう。なんとでもはやくエリックを落とそう!」

こじろうとチャトゥルティは乱戦にTS7とseaが入ってくるのを見て驚愕した。
こじろう「ちょっとTSさん!なんでこんなとこにいるの!」
チャトゥルティ「危ないって!」
彼らは武器を振るいながらも総指揮と軍師を諌める。
しかし彼らの耳には届いておらず、彼らは一直線に城旗を目指している。
こじろう「くそっ!作戦が台無しじゃないか!」
チャトゥルティ「おい、うちの部隊の伝令はどこだ!むちさんを呼び戻せ!」
元々相手が大きなギルドなだけあって守っている部隊が少ないといってもヨールン一般市民も二手に分かれているのでその数は互角だった。
そんな戦いに総指揮と軍師を欠いてしまえばこちらの士気に関わり一気に劣勢となるだろう。
せめて数だけは有利に、とチャトゥルティはむちむちをここへ参戦させることを選んだ。
伝令はすぐさま城門へ向かうべく馬を走らせた。
sea「TSさん、そろそろエリックの伝令がブラックドラゴンにも到着しているはず。サーブの残党がブラックドラゴンに入るのも時間の問題だと思う。」
TS7「団長の身とエリックへの援軍が心配ですね。」
二人は乱戦の中を向かってくる兵だけをなぎ倒しながら旗を目指している。すでに周りには味方はおらず、乱戦に加わろうとする敵兵の中を突っ走る形となっている。
TS7「しーさん、ここはまかせていい?」
sea「TSさんどうする気!?」
TS7「旗を折ってきます。」
もはやこの四面楚歌になっている状況で、それにかけるしかないと判断したseaは静かに頷いた。
sea「たのみます。」
TS7「お願いします!」
TS7はそう言い、姿を消した。ステルス状態になったTS7はさらにスピードをあげ、旗へと急ぐ。
周りに誰もいないことを確認したseaはその場で止まり、深呼吸をした。
sea「さて、新しい魔法でも試してみようかな。」
独り言をいったseaが魔法の詠唱をはじめる。
大気が震え、少しずつまわりの空気の温度があがりはじめた。
魔法を構成する要素は、火、氷、雷、光、闇、毒の6つがある。
sea「さて派手にいこうか。大魔法マグマフィールド!!!!!」
地面に巨大な魔法陣が出現し、大気が一気に加熱される。
その瞬間、地面に描かれた巨大な魔法陣が一気にマグマへと変わる。
seaを取り囲んでいた敵兵は一瞬にして燃え尽きる。
上級の魔法師のみが使用できる大魔法のひとつが目の前で展開され、ギリギリ魔法陣の外にいた敵は完全にその足をとめ、逃げるものさえもいた。
sea「おっと、逃がしませんよ。ファイアウォール!!」
逃げようとした敵は火の壁によって退路を断たれうろたえる。
火の魔法を連発するseaをめがけて、氷の槍が飛んできた。
sea「ファイアボール!!」
seaはその氷の槍を火の魔法で打ち消し、魔法の発動場所を見た。 sea「なるほど、あなたが私の相手ですか。」 そこには髪の長い碧眼の女性が次の魔法の詠唱をしていた。 小柄で華奢ではあるが、魔法力は蒼き騎士団の中ではトップクラスである。 名前はフィリアといって、seaとは因縁の対決であった。 彼らがまだ魔法学院の生徒だったころからの因縁である。 魔法学院の成績では結局、seaが主席、フィリアが次席であったが、seaは学院の教鞭をふるっている中、 フィリアは国お抱えの魔法師として度々出陣をこなしているため、結局実力の差は同じくらいのままであった。

そのフィリアが詠唱を完了させ、叫ぶ。 フィリア「大魔法マグマフィールド!!!」 先ほどseaが見せたものと同じ魔法を彼女も使った。 魔方陣はseaを中心として発動しているためseaに逃げ場はなかった。 sea「大魔法ブリザード!!!」 seaはフィリアのマグマフィールドに対して氷の大魔法を放った。 辺りはマグマで解ける氷が水蒸気になり視界がまったくない状態となった。

それでも二人は魔法の応酬をやめなかった。 フィリア「クリスタルグレイブ!!」 sea「ファイアボール!!」 フィリア「アイスアロー!」 sea「ファイアウォール!!」

フィリアの魔法をなんとか反対属性の魔法で打ち消すsea。 遠くから見守っている兵達は、一見seaが押されているかのように見えた。

フィリア「アイスレイン!!」

さらに追い討ちをかけるかのようにフィリアが氷を一面に降らせる魔法を唱えた。 しかし、次の瞬間フィリアの顔に緊張の表情が張り付いた。

sea「天空魔法メテオシャワー!!!」

フィリア「なっ・・・古代魔法を詠唱もなしで!?」

振ってくる氷は無常にも音速を超えて降り注ぐ隕石群に蒸発させられ、無常にも消えうせる。

フィリア「マジックコート!!!」

フィリアは自分に魔法の耐性を大幅に上げる魔法をかけたが、それでも古代魔法のひとつの威力は協力だった。

フィリア「きゃああああっ!!!」

大爆音とともに城全体、いやその地域すべてに揺れが走る。 フィリアは魔法をマジックコートの上からではあるが直撃し、気絶。 その場所に倒れて動かなくなっていた。

sea「はぁっ、はぁっ」 seaも魔法の連発に加え詠唱なしでの古代魔法にそのほとんどの魔力をもっていかれ、肩で息をしていた。 しかし、地に手をつけることはなかった。 すぐさままだ残っている敵を睨み付けるとこう言った。

sea「まだ、やりますか?」

そう言ったseaの手には派手な雷撃が纏われている。 雷魔法のライトニングボルトだ。

それを見た敵兵はすぐさま踵をかえしその場から逃げ去った。

一方、乱戦を続けていたこじろう、チャトゥルティは敵に包囲されていた。 こじろう「くそっ!TSさんとしーやんどうなってるんだ!」 チャトゥルティ「いまさら愚痴いったってしょうがない!」 乱戦において囲まれてしまうと完全に致命的な損害が出てしまう。 こじろうとチャトゥルティも必死に武器を振るっていたが、彼らの軍、彼ら自身もボロボロに傷つき、疲弊していた。

そこへ1時間ほど前に伝令を出していた効果が現れる。

むちむち「ごめんよぉ、待たせたねぇ!」

むちむちが城門から援軍として駆けつけたのである。

こじろう「来た!全員反転!むちむち部隊と合流する!!!」 チャトゥルティ「しんがりはまかせろい!」

城の入り口から向かってきたむちむちの軍に、こじろう隊とチャト隊が合流すべく逆流をはじめた。 この時点でむちむち隊とこじろう隊、チャト隊の間にいた包囲網は挟み撃ちにあい、一瞬で消滅する。 こじろう隊とチャト隊は変わらず横からと後ろから包囲網を敷かれている状態だが、それもむちむち隊によりすぐさま解消される。 こじろう隊とチャト隊は一度むちむち隊の後ろまで後退し、戦列および態勢をたてなおし、再び反転した。
ここで一気に形成が逆転し霧散した包囲網を敷いていた敵部隊を再びぶつかる。
こうして、ヨールン一般市民軍は乱戦を制した。


その頃、TS7は旗前まで辿り着いていた。
TS7「こ・・・これは厳しいかも・・・」

彼は単独で旗前までくることができたが、旗前には想像以上に防衛兵がいたのだ。
投石までもがスタンバイしている状況でTS7は必死に弓を引き絞る。
手はすでに血だらけになり、引いている弓弦も真っ赤に染まっている。

そしてTS7は敵兵を弓で倒しながらも旗の棒の部分に何本か弓を射っていた。
同じ場所に何本も打ち込めばかならず旗は折れる。
乱戦もseaも置き去りにしてきた。
もはや総指揮としては失格であろう。この旗を折って帰らなければ何も残らない。
彼の責任感と使命感の大きさは弓の指貫にしみ込んだ血の量を見れば明らかだろう。

そしてもう1本、旗に矢を打ち込もうとした瞬間、何者かに横から殴られTS7は十数メートル吹き飛ばされた。
TS7はすぐさま起き上がり、敵を見た。

TS7「こ、こんなときに限って・・・!」

敵はエクソシスト界では有名なグルヴェイグだった。
彼女は人間の大人より遥かに重いロボットであるTS7を弓で殴って吹き飛ばしたのだった。
3国共同で設立されたエクソシスト協会に所属し、フレイヤの異名をもつ四天王の一人だった。

TS7「邪魔しないでください・・・って言っても無理ですよね^^;」
グルヴェイグ「無論だ。すぐに立ち去ってもらう。」
TS7「意外と優しいんですね^^生きて帰れないかと思いました。」

二人の空気がピリピリと緊張を帯びていく。
何秒か経過したあと、少し離れた場所で大きな音がなり、地響きが走った。
それを合図にするかのように二人が一斉に動いた。

TS7は持っている弓で矢を放つ。
グルヴェイグも弓を引き絞り迎え撃つ。
TS7は目の前で起きた出来事に驚愕した。

TS7「な、なんでそんなことができるんですか・・・」
グルヴェイグ「あなたもやろうと思えばできるんでしょう?愚問ね。」

TS7が放った矢をグルヴェイグは矢で打ち落としたのだ。
お互いが馬を翻し何度も矢を放つ。
さすがに埒があかないと判断したのか、二人は馬をおりた。

TS7とグルヴェイグの戦いを見ていた兵たちがざわついた。
馬からおりた瞬間に二人の姿が消えたのだ。
馬はかれらの元からすぐに離れた。

二人の戦いは人知を超えていた。
絶えず高速移動しているいのがわかるが、その姿は誰にも見えなかった。
空中でいくつも衝撃波が走る。
どうやら衝撃波が走っている場所でぶつかり合っているのであろう。
すでに弓からそれぞれの武器に持ち替え、激しい戦いを繰りひろげている。

3~4分が経過したあたりで二人の姿が馬がいた位置に現れた。
兵たちは歓声をあげる。
そこにはボロボロに傷つき、片ひざを地面についているTS7の姿と
無傷のまま武器を収めるグルヴェイグの姿だった。
しかしグルヴェイグの表情が険しい。

グルヴェイグ「やるな。次会った時が楽しみだ。純粋に戦ってみたい。」
TS7「あ、ありがとうございます・・・。私はできればもう戦いたくないかもしれません。」
グルヴェイグ「つれないな。また会おう。」

明らかにグルヴェイグの勝ちの状況でグルヴェイグが退却の合図を出した。
兵たちは歓声を送っていたが、今は状況が飲み込めず静まり返っている。
そんな静寂の中、何かが折れる音がした。

TS7「と・・・とった・・・」

エリック城に掲げられた蒼き騎士団の城旗であった。
TS7はグルヴェイグと戦っている最中も武器を弓に持ち替え、旗に矢を打ち込んでいたのだった。
同じ場所を正確に射抜き続けてついに旗を折ったのだ。
それを悟ったグルヴェイグが負けを認めて去ったのだ。

こうして、エリック城での戦いはついに幕引きとなる。

最終更新:2014年03月06日 22:54