世界観

《ここだけ永夜世界》


【前文】
空に続くは月を失った、久遠永劫の《夜》。単純な色彩の中に散在するは浮上し、崩壊した景色
天高くまでに堆積した建物の羅列は等しく瓦解し、鼠色のアスファルトはめくれ上がり本来の意義を失ってしまった
煉獄に残された人々の双眸に宿るのは希望の光などではなく──絶望を受胎し、腐敗を孕んだ深淵だけだった

天を覆い尽くす《夜》は人々に諦観に伏す事を強制し、従属させた
突如世界に現れた、全てを喰らい破壊し尽くす《夜》の魔獣
魔獣と形容するには余りにも醜悪なその塊は、触れる物全てに死と崩壊を齎す
夜に支配された世界に残された僅かな土地と人間。食糧の底も何もかもの終わりは見えている
終焉。しかし、世界は頽廃を受け入れる事を容易にせず、凡ゆる手段を持ってして抗う事を決意する

《──絶える位なら、他人の死を喰らい貪り、生き続けてやる》

死を拒み、生の脆弱な光明を掴み取ろうとした人々に降り注ぐのは月の光──選ばれた人間にのみ与えられる力
《焔装》。ある日前触れも無く夜を切り裂く様にして地上に放たれた一条の光は、自分の負の感情を特化させる事で能力を発現させた
その能力とは、嫉妬や強欲、凡ゆる負の感情を凶化させる事により自らの力となす物
暫くは《夜》の魔獣達と対等に渡り合う事が出来ていた。ただし、それも長く続くこと無く
《焔装》は負の感情を強くするとともに、人々の心を蝕む傾向にあると判明した
それが分かったのは《焔装》に喰われた人間が、《夜》の魔獣と成り果てた後だった

そこで人々は《焔装》のリスクを恐れ、安全に《夜》に対抗できる手段を開発し始めた
《月装》。個々人の長所を際限無く強化する武装。その姿は個人が最も適していると感じる形となる。ある人は刀、ある人は服
《月装》の力は確かに絶大な物だった。ただし、《夜》と対等に渡り合う程に至らず

《焔装》に飲み込まれた人間と《夜》の魔獣は破壊し続ける。《月装》を得た人々は抗い続ける。拮抗している訳では無い、常に負け続けているのだ
人々はそれでも戦い続けるだろう、例え背に終わりを抱えていたとしても……
《焔装》と《月装》、終焉へと直走る世界──《夜》との自らの存在を賭けた戦争が今始まる
最終更新:2014年09月15日 00:04