「ゆっくりいじめ系551 チェンジリング前」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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森の中のある小川で、ゆっくりの一家が楽しそうに遊んでいた。
ゆっくりまりさとゆっくりありすの大一家である。
「ゆ!! おみずがつめたくてたくてきもちいい!!」
「おかあさん!! むしさん、つかまえたよ!!」
子どもたちのゆっくり楽しそうな様子に、感無量といった感じのまりさとありす。
そんな二人も仲良く寄り添い、太陽の光をいっぱいに浴びて、ゆっくり人生を謳歌していた。
しかし、そんな一家のゆっくりを妨げる大声が、遠くから響いてきた。
「おかあさん!! たいへんだよ!! こっちにきて!!」
「ゆゆっ!! いったいどうしたんだぜ?」
「ゆっくりできないこは、とかいはになれないわよ!!」
少し離れた場所で蝶々を追いかけていた一匹の子まりさが、「たいへんたいへん」と叫びながら、全速力でこちらに走ってきた。
子ゆっくりは相当疲れているらしく、大きく肩で息をついている。
せっかくのゆっくり空間を邪魔されて少々気分はよくないが、邪魔したのは自分たちの可愛い子どもだ。邪険に扱うことは出来ない。
それに、いったい何が大変なのかも気になるところだ。
「なにがたいへんなのか、ゆっくりせつめいしてね!!」
「ゆーゆー……お、おかあさん。あ、あのだめなこが、あっちのおがわであのばかなにんげんといっしょにいるんだよ!!」
「ゆゆっ!! ほんとうなの!! まだあのこいきてるの!?」
「まだいきてるよ!!」
「ゆー!! みんなでちょっとようすをみてこようね!!」
親まりさと親ありすは子どもたち全員を呼ぶと、子ゆっくりの案内に従ってその様子を窺いに行った。
そのゆっくり一家とそれほど離れていない場所で、一人の青年と一匹のゆっくりれいむが仲良く歩いていた。
おそらくピクニックにでも来たのだろう。
川の側にいい場所を見つけると、二人はそこにシートを広げて、そろって大の字に横になった。
「ゆゆっ!! ほんとうにあのこだよ!!」
「まだあのにんげんにころされてなかったのね!!」
草陰からこっそりその様子を見ていた先ほどのゆっくり一家。
全員が全員、その光景を見て驚いていた。
確かに人間とゆっくりは仲良くしている光景は珍しいが全くないわけではないし、なにより、この一家は何回か人間と仲良くしているゆっくりを目撃したことがある。
なら、なぜそれほどまで驚いているのか? 事は数週間前まで遡る。
実はこのゆっくり家族、数週間前にこの青年の家に忍び込んで、そのまま無事家から出られたという珍しい一家である。
ゆっくりが青年の家に入った理由は、聡明な読者諸君には言うまでもないだろう。
ちょっとばかり開いていた玄関のドアの隙間から進入すると、一家は一目で青年の家を気に入り、誰がと言うことなく「自分の家」宣言をしだした。
そこに帰ってきたこの青年。
はじめこそ、ゆっくりが自分の家にいることに驚いたものの、その後、このゆっくり一家に荒らされた部屋の惨状を見て冷静になれるわけもなく、子どもを一匹ずつゆっくりと殺していった。
泣き叫ぶ姉妹。やめて懇願する両親。しかし、男は次々と子どもたちを殺していく。
そんな状況の中、親まりさの頭に名案が浮かび上がった。
そして、この殺戮を止めてもらうための取引を男に持ちかける。
「おじざん!!! ゆっぐりばりざのばなじをぎいでで!!!」
まりさは男に提案する。
自分の子どもを一匹あげるから、自分たち家族は見逃してくれと。
これに驚いたのは青年だけではなかった。
もしかしたら自分が差し出されるかもしれないと思った子どもたちはもちろん、母ありすも「かわいこどもをさしだすなんて、とかいはのすることじゃないわ!!」とまりさの言葉に大いに反対した。
しかし、まりさには秘策があった。
あの子を差し出せばいい。
その台詞に、反対していた家族が一瞬静まりかえると、その後全員が一斉に賛同していく。
「そうね、とかいはのありすたちのためにぎせいになれるなら、あのこもこうえいよね!!」
「ゆゆっ!! まりさたちはおそとでゆっくりするから、おまえはおにいさんにゆっくりころされてね!!」
はじめはゆっくりと取引なんてする気はなかった青年だが、他のゆっくりたちの態度が気になり、どういうことだと父まりさに問い詰める。
すると、父まりさは男の問いに答える代わりに、部屋の隅のタンスに向かうと、「さっさとでてくるんだよ!!」と、タンスの後ろの隙間に向かって、声を上げた。
しかし、いっこうにタンスの後ろから何かが出てくる気配はない。
しびれを切らしたまりさは、口を開けると、タンスの後ろでモゾモゾしている何かに噛みついた。
「いちゃい!! やめて、おちょうしゃん!!」
父まりさに噛まれたゆっくりの悲鳴がタンスの後ろから聞こえてくる。
まりさは愚図る子どもを噛んだまま、タンスの後ろから引っ張ってきた。
そのゆっくりとは、なんとれいむ種であった。
この一家は父まりさと母ありすがすっきり!! して出来た家族である。
当然、まりさとありす以外のゆっくり種が生まれることはない。
父まりさは、そんなゆっくり子れいむを噛んだまま男の元に持ってくる。
「このこをおにいさんにあげるよ。すきにしていいよ。だからまりさたちはゆっくりしないでにがしてね!!」
そういって青年に子れいむを差し出すまりさ。
まりさに噛まれたままの子れいむは、必死でまりさの口の中で抵抗している。先ほどの青年による惨劇を目の当たりにしていたためだろう。
しかし、父まりさはその子が可愛くないのか、「ふふひゃひひょ(うるさいよ)!!」と、子れいむを強く噛みしめる。
この子は青年にあげるため、ギリギリ殺さない程度の力で噛んでいく。
むしろ、子れいむからすれば、ひと思いに殺された方がどんなに楽か分からない。
青年はそんな子れいむに興味がわき、殺されてはたまらないと、父まりさの口かられいむを助けてやった。
子れいむは相当痛かったのか、青年の手の上で「ゆーゆーゆー……」と息を荒げている。
青年ははまりさに問いかける、この子はいったい何なんだと?
大方の予想では、両親どちらかの連れ子か、養子だと推測できる。あの家族全員からの嫌いようを見れば、想像に難くない。
しかし、まりさから帰ってきた答えは、青年の真逆をいくものであった。
「ゆー!! そのこはまりさとありすからうまれたれいむだよ。きもちわるいからおにいさんにくれるよ。ゆっくりころしてもいいからね!!」
その台詞に青年は驚いた。
普通、子ゆっくりは両親と同じ種族しか生まれることはない。
これは人間にたとえてみれば、白人と黄色人から黒人の子が生まれてくるようなものだ。
青年はマジマジとそんなれいむを見つめ続ける。
子れいむは自分の味方は誰もいない、自分も殺された姉妹のような目にあわされるんだと、青年の手の上で恐怖に身を縮めている。
その後ろでは、両親や姉妹たちが「さっさところされてね!!!」と大合唱の嵐。
この家族からすれば、れいむが殺されて自分たちが逃げられるのは、まさに一石二鳥であった。
父まりさと母ありすの末っ子として生をうけたこのゆっくり。
しかし、その子はまりさ種でもありす種でもなく、なんとれいむ種だった。
別にこの二人はれいむ種が嫌いというわけではない。むしろ、れいむ種にたくさんの友人がいるくらいだ。
しかし、それが自分の子となれば話は別だ。
本来、絶対に生まれるはずのない子供が生まれてくる。両親としては、とても怖く気持ちが悪かっただろう。
人間からすれば、悪魔を生んでしまったようなものだ。
しかし、たとえ気持ち悪くても殺すわけにはいかない。というのも、この両親が倫理的にできているからではない。
ゆっくりという種族は、命の危険性がない場合を除き、決して同族殺しを認めないからだ。
このれいむを始末したいが、もし殺せば自分たちが他のゆっくりから制裁を受けてしまう。
さすがにそんな分の悪いことをしてまで殺す気はなかった。
しかし、その子れいむに対しての接し方は、虐待おにいさんをも唸らせるものであった。
食事は三日に一回、ほんのちょっぴりしかもらえなく、他の姉妹には「あれにちかづいてはいけないよ!!」と決して、腫れもの扱いして近づけさせなかった。
ちょっとでも気に食わないことがあれば、れいむが何もしていなくても、虐待を切り返した。
親がそんな扱いをしていては、他の姉妹もまっずぐ育つはずはなく、親同様に毎日子れいむを罵り、近づいてはいけないといわれているにも関わらず、親がいないところでは虐待を繰り返した。
毎日、傷だらけのれいむ。当然、両親も何がされているかは分かっているが、あえて口を出さなかった。
自分たちが狩りなどで居ないときの、いいストレスのはけ口になればと思っていたのだ。
ただ、子供たちのことを見ぬふりはしていたものの、ゆっくりを殺したらゆっくりできなくなるとだけは、しっかりとくぎを刺しておいた。
あんな出来そこないの子を殺したせいて、可愛い子供たちがゆっくりできなくなってはたまらない。
子供たちもその辺はよく分かっているようで、子れいむが死なない程度にゆっくりじっくりいびり倒していた。
そんなこともあって、この子が青年にどんな目にあわされようが、家族たちは全く気にしていなかった。
むしろ青年がれいむを殺してくれれば、自分たちは他のゆっくりからの制裁を受けることなく、れいむを処分できる。
ようやく真の家族だけでゆっくりできるとすら考えていたのだ。
まりさたちはこれで自分たちはここから出ていくことができるだろうなんて、安直な考えをしていた。
人間の本当の怖さを知らないゆっくりの性である。
当然、青年からすればそんな約束を真に受ける必要はない。
そもそも、まりさたちからすれば、自分たちの命がかかっているときに、これはいらないからあげるね、と言っているよなものだ。
どんなにアホなことを言っているか自覚はないのだろう。
虐待お兄さんなら、「解放してやる」と束の間の幸運を味あわせ、最後にどん底に落とすくらいはするだろう。
普通の人間でも、腹いせに殺したりするに違いない。
だが青年はまりさの要求をのみ、れいむを貰うと、玄関のドアを開けてったゆっくり一家を解放してやった。
これはまりさたちからすれば当然のことでも、人間からしてみれば、「おまえは馬鹿か!!」と、思われるような行為である。
中には逃がしたゆっくりが仕返しにきたなんて話もあるのだ。このゆっくり一家がそうならない保証なない。
青年はすべてのゆっくりが出たことを確認すると、二度とゆっくりが入って来れないように厳重に鍵を閉めた。
再び外の景色を見ることができたまりさ一家。
何人かの子供は犠牲になってしまったが、まだ子供は十数匹も残っているし、なにより自分自身がゆっくりできることがうれしかった。
それに、ついにあの邪魔な子がいなくなった。ようやく、本当のゆっくりすぽっとを作ることができる。
これからは、死んだ子供の分も合わせて、精いっぱい子供たちを可愛がろう。精一杯ありす(まりさ)とゆっくりしよう。
そう決意した両親は、後ろに子供たちを引き連れ、元の家に帰っていくのだった。
そんなこともあって、今まりさ一家の目の前の光景はとても信じられないものであった。
とっくにあの青年に殺されたと思っていたれいむが来ていたのが不思議だったのだ。
そんな二人の様子を探っていると、大の字に寝ていた青年とれいむの声がまりさたちまで届いてきた。
「いいところだな、れいむ」
「おにいしゃん、ゆっくりちていこうね!!」
「おう。今日は夕方までゆっくりして行くぜ!!」
「ゆっくりゆっくり!!」
「ところでれいむ、俺からお前にプレゼントがあるんだ」
「ぷれじぇんと? ゆっくりみせてね!!」
「これだ!!」
青年は横に置いた大きなリュックから何かを取り出すと、れいむの目の前に置いた。
子ゆっくり専用の小さなクッションだ。
「どうだ、れいむ。ゆっくり乗ってみな」
「ゆ? これににょるの? ゆゆっ!! おにいしゃん、これしゅごくやわりゃかいよ!!」
「そうだろ。何しろ里一番の職人に、大金はたいて作ってもらったんだからな。お前専用のクッションだ。人間だってこんな高いクッションに座らないぞ!!」
「ゆゆゆっ!!! おにいしゃん、これおもしろいよ!! しゅごいはじゅむよ!!」
「そうかそうか、良かったな!!」
れいむは最高級クッションの上でトランポリンのようにぴょんぴょん飛び跳ねている。
よっぽど気に入ったようだ。
「おしょりゃをとんでいりゅみたい!!」とご満悦だ。
そんなれいむをみて、これまた嬉しそうな顔をする青年。よっぽど、このれいむが可愛いのだろう。
「ゆー……れいむのくせにあんなたのしそうなものにのるなんてなまいきだよ!!」
「そうよ!! あんなこうきゅうなものは、とかいはのありすにふさわしいわ!!」
まりさ一家の子供たちは、口々に不満の声を口にする。
死んでいないばかりか、自分たちですら乗ったことのない高級クッションで遊ぶれいむを目の当たりにして、とても腹立たしく思った。
両親もそう思ったが、ここで子供のように騒ぎ立てないのは、一応大人というものか。
「みつかったら、こんどこそころさせちゃうよ!!」と小さい声で子供たちを窘める。
子供達も、あの殺戮を二度と体験してはたまらないと、一様に口を閉じ、青年とれいむの様子をうかがった。
「なあれいむ、腹減らないか? そろそろ昼食にしようぜ!!」
「ゆゆっ!? そういえばりぇいむもおにゃかがしゅいたよ。おにいしゃん、ゆっくりごはんにしようね!!」
「おう、今日の昼食は豪勢だぜ。何しろ里一番といわれる店のメニューを重箱にこれでもかと詰め込んできたからな。デザートも期待してろよ!!」
「ゆゆっ!! ゆっくりたのちみにしてりゅね!!」
青年は広げたシートの上に、重箱をこれでもかと並べていく。
とても一人と一匹で食べるには多すぎる量だ。
「おにいしゃん、これじぇんぶたべてもいいの?」
「おお!! いっぱい食べろよ!! 早く食べないと、俺が全部食っちまうぜ!!」
「ゆゆっ! りぇいむ、はやくたべるよ!!」
そういうや、重箱に食らいつくれいむ。
男も負けじと片っぱしから箸をつけていく。
「……おかあさん!! まりさもあれたべたいよ」
「ゆっ!! いまでていったら、あのおじさんにころされるから、でていかないでね」
「ゆゆ――……」
「むーしゃむーしゃ!! ちあわちぇー♪」と頬にいっぱいの食べ物をつけて重箱を食い荒らす青年とれいむを見て、まりさ一家はさらに腹が立ってきた。
見たことのない食べ物だが、今まで嗅いだこともないいい香りが一家のところまで届いてくる。
自分が食べたこともない美味しそうな食べ物を、なんであんな愚図のれいむが食べることができるのか。
できることなら、今すぐ二人を倒して、その弁当を横取りしてやりたい。
しかし、それでもこの両親は理性的だった。
普通のゆっくりなら、あの夜のことなど忘れて、我先にと食べ物につられて出ていくだろう。
食べ物で頭がいっぱいになりながらも、しっかりとあの夜のことを覚え自制しているあたり、普通のゆっくりよりは多少脳の回転がいいようだ。
自身もしっかりよだれを垂らしながらも、今にも出て行こうとする子供たちを制し、その光景をやっかみの籠った視線で見続けている。
「いやあ、食った食った。なんだ、お前もう食べないのか?」
「ゆー、もうたべりゃれにゃいよ!!」
「なんだよ、デザートもあったんだがな」
「ゆゆ!? りぇいむ、でじゃーとたべりゅよ!!」
「お前、食べられないって言ってなかったか?」
「でじゃーとはべつばりゃだよ!!」
「なんだ、その都合のいい言葉は……」
青年はそんなれいむに呆れながらも、内心笑いながら、里で一番人気のあるケーキ屋のシュークリームを皿の上にこれでもかと乗せてやった。
シュークリームの山にかぶりつき、クリームとホイップでサンタクロースになるれいむ。
男もそんなれいむを見ながら、両手にとって口にした。
そんな中、皿の上に高く盛り付けたシューが雪崩を起こして、シートの外に何個か落ちていく。
「あっ、しゅーくりーみゅが落ちちゃったよ!!」
れいむは慌ててシューを回収しようとするも、青年がれいむを呼び止める。
「れいむ、そんな汚れたシュークリームなんてほっとけ。きれいなのが、まだ皿の上にいっぱいあるぞ」
「ゆー……でも、もっちゃいないよ」
「いいか、れいむ。人間は地面や床に落ちた食べ物は汚いから食べないんだ」
「ゆゆ!? りぇいむ、いままでじめんにおいたごはんをちゃべてたよ!!」
「それは前の家の時だろ。そんな地面に落ちたバッチイ物食べるのはお前の親や姉妹のような都会派(笑)くらいなもんだ。
真の都会派ってのは、地面に落ちたものなんて食べないんだよ。
お前もあんな親のようなエセ都会派なんかより本物のセレブになりたいだろ。
だから、これからは落ちたものなんて絶対食べるなよ」
「ゆー……わかったよ。りぇいむ、おちたものはもうたべないよ」
分かったといいつつ、落ちたシュークリームに目が行ってしまうれいむ。
今まで食べ物を無駄にできる環境になかったれいむからすれば、どうしたって勿体ないという感情が消えないのも仕方がない。
青年は仕方ないと笑いながら、「あれはれいむの代わりに鳥さんや蟻さんが全部食べてくれるよ」と教えてやった。
れいむも現金なもので、その言葉を聞くと食べ物が無駄にならずに済むと思ったのか、「鳥さん、おいしくたべてね!!」と近くの鳥に一声かけて、再びシューの山に食らいついた。
青年も次々とシューに手をつけていった。
「ありすはとかいは(わらい)でも、えせとかいはでもないわよ!!!」
青年の言葉に怒り心頭の母ありす。
子ありす達も、そんな青年の言葉に相当腹が立ったのか、「そうよそうよ!! あんな、いなかもののおじんにほんとうのとかいはなんてわかりゃしないよ!!」とその場を飛び出そうとしていた。
ありす種はゆっくりの中では比較的知的な種であるが、こと発情時と都会派の尊厳を傷つけられた時は、理性は簡単に飛んでしまう。
しかし、すんでのところで、父まりさがそれを制する。
青年に馬鹿にされたことは腹がたつが、まりさはありすほど都会派という言葉に執着はないし、ここで出て行ったらあの夜の二の前であることをしっかり覚えていた。
体中でありすの口を塞ぐまりさ。大声を出して見つかっては堪らない。子まりさにも、子ありすを止めるように小声で命令する。
「ふがふが(怒)!!」と、しばらく落ち着かなかったありすだが、まりさの必死の抑えになんとか落ち着きを取り戻したようだ。
一方の青年とれいむはというと、昼食とデザートをこれでもかと食べて、膨らんだ腹をさすりながら、横になっていた。
れいむなど、明らかに元の体積の2倍以上になっている。正しく、ゆっくりの神秘である。
青年はそんなれいむを自分の腹に乗せて、やさしく頭をなでてやる。
腹はいっぱい、さらに昼下がりの陽気と青年の手が気持よく、れいむは最高のゆっくりタイムを満喫していた。
「それにしても、お前が俺のゆっくりになってから、ホント毎日幸運続きで堪らないぜ!! まさしくおまえは幸運のゆっくりだ!!」
「ゆー……おにいしゃん、れいむがしあわしぇをはこぶゆっくりってほんとうなにょ?」
「なんだ、まだ信じられないのか?」
「しんじりゃれないよ。だって、りぇいむ、おかあしゃんやおねえちゃんにいちゅもだめなこっていわりぇてたもん……」
「お前の家族が馬鹿ばっかなんだよ。実際にお前が俺の家に住むようになって、俺の生活は一変したんだぜ!! これもお前のおかげだぜ!!」
「ゆー……」
れいむは今一信じられないといった感じで、青年の腹の上で首をひねっている。
今まで疎まれて生活してきたれいむにとって、男の言葉が信じられないのも無理はないだろう。
一週間前、青年はこのれいむをゆっくり一家との取引で受け取ると、一家を逃がしてやった。
別にまりさとの約束を律儀に守ったわけではない。
このとき青年の頭は里で流れているある噂でいっぱいで、一家などすでにどうでもよくなっていたのだ。
その噂とは、こういった内容である。
ゆっくりの「取り替え子」は幸せを運ぶ
取り替え子とは、一般的に人間の夫婦から妖魔や妖精が生まれることを指す。
最も、本当に人間から妖魔や妖精が生まれるのかというと、そんなことはいかに幻想の名を冠する幻想郷とはいえ滅多にあることではない。「本当の」取り替え子が生まれる確率は、それこそ億分の一といったところである。
大抵の取り替え子は、退屈を持て余した妖精や妖魔が、悪戯で人間の子と妖精や妖魔の子を取り換えたりすることを指すのである。
しかし、ゆっくりの場合はこれとは事情が異なる。
人間の「本当の」取り替え子は、代を重ねるごとに薄まっていった潜在的な妖魔・妖怪・妖精などの因子が、何らかのきっかけで突然発現することを指すが、ゆっくりは種の違う個体と日常的に交尾をするので、違う個体の因子が体内に普通に蓄積されている。
基本、親の種でしか子供は生まれないが、何らかの条件が重なり、両親とは別の種が生まれるのもさほど少なくはないのだ。
しかし、例え生まれても先のまりさ一家のように自分の子と認めずいじめ、結局殺してしまったり、例え親が可愛がっていても、その馬鹿で傲慢な種族特性から、取り替え子が生まれても生き残れなかったりするケースが多く、ほとんど確認が取れていないのが現状である。
そんな少ない事例ながらも、取り替え子の目撃例は何件か存在し、中でもそんなゆっくりの取り替え子を手に入れた人間は、次々と幸運が舞い込んできたらしい。
取り替えれいむを手に入れたある商人は、次の日から金回りが良くなり、今では里有数の豪商になっている。
取り替えまりさを手に入れた農家のせがれは、自分の畑から古代のお宝を掘り出したり、森の中で足を滑らせて落ちた崖の下で、誰も知らない松茸の群生地を発見した。
取り替えありすを手に入れた孤独な根暗男は、晩年になって里一番の美女を物にし、次々と多くの友人が出来ていった。
取り替えぱちゅりーを手に入れたとある三流学者は、今では河童と意見交換できるほどの知識をその頭にため込んでいる。
これらはすべて噂の域を出ない代物である。
しかし火のない所に煙は立たないというし、実際にこれらの成功者が実在しているのは確かである。
しかも、ここは外の世界とは隔絶された幻想郷。
外なら四つ葉のクローバーなどただの願掛けにすぎないが、ここは神の居る世界。願いがかなうことも茶飯事だ。
この話を聞いて、「そんなの出鱈目だ!!」と切り捨てる者は、この幻想郷に住む資格はない。
そんなこともあって、青年は多少の疑いと期待を込めて、このれいむを譲り受けることにしたのだ。その時は「ご利益があれば儲けもの」くらいの感覚でしかなかった。
しかし、さっそく次の日からご利益が舞い込んできた。
青年は里のある食品店で働いているのだが、最近売上が伸びてきたので従業員全員に昇給することになった。
これだけなら店の営業努力の結果と片付けられるが、近々昇進するはずだった同僚が妖怪に殺され、その後釜として青年が昇進されることになった。
まりさ一家に荒らされた部屋の掃除をしてみれば、家具の隙間から金が見つかる。
河童印の自動販売機で飲み物を買えば、釣り口には小銭が残されている。
買い物をすれば、レジ係が釣銭を多く寄こしてくる。
家に帰る途中、万札が風に舞って青年のところに落ちてくる。
雨上がりの道でとある富豪に水を撥ねられ、洋服代として大金を支払われる。
他にも日を重ねるごとに、次々と青年に金が舞い込んできた。
さすがにここまでくれば取り替えれいむ効果か!? と考えるのが普通だろう。
青年は、最近幻想郷で流行りだした宝くじを買ってみることにした。
するとそれも大当たり!!
若い身空で豪邸を建てられる金が、一瞬にして舞い込んできたのである。
こうなっては、男がこのゆっくりれいむを可愛がるのも無理はないだろう。
しかもこのゆっくりれいむ。今までの生活が生活であったせいか、ゆっくり特有の傲慢さがなく、とても大人しく素直なゆっくりだった。
最初は姉妹が殺されたところを目撃したこともあってか、なかなか青年に心を許さなかったが、次第に青年が自分に害を与えることがないばかりか、やさしくしてくれるのが分かると、今までの寂しさや辛さも相まって、完全に青年を信頼するようになっていった。
青年の方も、一人暮らしの寂しさを紛らわせるため、犬か猫でも飼おうかと思っていたところなので、ちょうどいい同居人が出来たことを素直に喜んだ。
金もあり、新しい家族も出来た青年とれいむ。二人は今がまさに絶頂期のど真ん中にいた。
昼食を取り、横になりながら適当な談話をしていた青年とれいむは、いつの間にか日差しにあてられ、眠っていたようだ。
休日を利用して来ていたピクニックも、気づけば山に夕日が差し掛かっていた。
青年は、今も自分の腹の上でコックリコックリしているれいむを起こしにかかる。
「れいむ、もう夕方だ。そろそろ帰るぞ」
「ゆ~~~……? おにいしゃん、ゆっくりおはよう……」
「おはようじゃねーよ。そろそろ帰らないと、完全に日が沈んじゃうぜ。ほら、帰るぞ」
「ゆ~……」
「シャキっとしろよ。今日の夕食は最高級のステーキだぞ」
「ゆゆっ!! りぇいむ、おきりゅよ!! すてーきはおいしいよ!! はやくたべたいね!!」
現金なもので、ステーキと聞いた途端、完全に目を覚ますれいむ。
知的で素直な子だが、食の欲求には逆らえないのは、どのゆっくりも同じようだ。
以前、宝くじが当たった直後、青年が食べさせてくれたその味を思い出し、口からよだれを垂らしている。
男はそんなれいむの口を拭き、脇に抱きかかえると、リュックを背負って来た道を戻って行った。
[[続く>ゆっくりいじめ系552 チェンジリング中]]
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