ゆっくりの処分について ＜里内通達＞
里では、ゆっくりの不法投棄を禁じています。
ゆっくりはその大部分を占める皮、餡子に糖分が含まれており
その死体を放置すると悪臭や害虫の発生源になり、大変不衛生となります。
また畑に死体を放置すると土壌を変え作物の収穫量を悪化させる原因にもなります。
引き取り手のないゆっくりやゆっくりの死骸、原形をとどめていない餡子などは
里指定の集積場にあるゆっくり回収箱にまとめて捨ててください。
なお、生きたゆっくりを捨てる際には、中からゆっくりが飛び出たりしないよう
十分勢いをつけて投げ込んでください。
－報告－
先月のゆっくり回収に伴う里の収入は燃料アルコール１９樽でした。
税収補填のためこれからも回収への協力をお願いします。
－里長－
当社ではゆっくりから燃料など生活に役立つさまざまな製品を精製しています。
その幾つかについて説明しましょう。
ゆっくりには餡子をはじめ甘い物質、糖分がふんだんに含まれていることは
よく知られています。生きのいいゆっくりはよく洗えば生食できることもあり
出現当初は食材としての利用が進んだわけですが、大量発生や駆除による
環境破壊が公害として問題になりました。
地面に落ちたトマトが不衛生で食用に適さない同様、ゆっくりの死骸も
大半は生ゴミにしかなりません。それらが放置されることで腐敗臭や害虫が発生し、
衛生環境が悪化し食中毒など疫病の原因にもなりました。
そこで我々は、このあふれるゴミクズを回収し有効利用することを事業化したのです。
集められたゆっくりの死骸は、まず破砕機で細かく砕いて水に混ぜ泥水にします。
この泥水を沈殿槽とろ過槽に通し、透明な砂糖水を得ます。
この砂糖水を発酵させ燃料や殺菌に用いるアルコールを取り出すのです。
ゆっくりから燃料を取り出そうとする試みは、
脂質を多く含むれみりゃ種やフラン種を材料に研究されてきました。
これらの種に強い恐怖を与えて殺すと死骸はロウソクとして使えますし、
生きた状態で有刺鉄線を巻きつけると傷口から良質な油を搾り取れるのですが
残念ながら個体数が少なく、食用としても高額で取引されるため
生産コストが引き合わなかったのです。
これに対して、我々のアルコール生成事業は材料となるゆっくりの生死を問わないため
安価に大量に生産することができるというのが強みです。事業が軌道に乗り、
死骸を納入してくださった方に対価として製品であるアルコールを提供できるようになったため
里や畑にゆっくりの死骸が放置されることも減り、人里の衛生状況も改善しました。
アルコールを安定供給できるようになったため、アルコールを利用した照明器具や調理器具など
便利な生活用品を開発し人々の生活に役立てていただいております。
また、河童の技師との提携で「自動車」の開発も進めています。
これは人や荷物を軽々と運ぶことのできる機械ですが、畑仕事などに用いられているゆっくり車とは
比べ物にならない速度を出すことができ、ゆれも少ないので乗り心地も良くなっています。
普通の人間であっても魔法使いのように簡単に遠くまで楽に移動できるようになるのです。
いかがでしたでしょうか。
私たちはこれからも一層奮励努力し、皆様により豊かな生活手段を提供していく所存です。
アルコール精製所見学を終えた帰り道。
はしゃぐ子供たちといっしょにゆっくり車の荷台に揺られながら慧音は嘆息する。
ここにきて人間の生活の形は急激に変わりすぎているのではないだろうか。
有史以来、人間はさまざまな道具を手にし、人々の生活はそれらの力で豊かになってきた。
ゆっくりもまたそういう便利な道具の一つなのかもしれない。
ゆっくりに鉄棒（考案者の人形遣いはゆっくり棒と呼んでいる）を突き立てておとなしい家畜として
使役する方法を編み出したように、人間は身の回りのものを知恵を用いて道具に仕立て活用してきた。
しかし、突然現れいまだ素性もわからないゆっくりという存在に対して、
便利に使えるからといっていまのように依存を深めていってもいいものなのだろうか。
ある日突然現れたものはある日突然いなくなるかもしれないのに。
まとまらない思索を振り払い、慧音は車を引くゆっくりに鞭を入れた。
アルコール精製所・了
イラストでみたでっかいゆっくりを見て思いついたことを書き連ねてみました。
直接的な虐待描写が書けず、想像してみたらエグイなー、という状況設定しかできませんでした。
生きたまま仲間の死骸と一緒に粉砕機にかけられるゆっくりとか
鉄棒を突き立てられ魚の腐ったような目で勤勉に働くロボトミーゆっくりの描写については
想像力を逞しくして補完していただけたらと思います。
ちなみに慧音のゆっくり車はでっかいゆっくりの四頭立てです。
一頭だと非力な上、ぴょんぴょん跳ねるので引かれ心地が悪いのです。
最終更新：2008年09月14日 09:14
