白玉楼×ゆっくり系4 妖夢とみょん

妖夢は茶のおかわりを持って客間へ入った。
朝から延々映姫の説教が続いている。一体何度目だろう。妖夢は毎度の光景にウンザリしながら茶を注いだ。
「ですから貴方もそろそろ転生を考える時期ではないかしら。いつまでも此処に居ても仕方ありませんよ。もっと先を考えないと。」
「山田様~、私まだそんな年じゃないです~。」
「ヤマザナドゥです。千年経っても覚えられないのですか?」
「妖夢~、お菓子は~?」
「もうありませんよ。一刻経って無いのにアレ全部食べてしまわれたんですか?」
「足りないわ~。お腹空いたわ~。」
「西行寺さん、人が話をしているときに…」
「山田様~、さっき食べたの美味しかったですよね~。ゆっくりと言うんです~。お茶請けにぴったりなんですよ~。タダだし。」
「ヤマザナドゥです。貴方は人の名前を…」
「最近は里のお菓子も美味しいんですよ~。」
「そんな事より貴方の将来を考えなければなりません。妖夢さんもいらっしゃい。貴方にも話す事があります。」
「妖夢~、お菓子買ってきて~。せっかく山田様がいらしたんだから~、お持て成しは誠心誠意で~。」
「そう、貴方は少し人の話を聞かな過ぎる。」

こんなのに付き合ってられない。妖夢は逃げる事にした。
「それじゃあ買ってきます。下界のお菓子ですね?時間掛かりますよ。」



用を済ませた妖夢が白玉楼さして飛んでいた。まだ日は高い。
するつもりの妖夢だったが、直ぐに済んでしまった。元々菓子を買うだけなのだ。
白玉楼に帰れば映姫の説教がまっている。早く帰る程説教は長くなる。妖夢は河原の辺で時間を潰す事に決めた。
「とはいっても遅くなれば理由を聞かれるし、なんて言おう。」
言い訳を考える。
「菓子が売り切れていたので無理を言って作ってもらいました、でいいや。」我ながら名案だと一人頷く妖夢。
名分が捏造出来たので思う存分ゆっくりしようと、川傍の大岩に横になって河原の風景を眺める。
「山田様が本名呼ばれるの嫌がるって知ってるのに、幽々子様は連呼するんだから。」
風が心地良い中、妖夢は物思いに耽る。
「いい加減愛称で呼んであげれば良いのに。山田様も頑張って考えたんだろうし。ヤマダナドゥだっけ?ヤマダジャゾゥ?」
彼岸の住人のネーミングセンスは分からない。

「「「ゆっくりしていってね!」」」
唐突にあげられた大声に、妖夢は身を起こした。見れば草むらからゆっくりの集団が出て来るところだ。
「なんだゆっくりか。」
「ゆっくりしていってね!」
妖夢はゆっくりに興味など無い。無視して横になる。
「「「ゆっくりしていってよー!ゆっくりしていってよー!」」」
寝転んでるんだからゆっくりしてるに決まってるじゃない。妖夢は思ったが、うるさいので改めてゆっくりに向き直る。
ゆっくりれいむとゆっくりまりさが五・六匹群れを成している。
「私はもうゆっくりしてるよ。そっちはそっちでゆっくりしててね。」
「「「ゆっくりしていってね!」」」
ゆっくりしているという言葉に満足したようだ。ゆっくりたちはのろのろと河原へ向かった。どうやら水を飲みに来たようだ。
そのうち帰るだろう。妖夢はまたまた寝転んだ。ゆっくりというのもみょんな生き物だ。本当に生き物なんだろうか?
幽々子が食べたがるからたまに捕まえてくるが、妖夢自身には言語を解するものを食するのに抵抗があった。

「ゆっくりしていってね!」
一匹のゆっくりれいむが菓子の入った紙包みに気付いたらしい。近付いてくる。
「これはあなたには関係無いものだよ。ほらみんなのところに戻りなさい。」
「ゆっくりしていってね!」
その声に反応したゆっくりが次々に集まってくる。
「「「ゆっくりしていってね!」」」
「これは駄目だよ。幽々子様のお菓子だから。みんな水飲んだら帰りなさい。」
妖夢はゆっくりたちに諭そうとするが、余計に騒ぎ出した。飛び跳ねて喚き出す。
「「「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」」」
「お菓子」という単語に反応したようだ。どうやらゆっくりはある程度言葉が理解出来るらしい。
妖夢は無駄な説得をする羽目になってしまった。
「駄目だよ。お使いで買ってきたんだから。」
「「「ゆっくりしていってね!」」」
いい加減妖夢は苛々してきた。こんなのはほっておいて別の場所に行こう。空を飛ぶべく、紙包みを手に取る。
「ゆっくりしていってよー!」
「あっ!」
いっぴきのゆっくりれいむが紙包みに体当たりを仕掛ける。紙包みが手から落ち、岩の上に菓子が散らばってしまった。
「「「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」」」
ゆっくりは満面の笑みで一斉に菓子に群がる。
流石の妖夢も腹が立った。なんという自分勝手な生物だろう。
妖夢は躊躇せずゆっくりに蹴りを加えた。
「ゆっ!」「ゆぶっ!」「ゆーっ!」
全匹蹴飛ばすと、妖夢は散らばった菓子を拾い集める。
蹴散らされたゆっくりたちは痛みに身悶えていたが、そのうち起き上がると妖夢に体当たりを仕掛けてきた。妖夢は呆れ返る。
此奴等は、何をどうすればどうなるという予測が付かないのか?これで自然で生きていけるのか?まあ所詮饅頭か。
饅頭。饅頭ね。手元の紙包みを見る。「幽々子様のお菓子」と言ったが、別に私が食べられないわけではない。
だけど家に帰るまでこれはお使いの品物であって、食べて良い物では無い。今日は色々あってお腹が空いた…。
足に当たってポコポコ跳ね返るだけのゆっくりを見ながら妖夢は考えた。
一回食べてみようか。でもやっぱり人っぽい顔してるしなあ。でも山田様も食べてたし。

それはお使いに出る少し前の事。お茶請けに小さなゆっくりが沢山入った器客間に持ってきて、妖夢は尋ねた。
「「「ゆっくりしていってね!」」」
「今はこんな物しか無いんですが、やっぱりこれ食べたら罪になるんでしょうか?」
映姫はゆっくりを手に取り、笑って答えた。
「ゆっくりに限らず、どの動物にも等しく命はあります。植物でさえも。それを食べる事が罪に値するとしたら皆餓死するしかありませんよ。」
「ゆっくりしていってね!」
「誰でも、どの生き物でも、他の生命を糧にして生きているのです。それは罪というよりも生き物の業と言ってよいでしょう。」
「ゆっくりしていってね!」
「大事なのはそれを正しく認識する事。そして己の糧となるものに感謝の念を持つ事。」
「ゆっくりしていってね!」
「『頂きます』『ご馳走様』という言葉はそういった意味も含んでいるのです。」
「ゆっくぶぶぶっ!」
「なるほど。感謝する事が大事なのですね。」
納得した妖夢だったが、たっぷり時間を掛けながら少しずつゆっくりをねじ切る映姫の手つきと表情には、感謝の念は微塵も見えなかった。

閻魔様がシロと言ったんだし食べちゃおう。妖夢は一番小さいゆっくりれいむを掴み上げた。一番始めに妖夢の菓子に気付いたゆっくりだ。
「ゆっ♪」
何か勘違いしたゆっくりが楽しそうな声を上げるが、妖夢の口が迫ったところで、自分が食べられる事に気付いた。
「ゆっくりしていってよー!ゆっくりしていってよー!ゆっくりしていってよー!」
驚いたゆっくりれいむに呼応するかのように他のゆっくりも声を上げる。
「「「ゆっくりしていってよー!」」」
口に入る直前で妖夢の手が止まる。ゆっくりたちは一瞬安堵の顔になった。
妖夢は先程の会話を思い返した。そうそう、ちゃんと言わないといけない。
「頂きます。」
言うが早いか額にかぶりつく。
「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛!」
「「「ゆっくり…!」」」
目を見開いて苦悶の表情を浮かべるゆっくりれいむに、他のゆっくりは為す術もない。
「漉餡かあ。私は粒餡派なんだけどな。」
不平を述べながらもゆっくりを食す妖夢。だが十分の一も食べる前に口の中が甘ったるくなってきた。人間の頭程もある饅頭では致し方ない。
本来食べ物を残すのはいけない事だが、まだ生きてるし構わないだろう。妖夢は食べかけのゆっくりを地面に降ろした。
「…ゆーっ!…ゆーっ!」
目を見開いて荒い息を上げている。額が少し欠けたぐらいだから大丈夫だろうと妖夢は判断した。
「ご馳走様。」
感謝の念を忘れずに言う。生きている本人に言うのだから効果覿面に違いない。
「ゆっ…ゆっ…ゆっくり…ゆっくりしていってね…!」
涙をこぼしながら苦悶するゆっくりれいむに、妖夢は流石に悪い気がした。お土産に捕まえていこうと思ったが、逃がしてやろう。漉餡だし。
「ほらほら、ここにいるとみんな食べちゃうよ。」
「ゆーっ!」
妖夢の言葉を聞くや回りのゆっくりたちは一目算に散っていった。少し遅れて頭を囓られたゆっくりれいむが跳ねてゆく。
ようやく落ち着く事が出来ると、妖夢は再び寝転んだ。
「さてと。私もゆっくりしよう。」



「やっぱり捕まえておいたほうが良かったかな。」
微睡みながら妖夢は先程の事を考えていた。
幽々子の食費で白玉楼のエンゲル係数は90%の大台に達していた。菓子を買うぐらいならゆっくりでも与えたほうが家計に優しいのは明白。
しかし妖夢は思い直した。それは庭師の心配する事じゃないだろうと。
その時また草むらが揺れた。
なんでみんな私がゆっくりするのを邪魔するんだ。嫌な顔をして起き上がる。
今度はさっさと追い払ってしまおう。いう事聞かなかったら切り捨ててやる。
草の間から顔を出したのはゆっくりみょんだった。
「斬ってやる。」
妖夢はゆっくりみょんが大嫌いだった。
妖夢に似た格好をしているそれは、他のゆっくりと違って卑猥な言葉を叫ぶ。
それを初めて目にしたとき、そばの紅白や白黒や、幽々子まで大爆笑したものだ。まるで妖夢本人が言ったかのように。
以来、妖夢はゆっくりみょんを手当たり次第殺戮してきた。この世からゆっくりみょんを全て消し去らんとするかの如く切り捨てた。
だから最近はあまり見なくなったのだが、生き残りがいたらしい。
さあ斬ろう。だけど他にも仲間がいるかもしれない。少し様子を見てからのほうが良いかな。妖夢はそんな事を考えながらゆっくりみょんに近付いた。
「ゆっくりしていってね!」
妖夢は驚いた。ゆっくりみょんにもまともな言葉を話すものがいたとは。じっくりと見てみる。
ゆっくりみょんが一匹。草むらの傍でじっと見ている。その傍に…妖夢の半霊とよく似た物体がいた。
その物体は妖夢の半霊とほとんど同じ形をしていた。ただ大きさが違う。ゆっくりみょんとほぼ同サイズだ。そして顔がついていた。
「ゆっくりしていってね…?」
妖夢が無言だったのでやや警戒の色を見せてゆっくりみょんが繰り返した。
「うん…ゆっくりするよ。」
取り敢えず答える。するとゆっくりみょん(半人)とゆっくりみょん(半霊)は嬉しそうな顔をした。
「ゆっくりしていってね!」
半霊と交互に飛び跳ねる。
ああ、ゆっくりみょんにもまともな奴がいたんだ。妖夢は感激した。
安心の顔をうかべて近付いてきたゆっくりみょん(半人)を妖夢は膝に抱き抱えた。ゆっくりみょん(半霊)がみょんのそばにふわふわと付いてくる。
「あなたこの辺に住んでるの?仲間とかは?」
「みょん?」
「まあ答えられるわけ無いか。」
妖夢の予想に反して、みょん(半人)は一定の方向に向き直った。みょん(半霊)も同じ方を向いている。
「あっちから来たの?」
「みょん。」
「あなた、私の言葉分かるのね!」
「みょん!」
なんて賢いんだろう!流石は私に似たゆっくりだ。自讃を混ぜつつ妖夢は感激した。
半人半霊双方の頭を撫でてやる。
「ゆっくりしていってね!」
「はいはい。ゆっくりします。」
妖夢とみょんは川の流れなど見つつ、ゆっくりした時間を過ごした。



そろそろ時間になる。妖夢は帰ろうと立ち上がった。
膝から降ろされたみょんがそばの紙包みに目を止める。食べ物だと気付いたらしい。じっと見ている。
「残念だけどこれは上げるわけにはいかないの。」
「みょん!」
一発で理解出来たらしい。私に似てなんて行儀良くて賢くて可愛いんだろう!巫女や魔法使い似のゆっくりと大違いだ。妖夢は自讃と中傷を交えつつ感激した。
みょんは我慢していが、腹が減ったのだろう。残念そうな顔は隠しきれない。
妖夢はそんなみょんがいじらしく感じられた。
「ねえみょん。うちに来る?今は上げられないけどうちに来れば分けて上げるよ。帰りもここまで送ってあげる。」
「みょん!」
「じゃあ行こっか!」
妖夢は右手にみょん(半人)を抱え、左手に紙包みと剣を持って飛び立った。みょん(半霊)は妖夢の半霊が押していった。
場合によってはこの子を飼っても良い。というか飼いたい。これだけ物わかりが良くて賢くて可愛ければ幽々子様も許してくれるだろう。
巫女や魔法使いにこの子を自慢してやりたい。そんな事を考えながら妖夢は帰り道を急いだ。



妖夢が白玉楼に戻ると、泣きながら西行妖に灰を撒き散らす映姫と、その横で灰を頬張る幽々子がいた。
妖夢はなるべく見ないようにして通り過ぎようとした。
妖夢の姿を認めた幽々子が近付いてくる。
「お菓子!お菓子!」
「こんなところでなんですか。西行寺家の名が泣きますよ…。お茶入れるから客間で待ってて下さい。」
妖夢は厨房に行き、みょん(半人)を下に降ろした。
「少し待っててね。今用事を済ませるから。」
「みょん!」
妖夢は菓子と急須が載った盆を持って客間へ向かった。
「「「ゆっくりしていってね!」」」
客間に入った妖夢は盛大な声に迎えられた。なぜかゆっくりが五・六匹数珠繋ぎになってテーブルの上にいる。その一匹は額が欠けていた。
「妖夢~、お土産がいらしたわよ~。小町さんも~。」
「ゆぶぶぶぶぶ!」
「「「ゆ゛っく゛り゛い゛い゛い゛い゛い゛!」」」
幽々子の向かいに小町が座っている。その隣で映姫は憮然とした表情で押し黙っている。幽々子がゆっくりを頬張っている。ゆっくりたちが恐怖に身を縮めている。
「小町さんが~、ゆっくりを~、お土産に~、持ってきてくれたの~。」
はあそうですか。妖夢は呟いた。
「さあ映姫様、帰りましょう。」
「私は休日なのですからどうしようと勝手でしょう。大体貴方仕事はどうしたのですか。」
「あたいは上司から映姫様家に帰して休ませてこいって言われて来たんです。だからこれも仕事のうちですよ。」
「「「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」」」
ゆっくりは幽々子に命乞いするのは無駄だと思ったのだろう。映姫に向かってしきりに叫んでいる。
「貴方にとって直属で最高位の上司はこの私『四季映姫・ヤマザナドゥ』でしょう。」
「ヤマジャナドゥ?」「シャバダバドゥ?」「シュビドゥビドゥ?」「シュヴァルツシルト?」「狂乱の銀河?」
名前を聞いたゆっくりたちが微妙な反応を見せた。山田はそれに向かって殺意に充ち満ちた視線を送りつつも、最大限の努力で平静を保った。
「正当な理由が無ければ私より下位の者にそんな権限は…」
「でも映姫様は今日は休みなんですよ。だからあたいは今日の最高位者に命じられるままに行動してるだけなんです。」
仕事しないと怒られちゃいます、抗議するならそっちに言って下さい。との小町の言に映姫は不満げだったが、やがて渋々頷いた。
「…わかりました。今日のところは帰りましょう。」
「そうですか~。もっとお話ししたかったんですけど~。残念です~。妖夢~、お見送りしましょう~。」
そういう事か。妖夢は納得した。幽々子様は何か手を打ったのだろう。ひょっとしたら小町様と示し合わせているのかもしれない。
詳細は分からないが説教が終わるのは妖夢にとっても喜ぶべき事だった。
賢いみょんも見つけたし今日はついてる。妖夢はほくそ笑んだ。

「それではまた近いうちに…。」
妖夢と幽々子は門の上で二人を見送った。二人の姿が十分離れたところで幽々子が口を開いた。
「小町さんが、山田様は休日中も人里を徘徊してるって心配していたのよ。
最近ゆっくりの裁判が多いらしくて、それはそれは沢山の裁きがあるらしくて。
何でもゆっくりは余り邪気が無い割に全部地獄行きになるから山田様は心身共に堪えていたそうなの。
休日くらい家でゆっくりさせてあげたいって、小町さん言ってたのよ。それ口実にして仕事さぼりたいって。だから使いを出しておいたのよ。」
はあそうですか。呟いた妖夢は二人の去って行く方を見やった。並んで飛んでいる二人はどことなく楽しげだ。
突然幽々子が大声を上げた。
「ヤマダアアアアアァァァァァーーーーーッ!」
屋敷に逃げて行く。
あの方は一体何をしたいのだろう。長年仕えている妖夢にも幽々子の本心は分からない。
映姫は戻ろうと藻掻いていたが、小町に手を引かれて次第に見えなくなっていった。

「そうだ、みょんにお菓子をあげないと。」
妖夢は急いで屋敷に戻る。
庭に降り立ち客間を見ると、幽々子の姿が見えない。てっきり土産のゆっくりを躍り食いしていると思っていた妖夢は客間に上がってみた。
テーブルの上にりぼんや帽子が散乱している。
「あの女もう食い尽くしたのか…。」
妖夢は主の食欲に呆れ返りながら厨房へと向かう。
「みょん、お待たせ。…幽々子様、それは…!」
「もぐ(妖夢、どうしたの?)」
妖夢が指さした先には、幽々子に食らい付かれたみょん(半霊)と驚愕の表情をしたみょん(半人)があった。
「もぐもぐ(綿飴美味しいわ~)。」
みょん(半霊)は既に安らかな表情をしていた。
みょん(半人)は白目を剥いてガクガク痙攣している。
妖夢も衝撃にみょん(半人)と同じ表情になっている。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
みょん(半人)の口からはひたすら叫びにもならない声が漏れていた。
おねえちゃんはどこなの?おねえさんはだれなの?なんでみょんを食べてるの?なんで何も見えないの?なんでまっ暗なの?
みょん(半人)はわけの分からない事態にただ震えていた。そのうち暗闇の中に幽かに光のようなものが見え始めた。
あの光のところに行けばゆっくり出来る。みょん(半人)はそんな気がした。
もう少しで届く。なんて暖かい光なんだろう。みょん(半人)の意識は陶酔のうちに消えていった。

「ちっ、ちちち、ちーんぽっ!」
「なっ!」
「もぐ(あらあら)。」
叫び声を上げるとゆっくりみょん(ちんぽ)は、痙攣状態から一変して走り出した。
ぐるぐると幽々子の回りを周回し、妖夢の前まで来て飛び跳ねる。その姿は先程までの賢そうな雰囲気は見られない。
幽々子がみょん(半霊)を食べ終えるとみょん(ちんぽ)は落ち着きを取り戻した。知性は取り戻せなかったようだが。
「ちちちちーんぽっぽ!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
「あらあら妖夢ったら。」
あれは貴方が食べるつもりだったのね。ご免ね妖夢。半分になっちゃったけど。
「ちーんぽっ!」
妖夢の頭を撫でながら幽々子は言った。
自分で食べたかったのね。貴方に似たゆっくりですものね。その瞬間妖夢の剣がみょん(ちんぽ)を切り裂いた。
「ちんぽっ!?」
ゆっくりみょん(ちんぽ)は瞬時に絶命した。
幽々子は真っ二つになった饅頭を拾って妖夢に差し出す。
「はい妖夢。ゆっくり召し上がれ。」
妖夢はしばらく放心していたが、やがてそれを受け取って食べ出した。甘い味が口に広がる。
「どう?妖夢。」
「幽々子様~。柏餅…美味しいです~。」
涙を浮かべて饅頭を頬張る妖夢を、幽々子は愛おしげな目で見つめていた。








翌日、楽園の裁判所ではゆっくりの魂がそれぞれの法廷に溢れかえっていた。
今まで個別に行われてきた裁判を簡略化し、迅速にする措置が成されたのである。
一番広い法廷ですら、何百ものゆっくりの魂で床も見えない程になっていた。
ゆっくりは魂になっても口々に何か喚いている。職員達はそれをウンザリした目で眺めている。
やがて大きな音と共に扉が開け放たれた。
一瞬で静粛に包まれた法廷の中、映姫は大股で歩み、壇上に登り、高らかに宣告した。

「我は楽園の最高裁判長『四季映姫・ヤマザナドゥ』である!!
これより十王裁判の判決を行う!!
被告!! 『ゆっくり』!!
被告!! 『饅頭』!!
判決は
地獄!!
地獄だ!!
地獄地獄地獄地獄地獄地獄!!
おまえたちはゆっくりだ
だがゆっくりさせぬ!!
穴に落ちるおむすびのように地獄行きだ!!
八熱地獄で舞い
八寒地獄で苦しめ!!」

(なんだ!!
えーき様
やればできる子だったのじゃあないか)



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最終更新:2008年09月14日 11:40
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