ある飼い主の苦悩

飼われているゆっくりがいます。バッチ設定あり。
東方キャラが出てきます。そのキャラと交流のあるオリキャラがいます。
ゆっくりの虐待描写はありません。むしろ人間いじめ。
最期にいろいろなSSから設定や内容を無断でお借りしています。この場でお礼とお詫びを申し上げます。
では本編です。



真実は一つじゃない、それこそ命の数だけあると言える。俺はそう信じてる。



人里の中にある大きめの居酒屋の中に入る。
ここは毎晩深夜までたくさんの客でにぎわうところだ。幻想郷の人間は基本お祭り騒ぎが好きなので毎日飲んでドンチャン騒いでいる人も多い。
そしてここでは本来食うか、食われるかの関係であるはずの人間と妖怪が一緒に飲んで、笑い合ったりもしている。むろん私もここで人間と酒を飲みかわす妖怪の一人だ。
本来は神社で宴会をやった方が楽しいし、ネタも手に入るのだが…神社も365日宴会というわけでもないし、そんな日だって酒が飲みたくなることもある。
そんなとき、私はここに来る。

居酒屋のカウンター席で、知っている顔を見つけた。
外の世界から来た人間で、ぶりーだーでもないのに飼っているゆっくり、それも元は野生だったゆっくりにゴールドバッチを与えたとかでそれなりに一目置かれている人間。
自分のペットには愛情を注ぐが畑を荒らしたゆっくりを潰したりもする、虐待派でも愛で派でもない人間。本人いわく自分は一番ゆっくりにとって真ん中にいる人間だと思う。だそうだ。
私たちから見たら赤子のような若さで、実際人間から見ても若者の部類に入る。
初めてあったときに少しからかってやろうと、飲み比べを持ちかけたら人間にしてはなかなか強かった。
仲がいいというわけではないが、合えば話はするし、偶然居酒屋であったら彼がつぶれるまで飲み比べをする…そんな関係だ。

とりあえずほかに親しい人妖も見えなかったので軽く挨拶して彼の横に座った。
「ああ…貴女ですか…」
「どうしたんです?元気ないですね?かわいいれいむちゃんに嫌われましたか?」
「まさか…そんなわけないでしょう?…飲みます?一杯なら奢りますよ?」
珍しく殊勝だ、いつもは私が来たらあいさつの次に勝負しようと言って、すぐに潰れてしまうのに。
「いろいろとね、いやなことがあったんですよ…すんませーん!!日本酒二つと赤れいむの串焼き!!」
「さっきまで落ち込んでたんじゃないんですか?」
「中と外の顔は使い分けています、あなたと同じですよ」
人間に同じ扱いされるのはなんかいやな感じがする。
「べつにゆっくりに嫌われたってわけじゃないですよ?れいむもちぇんも、その子供たちだっていい子にしています、あのれいむとちぇんだってなんとかリハビリを行ってる」
「だったら万々歳じゃないですか?」
店員が少し焦げ目のついた赤れいむを持ってきた。三匹が一本の串に貫かれ、甘そうなあんみつがかけられている。
赤れいむはまだ生きているようで震えながら「おか…ちゃ…」とか「ゆ…ゆ…」とか呟いていた。
「まあ、自分の周りだけならそうです…でも…すこし自分の信じているものが揺らいできましてね…」
「何があったんです?一杯奢ってもらいましたし、少しくらいなら話を聞いてあげてもいいですよ?」

ゆっくりゆうかの大規模な生息域があるって聞いて先月、旅に出たんですよ。
まあ、見つけられるとは考えてもいなかったし、見つけてもゆうかが俺に飼われることを了承してくれるかどうかは分からない、でも自分はゆうかを見たことがなかったから一目みたいと思ったんです。
ん?ゆっくりですか?半月ほどで帰る予定だったし、食糧も買い込んでたから心配はしていませんでしたよ、帰ってきたときも元気でした。
んで、旅の結果ですけど結局は無駄足でした。なんでもゆっくりんぴーすの連中が虐待お兄さんへの嫌がらせとかで流した偽情報だったみたいで…まんまと騙されました、
ゆっくりゆうかどころか本物の幽香さんに会っちゃいましたよ、正直生きた心地はしなかったけど頭下げて挨拶したら向こうも返してくれただけですんだのは不幸中の幸いというか…

そこまで口にして彼は赤ゆっくりを頬張った。
「ゆべっ!!!」「おね…ちゃ…」「どうちて…こんな…」

まあ、幽香さんに会ったことはそんなに重要じゃないんです、旅の途中で何個かこことは別の人里に立ち寄ったんです。
その村の人たちは自分のことを歓迎してくれました。自分は一泊したらすぐ発つつもりだったんですがドスまりさが村に現れたって言うんでしばらく滞在してみていこうと思ったんです。
最初、ドスは村長と条約を結びたいと言ってきました。前にここに来たドスと同じような内容で「人間はゆっくりに危害を加えない、ゆっくりは人間に危害を加えない」ってやつです。
んで、村長が契約書を持って来てお互いそれを確認した後署名をしました。これで条約は成立ということで何匹かのゆっくりがすぐに人間観察をしてましたよ。
人間の方も声をかけられたら返したり、無視したり。少なくともゆっくりを飼っている自分から見れば平和な光景でしたね。
で、俺ももう何も起こらないだろうなって思って出発の準備をしてたら事件が起こったんです。村人の一人が条約を知ってか知らずか、ゆっくりの家族を殺してしまったんです。
村は大騒ぎになるわドスまりさが村長を出せとうるさいわで、蜂の巣をつついたような大騒ぎでした。んで村長が対応に出て、ゆっくりと協議を始めたんです。
いや、自分でもびっくりしました。その条文は右側と左側に分かれていて片方はひらがな、もう片方はひらがなと漢字で書かれてたんです。
条約制定のときに村長はひらがなだけだと人間には読みにくい、だから片方は人間にも読みやすいように書かれてるって説明したんで俺は両方とも同じ分が描かれていると思いました、
たぶんあのドスもそう思ったんでしょう。
でも違ったんです。片方にはひらがなで「人間はゆっくりに危害を加えない、ゆっくりは人間に危害を加えない」みたいな内容が書いてあったんですが問題は反対側。
最初に漢字交じりでこう書いてあったんです。「左側に記述されている条文は、なんら効力を持たない。」って。
んで、そのあとはゆっくりは人間に労働力を提供するだの、ゆっくり内のトラブルも人間が裁くだの書いてありました。だから条約に違反したのはゆっくりの方だったんです。
村長は言ってました、「貴様ッ、条約を舐めているのか」って、条約というのは集団と集団の約束事、それを破ってはいけないと。それには俺も同感できました。
俺は最初汚ねぇと本気で思いましたよ、だって村長はわざと右側にゆっくりに読めないように書いていたんですから。
そのうえ村長は「条文全てに目を通す権利があり、義務がある。内容を理解する義務がある。理解できなければ申し出る義務がある」って言ってました。
もしこれがゆっくり対人間じゃなくて人間対人間だったら怒鳴ってたかもしれません。ドスは最初、「右側の文が読めない」と文句を言ってました、それに対し村長は「人間に読みやすい文で書いてある」としか言わなかったわけですから。
正直いうと村長に言ってやりたかった。条約というものは簡潔に必要なことを書くべきだ、最初から無効な文章が書かれている時点で条約としておかしい。
それ以前にちゃんとした条約にするべきならお互いがはっきりと理解し、誤解が起きないように配慮するべきものなんです。
だからわざとそういう風に事が運ぶようにしたお前の方が条約というものを舐めているって、あの時は本気でそう思いました。
いやね、わかってるんです、やつらがしょせんただの饅頭だってことは、あの長のいうとおり弱者は強者から搾取されるべき存在だというのも。
だからこそ強者たる人間が饅頭も使わないような卑怯な手を使ってほしくなかったんです。人間なのに饅頭より屑な事やってるなんて悲しいじゃないですか?

そこで彼は一息ついて二匹目のれいむを口に入れた。
「ゆっ…ゆっ…ゆっ…」
半分になって痙攣するだけだったれいむはふた口目で完全に消えた。

なんでこの男はここまでゆっくりを擁護するのにこうも非情に、無情にゆっくりを食べることができるのだろう?「まあ、あのドスが条約を結んだ直後に人から食べ物を奪おうとしたゲスだった可能性もあります、だからあの村長のとった行動も上の手ではあったと思いますよ、最上とは認めませんが」
彼は日本酒を飲み干すと店員にお代りを注文し、またしゃべり始めた。

次に立ち寄ったところでは歓迎はされませんでした、もともと閉鎖的な所だったようで村人たちは仲良しでしたけど自分に対しては皆そっけない態度をとってくれましたよ、
まあ、自分も一泊したらすぐ発つ予定でしたし外の世界にいたときから冷たくされるのには慣れてる、気にはしていませんでした。
その村ではある程度ゆっくりと人間の共存が成立していました、ゆっくりを飼っている人もいるようでしたし野生のゆっくりもめったに畑を襲わない。いい村だと思いました

そこでは人間に危害を加えたゆっくりは晒し首のように固定されてしばらく侮辱されるという罰があったんです。それはゆっくり側も了承しているようでした、
あくまで罰とのことなので人間もゆっくりは殺さない。罰が終われば森にかえす。
とてもいい方法だと思いました、ゆっくりは何が畑なのかわからないと思いますが…もともと野生のゆっくりに人間の常識を教えるのは手間がかかるので罰として恐怖を与え、
人里に来ないようにさせる…とても理にかなった方法だと思いました。
でも次の日、俺は感心したことを後悔しました。村の虐待お兄さんが俺にこっそり耳打ちしてくれたんです「実はあいつら無実なんだよ」って。
なんでも本当に畑を荒らしたゆっくりは彼がすでに捕まえて虐待しているっていうんです。
なぜ彼が俺にそんな事を教えてくれたのかは分りません。よそ者のいうことなんか誰も聞かないから自分は安心だという考えでもあったんじゃないかと思います。
…正直、嫌になりました。ゆっくりを虐待する趣味を理解することはできませんがそういう趣味の人間がいることは理解しているし虐待好きの友人も何人かいます。
でもその男とは絶対に友達にはなりたくないって思いました、虐待趣味があるなら趣味として、人に見せにくい趣味なら自宅でやればいいのに彼は自分の趣味のために、
ゆっくりと共存しようという人間、人間と共存しようというゆっくり両方をだましていたんです。最悪彼一人のせいであの村の人間とゆっくりの共存体制は壊滅するかもしれません。
だって真実が複数あるんです、人間にとってはあのゆっくりは畑を荒らした悪いゆっくり、そんなゆっくりが「自分は何もしていない」といっても彼らは信じない、仮に俺が口添えしたとしてもよそ者のいうことなんか信じない。
ゆっくりにとっては人間は悪いゆっくりを懲らしめるという名目でゆっくりを手当たり次第に虐めるゆっくりできない存在、そんな状態になれば衝突が起きて付近一帯の野生ゆっくりは駆除されるでしょう。
ん?真実は一つだろうって?そうです、真実は一つですよ、でも自分にとって真実というのはその人が信じて疑わないもののことを言うんです。
「真実はいつも一つ」といった奴が居るけどそんなのは大ウソだ、あなたから見たら俺はゆっくりを愛でてる人間に見えるでしょうが野生のゆっくりから見れば俺はゆっくりの召使なんです。
まあ、俺の言う真実ってのは立場、価値観の違いになるのかもしれませんが…


「結局、よくわからなくなったんです…よくゆっくり紹介の雑誌とかでゆっくりが変なとこに巣を作って勝手に自滅しているのを「何という餡子脳」とか笑っているけど…
自分より弱い者をいじめ、搾取するためだけにあんなに卑怯な手を使い、さらに同族の人間まで騙す、そんな人間の方がゆっくりより酷い、業の深い生物なんじゃないかって」
初めて見た、人間がゆっくりより劣ってるような言い方をする人間なんて。
「まぁ、結局は人間と饅頭は違うって事なんでしょうけど…やっぱりどっかで納得いけないんです、ゆっくりと暮らしすぎて頭が餡子になっちゃったのかな?俺…」
彼は最後のれいむを豪快に一口で頬張った。
「ゆがっ!!なにこ…れ゛え゛ヴぇっ!!ゆ、ゆぐぐ…だずげえ゛え゛ぇぇぇ…」
「おかしなもんです、ここまでゆっくり擁護発言しながらこういうゆっくりは躊躇なく食べることができる」
何となくわかった、この男はゆっくりを分けて考えている。
飼いゆっくりは愛すべき仲間。
野生のゆっくりは共存の対象、でも人間に危害を加えるなら非常な制裁も加えれる。
そしてここで出されるゆっくりのような家畜ゆっくりは純粋に食料としてしか見ないのだ。
人に家畜として飼われているブタを食べ物としてみる人間はいてもペットとして飼っているミニブタを食べ物としてみる人間はそうそういない、そんな感じだろう。
「ま、とりあえずひととおり話したらすっきりしました、まだふっきったわけではないですけど…ありがとう」
彼はそう言って店から出て行った。

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最終更新:2008年09月22日 03:24
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