ゆっくりれいむの一団がある家の庭へと現れた。
「ゆっきゅり!」
「ゆゆっ!!」
「ゆっきゅりついたよ!」
縁側で日向ぼっこしていた男がそれに気づいた。
「おや、ゆっくりじゃないか」
男は群れが子供ばかりであることに疑問を持ち、訊ねる。
「ところで君達、お母さんは?」
「おきゃあしゃんはおえさをとってるにょ!」
「あとからきゅるよ!!」
「ふーん」
れいみゅのりぇみょんに!!
その家の庭はなかなか広く、快適だったので、子供達は我先にとゆっくりしだす。
「ゆっきゅりー!」
「ゆっくりしちぇいっちぇね!」
「ゆゆー!おねえちゃんまってー!!」
「ゆー!ゆゆー!ゆ!」
「ゆ!ゆゆゆ!ゆゆー!」
男の盆栽を倒したり、彫刻など蹴倒したりなどしながら追いかけっこに興じるものが多数。
素っ頓狂な声で歌を吟ずるものもいる。
男は縁側から立った。
やがて、家の中からいい匂いがしだす。
「にゃんだかいいにおいがしゅるよ!!」
「ゆっくりできるにおいだね!!」
「おいちちょうなにおい~??」
男が再び現れたとき、その手には一抱えもある大皿があった。
男は皿を庭に据えると、もう一度引っ込み、こんどは”いい匂い”のもとを持ってくる。
「おにいしゃん!それなあに!!」
「おいちちょう!!かわいいれいみゅにちょうだい!!」
男が手に持ったいい匂いのもとを奪い取ろうと、その足めがけて攻撃を始める子ゆっくり。
「こらこら、今あげるから待っててね」
皿の上に”いい匂い”を放つ液体をあける。そうすると、甘くて素敵な匂いが一層強く香り立つ。
「ゆっきゅり!しゃわやか~!!」
「ゆゆ!これはれいみゅのだよ!」
「おねえちゃんのだってば!!」
早くも皿の覇権を争う子ゆっくり達。男は混乱しかけた群れをなだめる。
「これ。まずこっちのお水で体を洗ってね。それから順番に入ろうね。
みんな一緒に入れるからね」
「わかっちゃよ!!はやくおみじゅじゃなくて、あまあまでみじゅあびしたいよ!」
* * * *
餌を手に入れ、庭へと現れた親れいむは感激した。
さすがは自分に似てとっても可愛い子供たち。人間からせしめたらしい、とてもゆっくりしたもので遊んでいるではないか。
「ゆっくりかえったよ!!」
「ゆゆ!おきゃあさん!!」
「ゆっくりしちぇるよー!!」
「おかあしゃんもゆっきゅりする?」
子供らの遊ぶ皿へと跳ねてきた親れいむは子ゆっくりに問う。
「れいむのあかちゃん、このゆっくりしたものはなあに?」
「あまあまだよ!!」
「あまくてそれでいてさわやかでこくがあるよ!」
「それはゆっくりりかいしてるよ!もっとゆっくりくわしくせつめいしてね!」
「……んーとね!”りぇいみゅのりぇみょんに”だって!」
「りぇみょんに?」
”りぇいみゅの”はわかる。れいむたちが可愛いから、人間がれいむのために用意したものだからだ。
しかし、”りぇみょんに”なる物については心当たりがなかった。
「ゆっくりできることにはかわりないよ!あかちゃん!ままもゆっくりするからそこどいてね!!」
「おかあしゃん!まずはおみじゅでからだをあらわなきゃならないんだよ!!」
「ゆゆ!そうなの!!それじゃあゆっくりみずあびするね!!
あそびおわったらごはんにしようね!!」
とりあえずは、水を浴びて目の前のゆっくりを楽しむこと。
水浴びを終えた親れいむは取ってきた餌を脇において、皿に狙いを定める。
「ゆゆー!いっくよー!!」
「おかあしゃんもゆっきゅりだね!!」
親れいむのために、皿に空き場所をつくる子供達。
「ゆっくりするよ!!」
親れいむは皿に飛び込んだ。
* * * *
皿が揺れ、子れいむたちが浸っていた液体が跳ねる。
それは普段の水浴びのとき、子供達がもっとも喜ぶ”ぱしゃぱしゃあそび”だった。
「ゆゆ!」
「ぱしゃぱしゃあしょびだにぇ!!」
「あかちゃんたち!もっとゆっくりぱしゃぱしゃするよ!!」
親れいむは皿の中でより激しく飛び跳ねる。
「このおみずはとってもゆっくりしてるね!あまあまでとってもさわやかー!だよ!
ぱっしゃ!ぱっしゃ!!」
その時、今まできゃいきゃいと騒いでいた子ゆっくりに変化が起こった。
「ゆあーん!!ゆっきゅりできにゃいよー!!」
「ゆゆ!!おめめがいたいよ!!??」
突然の子供の変調にうろたえる親ゆっくり。
「どうしたの!?もっとゆっくりしようね!!??」
きっと自分のゆっくりが足らなかったに違いないと考えた親れいむは、今まで以上の力で跳びはね、皿を揺らす。
しかし、他の子供たちも異常を訴え始める。
「いぢゃい!!」
「れいみゅもゆっくりおめめがいたくなってきたよ!」
「どぼちて!!??もっとゆっくりしてね!!??」
ばっしゃんばっしゃん。
「やめてえええええ!!!」
「おかあしゃんのせいでゆっきゅりできにゃいよぉぉぉ!!!!」
「ゆぅぅぅぅ!!!おめめがぁぁぁぁ!!!」
「どぼじてぞんなこというのおおお!!!ごんなにいっしょうけんめいぱっしゃぱっしゃしてるのにぃぃぃぃ!!!」
恐慌を起こすれいむ。「ゆっくりできない→ゆっくりする」という思考の悪循環によって、
ぱしゃぱしゃをやめるなどとは思いつきもしない。
「まだなの!?まだたりないのぉぉぉぉ!!??」
「おめめがみえにゃいよぉぉぉぉぉ!!!!」
「たしゅけてぇぇぇ!!!!」
もはやゆっくりしているものなど一匹もいなかった。
「ぱしゃ!ぱしゃ!!……ゆ?」
ふとしたことから、親れいむの目にも液体が入った。
「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ!!!!!!!!!」
親れいむは今まで感じたことのない痛みにのたうった。
「おめめが!!れいむのだいじなだいじなおめめがゆっくりいたいよぉぉぉぉぉ!!??」
親れいむの大きな体がのたうつことでさらに液体が飛び散り、被害は拡大していく。
「さっきからそういっちぇるにょにぃぃぃぃい!!!!」
「おかあしゃん!!ゆっくりしたいよぉぉぉぉ!!!!」
「たしゅけてぇぇぇぇぇ!!!!!」
「ぱしゃぱしゃしにゃいでぇぇぇぇ!!!」
「いたいのぉぉぉぉぉ!!!」
「ぱしゃぱしゃやめちぇぇぇぇぇ!!!!」
* * * *
男は家の中からその光景を眺めていた。
「そろそろいい頃合かね」
檸檬の果汁が良く染みたれいむで一杯の皿を、男は火にかける。
水分がぱちぱちと爆ぜ、れいむたちが熱さを感じ始める。
「おめめはいたいし、からだもあちゅくなってきたよ!!」
「こんなゆっくりできにゃいところはゆっくりでるよ!!」
目が見えないながらも逃げようとするゆっくりは、男の菜箸で次々と皿に戻される。
「どぼじてでられにゃいのぉぉぉぉぉ!!!!!」
「だんだんあちゅくなってきゅるよぉぉぉぉ!!!!」
男は火を強める。皿からこぼれないように、ゆっくりを並べ終えたためだ。この料理は火力が命。
「おおおおおああああづいいいいいい!!!!!」
「いぢゃいよぉぉぉぉ!!!!あちゅいよぉぉぉぉ!!!!!」
「ゆっぐりできにゃいぃぃぃぃ!!!!!」
「れいみゅのおめめがぁぁぁぁ!!!あんよがぁぁぁ!!!ぽんぽんがぁぁぁぁ!!!!」
「もっどゆっぐりじたかったよぉぉぉぉ!!!」
やがて皿から汁気が飛び、ゆっくりの表面にこんがりと焦げ目が付き、食欲をそそる香ばしい匂いが漂い始めたころ、
ゆっくりたちは全滅していた。
新鮮なゆっくりの檸檬煮。熱いうちに食べるのが最上。
多少べたつくので海苔で巻くなどしても食べやすく、
独特の食い合わせとぱりぱり、もっちりを同時に味わえて良いという。
おしまい。
■ □ ■ □
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最終更新:2008年11月14日 18:32