ゆっくりいじめ系1426 夢みるれいむの覚めない悪夢_02



れいむはふと、目を覚ました。
 四畳半ほどの白い部屋だった。白い床に白い天井。四方を囲む壁の内、一方が黒なのを除けばやはり白く染まっていた。
「………」
 見渡すと、目と目が合った。
 やはり、死んだはずのまりさだった。何度も死んだはずのまりさだった。れいむはこの施設できちんと躾られたゆっくりだが、数の数え方はまだ教わっていなかった。だから四より多くの数は理解できない。目の前のまりさが何回死んだのかもわからなかった。
 すべて、夢だったのか。夢の中でいくつもの夢を見ていたのか。れいむにはわからなかった。
「「ゆっくりしていってね!」」
 機械的に、何回目かわからない本能的な挨拶を交わす。
 頭に何も入ってこない。
「明日は、れいむ。お前の番だ」
 お兄さんの言葉が頭の中でこだまする。刹那的に生きるゆっくりにとって、明日とは眠って目が覚めたら来るものだ。当たり前に来るはずの、ただそれだけのもののはずだった。
 それなのに。
 れいむには、明日が来ない。
 いつまでたっても明日が来ない。
 当たり前にくるはずの明日が来ない。
 そんなことでは、ちっともゆっくりできない。
「「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!」」
 まりさに合わせて、無意識に声を上げている自分に驚く。今まで夢で何度も見たけど、現実では初めてのハズのことなのに、既にありふれた日常の習慣のようになってしまっている……!
「ま”りざああああああっ!」
「おわっ、れいむっ!?」
 たまらなくなって、まりさに飛びつく。そして、激しくすーりすりする。
「まりざあああああっ! まりざのあがぢゃんほじいいいっ! れいむにあがぢゃんちょうだいっ! れいむですっきりーじでぇぇぇぇ!」
「あ、あかちゃんっ!? あったばかりなのにずいぶんせっきょくてきなれいむだぜ!」
 れいむは必死だった。
 明日を迎えられないれいむは、なんでもいいから後に残るものが欲しかった。生きている証が欲しいのだ。それがなくては、とてもゆっくりできないのだった。
 また夢と同じ事が起きるなら、まりさは死んでしまう。だが、自分がにんっしんすればまりさがいた証が残る。
 それが情熱となって現れた。その熱にまりさはのぼせあがってしまう。元々ゆっくりは刹那的な生き物である。それに、レイパーにすっきりされるのならともかく、自分がすっきりする分には面倒がないから問題ないように思えた。このまりさも施設で躾られたゆっくりであったが、すっきりーの規制はまだきちんと教わっていなかった。
「「すっきりー」」
 だから、思う存分れいむですっきりーした。
 れいむの情熱はすぐに結実した。頭からあっという間ににょきにょきと、芽吹いて三つの実がなった。植物型の受胎だった。
 れいむはとても喜んだ。あまりに嬉しそうなだから、まりさも照れ臭くなった。でも、誇らしくもあった。
 だから、別れは今までの夢より辛かった。
「れいぶぅぅぅ! あがぢゃぁぁぁぁんんんん!」
「まりざぁぁぁぁ! おにいざんおねがいぃぃぃ! まりざをごろざないでぇぇぇぇ!」
 れいむは透明の箱に押し込められ、まりさは部屋に連れ去られる。
 今度の虐待はローラーに背中からゆっくりと巻き込まれると言うものだった。
 通常、片側から潰されると、餡子が寄ってきてゆっくりは破裂する。それを防止するために、まりさの頭には餡子を排出するための管が刺された。その管はお兄さんの熟練の技で、ローラーで中枢餡子が容易に吐き出されないよう刺されている。
 ローラーはひどく緩慢に動いた。そのたびにまりさは潰されていき、管からは命の源、餡子が漏れでた。時折、お兄さんは途中で死なないようにオレンジジュースをかける。
「おにいざん! おねがいじばずぅぅぅ! まりざをごろざないでぇぇぇ! まりざをだずげでえええぇぇぇ!」
 お兄さんには何度もまりさの生存を懇願した。だが、いつものように無言だった。まりさはまりさで、絶え間なく与えられるじわじわと与えられる苦痛で悲鳴以外の言葉を上げられなかった。
 だが、
「まりざあぁぁぁぁ、まりざあぁぁぁぁ!」
「ゆ、ゆぐぐぅ……れ、れいぶ、まりさたちのあかちゃん、ゆっくりそだててほしいんだぜ……」
「ま、まりざ……!?」
 最期にきて、まりさは悲鳴以外の言葉を発した。もうあと数ミリローラーが巻き込めば、まりさは絶命する……そんな段階で、まりさは自分の意志を取り戻した。死の間際、痛覚が麻痺したのかも知れない。通常のゆっくりにはありえない奇跡だった。
「だいじにそだてるよ……! まりさにまけないくらいゆっくりしたゆっくりにそだてるよ……!」
「れいぶぅ……まりさはいいゆっくりだったか……?」
「うん……! うん……! まりさはすごくゆっくりしたゆっくりだったよ!」
 まりさは微かに微笑んだ。
「もっど……ゆっぐり……じだがっだ……」
「まりざあああああああーーーーーーっ!」
 そして、まりさは永遠にゆっくりした。
 れいむは泣いた。子供を残したいだけの、つかの間の愛だった。しかし、このまりさは最高のゆっくりだった。世界一のまりさだった。
 凄惨な虐待の場でありながら、静謐で神聖な沈黙が場を占める。
 そんな中、今までの夢と同じくお兄さんは口を開く。
「明日は、れいむ。お前の番だ」
 淡々と告げられた。
 あまりにも凄惨な未来。だが、れいむは、
「れいむはいいよ。でも、あかちゃんはたすけて……!」
 その言葉が無駄になることを予感しながら、それでもれいむは力強く言った。
 そして、はじめてのすっきりーとまりさとの別れ。極度の疲労で、れいむは気を失った。



****


 れいむはふと、目を覚ました。
 四畳半ほどの白い部屋だった。白い床に白い天井。四方を囲む壁の内、一方が黒なのを除けばやはり白く染まっていた。
「………」
 見渡すと、目と目が合った。
「お、めをさましたんだぜ!」
 特徴的な三角の黒い帽子、金の髪を揺らして答えたのはゆっくりまりさだった。
 愛したまりさだった。
 愛してくれたまりさだった。
 この上なく幸せな気持ちで満たされた。
 そして、見上げた。そこには、二人の愛の結晶である赤ちゃんが……。

 いなかった。
 茎の跡形もない。わずかな傷痕すらない。
 なくなった。
 昨日の証がなくなった。未来への希望がなくなった。
 なくなって、しまった。

「ど、どうしたんだぜ……?」
 ぶるぶると震えるれいむに、まりさは声をかけた。
 やさしい声だった。だが、軽い声だった。れいむの苦悩に気づいていない。だって赤ちゃんを失ったならこんな冷静に聞けるわけがない。もっと苦しむはずなのだ。もっと悲しむはずなのだ。
 このまりさは、違う。
 ゆっくりの本能では同じだと認識している。れいむの理性では違うと叫んでいる。
 その矛盾が、
「ゆがああああああっ!」
 爆発した。
 一瞬だった。
「ゆううっ!?」
 れいむのいきなりの突進に、まりさは強かに突き飛ばされた。
「な、なにをするんだぜっ!? やるきならようしゃしないんだぜ!」
 まりさ種は、れいむ種に比べて活発だ。一発不意打ちを食らったぐらいで気持ちは萎えない。負ける気は無かった。だが、その威勢は自分の身体の異変に気づいてすぐさましぼんでしまった。
「ぎ、ぎゃあああああぁぁぁぁっ!?」
 れいむはただぶつかったのではなかった。食いちぎっていた。わずかだが、まりさのほおの辺りを食いちぎっていたのだ。これはゆっくり同士のケンカにおいて致命傷だった。ゆっくりのケンカは基本的には身体のぶつけ合いだ。だから、餡子の漏れ出す穴が空いたらもうおしまいだ。身体をぶつければぶつけるほど餡子が漏れてしまうのだ。攻撃も防御も出来ない。回避のために迂闊に動くことすらできないのだ。
 通常ならばれいむがまりさの皮を食い破るなんてことはできない。だが、限界を超えた激情が不可能を可能にしたのだ。
「こ、こうさんなんだぜ……」
 こうなったらケンカではなく殺し合いだ。施設で育てられたまりさに、致命傷を負わされて戦い続ける度胸も理由もなかった。
 だが。
「まりざがわるいんだあああぁぁぁ! れいむがあいじだまりざじゃない! ぞんなまりざがいるがらあがちゃんがいなくなるじ、あしたもごないんだああああっ!」
 れいむはもはや正気ではなかった。容赦なくまりさにぶつかりつづける。まりさはどうにか逃げようとするが、広さが限られた密室だ。逃げ場もないし、助けもない。すぐに追いつめられ、れいむの体あたりを幾度と無く喰らい、身体中の餡子を外に押し出されて永遠にゆっくりした。
 れいむは荒い息を整える。
 そして、久しぶりのゆっくりした気持ちを味わっていた。
「これであしたがくるよ……」
 お兄さんはいつも言っていた。「明日は、れいむ。お前の番だ」、と。なら、まりさがいなければ、明日が来てれいむの番になるのだ。そのはずなのだ。
「あれ……おかしいよ……?」
 鈍い餡子脳でも気がついた。まりさがいない。なら、明日を待つまでもなく、今日、それもこのあとすぐにでも、自分が虐待されてしまうのではないか。死んでしまうのではないだろうか。
「やっぱり、あしたは、こない……?」
 背後で、部屋の扉が開いた。
「ゆっくり、できない……?」
 振り向いた。
 ゆっくり用スイーツを持ってきた、お兄さんがいた。
 れいむは意識を失った。



****


  れいむはふと、目を覚ました。
 四畳半ほどの白い部屋だった。白い床に白い天井。四方を囲む壁の内、一方が黒なのを除けばやはり白く染まっていた。
「………」
 見渡すと、目と目が合った。
 何度も死んだまりさがいた。れいむの感情は、動かなかった。
 今まで見た夢の通りだった。まりさがいて、むーしゃむーしゃして、透明の箱に詰められて、まりさは隣の部屋で虐待された。
 虐待だけがいつも違った。
 今日の虐待はちょっと変わったものだった。
 まず、まりさにたらふくオレンジジュースを飲ませた。最初は「うっめ! これめっちゃうっめ!」と美味しそうに飲んでいた。だが、もうお腹いっぱいになってもお兄さんは限界まで無理矢理飲ませた。
 そして、まりさのぺにぺにが引き出された。それを包み込むようにチューブがあてがわれ、テープで固定される。チューブの反対の端は帽子を取った頭の中心に深々と突き立てられた。
「ゆががががががっ!」
 お兄さんはそこまでの作業を終えると、まりさをれいむの正面に置いた。
 まりさは痛みに痙攣していたが、れいむは声をかけるどころか眉一つ動かさなかった。
 しばらくすると、まりさは頭に刺さったチューブよりべつのことに苦しめられた。
 しーしーがしてくてたまらなくなったのだ。
 ゆっくりは身体の中の水分を一定に保つ必要がある。そのために、過剰に水分を摂取すればしーしーで排出しなくてはならないのだ。
「し、しーしーするよ!」
 生理現象には逆らえない。言葉にするまでもなく、しーしーが出始めた。
 しーしーはぺにぺにから出る。当然、そこに繋がれたチューブを伝わり、行き着く先は刺さった頭の中だ。
「ゆぎぎぎぎぎぃっ!?」
 最初はチューブに残った空気。次にしーしーがまりさの身体の中に注ぎ込まれる。それらはゆっくりに対して致命的な害になるものではない。だが、異物を身体に注ぎ込まれる苦痛は別だ。
「いぎゃいぃぃぃ! いぎゃいぃぃぃいいいぃぃぃぃぃ!」
 躾の体罰でも味わったことのない、体内からの未知の苦痛が身を焦がす。
 混乱する餡子脳でも、しーしーを続ければ痛みが止まらないことがわかった。だが、
「しーしーどぼじでどばらないのおおおおぉぉぉっ!? いぎゃい、いぎゃい、ゆぎゃああああああああっ!!!」

 止まらない。しーしーは元々身体の余分な水分を排出するためのものだ。排出したはずの水分が戻ってくるのだから、止まるはずがない。
 痛みは永劫に続くかと思われた。
「う、うんうん! うんうんでるよおおおぉぉぉ!」
 ゆっくりも、水分を摂りすぎてゲリになることがある。ぺにぺにからの排出が無理となった今、身体はうんうんでの水分排出を選んだ。
 だが、それはお兄さんによって阻まれる。用意したのはゆっくり用のうんうん栓とテープ。それでがっちりと肛門を塞いでしまう。
「うんうんでないぃぃぃ! うんうんでないいぃぃ! だずげでえええぇぇぇ!」
 苦しみに七転八倒するが、ガッチリ固定されたぺにぺにと体内を繋ぐチューブも肛門を塞ぐ栓も外れない。
「ゆげえええぇぇぇ!」
 しーしーもうんうんもダメとなれば口から吐くしかない。しかし、それはお兄さんの素早く阻まれる。驚くほどの早業で口を縫うと、トドメとばかりにテープで固定した。
「んー! んごぉぉぉ! んごごごおおおぉぉぉぉ!!」
 苦しみに泣く。涙がどっと溢れる。滝のように流れるそれは、通常のゆっくりの流す量ではない。異常な状態に、身体は涙で水分を出そうとしているのだ。これまたお兄さんによって阻まれる。素早く縫いつけ、テープでだめ押しだ。
 そして、まりさはうなって震えることしかできない不気味なオブジェと化した。
 時折、お兄さんはまりさをゆっくりと上下に振る。水分が偏り、皮が破れることを避けるため中を攪拌しているのだ。
 だからまりさはなかなか死ねない。川に落ちて水に溶けてしまうゆっくりとは違う。体内の水分量は限りなく限界に近いが、越えているわけではないのだ。
 容赦のない責めを、れいむは無感動に見ていた。どうせ、これも夢。どうせ、明日は来ない。目の前でまりさが苦しんでいるだけ。自分は苦しくない。見ているだけ。もう考えるのをやめてしまったのだ。
 やがて、まりさの震えが弱まる。いくら水分量は限界ギリギリ限界と言っても、本来は排出すべきしーしーを体内に注ぎ込むという暴挙を続けているのだ。ゆっくり特有の不思議餡子変換機能にも限界に達していた。
 もう死は近い。それを見極めると、お兄さんはまりさを押さえつける用に手を載せた。
 それを、全力で振動させた。強烈な振動に、死が近づいたまりさの頬に赤みが差した。
 発情状態になったのだ。
 生き物は死が近づくと子孫を残すべく子種を出そうとする。ゆっくりにもそれがどうやら当てはまるらしい。
 そして、お兄さんは一気に拘束を解いた。目と口を覆うテープを剥がし糸を抜き、チューブを取り去った。あざやかな手並みだった。
 瞬間的に、ありえないほどまりさのぺにぺにが膨張した。まりさの体長もこれる成人男性の腕ほどもあるそれは、もはやマグナムを越えてキャノンだ。山の神もびっくりの威容だった。
「んほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
 そして、一気に放出した。
 すっきりーで放出する子種ではなかった。
 しーしーでもなく、うんうんでもなかった。
 それらすべてが混ざった、液状化したまりさの中身全てが、巨大なぺにぺにから放出された。
 その時のまりさは、恍惚と苦しみが同居したおぞましい表情をしていた。
 だが、れいむは見ることが出来なかった。
 まりさの放出物が部屋を隔てるガラスに飛び散り、視界を奪ったからだ。
 壮絶な惨劇を前にして、それでもれいむの感情は動かなかった。
 だが、表情は動いていた。
 れいむは微笑んでいた。


****


「資料届けに来ましたーっ!」

 ゆっくり加工場。その研究棟の一室に、研究お兄さんは資料を届けに来ていた。
 部屋の中では資料をまとめる研究お姉さんの姿があった。まとめる資料の中には、見かけない色をしたゆっくりのサンプルがあった。
「あら、ありがと……」
「いただきまーすっ」
 研究お姉さんが止めるヒマもなく、研究お兄さんはサンプルをひとかけらちょうだいしていた。
 ここゆっくり研究棟では常に新しい味の模索をしている。こうして新製品を味見できるのが大きな魅力のひとつだった。
 とは言っても、最近研究お兄さんは新しい味に出会っていない。ゆっくりは基本的に虐待の程度によって味の深みと濃度を変えることができるが、その研究もされつくされている。最近は熱したナイフで薄切りにしてみたり過剰水分を摂らせて中身全部を餡子ジュースにしてみたりなど、もっぱら変わった食感の研究が大半だった。
 サンプルとしてあったのはただのゆっくりの欠片。これぐらいいただいてもいいだろうと研究お兄さんは思ったのだが……。
「ふわあ……」
 陶然となった。
 初めての味だった。基本的な味そのものはゆっくりに間違いないのだが、ふんわりとやわらかいこの独特の甘味は初めてだった。うまい。しかし、言葉にならない。あまたのゆっくりの味わいを文章化して記録してきた研究お兄さんをして、言語化ができない。それが戸惑わせる。まるで目覚めた時は覚えていたのに時間が経つと思い出せなくなる、夢のようなつかみどころのない味だった。
 ふと気がつくと、研究お姉さんに顔を覗き込まれていた。研究お兄さんは赤面した。
「それ食べると、みんな夢みるような顔になっちゃうのよねー」
「な、なんなんですかこれ?」
「『発狂』したゆっくりよ」
「は、『発狂』……って、あいつら最初っから頭おかしいじゃないですか?」
 研究お兄さんの素直な言葉に研究お姉さんは苦笑する。
「そうね。別棟で研究しているあなたには理解しづらいでしょうから、まず作り方から教えるわね」
 そして、研究お姉さんはこのゆっくりの作り方を説明した。

1.れいむ種とまりさ種を同室に置く
2.れいむ種の前でまりさ種を永遠にゆっくりするまで虐待する
  この時、まりさ種の帽子は傷つけず回収する
3.虐待後、「明日はお前を同じように虐待する」と脅す
4.まりさ種を用意して、「2.」で回収した帽子をかぶせる
5.「1.」に戻る

「まあ、大筋はこんな感じね。これを一ヶ月ぐらい毎日繰り返す」
「これで『発狂』するんですか?」
 研究お兄さんにはいまいちピンとこなかった。目の前で虐待を見せ続けたことはある。それによってこのような味の変化は無かった。
「重要なのは、ゆっくりは飾りで個体を識別するってことね。れいむ種にとっては、虐待で死んだハズのまりさ種と出会うことになるのよ。これってホラーじゃない?」
 研究お兄さんは想像してみた。昨日死んだハズの人間が生きていることを想像した。一度だったら何かの間違いか夢だったとごまかせるだろう。だが、一ヶ月に渡ってそんなことが起きたら……。
「ぞっとしませんねぇ。そりゃ、あの餡子頭もおかしくなるでしょうねぇ……」
「毎日同じ事の繰り返しだから、時間感覚も狂うみたいなのよね。夢と現実の狭間でさまようって……正気でできることじゃないわ」
「確かにあいつらのおかしさともひと味違いますね」
「でしょ。肉体的苦痛だとなかなかそういうふうに追いつめられないのよね。あいつら、軟弱な割に死ぬまで正気を保つからね」
「責めすぎると餡子吐いておだぶつですしね……でもこのれいむ、そんなこと続けられてよく餡子吐いて死にませんでしたね」
「あら、吐いたわよ? 何度となく、ね。でもほら? 餡子を吐いても、体外に排出しないかぎりいずれ吸収されて蘇生するじゃない。脆いクセにしぶといわよね」
 れいむは透明の箱に収められた。中枢餡子を吐いたが、まったく動けない箱の中では対外に排出するまで至らない。口を直接塞いでも良かったが、せめて悲痛な声を聞きたいと虐待係から要望があってそれはやめたのだ。ただでさえ日々同じ事をしていると演出するため、虐待係には沈黙を守らせている。やむをえない処置だった。不満ばかりの作業ではいい仕事はできないのだ。
「でも『発狂』したゆっくりってどんな風になるんですか?」
「こんな風よ」
 研究お姉さんが差し出したのは一葉の写真だった。そこに写っているのは虐待されるまりさ種を薄ら笑いを浮かべて眺めるれいむ種だった。
 異様だった。
 何が異様って、その笑みには羨望が伺えるのだ。虐待されるまりさをうらやましがるなんて、
「あー、確かに狂ってますねー」
「狂ってるでしょー」
「普通のあいつらのおかしさとは、文字通りひと味違いますね。いや、この味はいけますよ! 新製品誕生ですね!」
「商品名はさしずめ『夢みるれいむの幻想味』ってとこかしら。でもまだちょっと作るのに手間がかかりすぎるのよね。コスト的に商品化は難しいわ。まあ検体は並行して何体か進めてるから、『発狂』した段階で赤ゆっくりでもつくらせてみようかしらね。直系なら近い味を保てるかも知れないわ」
 研究お姉さんはうーんと伸びをした。ここまでには様々な失敗があったが、ようやく新しい味が出た。この生き物は、まだまだ奥が深い。
 ここはゆっくり研究所。
 常に新しいことに挑戦する、熱気と探求心溢れる場所だ。
 明日と希望を見失い、夢と現実の区別がつかなくなったれいむも、そこでの実験の結果のひとつに過ぎない。




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最終更新:2008年11月08日 13:02
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