ゆっくりいじめ系1492 都会派ありすの憂鬱

※現代日本設定です
※独自設定ありです





とある所に、ゆっくりありすをペットとして飼っている女性がいた。
一人と一匹が住むマンションは基本ペット禁止ではあったが、各部屋の防音が優れており、また犬猫のようにアレルギー等も無く糞尿のような汚物を出さないため、
外に出さない限りゆっくりを飼うことは許可されていた。

女性の仕事も終わり、風呂上りの一時を共に過ごす一人と一匹。
今ありすはベッドに腰かける女性の膝に乗って、一緒にテレビ番組を見ていた。

『はい、CMの後はハネムーンの旅行先ランキングベストスリーです!』

女性は膝に乗るありすの髪を櫛で整えてやり、ありすはそんな女性の優しい手つきに目をトロンとさせている。
女性と一緒に風呂に入った後のこの一時がありすは大好きだった。長い間湯に浸かっていたら溶けてしまうが、それでも入浴は気持ちよいものだ。

「ゆゆ~、おねえさんくすぐったいわ」
「ごめぇんねぇ、これでいい?」
「とってもとかいはなてつきだわ~♪」

女性はまるで陶器でも扱うかのようにありすの頬を撫でたり髪を触ったりする(実際にゆっくりの体は脆いのだが)。
こそばゆいが気持ちのいい女性の手のぬくもりにふれながら、ありすは今の幸福を自覚していた。

ありすは元野良ゆっくりである。
生後一月にも満たない子ゆっくりの時、子供がいたずらで線路に子ありすを固定しようとしていたところを、この女性に助けられたのだ。
それ以後、半月に渡ってこの女性と共に暮らしている。

猫以上に記憶力の無いゆっくりであったが、ありすは今でも助けてもらった時のことを鮮明に覚えている。
乱雑した記憶の中でも、その記憶だけは大切な宝箱に仕舞って大事に保管されていた。

「ゆぅ……おねぇさん、もうとかいは、は、ねるじかん、だわぁ……」
「そうね、そろそろお休みなさい、ね」

ありすが口調もおぼろげに小さく呟く。
女性は優しく微笑むと、ありすを人間用ベッドの下に置いてある、ありす専用ベッドへとありすを入れてやった。
ありす専用ベッドとはいうものの、それは売られている猫用のものに毛布を入れただけなのだが、ゆっくりにとってはそれで充分であった。

女性がありすをベッドに入れてやると、ものの数秒でありすは寝息をたてた。
すやすやと幸せそうに眠るありすの頬を、軽くつんつんと突付いてその柔らかさを堪能した女性は、テレビと灯りを消すと、自分も眠りについた。

この半年の間幾度も繰り返されてきた、いつもの光景である。








翌朝。今日は一般的に休日とされている日曜日である。
ありすは日曜日が好きだった。
いつもは仕事で朝早く出て夜に帰ってくる女性が、一日中一緒に遊んでくれたり外に遊びに出してくれたりするからだ。

だがこの日はいつもと違っていた。

「ねぇ、ありす」
「なぁに? おねぇさん」

朝食であるシロップをたんまりとかけたホットケーキを頬張りながら、ありすはもごもごと応えた。
テーブルの上に乗ったありすの顔を見ながら、女性は話を切り出す。

曰く、今日は恋人と一緒に遊びに行くから、一緒に遊んでやれないということ。
今度は恋人が飼っているれいむに会いに、一緒に遊びに行こう、というもの。
昼食とおやつは用意して行くから、という旨。

それらをゆっくりと聞き終えたありすは、最初は不満に思ったものの、
『大好きなおねえさんのゆっくりをじゃましてはいけないわ!』
という事で笑顔で了承した。

「ゆゆっ! おねえさん、おねえさんのだーりんとゆっくりしていってね!!!」

玄関先で女性を見送るありす。
女性は申し訳なさそうな顔をしながらも、一転笑顔になってありすの頭を撫でた。

「うん、ありがとう。ゆっくりしてくるね」

靴を履き終え、外に出る女性の体。
バタン、と閉じられた扉の音を合図に、ありすは今日はどうしようかと思案した。

「そうだわ! きょうはとかいはなふぁっしょんを、ゆっくりちぇっくするのよ!」

ありすは誰にともなくそう宣言すると、リビングへと戻るとテレビ脇に置いてある雑誌ラックからファッション誌を取り出し、目を通し始めた。
文字という概念が無いゆっくり種だが、きちんと教育すれば小学校低学年程度の識字能力は身につく。

難しい漢字を読み飛ばしたり分からない表現に頭を悩ませたりするも、ありすはありすなりにファッション誌を読むのが好きだった。
人間用のファッション誌をゆっくりが読んでどうするのかと思えるが、ありすはファッション誌に載っている服を着た女性と一緒に町を歩く様を夢想して楽しんでいるのだ。
もっとも、そんな夢は叶わないことは、ありすも重々承知していたが。
だが、現実と違うから趣味は楽しい場合もある。

「ゆっ、これはとかいはなふぁっしょんだわ!」

読むスピードの遅いゆっくりにとっては、雑誌の一冊二冊読むだけで充分に一日が過ぎ去る。
この日は女性にとってもありすにとっても、充実した一日となった。





「ただぁいまぁ」
「ゆゆっ、おねぇさんおかえりなさい!」

読んでいたファッション誌を尻目に一目散に玄関へと跳ねていくありす。
笑顔で自分に駆けてくるありすを見て、女性の顔もほころぶ。

「ありすただいまぁ♪」
「ゆゆっ、くすぐったいわおねぇさん」

寄ってきたありすを自分の顔まで持ち上げて頬擦りをする女性。
ありすは口では嫌がっていながらも笑顔で女性に頬擦りを返した。
他のゆっくりに出会ったことのないありすだが、頬擦りはゆっくり種の親愛の証。クリームに刻まれたゆっくりとしての本能が、ありすをゆっくりさせた。

「ありすぅ、来週はれいむに会いに行こうね」
「ゆっ? れいむ?」
「そう」
「もしかしておねえさんのだーりんのおうちのれいむ?」
「そうよ。お友達になれるといいねぇ」
「ゆゆゆぅぅ!!」

ありすには友達が居ない。
決して元になった人物の二次設定がどうとかという訳ではない。単純に出会いが無かったのだ。
野良時代にも他のゆっくりと出会うことは無かったし、女性に飼われるようになってからもテレビで見ることすらあれ、他のゆっくりと会うことはなかった。

そのため、ありすは友達が欲しかった。あるいは伴侶と言ってもいい。
ともかく、ありすは幸せな生活の中で唯一欠けていた、ゆっくりの知り合いが出来ると思って俄然興奮した。
もちろん性的な意味ではない。

「おねえさん、ありす、れいむにあいたいわ! いますぐいくわよっ!」
「だから、来週だって言ってるでしょう」
「ゆゆっ、ごめんなさい……」

女性に窘められ、しゅんとなるありすを、「あぁもう、ありす可愛い!」と言いながら頬擦りをする女性。
ありすはそんな女性の愛情表現を好ましく思い、同じく頬擦りで返す。
その日の夕食は肉じゃがと味噌汁だった。
猫舌のありすは必死で「ふー、ふー!」と息を吹きかけながら食べていたが、女性はそんなありすの様子を笑顔で眺めていた。





そうして一週間が過ぎ、次の日曜日。
今日は女性とありすが女性の恋人の家に行く日である。
ありすも女性と同じようにおめかしをして(小麦粉を少々顔にまぶしただけ)、初めて会う自分以外のゆっくりに興奮した様子だ。
もちろん性的な意味ではない。

ゆっくり用の持ち運びバスケットに入れられ、電車やバスに揺られること二十分。
女性の恋人の家に着いた。

チャイムを鳴らし、快く出迎えてくれた男性にマンションの一室へと迎えられる一人と一匹。
ありすはバスケットの中のため男性の顔は分からなかったが、とってもゆっくりできる声だわ! と一人思っていた。

「それじゃあありす出すわね」
「分かった、れいむ連れてくるよ」

バスケットの外から聞こえてくる会話の声に興奮が収まらないありす。
早く会いたい。早くゆっくりしたい。
自分以外のゆっくりに出会ったことのないありすは、その欲求が溢れんばかりであった。

「ありす~、お外よ~」

女性の声がした瞬間、バスケットの蓋が開けられありすは女性に抱えられる形で外に出た。
そこは初めて来た見たことも無い部屋だったが、ありすはそんな周りの風景よりも、目前に居たゆっくりれいむに目が釘付けとなった。

「ゆゆゆっ、ゆっくりしていってね!!!」

あまりの興奮のせいか少しどもってしまい、言った後で内心恥かしく思ってしまったが、ありすの挨拶にれいむも笑顔で返してくれた。

「ゆっくりしていってね!!!」

ゆっくり種特有の挨拶。初対面の者にはまず間違いなくする挨拶。
「はじめまして」や「こんにちは」などの挨拶全てこれで代用できる、とっても便利な言葉だ。

女性に床に下ろしてもらったありすは、底部が床についた瞬間にれいむへと駆け寄っていた。
マッハでぴったりと密着するまで近寄ったありすは、これまた即座にれいむへの頬擦りを開始する。

「ゆゆゆ~、れいむのおはだとってもすべすべでとかいはだわ~♪」
「ゆゆ~、ありすだいたんだよ~……」

突然のありすの行動に驚きながらも嫌がってはいないれいむは大胆な(ゆっくりの価値観で)ありすの行動に顔を赤らめさせる。
飼い主達はというと

「アレの時の君みたいに大胆だね」

と言った男性の言葉に女性はれいむと同じように顔を赤くして俯いていた。







その日はゆっくり同士の交友が主目的だったようで、飼い主達二人はコーヒー片手に仲良く遊ぶれいむとありすを仲良く見ていただけだった。
ありすはそんな女性達の視線に気付いてはいたが、初めての自分以外のゆっくりと遊ぶことが何よりも優先目的だった。

もし友達が出来たらあぁしよう、こうしようと日々妄想してきた事の十分の一もてんぱって出来なかったが、ありすはとっても満足だった。
また、れいむもそんなありすと似た思いだった。
とある事情かられいむは日ごろストレスが溜まっており、ありすとの遊びはそんな日々のストレスから解放される良い精神安定となったし、心底この状況を楽しんでいた。

昼食は男性の家で一緒にとることとなった。
ゆっくり達には男性お手製のゆっくり用和風スイーツ、と題名したただのお汁粉。
飼い主達は女性が作ったパスタである。

「「む~しゃ、む~しゃ、しあわせ~♪」」

ゆっくり二匹分の声が部屋に響き、飼い主二人はそんなゆっくり達をニコニコ笑顔で見つめていた。

ありすは今幸せの絶頂にいた。
優しいお姉さんと一緒に暮らせて、毎日美味しいご飯が食べられて、更にはとてもゆっくりできる友達も出来た。
れいむはとってもゆっくりできるゆっくりだった。
髪はツヤツヤだしお肌もすべすべ。まるで作り物のような綺麗な姿に、ありすは心底ゆっくりとした思いを懐いた。

一緒に歌を歌った。一緒に頬擦りをした。
一緒にボールで遊んだ。一緒におままごとをした。
一緒に追いかけっこをした。一緒に頬を舐めあった。

そんな、とってもゆっくりとした楽しい時間は、あっという間に過ぎ去った。

「……ありす、もう帰るよ」
「ゆゆっ?」

女性に呼ばれてありすは咄嗟に時計を見た。時計の見方は女性に教わっている。
もう午後の六時だった。そろそろ晩御飯時の家が出始める頃である。

てっきり晩御飯も男性の家で食べると思っていたありすは不思議に思いながらも、女性の言うとおりに帰る支度をする。
といっても、れいむへの別れの言葉をするだけだったが。
だがこの時、自分達が遊んでいる間に何かあったのか、女性がひどく落ち込んだように俯いているのが、ありすは気にかかっていた。

「ゆゆぅ、ありすはもうかえるわ、れいむ……」
「ゆぅ、ざんねんだけど、しかたないね……ゆっくりしていってね!!」
「ゆっくりしていってね!!」

初めての友達であるれいむとの別れは名残惜しい。
だが、それでもありすの中ではれいむよりも女性の方が大事だった。
ありすは女性に促されるまま、ゆっくり用持ち運びバスケットの中に納まると、そのまま遊びつかれたのか眠ってしまった。






ありすが起きた時、既にありすはバスケットから出されていた。眠っている間に家についたのだ。
自分がゆっくり用ベッドにいると認識したありすは、次に部屋が真っ暗であることに疑問をいだいた。

「おねえさん……?」

不安になり、声を出す。
女性の帰りが遅い夜は、灯りがなくこんな暗い部屋となるが、今は女性もこの部屋にいるはずだ。
なのに灯りがついていないことが、とても不安に思えた。

返事は返ってこなかった。
こなかったが、何かぶつぶつと声が聞こえてきた。それは間違いなく、ありすの飼い主の女性の声だった。

「なんで……なんで……なんで……」
「おねぇ、さん……?」

怖いまでに小さく呟く女性の声に、ありすは不安と共に恐怖も覚えた。
なんで女性がこんな小さくて暗い声を出すのか分からなかったからだ。分からないものは、怖い。

「どおして、おへやがくらいの……? とかいはは、よるになるとでんきをつけるのよ……?」

そんな分からないものに対し、つい距離をとった感じで言ってしまったが、女性は特に気にしなかったようだ。
ありすの声にようやく気付いたかのように、緩慢な動作で立ち上がると部屋の電気をつけた。
パッ、と光で満たされる部屋。その光によって照らされた女性の顔に、ありすは驚愕した。

「ゆっ!? おねえさん、どおしてないてるの……?」
「……ありす」

すっ、と屈んだ女性はそのままありすを抱きかかえると胸に抱き寄せた。
ありすは何がなんだか分からなかったが、心地よかったので女性の温もりに身をゆだねた。
そんなありすに、女性の呟いた声が届いた。とても、ゆっくりと。

「どうして……あの人が、〝虐待お兄さん〟だったのよ……」
「……ゆぅ?」

ポロポロと涙を零しながら言った女性の言葉をありすは理解出来なかったが、女性が悲しんでいるのは理解できた。
ありすはそんな女性を慰めようと、ぺろぺろと涙をなめとってあげた。

「おねえさん、げんきだして。とかいははめったになかないのよ」

ありすはありすなりに元気づけたつもりだった。
だが、精神的に追い詰められていた今の女性には、どんな言葉も届かなかった。

「おねえさん、どうしたの? なかないでね。ないたらありすもかなしいわ」

ありすはまるで反応しない女性に、ひたすらに言葉をかけつづけた。
だが、それは結果からすれば逆効果だったし、この後のありすの運命を決定づける事にもなった。
どれだけ言葉を投げ続けただろうか。精神的に追い詰められていた女性は、最早他人を慮る気力が無かった。
そのためか、ひたすらに言葉を紡いでいるありすを、一時とはいえ鬱陶しく思ってしまった。
そして、気付いた時にはありすの頬を叩いていた。

パチン!

防音処理のなされた部屋に、乾いた音が響き渡る。
女性は一拍の後、自分のした事に気付いてしまった。
慌てて叩いてしまったありすの頬を撫でながら謝るも、ありすの目からはポロポロと涙が零れていた。

「ゆぐっ、えぐっ……」
「ごっ、ごめんありす! ごめんね! いたかったよね?」

どれだけ謝っても、ありすの涙は止まらない。
必死に押し留めようとして、それでも止まらなかった嗚咽が漏れる。
ポロポロと珠のような雫が、ポロポロと零れ落ちる。

ありすは、決して痛みで泣いているわけではない。
もちろん、叩かれた頬も痛いがそれ以上に、心が痛かった。
これまで絶対的な信頼を置いていた女性に、叩かれた。自分を助けてくれた無二の存在に、暴力を振るわれた。
その事実からくる心の痛みから、涙が溢れたのだ。止めようとしても、止まらない。

「ゆぐっ、ゆわぁ、ゆえぇぇぇぇぇぇん……」
「ごめんね、本当に、ごめんねありす! そんなつもりは無かった、の……よ……?」

叩いた箇所をさすりながら謝る女性に、ある名状しがたい感覚が生まれた。
それはぞくぞくと女性の体中を支配すると、女性の体を止めさせた。

なんだろう、これは。
女性は困惑する。これまで味わったことのない感情に戸惑っている。
顔を俯かせると止まったそれは、再び顔をあげると目に入るありすの泣き顔を見た瞬間再び湧き上がった。

女性は驚きその場を駆け出し、トイレにこもった。
バカな。そんなことが。
心当たりのある一つの事実に、女性は否定しながらも受け入れそうになってしまう。
そんなことあるはずがない、と言い聞かせながら、女性はその後一時間も閉じこもってしまった。

女性がトイレから出るとありすは殆ど泣き止んでいたが、いまだにしゅんとしていた。
女性はそんなありすに謝りながら優しく撫でてやり、豪華な夕食を作ってやり、風呂にも入れさせてあげた。
そして寝る頃にはありすの機嫌はすっかり直っており、全ては元通りに思えた。



思えただけで、もう元には戻らないのだが。







世間でのゆっくりの心証は、爬虫類に近い。
街中で見かければ避けるか殺してしまう。見るのはせいぜい山中かテレビぐらい。
ゆっくり虐待派や愛好家からすれば見慣れてしまっているが、普通の人からすれば喋り動く生首とは充分に気味の悪いものだ。

そのためゆっくりを自ら虐待する人も愛でる人も、ごく少数だ。
女性は恋人の男の本性を知った時、愕然としたが女性自身も知人から言わせれば充分変人である。
ゆっくりをペットとして飼っている人の割合は、爬虫類をペットとして飼っている人と同じぐらいだ。
動物病院に行っても爬虫類を担当できる人がいない事もあるぐらいなのだ。









翌朝、月曜日。
この日はいつものように女性は出勤するため早起きだ。ありすもそんな女性の生活サイクルに合わせて早起きだ。

「いただきます」
「ゆっくりいただくわ」

テーブルの上に乗るありすとカーペットに正座する女性の声が重なる。
一人と一匹は朝食であるトーストを食べるが、ふと女性はトーストを食べる手を止めてありすへと視線をやる。
ありすはというと、はもはもと自分のトーストを食べるのに夢中で気付いていない。

女性はそんなありすの頬を、おもむろにつまんでみた。
むにっ、と柔らかく形の良いありすの頬が変形し、ポロッと咥えていたトーストが零れ落ちる。

「ゆゆっ? おねえさんなにするの!?」
「あっ、ごめんね。ありすが可愛かったらつい」
「もう、とかいははごはんのときはゆっくりするものよ!」

頬をふくらませてぷんぷんと怒るありすに笑顔で謝る女性は、昨日得た疑念が確信へと近づいている事に恐怖した。
しかし、その恐怖もじきに快感へと変わる。




つまりは、彼女もまた変人であったというだけのこと。




仕事を終え、疲れた体で帰宅した女性は笑顔で玄関まで出迎えに来てくれたありすの顔を見ただけで、疲れが吹っ飛んだ。
ような気がした。
体の疲れはとれてはいないが、精神的な疲れはある程度解消されたのはわりかし事実ではあるが。

女性は帰宅してまず入浴をしようと風呂を掃除し、お湯を張り始める。
そして、湯が溜まるまでの間に、ある事を確認しようとしていた。

リビングのカーペットの上で向かい合う一人と一匹。
女性は神妙な面持ちで正座しているが、ありすはこれから何が始まるのかと少しそわそわとしていた。

何かを合図にしたわけでもなく、唐突に女性がすっ、と右手を伸ばした。
伸ばして右手は人差し指だけ突き出した状態。その人差し指で、ありすの頬をちょんちょんと突付き始めた。

「ゆっ、おねぇさんくすぐったいわ」

身を捩りながらも笑顔のありすはその行為を嫌がってはいない。こそばゆい感触を楽しんでいるだけだ。
女性はありすの頬を突付いていた右手で、むにゅっと頬をつまんでみる。
むにょん、と弾力と柔らかさを併せ持つありすの頬が伸びた。

ありすは笑顔で女性を行為を受け入れている。これもまた女性の愛情からのスキンシップだと理解しているからだ。
頬はくすぐったいが、それ以上に頬から感じる女性の愛情が嬉しかった。

だが、そのありすの笑顔に翳りが生まれた。
徐々に、ゆっくりとだが確実にありすの頬をつまむ女性の手にこもった力が大きくなっているのだ。

「あえ……」

柔らかさを楽しむ優しいつまみではない。
笑みの消えたありすの顔は、なんとも形容しがたい不思議な顔をしており、その口からは意味を成さない音が漏れた。
それでもなお、手にこもる力は大きくなる。

それは遂に、ありすに痛みを与えるほどだった。
むにゅ、だったものがぎゅう、と強くなり頬からくる痛みからありすは逃れようと身を捩るが、それは頬の痛みを更に強くするだけだった。

「ゆ゛っ、おねぇさん、いだい、いだいわっ! はなじて!」

涙目になりながらありすは女性に訴えかけた。
これまで女性はありすの申し出は殆ど聞いてくれた。
だから、

「はなぢでよ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」

ありすの頼みを無視して更に強く頬をつねる女性の行動が、信じられなかった。
既に頬をつまむ手の力は、まるで頬をひぎちぎらんばかり。ありすは涙目どころではなく、ボロボロと目から滝を作っている。
と、そこまでやってようやく女性はありすの頬から手を離した。

ありすはようやく解放された痛みから、軽く深呼吸をする。
手があれば頬を抑えているところだろうが、生憎ゆっくりであるありすには手が無い。
仕方なく痛みが引くまでぷるぷると震えるのみだ。

ありすには訳が分からなかった。
どうしてお姉さんはこんなことをしたのだるか、と。
何か悪いことをすればお仕置きをすることはあったが、それでも何が悪いかをちゃんと教えてくれた。

今回ありすは何も悪い事はしていないのに。お姉さんは何も言わず、ありすをつねっていただけだ。
そして、なんでありすの頬をつねっていたお姉さんは、あんなに顔を赤くして笑顔だったのだろうか。

ありすがそこまで思案したところで、風呂に湯がたまったことを知らせるタイマーが鳴った。

「ありす、一緒にお風呂入ろうか」

いつものように笑顔でそうありすに言う女性を顔を見て、ありすは今のは悪い夢か何かの間違いだと思うことにした。
女性と同じく満面の笑顔で承諾したありすは、女性に抱えられ風呂場へと向かう。






後で思い返してみれば、その出来事は何かの間違いなどではなく、むしろ終わらない悪夢の入り口にすぎなかったのだが。




つづく



────────────
あとがきのようなもの

あぁ、我慢できない
抑えられないんです。この衝動は
この裡から湧き上がるゆっくりを虐めたい衝動は、SSを書くことでしか発散できないんです
そして書いた自慰行為を誰かに見てもらいたいという変態野郎なんです

と、いうわけで短い休止期間を颯爽と終わらせ復帰です
そもそも休止を宣言したのも、別口でやってる創作活動が滞っており、そちらに専念しようとしたのですが
もうSSを書かない間ゆっくりを虐めたい衝動がガンガンと内側から暴走しており、結局書いてしまいました

もうどうせならどちらも両立してやってやらぁ! とごく当たり前の結論に至ったわけです
前ほど頻繁には書けませんが、これからもちょくちょく書いていくつもりです



byキノコ馬


これまでに書いたもの

ゆッカー
ゆっくり求聞史紀
ゆっくり腹話術(前)
ゆっくり腹話術(後)
ゆっくりの飼い方 私の場合
虐待お兄さんVSゆっくりんピース
普通に虐待
普通に虐待2~以下無限ループ~
二つの計画
ある復讐の結末(前)
ある復讐の結末(中)
ある復讐の結末(後-1)
ある復讐の結末(後-2)
ある復讐の結末(後-3)
ゆっくりに育てられた子
ゆっくりに心囚われた男
晒し首
チャリンコ
コシアンルーレット前編
コシアンルーレット後編
いろいろと小ネタ ごった煮
庇護
庇護─選択の結果─
不幸なゆっくりまりさ
終わらないはねゆーん 前編
終わらないはねゆーん 中編
終わらないはねゆーん 後編
おデブゆっくりのダイエット計画
大家族とゆっくりプレイス








タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2022年01月31日 03:26
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。