注意書き
- タイトル通りのゆっくりが登場します。
- うんうんしーしーぬるぬるが登場します。
梅雨
この季節になると毎年、綺麗な紫陽花が咲く場所がある
村人の間でも良く知られ、晴れ間を見つけてふらりと訪れる人の姿もある。
しかし、今年は去年の様に綺麗な紫陽花は咲いていなかった。
紫陽花の花は荒らされていた。
動物や人間の仕業ではない、踏み荒らされたり、引きちぎられた様な後は無いのだ。
紫陽花の葉や花びらには虫に齧られた様な穴が幾つもあった。
しかし、虫の姿など無い。なぜこんな事になったのか村人の間では原因不明と言うことになっていた。
紫陽花の花が荒らされた原因を調べに来た青年は、そこであるものを発見した。
「む~ちゃ♪む~ちゃ♪ちぃやわちぇ~♪」
ビー玉ほどのゆっくり霊夢が紫陽花の葉っぱの上で幸せそうに何かを食べている。
ゆっくり霊夢の前には虫に齧られた様な穴がある。他に幾つもある穴と同じ程度の大きさだ。
「ゆゆっ?あっちのはっぱしゃんもおいちちょうだよ!」
ゆっくり霊夢はそう言うと、葉の上を這うように移動し、茎を渡り別の葉へと向かった。
「にゅ~り♪にゅ~り♪」
霊夢の目指した葉は先ほどまでいた葉の上にある。
そこへたどり着くには目の前の垂直に近い茎を上らなくてはいけない。
「ちょっちょのみょりにきゅいにぇ?もっちょにゅるにゅるちゅるにぇ♪」
そう言うと霊夢は軽く身震いをした。
霊夢の底部から透明な粘液が分泌される。
「これちぇにょみょれるにぇ♪にゅ~り♪にゅ~り♪」
霊夢は縦に伸びた茎にへばり付くと体の伸縮を利用し登っていった。
そして目的の葉へたどり着くと、再び葉を食い荒らし始めた。
「む~ちゃ♪む~ちゃ♪ちぃやわちぇ~♪」
紫陽花の花園を荒らしたのはこの霊夢である。
それもたった一匹でここにある全ての紫陽花を食い荒らしたのだ。
「ゆ?うんうんでるよ?う~ん……ちょ!う~ん……ちょ!」
霊夢の体から茶色い物体がひり出された。長く伸びたそれはさながら尻尾のようだ。
霊夢が身震いをするとその茶色い物体は葉からこぼれ落ち地面へと落ちる。
地面は落ちた物体と同じ色をしていた。良く見るとあたり一面をその物体が多い尽くしていたのだ。
紫陽花の美しい葉や花びらは霊夢の手によって茶色い物体へと姿を変えてしまった。
「ちゅっきり~♪」
霊夢の大きさは先ほどよりすこし小さくなっていた。
そしてすこし場所を変え、また葉を食い荒らし始める。
紫陽花は見る見るうちに食い荒らされ、形を変え次々と地面へ落ちていった。
紫陽花の花園が消えた原因、それはこの小さなナメクジのようなゆっくり霊夢一匹によるものだった。
その事実に、青年は直ぐには動けなかった。怒りが込み上げてきたのは随分と後の事だった。
沸々と静かに止め処なく溢れてくる怒り、青年は冷静にそれを受け止めた。
「ゆゆ?おじしゃんはゆっきゅりできりゅひちょ?」
霊夢は青年に気がつくと葉の上で青年の方に近づき無垢な瞳で質問を投げかけた。
青年は答えなかった。無言で手を伸ばし霊夢を掴み取る。
「おちしゃんはゆっきゅりれきちょうりゃにぇ♪ゆっきゅりちちぇいっちぇにぇ♪」
霊夢は瞳を輝かせて青年を見つめていた。
期待に満ちた瞳、これから何が起こるであろうかまるで予期していない瞳。
少なくとも霊夢の頭の中では未知なる何かに無限ともいえる期待を抱えていた。
青年はそのまま拳を握り締め、霊夢を暗い手の平の牢獄に閉じ込めた。
閉じた拳に徐々に力を込めていく。
「きゅ、きゅらいよ!きょわいよ!ゆっきゅりだしちぇにぇ!!」
手を握り締める力が霊夢へと伝わっていく。
「ちぇまいよ!ちゅぶれるよ!もうやめちぇー!!」
青年はこのまま握り潰すつもりだった。
形が崩れ内臓物が拳から滴り落ちるまで力を込める。
この危機に際して霊夢の体からは急速に粘液が分泌される。
それも底部だけでなく全身を覆う様に。
次第に握りつぶそうとする力は霊夢に伝わらなくなっていった。
分泌された粘液により霊夢の体が、拳のわずかな隙間へと滑り込んでしまうのだ。
青年は握り方を変えながら何度も何度も握り潰そうとする。
それでも霊夢はつぶれない。丸かった体は細長く伸びより潰しにくくなっていた。
「やめちぇね!やめちゃね!ゆきゅりできないにょ~!」
青年の握力にも限界がある。青年は渾身の力を込めて霊夢を握りつぶそうとした。
その時、霊夢の体が宙に待った。
「ゆっ?ゆゆう!?わ~い♪おちょらをちょんでるみちゃ~い♪」
青年が握り締めた拳の隙間から射出された霊夢は放物線を描き紫陽花の咲く茂みへと落ちていった。
まだ無傷な紫陽花の葉が霊夢の姿を隠してしまう。
青年は慌てて後を追うが霊夢の姿は見つからない。
両手で葉を掻き分けながら探すが見つからない。
既に他の場所に逃げたかと青年が身を引こうとした時、
掻き分けた葉の裏側にへばりつく霊夢の姿を発見した。
「ゆー!みちゅかっちゃよー!!ゆっきゅりにげりゅよー!!」
霊夢は葉にへばりつくのをやめ、重力に引かれるまま落下した。
霊夢の考えでは下にある別の葉に着地し逃げおおせるつもりでいた。
だが、霊夢が落下したのは青年の手の平、素早く差し出した青年の手が霊夢を捉える。
霊夢は青年の手の平に落ちた事に気がつかずにいた。既に逃げ切ったつもりでいたのだ。
「ちょりょちょりょおうちえきゃえるよ♪ゆ~しょ♪ゆ~しょ♪」
霊夢は青年の手の平を這い進んだ。どこに進んでいるかなど霊夢の知る所ではない。
適当に進めばそのうち家に辿り着く。しばらく進めば見慣れた光景が広がるはずだと思っていた。
青年は手の平の霊夢を自らの服の上に落とし包み込むように服の上から握り締めた。
霊夢の粘液は水分を服に奪われ機能しなくなった。拘束する服から逃れることは出来ない。
このまま潰しても良かったが青年はある事を思いつき、霊夢を家へ持ち帰ることにした。
青年の家に連れてこられた霊夢はガラスの皿の中に入れられた。
「ゆゆ?きょきょりょきょなにょ?にゃんりゃかきりぇいなおうちりゃにょ?」
霊夢にとってはガラスに透けて見れる光景は全てが生まれて初めてのものだ。
風が吹き込まず、雨も降らず、昼間でもまぶしくないその場所は霊夢にとっては理想的な家だった。
「きにいっちゃよ♪きょうきゃらきょきょりゃれーみゅのおうちりゃりょ♪」
青年はそんな雑音を気にすることもなく、台所から白い粉を持ってきた。
そして指先で白い粉を少しだけつまみ、霊夢にふりかけた。
「ゆゆ?にゃにきょれ?きゃらりゃきゃにゃんりゃきゃみゅりゅみゅりゅちゅるよ?」
白い粉を振りかけられた霊夢の体は見る見るうちに溶けていく。
さすがの霊夢も自らの体の異変に気がつく。
「にゃんにゃの!?うんうんりぇりゅにょ?ちーちーりぇりゅの?りょっちにゃにょ!?」
青年は尚も白い粉をふりかける。霊夢の体は更に縮み、悲鳴も漏らすその口も徐々に小さくなっていた。
「ゆっ…ゅち……りぇき……にゃ…よ!」
その言葉を最後に霊夢は二度と喋ることは無かった。
最後に残ったのは小豆ほどの小さな目玉が2つ。
青年が残った目玉を一つ摘み挙げると、吊られてもう一つの目玉も宙に浮いた。
小さな何かがぷつりと千切れ宙に浮いた目玉はお皿へと落ちていった。
おしまい
最終更新:2008年11月24日 18:27