『アイドルのオシゴト』
人知らぬ森の中。
獣道を、1匹の胴有りゆっくりれみりゃが歩いていた。
「だっどぉーぅ♪ だっどぉーぅ♪」
希望に満ちた笑顔を浮かべる下膨れ顔。
リズムを刻んで元気よく振るふくよかな腕。
よたよただばだば歩みを進める足に、左右にフリフリ揺らす尻。
それらはいずれも、普通のれみりゃと比べておよそ1.5倍はふとましい。
中身のギッチリ詰まった重量級の体からは、
ステップを踏む度に黄色いガスが「ばぶーっ! ばぶーっ!」と漏れだしている。
「てぇれびだどぉ~♪ しゅ~やくだっどぉ~♪ うぁうぁ☆うっう~~♪」
このれみりゃは、駆けだしの"アイドル"だった。
今日は、これから初めての"てれび"の仕事に向かうところだ。
しかも、マネージャーによれば主役らしい。
御機嫌にならないはずがない。
「えびりゃってばぁ~☆かわいすぎてごめんねぇ~ん♪ だっどぉ~~ぅ♪」
下膨れた頬を抱えて、幸せを体現する、れみりゃ。
この実にゆっくりしたふとましい体、たっぷりした下膨れは、れみりゃの自慢だった。
自分をこんなに可愛くえれがんとに育ててくれた親達のことを思い出し、感傷にふけるれみりゃ。
最初、アイドルになりたいと言った時、親からは"おぜうさまらしくないどぉー! はしたないどぉー!"と猛反対を受けた。
だが、れみりゃは知っている……なんだかんだ言いつつも自分を支え応援してくれたことを。
今日てれびに出るとことをうーぱっくで伝えた時も、誰より喜んでくれたことを。
「こーまかんのまんまぁーたちも、きっとたのしみにしてるどぉー♪ えびりゃがんばるどぉー♪」
そんなれみりゃの後ろから、ゆっくりさくやが跳ねてくる。
このさくやは、れみりゃファンクラブ会長にしてマネージャーでもあった。
「さようですわ、おぜうさまぁー! ふぁいとですぅー!」
「うっふ~~ん♪ えびりゃにおまかせしてねぇ~~ん♪」
れみりゃは気合いを入れて、うぁうぁ☆ぐるぐる腕を振り回す。
ぶぅーぶぅー漏れるガスを効果音にして、栄光のロードを歩いていくれみりゃ。
そうこうしているうちに、れみりゃとさくやは現場の屋外スタジオに到着した。
そこには、既に他のスタッフ達が集まっていた。
「ゆゆっ! れみりゃがきたよ!」
「むきゅ~ん! れみぃーちゃんはいりましたぁ~!」
「ゆっくりおつかれさまだよ! きょうはよろしくおねがいしますだよ!」
れみりゃを囲み、挨拶するスタッフ達。
れいむ、ぱちゅりー、まりさ、ありすにちぇんにめーりんもいる。
現場に集まったスタッフ達もまた、全員ゆっくりであった。
どこから手に入れたのか、ゆっくり達はカメラや機材を揃えていた。
どれも旧式でアナログなものだったが、ゆっくり達は口を器用に使って、おぼつかないながらもそれらを使いこなしていた。
「ゆっ! それじゃさっそくほんばんはじめるよ!」
そう言って、カチンコを咥えるまりさ。
れみりゃは、カメラの正面、書き割りのセットへ上がり鼓動を高鳴らせる。
「うーうー♪ これできょうからえびりゃも"かりしゅま☆すたぁー"だどぉー♪」
「ゆぅ~~~い………あくしょん!」
カチン!
まりさの咥えたカチンコが渇いた気持の良い音をたてた。
照明が舞台上のれみりゃにスポットしていき、ベータのビデオカメラが回りはじめる。
たくさんのゆっくりが緊張した面持ちを作る中、収録は開始された。
(まんまぁ~♪ しゃくやぁ~♪ えびりゃをみまもっててねぇ~ん♪)
れみりゃは、カメラに向かって今日のために必死に練習した"のうさつ☆だんす"を踊り出す。
尻を突き出すように左右に振って、ぶぅーぶぅー生理現象の伴奏を奏でていく。
「うっうー♪ えびりゃのぷりてぃー☆ひっぷにぃー♪ め~ろめろ~になるんだどぉ~~♪」
照明の熱量は相当なものだ。
れみりゃは、額に肉汁を浮かべながらも渾身のダンスをおどりきる。
「えび☆りゃ☆う〜☆にっぱぁ~~♪」
決まった!
心の中で声を揃える、れみりゃとさくや。
しかし、他のスタッフ達から"カット"の声は聞こえない。
舞台上で頭上に「?」マークを浮かべる、れみりゃ。
その直後、スタッフの一人が口に咥えた紙をれみりゃに見せた。
そこには歪な平仮名で「あしすたんとの"ふーちゃん"せんたーへ」と書かれていた。
「うぁ?」
ふーちゃんとは誰のことなのか。
れみりゃが疑問に思っていると、上空からその横にゆっくりフランが降り立った。
「ぷぅー☆ゆっくりしね」
「う、うぁぁー! ふりゃんだどぉーー!?」
本番中であるにも関わらず、れみりゃは恐怖の叫びをあげる。
森で一人暮らしを始めてからというもの、れみりゃは何度もフランに虐められていた。
「う~~! でぃれくたぁー! じゃーまねぇー! ふりゃんやだどぉーー!!」
れみりゃは涙ぐみ、へなへなと腰から崩れ落ちてしまう。
しかし、そんなれみりゃと"ふーちゃん"ことゆっくりフランへ出されたカンペには、こう書かれていた。
"ちょうりすたーと"
「ぷぅー☆おりょうり☆おりょうりー」
「うっ!? な、なにするんだどぉー!?」
カンペを読むや否や、フランはれみりゃを押し倒し、その服と帽子を無理矢理剥ぎ取っていく。
「や、やべでぇー! やべるんだっどぉー!」
「ぷーぷー☆ぱっぽぉー♪ これきたないー☆おじゃま☆じゃまー」
「ぶ、ぶっぎゃぁぁぁーーー! えびりゃのだいじだいじがぁーーー!!?」
れみりゃは為す術無く、あっという間にドロワーズ1枚の姿にさせられてしまう。
「えびりゃは"せいじゅんは"あいどるなんだどぉー! ぬぐなんてきいてないどぉー!」
「ぷぅ~~~! うるさい~~~!」
フランは、びよ〜んびよ〜んとれみりゃの頬を左右に引っ張っていく。
そしてカメラの真正面にアップになるよう、れみりゃの体を持ち上げた。
「おもしろいかおー☆ぶさいくなかおー☆」
「うびぃーーーー! うびぃーーーーー!」
れみりゃの下膨れで楽しそうに遊ぶフラン。
その間に、スタッフ達がテキパキとセットを入れ替え、道具を搬入していく。
れみりゃとフランの前には、2つのプールと1つの巨大な鍋が並べられた。
プールの一つには生卵が、一つにはパン粉が、そして火にかけられた鍋には油が熱せられている。
やがて、フランは準備が整ったと見計って、れみりゃを生卵のプールに突き落とした。
「まずは~ひたひたにする~~☆」
「う~~~~~っ!」
フランは、起きあがろうとするれみりゃを無理矢理押し倒し、生卵まみれにしていく。
顔を押さえつけられ、危うく生卵のプールで溺れそうになる、れみりゃ。
「つぎは~こうやってまぶす~☆」
「うぁぁぁぁぁーーーー!」
次にフランは、れみりゃをパン粉のプールに投げ入れる。
頭からパン粉にダイブし、思い切り顔を打ってしまうれみりゃ。
「うぁぁぁーーー! えびりゃのびゅーてぃふぉーなおかおがぁぁぁーーー!!」
泣き叫ぶ、れみりゃ。
そんなれみりゃの声など素知らぬ風に、フランはテキパキ作業を進めていく。
生卵で濡れているれみりゃの体をパン粉のプールで転がしていき、パン粉の服を着せていく。
「さいごは~ゆっくりあげる~☆」
フランはにっこり微笑むと、息も絶え絶えでピクピクしているれみりゃを抱えて浮かび上がる。
そのまま熱々の鍋の上まで移動するフラン。
パチパチ跳ねる油の滴があたり、ハッとするれみりゃ。
呆然自失としながらも、恐怖でひきつった顔に精一杯のスマイルを浮かべる。
「……そ、そうだどぉー♪ これはどっきりなんだどぉー♪ えびりゃってば、うっかりだまされちゃったどぉ~~♪」
れみりゃは、ドッキリが終わる瞬間を心待ちにして、周囲へ視線を送る。
だが、スタッフはみな至って真剣に仕事をしており、マネージャーのさくやも熱い期待の視線をれみりゃに送っていた。
「う、うぁ?」
「ぷぅ~~☆くりゃえ~~☆」
れみりゃが観念するより早く、フランはれみりゃを油鍋の中へ叩き落とした。
ジュワジュワパチパチ、衣を纏ったれみりゃは揚げられていく。
「ざぐやぁぁぁーーー! だずげでぇぇーーー!! まんまぁぁーーーー!!!」
「きつねいろになったら~かんせい~☆」
フランは"れーばてぃん"と呼ばれる金属の棒を取り出すと、それで油の中のれみりゃを引き上げる。
引き上げられたれみりゃは、大事なおべべの代わりに、サクサク狐色の衣を着込んでいた。
フランは、ぐったりして気を失ったれみりゃを、スタッフが用意した大皿に乗せる。
山盛りのキャベツをベッドにして、れみりゃは無意識に嗚咽を漏らす。
「ぅ~~~っ……」
「ぷっぷ~☆ぷぁぷぁ~」
盛りつけられたれみりゃを見て、フランは楽しそうに歌を口ずさんだ。
「きょうのしゅやく~☆かりかり"えびふりゃー☆"かーんせぇー」
センターカメラに向かって、微笑むフラン。
その数秒後、まりさの「かっとぉー!」という叫びが響き、現場の緊張した空気はようやく弛緩するのだった……。
* * *
数日後、今日も適度に平穏な紅魔館。
そのパーティールームに、館の住人達とゲストが集まっていた。
「う~~! しゃくやぁ~はやくぅ~はやくぅ~! はじまっちゃうどぉ~~!」
「……ということです。さっさと準備してください」
居候のゆっくりれみりゃに急かされた咲夜は、ナイフを片手に持って河童に告げた。
ビクッと体を震わせて、目の前の四角い箱と格闘する河童。
しかし、河童の焦りとは裏腹に、四角い箱は何の反応も示さない。
その時、今日のために紅魔館を訪れた珍客……緑髪の巫女がしずしずと黒い箱の前に歩み出た。
「あの……ちょっといいですか?」
緑髪の巫女は、古めかしい四角い箱を見てから溜め息をつき、片手を思い切り振り上げる。
「こういう時はですね……えいっ!」
ベチンと、平手で箱を叩く巫女。
すると、周囲が唖然とする中、箱の前面に映像が映り始めた。
「うぁーうぁー♪ てれびじょんだどぉー♪ えれがんとなおぜうさまにふさわしいぃ~どぉ~♪」
興奮する、れみりゃ。
「さすが最近外の世界から来ただけはあるわね……」
「興味深いわね……どいういう仕組みなのかしら?」
初めて目にするテレビに、各々興味を示す一同。
やがて、テレビにはこの日の目的のプログラムが流れ始める。
「う~~どきどきわくわくだどぉ~~♪ あかちゃんのはれぶたいだどぉ~~♪」
れみりゃは、咲夜の膝の上に座り優しく抱かれながらテレビに釘付けになっている。
咲夜はといえば、興奮するれみりゃの頭ををなだめるように撫でながらも、鼻からはうっすら赤いものが垂れ始めている。
「あっ、はじまるみたいですよ!」
ノイズ混じりの画面に、森の片隅に組み立てられたセットらしきものが映し出される。
そうして、手ぶれならぬ口ぶれののひどい映像に、番組のタイトルが表示された。
"ゆっくり3分調理クッキング えびふりゃー編"
「うぁ~うぁ~☆しゅっごいどぉ~~♪ れみりゃのあかちゃ~ん☆かぁ~わいいどぉ~~♪」
目をキラキラ輝かせ、同時に溺愛するわが子の姿を見てうっすら涙さえ浮かべる、れみりゃ。
だが、3分後。
"れみりゃのぷりてぃーなあかぢゃんがぁぁーー!!"
という絶叫を紅魔館に響かせて、れみりゃは泡を吹いて倒れてしまうのだった……。
* * *
「いだいぃーー! いだいどぉーーー! ざぐやぁーーー!!」
大木の根元の洞の中、敷き詰めた藁の上で、れみりゃが悶え苦しんでいる。
自慢のたっぷりふとましい体は全身火傷で、平時と比べてさらに3割増し水膨れていた。
「おぜうさましっかりしてくださいまし! あしたはしゅうろくのひですよ!」
「うっびぃーーー! もぉーやだぁどぉーーー! まんまぁーーえびりゃおうちがえりだいどぉぉーーー!!」
新人編・了
作者当ての時に途中まで書いたのを、勢いで最後まで。
細かい部分は後で修正するかもしれません。
いろいろ考えていることはあっても、
それを実行にうつせる時間が無いのが呪わしいですorz
by ティガれみりゃの人
最終更新:2022年01月31日 02:38