ゆっくりいじめ系2216 「さあ、おたべなさい!」のこと(上)

※虐待描写ほとんどありません。
 ハードゆ虐を求めている方が読むと、嫌な気分になるかもしれません。


ゆっくりれいむは、とある青年に飼われていた。

飼い主の彼は、少し古い言い方で表すなら、社会の落ちこぼれだった。
何とか定職に就けているとはいえ、感情表現が下手でコミュニケーションに貧しい彼は、
上司や同僚からもそれとなく疎外され、孤独な日々を過ごしていた。
彼自身も元々馴れ合いは苦手だと思っていたし、そんな状況もまた良しと考えていた。
しかし、自分でも気付かないような心のスキマは存在したのだろう。
誰彼構わず「ゆっくりしていってね!!」と声をかける奇怪な饅頭、ゆっくりと出会って、
彼は胸を打たれた。心の中の乾ききって感覚を失っていた部分に、温かな潤いが染み渡るのを感じた。
みんなに好かれることのない俺だが、無条件で「ゆっくりしていってね!!」と声をかけてくれる存在がいる。
たとえそれが本能に起因する何の意味もない言動だったとしても、彼にはそれで充分だった。

彼はペットショップに赴き、一個のゆっくりれいむを購入した。彼が初めて手を出した流行だった。
人間に媚びることを訓練付けられた一流のゆっくりではない、安物の粗野なものを購入した。
感情表現の苦手な彼であるから、いくら相手に可愛く振舞われても、猫かわいがりのような対応は出来ない。
一流のゆっくりというのはプライドも高く、自分の仕事に対して相応のリアクションが返って来なかった時、
露骨に白けてしまったり、機嫌を悪くしたりする。扱う側にもスキルが要求されるのだ。
そんなゆっくりを彼が飼ったなら、その間に必ず温度差が生じ、気まずい生活を送ることになるだろう。
だから経済的事情を抜きにしても、彼にはこの粗野なゆっくりれいむの方が性に合っていると言えた。
彼がれいむを購入した時、狭い檻から解放されたのが嬉しかったのか、れいむはしきりに
「ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」と彼に呼びかけた。彼は良い買い物をした、と感じた。

「ただいまー……」
「ゆゆっ!ゆっくりしていってね!!」

そして現在。れいむはお兄さんの家にもすっかり慣れていた。
お兄さんが仕事に行っている時は与えられたおもちゃで遊んだり、子供向けの古い動物図鑑を眺めたりしてゆっくりし、
夜になってお兄さんが帰宅すれば玄関で出迎え、お兄さんの近くでゆっくりする。そんな日々を送っていた。

「ふぅ、今日も疲れた……」
「おにいさん、れいむおなかすいたよ!ごはんちょうだいね!!」
「あぁん? じゃあホラよ、安いゆっくりフードだが」
「ゆゆ!むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」

れいむに対する彼の無骨な接し方を見て、客観的に可愛がっているとは判断しにくい。
必要以上の触れ合いは無かったし、一緒に遊ぶなんてことは勿論、会話すらあまりしなかった。
端的に言えば、彼はれいむを観葉植物のように扱っていた。

「ゆっ、おにいさん!れいむおなかいっぱいになったよ!!」
「そっかー。元気で生きろよ」
「ゆっくりわかったよ!!」

それでもれいむからすれば、ゆっくり好きにありがちな過度のスキンシップを求められることもなく、
人間好みの性格になるように厳しく躾けられることもない。毎日の食事と安全な寝床、
見ているだけで好奇心を満たされる人間さんのおうちの風景、
お空の見える窓を与えられている今の暮らしは、とてもとてもゆっくり出来ると思っていた。
互いのマイペースさが上手く作用し、付きすぎず離れすぎず、良い関係を築けていた。
だがそこには、一つの失敗があったのだ。

「おにいさん、きょうもれいむとゆっくりしていってね!!」
「おー。お前もゆっくりしろよ」
「れいむはすごくゆっくりしてるよ!おにいさんのおかげだよ!!」
「そうかそうか」

お兄さんがPCに向かってお気に入りのブログを巡回している後ろで、れいむは嬉しそうに跳ねていた。

(おにいさんはすごくゆっくりしたひとだよ。れいむはすごくゆっくりできてるよ。
 れいむはゆっくりにうまれてよかったよ。おにいさんにかわれてしあわせだよ)

一つの失敗。それは生じるはずの無かった、両者の温度差だ。
より正確に言うなら、『上限温度の違い』と言える。

ゆっくりとは大袈裟で感情的な生き物だ。その少ない語彙で必死に感情を誇張したり、
「ゆっくりしたい」という感情に任せて向う見ずな言動を取るシュールさは、世間によく知られている。
ペットショップで生まれ育ち、ロクに他の人間とも接したことがないれいむは、
生まれて初めてのゆっくりした暮らしをくれたお兄さんに対して、限りない好意と信頼を寄せていた。
だがお兄さんは、このままれいむが死ぬまで程々に良好でヌルい関係を続けていけると思っており、それが幸せだった。
言うなれば感情の器が、れいむの方がやや過剰に大きかったのだ。
その器に溜まり切ったお兄さんへの思い。それを彼が受け止められるかどうかは、別の問題だった。


ある日曜日。仕事がお休みのお兄さんは、れいむよりもゆっくりお昼頃に起きてきた。

「おう、おはよう」
「ゆゆ!おにいさん、れいむよりもゆっくりだね!!」
「たまの日曜ぐらいゆっくりしても良いだろ。お前が早起き過ぎんだよ」
「れいむははやおきしてゆっくりしてたよ!!」
「そうかそうか」

今日はやることもないから、家でゴロゴロ漫画でも読むか、それとも映画を見に行くか……
腹を掻きながらのんびり思案している彼の横で、れいむはいつものマヌケ面に、少しだけ緊張の色を浮かべていた。

「れいむははやおきしておなかすいたよ!ゆっくりごはんちょうだいね!!」
「はいはい、ゆっくりゆっくり」

そう言いながら彼は、比較的状態の良い食品廃棄物をペースト状にして小分けにしたもの、
通称ゆっくりフードを、サボテンに水をやるような慈しみを以て、れいむ用の皿にボロボロと振り落とした。

「むーしゃ、むーしゃ・・・」

ゆっくりが物を咀嚼する時に垣間見せる、どこか一心不乱の必死な表情。
そんなれいむの表情に、今日はどこか悩みの色が加わっていた。
悩みのあまり朝早くに目が覚めて、お兄さんが起きて来るまでずっとそのことについて考えていた。
もしかしたら、これが最期の食事になるかもしれない。
そう思ってれいむは、いつも以上にゆっくりとよく噛み、お兄さんのくれるごはんを味わった。

「しあわせーーー♪」
「はいはい、お粗末お粗末」
「ゆゆゆ・・・おにいさん・・・」
「ん……? どうしたゆっくり?」

れいむはお兄さんに正面から向き直り、何かを言い辛そうにもじもじとしている。
彼はそんなれいむの姿を見るのは初めてだったので、何か特別なことでもあるのかと耳を傾けた。
お嫁さん欲しいとか言い出さないだろうな……と彼があれこれ心配を巡らせ始めると、ようやくれいむが口を開いた。

「ゆゆ・・・おにいさん・・・れいむをゆっくりたべてね!!」
「はっ?」

れいむは生まれて初めて見せる、比較的真剣に見える表情でそう叫んだ。
お兄さんはまさかそんな申し出をされるとは思っておらず、完全に面食らい、唖然としていた。

「えーと……食べるってのはその……食べるってこと?」
「そうだよ!!れいむはおにいさんがゆっくりさせてくれたから、とっっっってもおいしいんだよ!!」
「うーん……だとしてもちょっとなぁ……」

目を輝かせ、そう力強く饅頭としての自らをアピールするれいむ。
しかしお兄さんは、れいむを食べようなどという気は微塵も起きなかった。
理由はいくつかある。
一般的にゆっくりの至上の味は、一流の職人の適切な虐待によって生まれると言われる。
ただ素人の自分の下でゆっくりしていたこのれいむが、それ程美味しいとは思えない。
それに、彼は少し前に人に誘われてゆっくり料理の店に入ったのだが、
虐め殺されたゆっくりを味わう事がれいむへの不義理になるような気がして、絶品らしい料理がロクに喉を通らなかった。
(もっともそれは、花を育てながら野菜を食べる事に罪悪感を持つようなもので、全く非合理な感情なのだが)
更に自分がれいむを食べてしまえば、もうれいむに「ゆっくりしていってね!!」と言われることがなくなる。
新しいゆっくりを買えば済むかも知れないが、彼とてれいむに少しは愛着が湧いており、それは面倒なことだった。
そして何よりも、彼は甘いものが反吐が出るほど嫌いだった。

「やっぱりダメだな。俺にれいむは食べられないよ」
「ゆゆ!?そんなこといわないでね!!えんりょをしないでね!!」
「いや遠慮とかじゃなくマジで」
「そんなこといっちゃだめだよ!!れいむをゆっくりたべてね!!おいしいれいむをたべるとゆっくりできるよ!!」

『おいしい自分を食べさせる』ことは、饅頭であるゆっくりにとって相手に出来る最高の持て成しだ。
逆に言えば、それ以上に相手をゆっくりさせられる手段をゆっくりは知らない。
だかられいむがお兄さんへの感謝を表現するには、もはや自分を食べてもらうしか無くなっていたのだ。
だがお兄さんは、れいむを食べたくないという。この世で最上のゆっくりを味わいたくないという。
何故だろう? ゆっくりしたくてれいむを飼っていたのではないのだろうか?

(ゆゆ、わかったよ。れいむとおなじように、おにいさんもれいむがだいすきなんだよ。
 れいむがいなくなるとかなしいから、ほんとうはたべたいのにたべたくないっていってるんだよ。
 でもおいしいれいむをたべることが、おにいさんにとっていちばんゆっくりできることなんだよ。ゆっくりりかいしてね!)

れいむの餡子脳は、一分ほどでその結論に至った。
そして真のゆっくりについてお兄さんに言って聞かせることを諦め、やはり自らが先んじて決断を下すことにした。
れいむはゆっくりにとって禁断の呪文を口にしたのだ。

「さあ、おたべなさい!!」
「え!?」

お兄さんはまたも驚愕させられることとなった。
「おたべなさい!」の発声と同時に、れいむの身体がパカリと縦に割れたのだ。
その断面には、温かそうな新鮮な餡子がきらめいている。

(ゆっ・・・ゆっくりうまくいったよ!あんまりいたくなかったよ!
 ちょっとすーすーするけど、とってもゆっくりできてるよ!!)

相手への親愛の情が極限まで高まった時、初めて成功すると言われる「おたべなさい」。
それ以外の時にやってしまうと、身体が割れるまでの僅かな時間が無限大にゆっくりに感じられ、
身を裂かれる極限の痛みを心が朽ち果てるまで味わい続けるという。ゆっくりはそのリスクを本能で理解している。
そんな危険な技であるから、ゆっくりの覚悟を試す上でも、余程の親愛が無ければこれを使うことは出来ない。
それが痛みを伴わず、上手くいった。それはれいむのゆっくりした生涯を証明する結果であった。
このままお兄さんに食べてもらえれば、身を齧られる時に痛みではなく幸福感が押し寄せるという。
れいむはもはや、それによってゆっくりすることを待つのみとなった。
お兄さんも、れいむのこれほどの決意と覚悟を持った行動を目の当たりにすれば、
もはや涙を流してれいむを食べ、そのあまりの美味しさにもう一度涙するしかあるまい。
自らの生涯に、限りないしあわせとゆっくりの内に幕を下ろす感動。れいむのゆん生は、ここに完成するのだ。
一方お兄さんは、完全に白けきっていた。
ゆっくりに伝わるそんな風習、全く知ったことではなかったからだ。

「いや、だからいらねーから。さっさと戻りなさい」
「ゆゆっ!?」

そう言ってお兄さんは面倒くさそうに、れいむの分かれた半身をそれぞれ手に持ち、
ぐりぐりとくっつけて元の形に戻そうとした。

「あれ、何かズレるな……」
「ゆうううううぅぅ!!ゆ゛うううううううぅぅぅ!!」

しかし何度やっても、まるで磁石の同極を合わせるかのごとく、どちらか半身がするりと逸れてしまう。
どうしても食べてもらいたいれいむが、くっつくことを必死に拒んでいるのだ。
これはそういうものなのだ、と彼が納得して諦めるまで、れいむは呻き声を上げ続けた。
力みすぎて涙目になっていたれいむの両半身を、お兄さんは床にそっと並べて置いた。

「はぁ、しょうがねーな。じゃあ俺は映画見に行って来るわ。帰って来るまでに直しとけよ……」
「ゆ゛ううううぅぅぅぅ!!ゆ゛うううぅぅぅぅぅ!おにいさんまってねぇぇぇ!!」

今回のも、またゆっくり特有の良く解らない言動の一つに過ぎないと解釈したお兄さんは、
れいむの叫びを構う必要無しと判断し、さばさばと外に出かけていった。
お兄さんの欠点、それは自分と同じ感情の尺度を相手にも求めることだ。
感情の沸点が高い彼にとって、れいむが自分なんかにそこまで思い詰めるなどという発想は浮かばないのだ。
こういう人が女を泣かしたりするんですねー。

「おにいさん!!まってね!!どうしてれいむをたべてくれないの!!
 とってもゆっくりできるんだよ!!れいむはおにいさんにゆっくりしてほしいんだよ!!」

お兄さんが出て行った玄関のドアに向かって、涙ながらに叫び続けるれいむ。
しかしその声がお兄さんに届くことは決してなく、天井や壁に虚しく反響し続けるだけだ。

「なんでもどってきてぐれないの!!おにいざぁぁぁぁん!!
 れいむはおにいさんがだいすきなんだよ!!おにいさんもれいむのことがだいすきでしょ!!
 それなられいむをゆっくりたべてね!!そしたられいむもおにいさんもすっごくゆっくりできるんだよ!!
 れいむがんばっておたべなさいしたからはやくたべてね!!たべないと・・・たべないと・・・・・・・・・!!」

れいむの両半身が、それぞれぷるぷると震え始める。
とうとう来てしまったのだ。「おたべなさい」のタイムリミットが。
断面にきらめいていた餡子は乾き始め、徐々に変質していく。そして……


「「ふえちゃうぞ!!」」


泣き顔が一転、不敵な笑みに変わった次の瞬間、れいむは二個になった。
ヒトデのように、二つに分かれた身体がそれぞれ欠けた部分を補完し、完全な一個の身体を作り出したのだ。
「ふえちゃうぞ!」という悪戯っぽい言い回しではあるが、別に悪戯や意地悪で増えているわけではない。
これは「おたべなさい!」をしくじった者に、強制的に訪れる結末だったのだ。

「ゆゆ!れいむがふえちゃったよ!!」
「ゆうぅぅぅぅぅ!!どうすればいいのぉぉ!!」

不敵に笑ったのも一瞬の事。次に口を開く時にはもう二人の表情は悔しさと悲しみに塗れていた。
この増えたれいむはそれぞれ過去や記憶を共有しているが、自我は共有していない。
完全に別々のれいむなのだ。自分と全く同じものが突如隣に現れることは、れいむにとって絶大な恐怖だった。
その上、付けているリボンまで同じ。
髪飾りで個体識別をするゆっくりは、自分の飾りを付けている他ゆっくりに対して、本能的に敵意や不快感を抱く。
今回ような特殊なケースを除外すれば、それは自分の飾りを奪った略奪者に他ならないからである。
二個のれいむは、お互いに「ゆっくりできなさ」を感じ取っていた。
その居心地の悪さは、不安の増大に繋がっていく。

「ゆゆ・・・おにいさんどうしてかえってきてくれないの・・・」
「おにいさん・・・どうしてれいむをたべてゆっくりしてくれなかったの・・・」
「・・・ゆゆ!れいむがゆっくりしてなかったからだよ!
 ゆっくりしてないれいむをたべてもゆっくりできないっておもったんだよ!ゆっくりはんせいしてね!」
「ゆゆゆ!?なにいってるの?れいむはれいむなんだよ?」
「そうだよ!だからゆっくりはんせいしてね!」
「ちがうでしょ!はんせいするのはれいむのほうだよ!!」
「ゆ!わかってるならはんせいしてね!ゆっくりしなきゃだめだよ!!」
「ちがうのおぉぉぉ!!れいむがいってるれいむはれいむのことでれいむのことじゃないの!!!」
「でもれいむはれいむでれいむなんだからけっきょくはれいむのことだよ!!」

れいむがドッペルゲンガーと邂逅して、まず始めたことは罵りあいであった。
実際に増えてみると、自分の嫌なところばかりが目に付いた。れいむは自分が全然ゆっくりしていない気がした。
それから30分ほど、れいむたちはお互いがいかにゆっくりしていないかを指摘しあったが、虚しくなってやめた。

「ゆぅ・・・・れいむ、もっとゆっくりしなきゃだめだよ・・・・・」
「そうだね・・・・もっといっぱいゆっくりして、それでこんどこそおたべなさいしようね・・・・・」

二個のれいむはヘナリとつぶれ、全身で落ち込みを表した。
それからお兄さんが帰って来るまで、前向きに、二人で存分にゆっくり過ごすことにした。
同じ髪飾りをつけたれいむ同士で過ごす時間は、違和感に満ち満ちていた。
二人ですりすりもしてみたが、ちっともゆっくり出来なかった。
それでもれいむ達は耐えて待ち続けた。お兄さんの下で存分にゆっくりすることを思って。

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最終更新:2009年02月24日 19:31
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