~ゆっくりありす生涯『取り替え子編』(裏-2)~
因果応報その2 ~2匹のゲスゆっくり~
「ゆん! このせまいおうちもあきたんだぜ! ごはんもなくなったしあたらしいおうちをさがしにいくんだぜ! 」
「むきゅ! そうねだーりん、ぱちぇもこのおうちにあきていたところよ。」
だぜまりさとそのつがいのぱちゅりーがそこそこ広い木の洞の中から顔を出す。
この2匹はいわゆる“ゲス”であり、まりさの力強さとぱちゅリーに頭の良さを間違った方向へ活かし、これまでに数々の悪事を働い
てきた。
今2匹が捨てたおうちも、他のゆっくりから溜め込んだ食糧ごと奪ったものであった。
もはや2匹にとっておうちもごはんも他のゆっくりから奪うものとなっていた。
2匹は新たな獲物を探して森の中を跳ね進んでいる。
「はにー、つぎはどんなおうちにすみたいのぜ? 」
「むきゅ~~~、つぎはきのおうちじゃなくてじめんにほったあたたかいおうちがいいわね。」
季節はまだ春先、体の弱いぱちゅりーにとって風の吹き込みが少なく温度の比較的安定している地中の方が住みやすい環境なのだ。
「まかせるのぜ! はにーのためにゆっくりできるおうちをさがすんだぜ! 」
「むきゅ~♪ さすがだーりんね、たよりになるわ。」
自信満々のまりさとぱちゅりーは既におうちと食糧が手に入ったような気になっていた。
そんな時、まりさが動きを止め、周囲をキョロキョロ見回し始める。
「あまあまのにおいがするんだぜ! 」
「むきゅ! とってもゆっくりしたあまあまさんのにおいよ! 」
食い意地のはっているまりさに続いてぱちゅりーも匂いを確認すると2匹は匂いをたどりながら進んでいった。
しばらく進むと2匹の前には成体のゆっくりでも余裕で入ることができる大きさの穴が姿を現す。
「むきゅ! なかなかいごこちのよさそうなおうちよ! 」
「あまあまのにおいもこのなかからするんだぜ! 」
匂いをたどって来たら思わぬゆっくりハウスを見つけた2匹は不敵な笑みを浮かべている。
まりさを先頭に、後ろにぱちゅりーが続き2匹は穴の中へ入っていく。
しばらく進むとある程度開けた空間が現れ、眠っている小さなありすが姿を現す。
「ゆゆ! はにー、ちいさなありすがいるんだぜ。」
「むきゅー! ぱちぇたちのあいのすにありすはじゃまよ! 」
思わぬ先住者に少し驚いた2匹であったが、まだ赤ん坊のありす1匹だけだとわかるとすぐに強気の態度に戻る。
そしてありすの前にまりさが進み出る。
「それじゃこんなちび、まりささまがつぶしてやるんだぜ! 」
「むきゅ! だめよまりさ、せっかくのおうちがよごれちゃうわ。」
ゆっくりは死んだ時に人間にはわからない死臭を発すると言われている。
死臭は死んだゆっくりの飾りに染み付き、その飾りを着けたゆっくりはゆっくりできないゆっくりとして迫害されてしまう。
そのため、うっかりおうちの中で身内や侵入者を殺してしまうとその場所に死臭が染み付き、しばらくゆっくりできない場所として使
えなくなってしまうのだ。
「ゆ、たしかにぱちゅりーのいうとおりなのぜ。」
「ねむっているみたいだしちょうどいいわ。さっさとそとにほうりだすのよ。」
ぱちゅりーの指示を受けたまりさはプチありすを口でつかみ軽々と持ち上げる。
「・・・・・ゆぅ・・・・・ありしゅのおうち・・・・・zzzzz。」
余程深く眠っているのかまりさにつかみ上げられてもプチありすが目を覚ますことはなかった。
まりさはプチありすをくわえたまま入り口まで戻ると勢いよく外へ放り出す。
プチありすは放物線を描いて飛んでいく。そして・・・・・。
「ぴぎゃ! 」
顔面から着地したプチありすは激痛に襲われ目を覚ました。
「はにー、じゃまなありすのそうじはおわったんだぜ! 」
「むきゅ~♪ さすがだーりんね。これでここはわたしたちのあいのすよ♪ 」
「「す~り♪ す~り♪ しあわせ~♪ 」」
邪魔者を排除し、理想的なおうちを手に入れた2匹は頬ずりをし合い喜んでいる。
しかし、いきなり追い出されたプチありすの方はたまったものではない。
「そ、そこはありしゅのおうちよ! お、おねがいだからでていって! 」
プチありすは小さいながらも精一杯顔を膨らませ2匹に抗議する。
“す~り♪ す~り♪ ”の最中に横槍を入れられたまりさは不機嫌そうな顔でプチありすの前へ進み出る。
「ふん、せっかくおなさけでいのちはたすけてやったのにばかなやつなのぜ! 」
まりさは軽く笑い勝利を確信し余裕の表情を浮かべている。
「むきゅー! だーりん! さっさとそのめざわりなありすをどこかにやっちゃって!
どうせれいぱーありすにむりやりすっきりさせられてできたいきてるかちのないくずありすよ! 」
ぱちゅりーの言葉を聞いたプチありすは顔を真っ赤にして逆上する。
「あ、ありしゅはくずじゃないのよ! あ、ありしゅのおかあしゃんは「さっさときえるのぜ! 」」
ボンッ!
「ぴぎゃああああぁ あぁ ぁ ぁ あああぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ! ! ! 」
まりさの体当たりによってプチありすは悲鳴を上げながら草むらの中へ消えていった。
「ばかなありすだぜ! まりささまにかなうわけないんだぜ! 」
「みごとなこうげきよ、だーりん。ほれぼれするわ、むきゅ~ん♪ 」
プチありすが戻ってこないのを確認した2匹は手に入れた新しいおうちの中へ入っていく。
「だーりん! このおいしそうなあまあまをいただきましょう♪ 」
「わすれてたんだぜ! それじゃさっそくいただくのぜ! 」
このおうちを見つける手助けとなった甘い匂いを発する丸くて白い物体がおうちの奥に4つ置かれていた。
ゆっくりは見た目が綺麗だったり、匂いが甘いものをおいしくて安全な食べ物と勝手に思い込むことがよくある。
この2匹も例外ではなく・・・・・。
パクッ!
「「もぐもぐもぐ・・・・・し、しあわせ~♪ 」」
まりさは一気に2個、ぱちゅりーは1個ずつ口に入れていった。
「さすがだーりん、たべかたがごうかいね。」
「ゆっへんなのぜ! 」
2匹はあっという間に“あまあま”を平らげてしまった。しかし・・・・・。
程なくして2匹の体に変化が現れる。
「むきゅ・・・・・なんだか・・・・・ねむ・・・・・z z z z 。」
「まりさも・・・・・きゅうに・・・・・おめめが・・・・・z z z z z。」
2匹はあっという間に夢の中へ旅立っていった。
カチャ
「・・・・・お! 入ってる入ってる。」
目にゴーグル、口にはマスクをした怪しげな男が何やらフタの様な物を持ち上げ中をのぞき込んでいる。
そして中に目当てのものが入っているのを確認した男は穴の中へ手を入れる。
弾力のある感触の物体に手のひらがが当たると、男はその物体をつかみ持ち上げる。
「・・・・・むきゅ? 」
穴の中から取り出されたのはぱちゅりーであった。
寝ぼけ眼のぱちゅリーは目の前に人間がいるのに気がつくと一瞬にして意識が覚醒し、顔色をブルーに染める。
「な、なんでにんげんさんがいるのおおぉ ぉ ぉ おぉ お! ? 」
ぱちゅリーは男の手から逃げ出そうと暴れるが、がっちりつかまれているので無駄な抵抗にすらならない。
「いや~♪ 天然のぱちゅりーなんてついてるな~♪ 高い金払って埋め込み式の捕獲ハウス買って正解だったよ。」
2匹がプチありすから横取りしたおうちは一見地面に掘られたおうちであるが、実は全て作り物で奥の広間の天井にはフタが取り付け
られており、
中のゆっくりが捕まえられる仕組みになっている捕獲ハウスだったのだ。
「む、むきゅう゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛だーり・・・・・ふがふが。」
自分が人間の罠にかかったと理解したぱちゅリーは悲鳴を上げるが、男によってすぐに口がふさがれ開かないように固定されてしまっ
た。
「中身吐いて死んでもらっては困るんでね、なかなか質のいい天然のぱちゅりーみたいだし結構いい値段で売れそうだな。」
ふがふが言っているぱちゅりーを麻袋に詰めると、男は再び穴の中に手を入れる。
「・・・・・ゅ? 」
次に取り出されたのはまりさであった。
男につかまれたことにより、ようやくまりさはも目を覚ました。
そして男とまりさの目が合った瞬間、まりさは瞬時に男の手の中から逃げ出した。
「ゆ゛! ? 」
「あ、こらまて! 」
ゲスとしての本能であろうか、今自分が危機的状況に置かれていると気が付き、逃げると言う判断を一瞬のうちにしたのであった。
男も目が覚めた途端に逃げ出すとは予想しておらず油断していたため、まりさを逃がしてしまった。
しかし、不意を突かれたとは言えゆっくりの逃走速度が人間を上回る事は無い。
「まちやがれ! ふんっ! 」
ボスッ!
まりさの跳躍が最高点に到達した瞬間、男の放った拳がまりさの体にめり込み、近くの木の幹目掛けて勢いよく吹っ飛んでいった。
顔面から木にぶつかったまりさはずるずると木を伝い地面に落下する。
「ま、まりはのはがあ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! ! ! 」
顔面から木にぶつかった為、まりさの歯は砕けてしまっていた。
まりさは歯が砕けた痛みに耐えられず涙を流し、のたのたうちまわっている。
「しまったな、大事な売り物なのに傷をつけてしまった。」
男は残念そうに暴れるまりさを慎重につかむと新たな麻袋の中に詰め込んだ。
まりさとぱちゅりーを別々にしたのは、仲の良いゆっくり同士を同じ袋に入れてしまうと“すっきり”してしまう恐れがあるためであ
る。
「もう中には残っていないみたいだな。ホイホイ睡眠団子をセットしてっと。次はちぇんでもひっかかってるといいな~。」
男は新たな仕掛けを施し穴を塞ぐと、もと来た道を戻っていった。
「それにしても、このNITORI印の防胞メガネとマスクはなかなかの効力だな。」
その後2匹は加工場に買い取られ、ぱちゅりーは『このゆっくりから作りました。』という写真つきの天然ゆっくりシュークリームに
加工され、まりさは母体としての健康状態が良かった事からありすによって“すっきり”させられ続け、各々その生涯を閉じたのであ
った。
道具解説
・NITORI印のメガネ&マスク
森の瘴気や化け物茸の胞子をある程度緩和する事ができる道具。
瘴気や胞子にある程度耐性のある人間が着用する事により、魔法の森でのゆっくり捕獲活動を可能にするアイテム。
東方を知らない人のための補足
幻想郷で森と言えば魔法の森のことを指します。森は常に禍々しい妖気、化け物茸の胞子で覆われており、普通の人間には長時間耐え
られない場所となっています。故に人間だけでなく妖怪もあまり寄り付かない場所ですが、瘴気に耐えられる人間にとっては妖怪があ
まり来ない安全な場所となっています。
また化け物茸の胞子がもたらす幻覚は、人間の魔力を高める作用があるので魔法使いを志すものが好んで住んでいます。
(霧雨魔理沙やアリス・マーガトロイドなど)
私の中では何故かゆっくりには瘴気や胞子が影響を及ぼさないものと考えています。
因果応報その2 ~2匹のゲスゆっくり~ (終)
因果応報その3 ~生粋のレイパー~
「むらむらむらむらむらむらむらむらむらむら・・・・・・・・・・すっきりしたいわー! ! ! 」
何処か落ち着かない様子でありすは不機嫌な顔をしていた。
発言からもわかるようにこのありすは生粋のレイパーである。
このありすの信条は1日1すっきり、まりさを見つけたら即すっきり、何とも迷惑なゆっくりである。
しかし、今日は既にお昼を回ろうかと言う時刻でありながら未だに獲物と接触できずにいた。
「まったく、せっかくとかいはのありすがすっきりさせてあげようっていうのに、まりさったらどこにかくれてるのかしら? 」
ありすはまりさを捜しながら少し頬を膨らませ自己中心的な発言をして勝手にすねていた。・・・・・その時。
「か・だがい・・・わ・・・・・くすん。」
断片的に弱々しい声がありすの耳(?)に届いた。
ありすは辺りをキョロキョロ見回し、声のするほうを特定する。
「このこえはひょっとして・・・・・。」
ありすは声のする方角にある茂みの中へ入っていった。
ガサッ! ガサッ! ガサッ! ・・・・・ガサガサガサ・・・・・ヒョコッ!
茂みから顔を出すと目の前には小さなありすが身構えていた。
「ゆっくりしていってね! 」
「ゆっくりちていってね! 」
ありすが挨拶をすると、プチありすもその本能から挨拶を返した。
「このあたりじゃみないこね、りょうしんはどうしたの? 」
ありすは笑顔でプチありすの警戒を解こうと優しくたずねた。
プチありすもありすの優しい態度に安心したのかゆっくりと口を開く。
「ゆぅ・・・・・ありしゅには・・・・・おかあしゃんもおとうしゃんもいないよ・・・・・ぐすん。」
プチありすの言葉を瞬間、ありすはニヤリと口元を緩ませた。
(ふふふ、このこをありすのこどもにすればしんぐるまざーとしてまりさのいるむれにはいりこみやすくなるわ。)
「こんなかわいいこをすてるなんてまったくいなかもののゆっくりね! いいわ、ありすがあなたをりっぱなとかいはにそだててあげる
わ! 」
ありすの言葉を聞いたプチありすはきょとんとした表情を浮かべている。
「ゆ? ときゃいは? 」
「そうよ、とかいはっていうのはとってもゆっくりできるのよ! 」
(まったく、このちびはとかいはもしらないなんてとんだいなかものだわ! )
考えている事とは裏腹にありすは笑顔でプチありすの返事を待った。
「ゆゆ~♪ ありしゅはおね~しゃんについていきゅわ♪ 」
「それじゃありすのまいはうすにいきましょう。おちびちゃん、ゆっくりついてくるのよ。」
(りようするだけりようしていらなくなったらすててやるわ。せいぜいこのとかいはのありすのためにやくにたちなさい! )
ありすが進むとその後ろをプチありすが嬉しそうに跳ねついていった。
「ゆ・・・の・~♪ すっ・・・ひ~♪ ・・・・・」
(ゆゆ! このこえは! )
ありすの耳(?)にかすかではあるがゆっくりの声が響いてきた。
その声を聞いたありすは一瞬顔をニヤッとさせる。
「ゆゆ! おちびちゃんとまって! 」
ありすが突如立ち止まると、プチありすも不思議そうに立ち止まる。
「ゆ? ? ? 」
(せっかくてにいれたありすの“てごま”をおいていくのはすこしきがかりだけど・・・・・でも・・・・・。)
「いい? おちびちゃん。ありすはちょっとようじができたからいいこにしてここでまってるのよ? 」
「ゆ、ゆっくりりかいちたわ。」
(ふん、すなおなところはすこしはとかいはね。)
ありすはプチありすを置いて声のする方にある茂みの中へ入っていった。
「ゆっくり~のひ~♪ すっきり~のひ~♪ まったり~のひ~♪ あっまあっまさ~んがたっべたいな~♪ 」
1匹のまりさが歌を歌いながら陽気に跳ねていた。
カサカサカサッ!
近くの茂みが音を立てて揺れ出し、まりさは跳ねるのを止めてその場で立ち止まる。
「ゆ~? 」
まりさは警戒心0で揺れる茂みへ近づいていく。
カサカサカサカサカサカサッ! ビュンッ! ! !
「ま、まりさああああぁ あぁああぁ ぁ ぁ あああ! ! ! 」
ありすは物凄い勢いで茂みの中から飛び出すとまりさ目掛けて突進する。
「ゆぎゃあ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛! ! ! 」
まりさは悲鳴を上げるが、餡子脳の処理能力が今の状況に追いついておらず動く事すらできない。
さらに、まりさのいる場所が木のすぐ側という不運も加わり、まりさの体はありすによって木に押し付けられてしまう。
「まりさぁ ぁ ぁ あぁ ぁ ! にがさないわよおぉ ぉ ぉ ぉ ! 」
まりさはありすと木に挟まれ、まったく身動きが取れなくなってしまった。
ありすは顔を紅潮させ、自分の頬をまりさの頬にくっつけ体を震わせまりさに振動を与えていく。
「いいわよおぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! もうすぐよおぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! 」
「いやだあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛! ! ! 」
ありすは顔を更に紅潮させ、震動をどんどん強くしていく。
まりさは必死に逃げ出そうと体をくねくねさせるが、自身も少しずつ快楽に支配され思うように力が出せなかった。
「んほおおぉ ぉ ぉ おおおおぉ おおおぉ おおぉ ぉ おおおおお! ! ! 」
「どおじでばりざがごんなめにあうのおおぉ おおおぉ ぉ おおおおお! ! !
いやあ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ あ゛あ゛あ゛ ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! ! ! 」
2匹がすっきりを迎えようとしたその時。・・・・・コン
「いったいだれなのよ! とかいはのすっきりをじゃま・・・・・。」
ありすは突如頭を叩いた犯人を捜しまりさをホールドしたまま周囲を見回した。
そしてあるものを見つけ一瞬にして紅潮した顔を真っ青に染める。
ブーン・・・・・ブーンブーン
ブーン ブーン ブーン ブーン ブーン !
ありすの頭の上に落ちてきたもの、それは蜂の巣であった。
蜂はありす目掛けてすぐさま攻撃を仕掛ける。
ありすもこれではすっきりどころではないと判断し、急いでその場から逃げる。
「いたい! いたい! こんなのとかいはじゃないわ! やめて! やめてえぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ! 」
ゆっくりの移動速度と蜂の飛行速度を比べれば当然蜂の方が何倍も早い。
ありすは大量に蜂に刺され、体中が膨れ上がっている。
しかし、それでも蜂の猛攻はやまなかった。
「ゆ! あそこにかくれれば! 」
天の助けか、目の前に身を隠せそうな背の高い茂みが現れ、ありすはそこへ向かって思い切りジャンプした。しかし・・・・・。
カサッ! ボチャン!
草むらの先には地面は無く、沼となっていた。
「ぼぼびべぼばびばぼばびぶばぼぶばべびぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛! ! !
(どおしてとかいはのありすがこんなめにぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛! ! ! )」
ありすは体中を覆う蜂に刺された痛み、そして口に入ってくる水の苦しさにもだえながらゆっくりと沈んでいった。
~1時間後~
「・・・・・ゅ・・・・・? 」
ありすに襲われていたまりさが目を覚ました。
まりさは無理やりすっきりさせられる恐怖心から気絶してしまっていたのだ。
また気絶していた事もあり、大多数の蜂の攻撃をかわし体は刺されることなく帽子が何箇所か刺されただけで済んでいた。
「ゆゆ! ありすがいないよ! まりさのからだもなんともないよ! ゆっくり~♪ 」
まりさは体をくねくねさせて喜んでいると、初めて見る物体が目に入る。
「ゆ~? あれはなんなの? 」
まりさは蜂の巣と言うものを知らなかった。
警戒しながらゆっくりと蜂の巣に近づいていく。
「ゆ! ? あまあまのにおいがするよ! 」
まりさは恐る恐る蜂の巣を少しかじった。そして・・・・・。
「し、ししししし! しあわせ~! ぱ、ぱぴぷぺぽ~♪ 」
口の中に広がる初めて食べる甘味にまりさは自然と涙を流し喜んだ。
まりさは蜂の巣を大事そうに帽子の中にしまうと、満面の笑みで自分のおうちへ帰っていった。
因果応報その3 ~生粋のレイパー~ (終)
因果応報その4 ~もう1匹の望まれぬ饅頭~
「もうすぐうまれるみょん! 」
「わかるよ~♪ もうすぐおちびちゃんたちにあえるんだね~♪ 」
とある巣穴の中、ちぇんとみょんが笑顔で頭上を見上げている。
ちぇんの頭には蔓が生え、ちぇん種とみょん種のプチゆっくりがそれぞれ3匹ずつ実っている。
そして1匹のプチゆっくりが静かに揺れ始める。
カサ・・・・・カサ・・・・・カサカサカサ・・・・・プチッ!
蔓から切り離されたプチゆっくりが静かに落下する。
2匹の目は落下するプチゆっくりに釘付けになる。
そして地面に着地したプチゆっくりはゆっくりと目を開き、そして口を大きく開け産声を上げる。
「ち~〇ぽっ! 」
2匹の表情が凍りつく。そして・・・・・。
「どういうことだみょおぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ん! 」
「わからない、わからないよおぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! 」
みょん種は昔“ちー〇ぽ”としか言葉が話せなかったという歴史がある。
今では語尾にみょんをつけるみょん語を話すようになっているが、極稀に“ちー〇ぽ”しか話す事ができないみょん種が生まれること
がある。
2匹が動揺している間にもプチ達は次々と誕生し産声を上げる。
「「ゆっくりちていきゅみょん! 」」
「「「ゆっきゅりちていっちぇね~! 」」」
幸いにも残りのプチみょん2匹はみょん語を話していた。
2匹はとりあえずちぇんの頭から抜け落ちた蔓をプチ達に与えると、異端の言葉を話すプチみょんをどうするか話し合った。
「ぢ〇ぼぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! 」
「あばれるんじゃないみょん! しずかにするみょん! 」
みょんはプチみょんを口にくわえ、崖の上に立っていた。
みょんとちぇんの出した結論、それは所属する群れのメンバーにプチみょんの存在が知れる前に間引いてしまうというものである。
ゆっくりは自分達がゆっくりできないと考える異端の存在を極端に嫌う。
もし“ちー〇ぽ”としか話せないプチみょんが生まれたとなれば一家もろとも村八分にされてしまう恐れがあるのだ。
みょんは崖の端に立つとゆっくりと口の力を緩める。そして・・・・・。
「ち〇ぽお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! 」
プチみょんは涙を流しながら崖の下へ落ちていった。
「うぅ、すまないみょん! みょんをゆるしてほしいみょ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ん!
うらむならみょんをうらむみょん! こうしないとちぇんやほかのおちびちゃんたちがゆっくりできないんだみょ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ん! 」
みょんは涙を流し崖の下へ消えていった我が子へひたすら謝り続けた。
「・・・・・ち・・・・・ぽ・・・・・? 」
崖の下に捨てられたプチみょんは奇跡的に生きていた。
まだ生まれたばかりで体が軽く、落ちる際に触れた木の葉や地面に生える草がクッションとなったため、多少の擦り傷を負っただけで
済んだのだ。
しかし、助かったからと言ってそれがこのプチみょんにとって本当に幸運であったかと言うと必ずしもそうではない。
プチゆっくりは生命力が極端に低く、親に依存しなければまず生きていく事はできない。
また、その旺盛な好奇心故に自ら危険の中へ飛び込み帰らぬゆっくりとなることも少なくない。
そのため、親に見捨てられたプチゆっくりが1匹で成長していくのは不可能に近いのであった。
「ちー〇ぽぉ・・・・・。」
プチみょんは周囲を見回しながら弱々しく泣き声を上げ、目からは小粒の涙が流れ落ちていた。
しばらく泣いていたプチみょんであったが、このまま泣いていても誰も助けてくれないと理解したのか光のあまり届かない森の中へ消
えていった。
~1ヵ月後~
「ち~〇ぽっ! 」
プチみょんは懸命に生きていた。
体のサイズは平均的な成長速度より遅かったが、それでも元気いっぱいである。
なぜみょんがたった1匹で生き残る事ができたのか? それはみょんが暮らしている崖の下という場所に理由があった。
みょんが暮らすこの場所は日の光があまり届かず湿気も多く、また食糧もあまり豊富ではない俗に言うゆっくりできない場所である。
そのため、ゆっくり達は自ら進んでこの場所に入ってこようとしないのだ。
しかし、それ故にこの場所はプチみょんにとっては好都合な場所となっていた。
湿気が多く日光があまり届かないため木の根元などに苔が多く生え、これがプチみょんの食糧となった。
また、脅威となる他の通常種や捕食種がほとんど近寄らない場所であったため、危険に脅かされる事無く今日まで生き延びられたのだ。
「ち~〇ぽっぽ~♪ 」
みょんは元気よく薄暗い森の中を跳ね回り食糧を集めていた。
両親から狩りの方法を教わっていないみょんは独学で狩りの方法を学ぶしかなく、体が成長したとは言え狩があまり上手ではなかった。
そのため、みょんにとって日の出ている時間のほとんどが食糧集めの時間となっていた。
日が沈む頃、みょんはおうちとしている木の洞の中へ入っていく。
「ち~んぽ~♪ 」
みょんは今日の狩りで得た食糧のうち、余剰分をおうちのの奥にしまっていた。
成長するにつれて苔だけでは足らなくなり他の食糧を探し始めた頃、毎日十分な食糧が見つかるわけではなかった。
その経験からみょんは自分のおうちに食糧を備蓄するということを自然に学び実践していた。
「ちーんぽ♪ 」
食糧の備蓄が終わり、夕食を食べ始めようとした時だった・・・・・。
「・・・・・たちゅけちぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ! ! ! 」
どこからか悲鳴の混じった声がみょんの耳(?)に入ってきた。
みょんは食事を中断するとすぐにおうちの外に飛び出した。
空は今にも雨が降りだしそうな黒い雲で覆われていた。
「・・・・・だれか・・・・・たちゅ・・・・・ゆ゛ぎゃ! 」
それでもみょんは急いで声のするほうへ跳ねていった。
ぴちゃ・・・・・ぴちゃ! ・・・・・ぴちゃぴちゃぴちゃ!
雨が降り始めて間もなくして、みょんは悲鳴を上げていた小さな金髪のゆっくりを見つけた。
「ち〇ぽ! 」
その瞬間、みょんの脳裏に親に捨てられたった1匹で泣いていた昔の自分の姿が映し出された。
目の前のゆっくりを昔の自分に重ね合わせたみょんは、口で小さなゆっくりをつかむと迷うことなく急いでおうちへ跳ねていった。
因果応報その4 ~もう1匹の望まれぬ饅頭~ (終)
~ゆっくりありすの生涯『取り替え子編』END
後書き
初めましての方、お久しぶりの方、本作品を最後まで読んでくださりありがとうございます。
今回のSSは「チェンジリング」という作品を読んだ時から温めていたもので、長い時間がかかりましたがようやく完成しました。
人間に飼われることなく、自然の中で取り替え子が生まれ育ったらどうなるのか? という考えのもと本作品を書き上げました。
前作をwiki収録の際に、プロローグ目次部分を見やすく表にしてくださった方にこの場をかりてお礼申し上げます。
6月に初投稿から一年が経つので、初心にかえり次回作は加工場ものを書こうと思っています。
(余裕ができたら間に何個か作品を挟むと思いますが^^;)
リアルが忙しくあまりSSを書く時間はありませんが、ネタはあるのでゆっくりと書いていきたいと思います。
最終更新:2009年04月05日 03:42