~ゆっくりパチュリーの生涯~
「むきゅうぅぅぅ・・・」
木の洞(うろ)の中から弱々しい声が聞こえてくる。
声の主はゆっくりパチュリーだ。今にもその命の灯が消えようとしていた。
ゆっくり種というのは頭は悪いが、生命力だけはあるというのが特徴である。
しかし、ゆっくりパチュリー種だけは違う。とても体が弱いのである。
生まれたときから喘息(ぜんそく)を患っているため、満足に獲物(昆虫など)を追いかけることが出来ない。
また、木の実などを食べていると、ゆっくり魔理沙や霊夢がどこからともなくやってきて、
「さっさとどいてね!」
「私達がゆっくりするよ!」
と体当たりされ、
「むきゅうー!」
と泣きながら転がっていく。もちろん食べ物は横取りされてしまう。
こうして食べる物は辺りに生えている雑草くらいしか無くなってしまうのである。
このようなことは野生のゆっくりパチュリー種において珍しいことではなく、栄養不足によって死んでしまう
ことはよくあることであった。
「むきゅぅ・・・」
先ほどよりもさらに弱々しい声を上げるゆっくりパチュリー。もう動くだけの体力は残っていない。
薄れゆく意識の中、足音のようなものが聞こえた気がした。
「むきゅ?」
見知ぬ一室のふかふかなベッドの上でゆっくりパチュリーは目を覚ました。
周囲を見回す。窓とドアが一つずつ、とても清潔な感じの部屋だった。
キョロキョロとしているとドアが開き金髪の女性が部屋へ入ってきた。
「むきゅ!」
警戒するゆっくりパチュリー。野生のゆっくりパチュリーはとても警戒心が強く、人里の畑などを荒らすゆっ
くり霊夢や魔理沙と違い、人間の前にはめったに姿を見せないのであった。
「あらあら、そんなに警戒しなくていいわよ。あなたを治療したのは私なのよ?」
そう言うと金髪の女性はゆっくりパチュリーの前に色とりどりのお菓子を置いた。
最初はむきゅーと警戒してお菓子を口にしようとしなかったが、空腹に耐えかねてすぐにお菓子に飛びついた。
「むきゅっ、むきゅっ、おいしいよおねえさん!」
いつも食料を横取りされていたゆっくりパチュリーにとってまさに天国だった。
置かれたお菓子を食べ終わるとゆっくりパチュリーはむきゅー!っと元気のよい声を上げた。
そして金髪の女性は話し出した。
「森を散歩していたら木の洞の中から弱々しい声が聞こえてきて覗いてみたらあなたが今にも死にそうだったの
よ。急いで家までつれて帰って治療したってわけ。」
金髪の女性に言われ、ゆっくりパチュリーの脳裏にはあの時の状況がよみがえる。そして感じた死の恐怖を思
い出し、ガタガタ震え涙を流す。
「大丈夫よ、ここにいればゆっくりできるわ。」
「あ゛りがとおぉぉぉ、おね゛えさぁぁぁん。」
「私の名前はアリス・マーガトロイド、アリスでいいわ。今日はゆっくりと休みなさい。」
そう言うとアリスは部屋から出て行った。
お腹がいっぱいになったゆっくりパチュリーはゆっくりと眠りについた。
次の日、目を覚ますと目の前には笑顔のアリスが立っていた。
「おはよう、ゆっくりできたかしら?」
「むきゅー、ゆっくりできたよ!ありがとうありす!」
満面の笑みでお礼を言うゆっくりパチュリー。
「あなたにお饅頭を食べさせてあげようとしたんだけど失敗してばらばらになってしまったの。見た目は悪くて
も味はいいはずよ。食べてもらえるかしら?」
「むきゅー!たべたい!たべたい!」
普段からまともな物を食べることが出来ないゆっくりパチュリーにとって見た目などどうでも良かった。
アリスは部屋から出ると餡子と皮がぐちゃぐちゃになった物を皿の上に乗せて戻ってきた。
普通の人間だったら口に運ぶのさえ敬遠する形状であったが、おかまいなしにむきゅーとばらばらになった饅
頭(?)に飛びつくゆっくりパチュリー。
「かわったあじだけどとってもおいしいよ!ありがと!」
食べながらアリスの顔を見てお礼を言うゆっくりパチュリー。アリスの笑顔が目を覚ました時見たものとは若
干異なっていた気がしたが目の前のばらばらの饅頭を食べるのに夢中ですぐに忘れた。
アリスの看病のおかげでゆっくりパチュリーはみるみると元気になっていった。
「そろそろお家に帰っても大丈夫そうね。」
アリスはゆっくりパチュリーを野生へ返そうとしていた。しかしゆっくりパチュリーはそれを聞くと震え、
「おうちいやだぁぁぁ!こわいよぉぉぉ!」
ついには泣き出してしまった。
「あらあらどうしたの?」
ゆっくりパチュリーは説明した。
おいしいそうな木の実や果物を見つけるとなぜかすぐにゆっくり魔理沙や霊夢が現れていつも横取りされてし
まう。それでもなんとか生きていく分の食料は得ることができていた。そうあの時までは。
秋が終わりに近づきゆっくり種の中では頭の良いゆっくりパチュリーは巣に食料を蓄えていた。
冬は食べ物が少なくなり、こうしなければ体の弱い自分は生き残ることができないとわかっていたのだ。
そしてぎりぎり冬を越せるぐらいの食料を蓄えた数日後、事件は起こった。
いつものようにせっせと食料を集め巣に持って帰る(ほお袋に入れて)ゆっくりパチュリー。
「むきゅ~♪」
最近はゆっくり魔理沙や霊夢に邪魔されず順調に食料を蓄えることができてご機嫌である。
しかし巣に戻ると驚愕した。巣の中でゆっくり魔理沙と霊夢の2匹が自分が一生懸命集めた食料をむさぼって
いた。
「むぎゅー!なにじでるの゛ー!」
普段はおとなしいゆっくりパチュリーであったが顔を真っ赤にして怒り、果敢にも2匹に体当たりをする。
しかし、
「おおこわいこわい。むぎゅー!だってさ。」
「いまはれいむとまりさがゆっくりしてるの!じゃましないでね!」
あえなく返り討ちにあうゆっくりパチュリー。目の前で自分の食料がどんどん減っていくのをただ見つめるこ
としかできなかった。
「じゃあね!またくるよ!」
「ちゃんとたべものあつめておいてね!」
2匹が去り、巣に残ったのは集めた食料の残骸(2匹の食べ残しや食べかす)だけであった。
「むぎゅうぅぅぅ、むぎゅうぅぅぅ」
ゆっくりパチュリーはただ泣くことしかできなかった。
本格的な冬を迎え、食料を失ったゆっくりパチュリーはだんだんと衰弱していった。
「そう、そんなことがあったの。つらかったわね。」
そう言うとアリスはゆっくりパチュリーの頭をなでてあげた。
「それなら違うお家に引っ越してみない?私の家のすぐ近くの木にも大きめ洞があるわよ。何かあったら私が助
けてあげるわ。」
恐る恐るゆっくりパチュリーは聞いた。
「そこはゆっくりできるところ?」
「えぇゆっくりできるわよ。」
「むきゅー♪」
うれしそうに声を上げるゆっくりパチュリーであった。
「ここよ。」
ゆっくりパチュリーはアリスに案内され木の洞の前までやってきた。
「どう?気に入るといいのだけれど。」
ゆっくりと洞の中へ入っていくゆっくりパチュリー。入り口は小さかったが、中は以前自分が住んでいた洞の
2~3倍の広さはあった。ここなら十分ゆっくりできそうであった。
「きにいったよ!きょうからここがぱちぇのおうちだよ!」
「そう、よかったわ。今は冬で食べ物も少ないでしょうからプレゼントするわ。」
アリスの後ろを二匹の人形が大きな包みを抱え飛んでいた。アリスが指示すると二匹は洞の中へ入って行き、
包みの中身を中へ広げ戻ってきた。
「私が作った特別製のお菓子よ。痛みやすいから今日中に食べなさい。」
アリスはゆっくりパチュリーの前に洋菓子を置いた。
「そろそろお別れよ、さようなら。」
アリスは手を振りながらもと来た道を戻っていった。
「むきゅー、ありすありがと~」
飛び跳ねながらアリスを見送るゆっくりパチュリー。アリスがくれたお菓子を食べると巣の中へ入っていった。
目の前に山いっぱいの食料が広がっていた。以前の巣で冬越し用に蓄えた食料の量をゆうに超えていた。
さっそく食べようとしたが、急に眠気がおそってきて意識はまどろみの中へ消えていった。
次の日、ゆっくりパチュリーはなぜか巣の外で目を覚ました。しかも体にいくつか傷を負っていた。
巣の方からはなにやら音が聞こえてくる。急いで巣に戻ると言葉を失った。
ゆっくり霊夢、魔理沙さらにアリスまでもが自分の食料をむさぼっていた。
「む゛、む゛、む゛ぎゅー!」
ゆっくりパチュリーの声を聞いて3匹が振り返る。
「またむぎゅー!だってさ、こわいこわい。」
「やくそくどおりまたきたよ!」
「こんなぜいたくなたべものはいなかもののぱちぇにはもったいないわ。とかいはのわたしたちがたべてあげるわ。」
前回と同じように果敢にも体当たりするが相手が3匹では当然敵うはずもなく、
「まりさたちのじゃまをしないでね!」
「ここはもうれいむたちのゆっくりぽいんとだよ!」
「いなかもののぱちぇがいるだけでゆっくりできないのよ、でていって!」
トリプル体当たりをくらい「むぎゅー」と泣き転がって巣の外へ追い出されてしまった。
「どうじで、どうじで、ゆっぐりざぜでぐれないの~。」
涙が滝のようにあふれてくる。
「あらあらどうしたの?そんなに泣いて?」
振り向くとそこにはアリスが立っていた。
「あ゛、あ゛、あ゛りずぅぅぅ~。ゆっぐりでぎなぐなっちゃだよぉぉぉ。」
「そう、また食料を横取りされてしまったのね。」
「あ゛、あ゛りずだずげでぇぇぇ。」
「それじゃ食料を横取りしたゆっくり達をゆっくりできなくすればいいのかしら?」
「おでがい、ありずぅぅぅ。」
「えぇ、も・ち・ろ・ん・よ!」
アリスは見たものを恐怖に陥れるような笑顔で笑い、ゆっくりパチュリーをおもいっきり木の洞目掛けて蹴った。
「む!むきゅぅぅぅ!」
何が起こったかまったくわからなず転がるゆっくりパチュリー。食料をむさぼっていた3匹が再び入ってきたゆ
っくりパチュリーに気が付く。ゆっくり霊夢が先陣を切ってゆっくりパチュリーに体当たりを仕掛けようとする。
「わたしたちのゆっくりぽいんとだってわからないの!」
しかし次の瞬間、
「ゆ゛!、ゆ゛ぅぅぅぅ!!! 」
悲鳴を上げ、八つ裂きにされるゆっくり霊夢。
「「れいむぅぅぅ!」」
ゆっくり魔理沙とアリスは絶叫した。
ゆっくり霊夢を八つ裂きにしたのはアリスの操っている上海と蓬莱人形だった
ゆっくりパチュリーは目の前で絶命したゆっくり霊夢の光景を見て一気に顔が青ざめた。
もともと体が弱く臆病なゆっくりパチュリーにとって(いやゆっくり達にとっても)悪夢のような光景だった。
しかし、その悪夢はまだまだ続いた。
その光景を見るや否や我先にとゆっくりアリスを置いて洞から脱出しようとするゆっくり魔理沙。
もちろん二体の人形は見逃さない。上海がゆっくり魔理沙の体を壁に押し付けると蓬莱が金槌とごっすん釘を取り
出す。それを見たゆっくり魔理沙は必死に、
「あ、ありすがここでゆっくりしようっていったんだよ!、ま、まりさはわるくないよ!、ゆっゆっゆっくりしてね!、
こ、こっちにこないでね!、い、いや゛あ゛ぁぁぁぁぁ!」
ゆっくり魔理沙の必死の懇願もむなしく額にぐっすん釘が打ち込まれる。
「いだい、いだい、や゛め゛でぇぇぇ!」
ごっすん釘を打ち込みゆっくり魔理沙を動けなくなった。2体の人形を見てゆっくりアリスはガタガタ震えている。
「ご、ごめんなざいぃぃぃ、あ゛りずはどがいはじゃないのぉぉぉ、ほんとうはいながもののゆっぐりなのぉぉぉ!」
ゆっくりアリスの願いが届いたのか2体の人形は洞から出て行った。
「た、たすかったの?」
ゆっくりアリスは急いで洞から脱出を計る。
(もうゆっくりパチュリーをいじめるのはやめよう。新しいゆっくり魔理沙をさがしてゆっくりしよう。)
暗い洞の中から光あふれる外へ勢いよく飛び出すゆっくりアリス。
「ゆ゛!?ゆ゛う゛ゔゔあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!」
悲鳴を上げながらゆっくりアリスの体は3枚におろされ、黄色のどろっとしたものを回りに撒き散らす。
ゆっくり霊夢や魔理沙の中身は餡子だがゆっくりアリスの中身はカスタードクリームなのだ。
「あら、逃げられるとでも思ったの?」
笑いながら冷たくあしらうアリス。
ゆっくりパチュリーの青ざめた顔はもう真っ白になっていた。そして涙を流しガクガクとおびえていた。
巣の外からアリスの声が聞こえる。
「約束通り助けてあげたわよ。うれしいでしょう?」
「ひ、ひどいよありす!や、やりすぎだよ!」
「あら、何言ってるの?食料を横取りしたゆっくり達をゆっくりできなくすればいいのかと聞いたらあなたがお願い
と言ったのよ。私はあなたのお願いを聞いてあげただけ。しかも特別に新たな食料まで用意してあげたのよ。」
ゆっくりパチュリーは周囲を見回すが、あるのはゆっくり霊夢の成れの果てとごっすん釘で固定されたゆっくり魔
理沙だけであった。
「あなたの、目の前にある残骸とゆっくり魔理沙よ。」
「む、むぎゅぅぅぅ、た、たべられないよ!」
「何言っているのかしら?私の家でたくさん食べていたじゃない。変わった味だけどおいしと言って。」
ゆっくりパチュリーは目の前に広がるゆっくり霊夢の成れの果てを見て、アリスの家で自分が食べた物とそっくり
なのに気が付く。
「い、いや゛あ゛ぁぁぁぁぁ。ゴ、ゴホ、ゴホッゴホ、ゲホ、ゲェェェェェ。」
自分が食べていた物がゆっくりの残骸だと気づくと悲鳴をあげ持病の喘息が発症し、むせ返るゆっくりパチュリー。
「そうそう、あなたがもう邪魔されずにゆっくりできるように入り口に特製の糸を張っておいたわ。もし誰かがあな
たの邪魔をしようと巣の中へ入ればさっきのゆっくりアリスの様に3枚におろされるわ。もちろんあなたも例外では
ないから気をつけなさい。」
「あ゛りず、どうじでごんなひどいごとするのぉぉぉ。ゲホッゲホ。」
しばらくの沈黙の後アリスは答えた。
「あなたがあの紫もやしと同じ名前だからよ!」
吐き捨てるように言うとアリスは家へ帰っていく。
「ごごがらだじでぇぇぇ!ゴホッゴホッ。」
ゆっくりパチュリーの泣き声はアリスに届くことはなかった。
-アリス邸-
「あの紫饅頭最後まで私のことを呼び捨てにしてたわね。今思い出すだけでも腹が立つわ!」
アリスは椅子に座り紅茶を飲んでいた。
「それにしてもあの紅白と黒白饅頭思っていたより使えたわね。ゆっくりアリスまでいたのはびっくりしたけど。」
-1ヶ月半前-
「おーいアリスー。」
上空から手を振るのは霧雨魔理沙、アリスが好意を寄せる人間だ。
「いらっしゃいお茶の用意をするわ、あがって。」
「おう、遠慮なくあがらせてもらうぜ。」
何か特別なことをするわけでもなく、アリスは魔理沙との何気ないお茶会と雑談を楽しんでいた。
しかしそんな楽しい雰囲気も魔理沙の一言で終わりを告げた。
「そうそう、昨日図書館に行ったらパチュリーが古い魔導書を見つけたらしいんだ、しかも複数!」
「へ、へぇそれはすごいわね。」
(なんで私の目の前であの紫もやしのことなんて話すのよ)
「それでな、けっこう昔の文字らしく解読が必要で泊りがけで一緒に解読しないかって誘われたんだ。」
パリン
アリスの握っていたカップが床に落ち割れた。
「おいおい、気をつけろよ。」
「ご、ごめんなさい。」
動揺するアリス。
(な、泊りがけですって!あの紫もやし魔導書をエサに魔理沙をつるなんてなんて卑怯なの!)
「そ、それで魔理沙はどうするの?」
「もちろんいくさ!」
その瞬間アリスの心は絶望のどん底に叩き落された。
「・・・どのくらいの期間なの?」
「パチュリーは最低でも1ヶ月近くはかかるんじゃないかって言ってたぞ。」
(1ヶ月!ダメよダメよ!魔理沙!行っちゃダメよ!)
「というわけでしばらくアリスには会えないんだ、悪いな。」
「え、えぇ私のことは気にしなくても大丈夫よ。」
(何言ってるのよ私、ここで止めないと1ヶ月も魔理沙に会えなくなっちゃう!)
「そうか、それじゃ雲行きが怪しいしそろそろ帰るかな、またくるぜ。」
「見送るわ。」
外に出ると魔理沙はほうきにまたがり、
「またなー。」
と言って帰っていった。
雨が降ってきた。アリスの心を反映しているかのようだった。
「ま゛り゛ざぁぁぁ、どうして私じゃだめなのぉぉぉ!あのもやしなのぉぉぉ!」
アリスは雨に打たれながらその場に泣き崩れた。
数日後、アリスは椅子に座ってボーっとしていた。まだショックから立ち直れていないようだ。
庭からなにやら音がする。窓から覗くとそこにはゆっくり霊夢2匹、魔理沙1匹が花壇の花をムシャムシャと食べ
ていた。普段なら追い返すが今のアリスにとってどうでもいいことだった。
しかし次の瞬間アリスの頭の中にある計画が思いついた。再び生気が宿ったアリスはすぐさま人形達に森に住むゆ
っくりパチュリーを気づかれないように探し出すよう命令した。そしてアリスは庭に出て行った。
「おねぇさんだれ?」
「ここはまりさたちのゆっくりぽいんとになったんだよ!」
「じゃまするならでていってね!」
なんてふてぶてしいゆっくり達だろう。勝手に人の庭に入ってきて自分の場所だと主張するなんて。
「1匹には見せしめとして死んでもらいましょうかね。」
そう言うと手をゆっくりの方へ向け、詠唱を始める。
そして出現した火の玉がゆっくり霊夢に命中し一瞬で消し炭となる。
悲鳴を上げながらゆっくり霊夢と魔理沙は一目散に逃げ出すが人形達が押さえつける。アリスが近づくと、
「わ、わるいのはあのしんだれいむだよ!れいむがここをゆっくりポイントにしようっていったんだよ!」
「おねがいゆるしてぇぇぇ」
泣き叫ぶ2匹のゆっくり。そこへ先ほどゆっくりパチュリーを探しに行った人形達が帰ってきた。
「これで役者がそろったわ。」
そう言うとアリスはかがみこみ2匹のゆっくりに話し出す。
「私の言うことを聞くなら助けてあげてもいいわよ。そのかわり、少しでも逆らったらあの死んだゆっくりの様になる
わよ。」
「わ、わかったよ、いうこときくよ!」
「いうことききます!だからたすけてぇぇぇ!」
-時は戻って再びアリス邸-
「私の指示通りきちんと紫饅頭のエサを横取りしていたようね。」
ゆっくりパチュリーがエサを横取りされたのも餓死しかけたのもすべてアリスの計画だった。
「わざとエサを集めさせて蓄えたエサを一気に食べられたときの紫饅頭の顔と言ったら最高だったわ。睡眠薬入りのお
洋菓子も何の警戒もなく食べちゃうし、本当にばかな紫饅頭ね。」
-閉じ込められて3日後-
「おでがい、ゆるじでぇぇぇ。」
弱々しく泣き叫ぶのはごっすん釘で固定され、動くことができないゆっくり魔理沙だった。ゆっくり種は中の餡が
無くならない限り死ぬことはない。だがそれが仇となりゆっくり魔理沙は苦しみ続けていた。
ゆっくりパチュリーはと言うと空腹に犯されていた。目の前にはゆっくり霊夢の成れの果てが散らばっていたが口
にはしていなかった。
「おなかへったよぉぉぉ、ぱちゅりーがたべないならまりさがれいむをたべるうぅぅぅ。」
「むぎゅぅぅ、しずかにしてね。」
ゆっくり魔理沙がわめき散らしていたが体力を消耗するだけなのでゆっくりパチュリーは無視して目を閉じた。
次の日、ゆっくりパチュリーが目を覚ますと空腹がおさまっていた。
目の前に散らばっていたゆっくり霊夢の成れの果てが無くなっているのに気が付いた。
「ひどいよ、ひとりでぜんぶたべちゃうなんて、ぱちゅりーのいじわる!」
「むきゅ?なにいってるの?」
「とぼけないでよ、まりさのめのまえでれいむをたべてたじゃない。」
ゆっくりパチュリーは固まった。ゆっくりまりさはごっすん釘で固定されていて動くことができない。唯一の出入
り口はアリスによって封鎖されている。そうなるとゆっくり霊夢を食べたのは・・・。
「い゛や゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」
突然悲鳴を上げるゆっくりパチュリー。死んでいたとはいえ無意識にゆっくり霊夢を食べてしまったことを信じた
くはなかったのだ。
「ぱちぇじゃない、ぱちぇじゃない、ぱちぇはたべてない。」
自らに言い聞かせるように何度も繰り返すゆっくりパチュリー。
「まりさのめのまえでおいしそうにぱちゅりーがたべてたよ。」
「うそだーーーーー!」
普段はおとなしいゆっくりパチュリーの大きな悲鳴を聞いてゆっくり魔理沙は口を閉ざした。
ゆっくりパチュリーはゆっくり魔理沙から一番離れた壁に顔を張り付けひたすら、
「ぱちぇじゃない、ぱちぇじゃない、ぱちぇはたべてない。」
と次の日も次の日も言い続けた。
-閉じ込められて6日後-
ゆっくりパチュリーが目を覚ますとまた空腹が収まっていた。恐る恐るゆっくり魔理沙の方へ振り返るとごっすん
釘に固定されたゆっくり魔理沙はいた。白目を見開いて体を痙攣させ体の半分が無くなっているゆっくり魔理沙が。
「む゛、む゛、む゛ぎゅう゛ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
これまでにないほどの悲鳴を上げるゆっくりパチュリー。そして、
「おっまんじゅう~♪おっまんじゅう~♪」
と歌いながら残りのゆっくり魔理沙をむさぼる。ゆっくりパチュリーの目はうつろで生気が消えていた。
餓死しようとしていたときの恐怖。やさしかったアリスの変貌。目の前で起こった虐殺。
そして無意識にゆっくり霊夢と魔理沙を食べてしまったのを認めることができない自分。
短期間にゆっくりパチュリーに降りかかったその惨劇はついにゆっくりパチュリーの精神を破壊してしまったのだ。
「あら、もう壊れちゃったの?せっかくもっといたぶってあげようと思ったのに面白くないわね。」
アリスは洞の中から聞こえるゆっくりパチュリーの声を聞くと残念そうに言った。そして入り口の糸をはずす。
「上海!蓬莱!」
命令されると2体の人形は洞の中へ入りゆっくりパチュリーを引きずり出す。
「おっまんじゅう~♪おっまんじゅう~♪おっいしっいな~♪」
「これは完全にダメね、しかたないわ。」
アリスはゆっくりパチュリーに糸を巻きつけると上海と蓬莱にゆっくりパチュリーを木の上へ固定させる。
「そのうちゆっくりを捕食するゆっくりにでも食べられるでしょ。」
そう言うとアリスは家へ帰って行った。
その夜、まだゆっくりパチュリーは歌っていた。
「おっまんじゅう~♪おっまんじゅう~♪」
その声を聞きつけてか遠くから丸い物体が飛んできた。
「おまんじゅうだ~♪いっただっきま~す♪」
大きな口をあけてむかってくる饅頭を食べようとするが次の瞬間ゆっくりパチュリーは真っ二つになり地面へぐ
ちゃっと音を立て落ちた。
「うー♪うー♪」
ぐちゃぐちゃになったゆっくりパチュリーを食べているのはゆっくりれみりゃ。スピードを利用し羽で真っ二つに
したのだ。
こうして、運悪くアリスの標的となってしまったゆっくりパチュリーの生涯は閉じたのであった。
End
作成者:ロウ
後書き
最後まで読んでくださった方々、まずはお礼を申し上げます。
ゆっくり達の生涯シリーズ(?)第4弾『ゆっくりパチュリーの生涯』はいかがでしたでしょうか?
今回のコンセプトは精神的いじめです。過去3作は意外と頭の中に文章がポンポンと浮かんできたのですが、今作
はなかなか文章や内容が思い浮かばず苦労しました。気が付くとけっこうな長文となってしまいました。
ちなみに、私にはSSを書くとき一つのポリシーがあります。それはなるべく幻想郷の人物を登場させるというこ
とです。加工場の設定を使わせていただくときは職員を登場させなければなりませんが、オリジナルのキャラクタ
ーをなるべく登場させないようにしています。
理由は単純で、東方が大好きだ!というだけです。
(旧作はやっていませんが紅魔からの作品はすべて持っています)
オリジナルのキャラクターが登場する作品が嫌いなわけではありません。むしろ最近はさまざまなSSが投稿され
てうれしいくらいです。誤解のないようお願いいたします。
(最近のSSではゆっくりきゃっちゃーがお気に入りです)
次回作は既に頭の中に浮かんでいます。最近はやり(?)のゆっくり一家に登場してもらう予定です。
毎回言うようですが私は文章を考えるのが苦手&遅いのでゆっくりと書かせていただきます。
そういえば、私は幻想郷のキャラいじめ板の頃からSSを投稿していますが、その頃から読んでくださっている方
はこのスレにもいるのかな?
↓今回のおまけは後日談です。
-後日談-
次の日朝早くから扉をたたく音がしてアリスは目を覚ました。
「もぉ、朝っぱらから誰よ。」
扉を開けるとそこに立っていたのは魔理沙だった。
「よぉ、アリス久しぶりだな、元気だったか?」
あまりの出来事に声が出ない
「どうした?体調でも悪いのか?なんなら出直すが。」
「だ、だ、だ、大丈夫よ、全然体調なんか悪くないわ。それにしてもどうしたの?こんな朝早くから。」
「1ヵ月半もかかったけど魔導書の解読が大体終わってな、アリスに読ませてやろうと思ってパチュリーが寝ている隙
にかっぱらってきたぜ!あと、しばらく泊まらせてもらうぜ!」
「え!と、泊まる!?」
「いやなら別に帰るが、ダメか?魔導書の量もあるし、アリスは昔の文字なんて読めないだろ?」
「ま、魔理沙がどうしてもって言うなら泊めてあげてもいいわよ。」
(何言ってるのよ私!素直に泊まってってどうして言えないのよ!魔理沙が帰ったらどうするのよ!)
「そうか、それじゃ遠慮なく泊まらせてもらうぜ!それよりアリス、それ寝巻きか?なかなかかわいいじゃないか。」
アリスは一気に顔を赤くして、
「魔理沙のばかぁぁぁ~。」
と言いながら急いで着替えに戻って行った。
「なにあいつ赤い顔なんてしてるんだ?」
こうしてアリスは魔理沙とゆっくりと楽しい時間をすごした。
目を覚ましたパチュリーは目の前に置かれていたメモを見ていた。
(魔導書を持ってアリスのところへ遊びに行ってくるぜ。)
「む、むきゅ~~~~~!」
パチュリーの声は紅魔館中にこだました。
おまけEnd
最終更新:2008年09月14日 05:48