ここはとある森の奥深く。
人間が滅多に現れないこの場所では、様々なゆっくりが生活していた。
人間に虐待の為に連れ去れらることのないように、
そしてゆっくり達が人間に迷惑をかけることのないように、
森の奥深くでゆっくりする、と、このゆっくりぷれいすの長のドスゆかりん(17歳、と自分で言っていた)が決断したのだ。
そのおかげで、行方不明になるゆっくりが、0とまではいかないが減り、
また人間からの迫害も無くなった。
餌も豊富にあるし、まさにゆっくりぷれいすなのである。
このぷれいすでのゆっくりの死因は、寿命か、捕食種に襲われるか、
あるいは行方不明になるかのどれかしかない。
そう、本当にその3つしかない。
ゆっくりは、弱い。嫌になってくるほど弱い。強い部分は・・・ゴキブリ以上の生命力くらいしか作者には思いつかない。
その生命力の所為で、場合によっては死んだほうがマシという状況に陥ってしまったゆっくりも沢山いる。
人の言葉を使ってコミュニケーションをとることは出来るが、
頭は悪いし、移動速度もノロい、パワーも無い。
何より、その体は、弾力のある生地・・・というか表皮と、中身に餡子やカスタード等という、
とても脆くて傷つきやすい体なのだ。
幼児が木の枝で軽くつつけば表皮が破れるほどだ。
跳ねているときに石ころを踏むとあんよに穴が開いたりもする。
傷口から細菌が入り込めば、ゆっくりには免疫が無いのでほぼ確実に永遠にゆっくりできなくなる。
そして、このぷれいすは森の中にある。
豊かではあるが、危険と隣り合わせでもある。
しかし、それでも怪我が原因で死ぬゆっくりは居なかった。
その理由は、ある一匹のゆっくりのおかげであった。
ぷれいすから少し離れた森の中で、一匹のちぇんが遊んでいた。
ちぇんは突然、頬に激しい痛みが走ったのを感じ、
「ゆにゃあああぁぁぁあ!!らんしゃまぁ~!!」
悲鳴を上げた。
「ちぇええええええええん!!!」
すぐに、番の、群れの幹部のらんが、ゆっくりらしからぬ速度で飛んで・・いや跳んできた。
「ちぇん、どうした!?」
らんはちぇんを見る。頬がザックリと裂けている。
中身のチョコレートが頬を伝って、ちぇんの足元にチョコの水溜りが出来ていた。
「きのえだにひっかけてしまったようだな・・・」
「ゆにゅうぅうぅうぅ・・・らんしゃまぁ~」
「ちぇん、うごけるか?ゆっくりぷれいすまでもどれるか?」
「わからないよ~・・・」
「・・・なら、へたにうごいてきずにばいきんがはいってしまったらたいへんだ。ここでまってなさい」
「わかるよ~」
「ゆっくりしないですぐもどってくるからな」
らんは、ちぇんを放置し、ぷれいすの方向へ戻っていく。
数分後、次にちぇんの元に戻ってきたとき、らんと、らんではないもう一匹がいた。
そのゆっくりは、銀色の髪に、青い帽子をつけていた。
「あらあら、ずいぶんひどいきずね」
「なんとかなるか?えーりん」
「ゆぅ~・・・えーりんたすけてぇ~」
らんが連れてきたゆっくりは、珍しい、希少種と呼ばれる、
ゆっくりえーりんであった。
「とりあえず、らん、そこのきのえだをもってちょうだい」
「・・?わかった」
らんの側に落ちていた木の枝を咥えたのを確認し、
次にえーりんは驚くべき指示を送った。
「そのきのえだでわたしのおなかをさしてくれないかしら」
「「ゆぅ!?」」
ちぇんとらんは同時に声を上げた。
「あら、ふたりともきいてない?わたしのなかみについて」
えーりんは微笑みながら言う。
「わからないよ~」
「あらそう?」
「え、えーりん、そんなことをして、きみはだいじょうぶなのか?」
「だいじょうぶ。ほら、ゆっくりしてないではやくしなさいな。
ちぇんがどうなってもしらないわよ?」
そう言われては仕方が無い。らんは意を決して、えーりんに木の枝を軽く刺し込む。
えーりんの中身の、薄緑色で半透明なジェル状の物が滲み出て、木の枝に付着する。
(すまない、えーりん)
「・・・!・・・くっ・・・ええ、それでいいのよ。
つぎは、そのえだにくっついたぬるぬるさんを、ちぇんのきずぐちにつけてあげて」
らんは頷く。
「らんしゃま~」
「ちぇん、うごかないで。らんのてもとがくるっちゃうわ」
らんは、ちぇんの頬に、えーりんから出てきた不思議なぬるぬるを擦り付けた。
「ゆぅ~・・・」
ジェルが、ちぇんの傷口を包み込み、チョコをせき止める。
「ゆゆ~ん♪なんだかゆっくりできるよ~♪」
「よかった」
えーりんは安堵の表情を浮かべる。
らんは、そんなえーりんを見て、疑問をぶつけた。
「えーりん、きみのそのなかみ、なんなんだ?」
「ん?ああ、いぜんにんげんさんにきいたはなしだと、
『あろえなんこう』っておくすりらしいわ」
アロエ軟膏。らんは聞いたこともなかった。
「なんだそれは?」
「おはだのあれとか、きりきずのちりょうにつかうおくすりらしいの」
「ふ~ん・・・」
「ゆ~♪えーりんありがt」
ちぇんは礼を言おうとしたが、えーりんはそれを遮った。
「あ、まってちぇん。そのおくすり、ほかのものにさわるとすぐとれちゃうの」
「ゆ~!?いまのままだとゆっくりできないの!?」
「そういうこと。だから、おくすりにゆっくりしてもらうように、
おくすりをぬったところをふさぎます」
「どうやって?」
「きれいなはっぱさんをはりつけます」
「はっぱさんはちぇんにさわってもくっついてくれないよ~?」
えーりんは黙って、その辺の葉っぱの汚れの無い面を、ちぇんの傷口に貼り付ける。
剥がれ落ちない。軟膏が粘着の役目を果たしてくれるのだ。
「ゆ~!?」
「ね?くっついてくれたでしょ」
「ゆー!わかるよ~♪」
「これでだいじょうぶよ、らん」
「・・・ありがとう、えーりん」
このようにえーりんは、自分の中身を活かしてゆっくりの怪我の治療をしてくれて、
またそこら辺に生えている薬草の使い方にも長けているため、ゆっくりの病気にも対応してくれる。
そのため、このゆっくりぷれいすの全てのゆっくりから頼られ、
また、群れの創立時からずっと居るので、ドスゆかりんからも信頼されているゆっくりだった。
このぷれいすのゆっくりの死因に『怪我・病気』が入っていないのは、えーりんのおかげなのだ。
しかし、それはたったひとつのきっかけで崩れ落ちることとなった。
ある日、えーりんはいつものようにぷれいすから離れた場所で薬草を摘んでいた。
この辺りのことについては熟知しているし、怪我で中身が漏れてもすぐに治るし、
えーりんの中身は美味しくないので捕食種にも狙われない、
だからこのように堂々と群れから離れられるというわけだ。
その時、大きな生き物の足音が聞こえた。だんだんこちらへ近づいてくる。
えーりんは植物の影に隠れ、息を潜める。
ゆっくりの捕食種には狙われないかも知れないが、それ以外の生き物はそんなことお構い無しに襲ってくるからだ。
えーりんのすぐ近くまで足音が近づき、そして止まった。
えーりんは、葉っぱから顔をだしてみる。
「・・・ん?・・やぁ」
人間さんだった。
なんで人間さんがここに居るんだ?滅多に現れはしないのに・・・
えーりんは久々に見る人間を警戒していたが、
「にんげんさん、ゆっくりしていってね!」
律儀にも挨拶をした。
「ゆっくりしていくよ」
えーりんは青年に聞いた。
「にんげんさん、どうしてこんなところに?」
とりあえず、最優先で知りたいことはこれだ。
「道に迷ってしまってな・・・」
「そうですか・・・」
えーりんは納得する。そして、同時に、安心した。
わざわざここまで虐待用のゆっくりを捕まえに来るとは考えにくい。
きっと本当のことなのだろう。
ふと、えーりんは、青年の靴下のくるぶしの辺りが赤く染まっているのに気付いた。
「にんげんさん、あの・・・その、にんげんさんのあんよが、ゆっくりできていないようなのですが」
「え?」
青年はえーりんに言われ、自分の足を見た。
「あ・・・あちゃー、歩いてる間に切っちゃったか」
「にんげんさん、こちらでしょちをさせていただいても?」
青年は驚いた。ゆっくりに、『傷の処置』なんて概念があったのか、と。
「お願いしたいが、君に出来るのか?どうやって?」
「できます。わたしのなかみは、『あろえなんこう』らしいですから」
「・・・?君は、名前はなんていうんだ?」
「えーりんともうします」
「うーん・・・聞いたことないな」
「わたしも、じぶんいがいにはみたことがありません」
「とにかく、頼むかな」
「まかせてください」
処置が終わり、青年とえーりんは一息ついた。
青年は、えーりんに飴玉などのお菓子を食べさせながら、お互いに数十分に亘ってとりとめのないことを話していた。
が、やっと、青年は本来、自分が求めていたことを思い出した。
「どうやって村まで帰ろう・・・」
そう。今自分は道に迷っているのだ。今、この森のどの辺りに居て、どこへ行けば家に帰れるのか。
思い出した途端、急に心細くなってきた。
青年の心中を察したえーりんは、
「おにいさん、わたしがおにいさんのおうちのあるむらまであんないします」
と言った。自分はこの森を知り尽くしている。
人間の村の近くまで薬草をとりに行ったこともあるのだ。
「出来るのか?」
「まかせてください、おにいさん♪」
「じゃあ、お願いするよ」
「はい♪」
青年はえーりんを持ち上げ、指示を貰い、
青年が再び歩き始めた2時間後、無事に村まで戻ることができた。
しかし、戻ってきたときには、日は既に落ちていた。
そこで、青年は提案した。
「えーりん、今から君が群れに戻るには危険すぎる。今日は泊まっていきな」
えーりんは、それを断るはずもなかった。
「はい♪」
「「うー♪うー♪」」
「ゆあぁぁあぁああぁぁ、こっちくるなぁぁぁぁぁ!!!」
「れみりゃはゆっくりできないんだぜぇぇ!!」
「いなかもののふらんはありすにちかづかないでぇぇぇ!!」
えーりんが青年を案内して群れから離れている時、
こちらのドスゆかりんのゆっくりぷれいすは、捕食種2種の襲撃を受けていた。その数は6匹。
「うー♪」
「やべでえぇぇぇぇ!!ごっぢぐるなっでいっでるでじょぉぉぉぉぉ!!」
れみりゃがれいむにガブッと噛み付き、食いちぎり、ムシャムシャと咀嚼し、飲み込む。
「うー♪あまあま~♪」
「ゆがああああああ!!!」
「れいむぅぅぅぅぅ!!」
番と思われるぱちゅりーが叫ぶが、れみりゃが止まることはない。
れいむの頬に噛み付きながら、れみりゃは言った。
「う~♪ぱちゅりーうるさいどぉ~♪れみぃのおちびちゃん、だまらせてこいだどぉ~♪」
「「う~♪」」
「む、むきゅ!?」
子れみりゃ二匹がぱちゅりーに近づく。
自分では太刀打ちできない、逃げなければ、とぱちゅりーは思ったが、恐怖であんよがすくんで動かない。
「む、むきゅー!むきゅー!こないで!こないでったらぁぁぁ!!!」
「「う~♪」」
二匹の子れみりゃは、ぱちゅりーの左右の頬にそれぞれ噛み付き、羽ばたいて空に引っ張り上げる。
「むきゅ!や、やめてぇぇぇ!!こわい!こわいわあぁぁ!!!」
お空を飛んでるみたい、と思う余裕は残っていなかった。
「「う~♪」」
「む、むきゅ、むきゅきゅ、むきゅ~・・・」
ぱちゅりーは恐怖で生クリームを吐き出し、気絶してしまった。
二匹の子れみりゃはそのまま空中で気絶したぱちゅりーを放す。
「う~♪おちびちゃんたちよくやったどぉ~♪ごほーびにこのれいむをたべていいどぉ~♪」
「う~♪まぁまぁありがどぉ~♪」
「う~♪まぁまぁだいすきぃ~♪」
「「「う~♪」」」
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
れいむは絶叫するが、その声もすぐに途絶え、
「ゆ・・・ゆぐ・・・ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ・・・」
ときおりピクピクと震えるだけの饅頭と化した。
「や、やめて!いたいわ!」 ドカッ
「「うー♪」」
「やめなさい!こんなのとかいはじゃないわ!」ガスッ
ありすは、先程から2体の子ふらんに、空中から体当たりを食らわされているところだ。
頬に痣が出来、片目が潰されている。とても痛そうだ。
「うー♪たのちぃ~♪」
「うー♪きもちいぃ~♪」
ありすが止めてと言ってもやめるはずはなく、それどころかさらにエスカレートしていく。
「ゆっ・・・ぐぅ・・・」
「ゆおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
そこに、番のまりさが跳ねていく。
子ふらん達は後ろを向く。
「ゆっくりでぎないふらんはじねぇぇぇぇ!!!」
「う~?ふりゃんはとっちぇもゆっきゅりちてるよぉ~?」
「ゆっきゅりちてにゃいなんてことないにょぉ~♪」
「うー!そうだよおちびちゃんたち!だからそのゆっくりしてないまりさはまぁまぁにまかせてねー♪」
「「うー♪」」
「うー!」
親と思われるふらんは、子に向かって跳躍したまりさに思いっきり体当たりを仕掛けた。
「ゆべぇ!?」
地面に落とされたまりさは、体当たりの衝撃でボヨンボヨンとはねて、
そしてゴロゴロと転がり、石に当たってストップする。
帽子が取れた上に、逆さまの状態になったため、身動きがとれない。
そこへ、親ふらんが全速力で突進する。
「うー!!」
「ゆわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ドグチャァッ
まりさは石に張り付いていたため、ふらんの突進によって、まりさは撥ね飛ばされるのではなく、
石とふらんに挟まれて、ぶっ潰されてしまった。餡子が飛び散る。
「「う~♪まぁまぁかっこいぃ~♪」」
子ふらん達はありすを放置して、親ふらんの攻撃に見とれていた。
「うー♪」
親ふらんは、二匹の眼差しに照れつつ、他のおもちゃを探そうと、辺りを見渡す。
その時・・・
「あなた達!そこまでよ!!」
「「「「「「う~?」」」」」」
どこからともなく、こんな声が聞こえてきた。ちなみにぱちゅりーではない。
れみりゃ親子もふらん親子も、攻撃をやめて、空中へ飛んで警戒する。
「このゆかりんのゆっくりぷれいすでそんなゆっくりできないことは、もう許されないわ!!」
「うー!れみぃたちはゆっくりしてるどぉー!どうしてそんなこというんだどぉー!」
「「うー!しょうだしょうだ!」」
「ふらんたちもとってもゆっくりしてるよ!」
「「うー!!」」
捕食種達はぷくぅ~っと頬を膨らませ、辺りを見回す。
その時、一匹の子れみりゃが、自分の頬が、
バチンッ
と引っ叩かれる感覚を得た。子れみりゃが地面に落ちる。
「う~!?」
「おちびちゃぁん!?」
親れみりゃが子の元へ飛んでいく。捕食種達は一斉に子れみりゃを見た。
「だいじょうぶかどぉ~?」
「う~・・・」
頬が腫れている。親れみりゃは怒りの唸り声を上げる。
「うがぁーー!!!おちびちゃんにこんなことするなんてゆるさないどぉーー!!でてこいどぉーーー!!!」
しかし妙だ。子れみりゃが叩き落されたのに、攻撃の正体が見えない。
不安になったのか、6匹は身を寄せ合って固まる。それがいけなかった。
ドシン、という音がして、6匹は断末魔をあげる間も無く、ドスゆかりんに押し潰された。
ゆかりんは隙間操作能力を利用して、6匹を潰したのである。
ここまで隙間をつなげるには時間がかかったが。
「みんな、大丈夫!?」
ゆかりんは誰ともなく聞く。
「だいじょうぶじゃないわぁ~」
子ふらん達の体当たりでボロボロにされたありすが答える。
「む・・・きゅ?」
気絶して地面に叩き落されたぱちゅりーは気がつき、生クリームまみれの顔をあげる。
その他にも、負傷したゆっくりが大量にいる。
「大丈夫じゃなさそうね・・・」
「えーりん・・・は・・・どこ?」
「えーりんにたすけてもらわなきゃ・・・」
ゆっくり達は、口々にえーりんの名を呼ぶ。
「誰か!動ける者!えーりんを呼んできて!」
「お、おお、はあくはあく」
比較的負傷の軽いきめぇ丸がえーりんの家へヒュンヒュンと音をたてながら行く。
ちなみにえーりんは一人暮らしである。
「おお、えーりん、はやくきてください、たいへんです」
えーりんの家の入り口でこう叫ぶが、返事が無い。
「えーりん?」
もう一度言う。返事が無い。寝ているのか?と思い、きめぇ丸は家の中へ入る。
「おお、おじゃまします」
ゆっくりの家・・・というか巣穴の構造は単純である。入り口と寝床さえあれば不自由はしない。
えーりんの家も、入り口に入ってすぐのところに、薬草や清潔な木の葉が置いてあること意外は至って普通の家である。
きめぇ丸は、「えーりん?」と名を呼びながら家の中を探索する。だが、どこにも居ない。寝床にもだ。
「・・・おお、るすですか。しかし、ならばどうしたものでしょう?」
その時、入り口からドスゆかりんの声が響く。
「きめぇ丸?えーりんはどうしたのかしら?」
きめぇ丸は答える。
「お、おお、どす。ざんねんですがるすのようです」
「え?!・・・きめぇ丸、森へえーりんを探しに行きなさい!私は皆に呼びかけてくるわ」
「おお、はあくはあく」
ゆかりんは、重傷のゆっくりをゆかりんの家まで運び、ご飯を食べながら体を休めておけと指示し、
きめぇ丸のように軽傷または無傷で済んだゆっくり達と共に、森へえーりんを探しに行った。
「えーりぃぃぃん!どこだぁぁ!!?」
「へんじしてねぇぇぇぇ!!」
「ちーーーんぽぉ!!」
だが、返事が返ってくるわけはなく、もちろんえーりんは姿を現さなかった。
ゆかりんの巣穴の中は餡子やカスタードの甘い香りが充満している。
捕食種が潰されて安心して、腹を満たして寝ているゆっくりはほんの少しである。
ほとんどのゆっくりは、傷の痛みでご飯を食べるどころではない。痛みを堪えるので精一杯なのである。
「ゆ~・・・えーりん・・・えーりん・・・」
「えーりんは・・・まだぁ?」
「まらぁ?」
「いだいぃよぉぉぉ・・・ゆっくりしすぎだよぉ・・・えーりぃん・・・」
「ゆっくりしてないではやくこいなのぜぇぇぇぇ・・・」
その中の1匹の様子がおかしい。れいむである。
「ゆふぅ~・・・ゆふぅ~・・・」
他のゆっくりの顔は青白くなっているのに、少しだけ赤くなっているゆっくりがいる。
傷口が汚れている。恐らく細菌が入ってしまったのだろう。
目を瞑って、苦しそうに荒い息をたてて、えーりんの名を呼ぶ余裕すらない。
番と思われる傷だらけのまりさがれいむに呼びかける。
「が、がんばれなのぜれいむ、いまにえーりんがやってきて、れいむをゆっくりさせてくれるのぜ・・・」
頑張れなどと意味の無い言葉をかける。しかし、今はそれしかできないのだ。どうしようもないのだ。
結局その日は、えーりん捜索班は、当然だがえーりんを見つけることができず、
その過程で軽傷のゆっくりの傷が増え、一匹が石を踏んであんよを負傷して動けなくなり、
2匹の行方不明ゆっくりまで出てしまった。
ゆかりんの巣穴の中のゆっくりは、最初はあの細菌が入ったれいむが永遠にゆっくりできなくなり、
それを起点として、次々とゆっくり達は永遠にゆっくりできなくなっていった。
「おにいさん、ありがとうございました」
「ああ。」
「またきてもいいでしょうか?」
「もちろんだ。待ってるよ」
「はい!」
次の日の朝、えーりんは青年に礼を言い、青年の家をあとにした。
ゆっくりのあんよでも、昼前には群れに着くだろう。
何事も無く群れの入り口近くまで着いたが、なにかおかしい。
あまりにも静かだ。静かすぎる。
(・・・まさか!わたしがおにいさんをあんないしているあいだになにかあったのかしら!?)
急いでぷれいすへ入り、ドスを名を呼びつつ、ゆかりんの家へ急ぐ。
「どす!どすゆかりん!!」
巣穴からゆかりんが顔を出す。えーりんの顔を見た瞬間、ゆかりんは叫ぶ。
「えーりん!どこに行ってたの!大変なのよ!早く来て!!」
中に入ったえーりんは絶句した。
痛みでゆーゆーと唸り声を上げながら転がるれいむや、
物凄い形相でワケの分からない言葉を叫ぶまりさに、
そして、青白くなって虫がたかっている物言わぬ大量の饅頭に。
「ゆかりん、きのうわたしがにんげんさんをもりのそとまであんないしているあいだに、なにがおこったの?」
「そっか、人間さんに会ったのね・・・大方、人間さんは道に迷ってた、
そんで案内したあなたは、危ないからって人間さんのお家に泊まったってところかしら?」
「だいせいかいよ。それで・・・」
「もうすぐ夜になるって頃かしら?れみりゃとふらんが襲ってきたのよ。
一応潰したけど・・・ほとんどのみんなは怪我しちゃったの」
「・・・そっか。くそっ、なんてまのわるい・・・」
「でも、あなたが責められることじゃないわ。何も悪いことなんてしてないものね」
「とにかく、はやくちりょうしないと!ゆかりん、わたしのおうちまでみんなをたのむわ!」
「分かったわ。ただし、治る見込みのあるゆっくりだけね」
ゆかりんは、あらかじめえーりんの巣穴まで隙間を繋げていたため、
すぐにえーりんの家まで移動できた。
治る見込みのあるゆっくりは全て治療し終えた。
えーりんは中身のアロエ軟膏を使いすぎたのか、少々顔が青い。
しかし、えーりんの元気が無いのは、それだけが原因ではない。
えーりんは、ゆっくり達から浴びせられた罵詈雑言の内容をもう一度思い出す。
「えーりん!おまえがゆっくりしてたせいでまりさのれいむがしんじゃったのぜ!
どうしてくれるのぜ!おまえのせいなんだぜ!えーりんなんてえいえんにゆっくりできなくなっちまえなのぜ!」
「えーりん!おまえをさがすためにありすのまりさがゆくえふめいになっちゃったのよ!
このくそいなかもの!どうするの!?」
「れいむのみょんはえーりんをさがしてたらあんよがつかえなくなっちゃったんだよ!
えーりん!せきにんとってくれるの!?」
などなど。
ドスやぱちゅりーや幹部のらんはえーりんをかばってくれたが、
それらの言葉はえーりんの心を深く傷つけた。
自分があのお兄さんの家でゆっくりしている間に苦しんで死んでいったゆっくりがたくさんいたのだろう・・・
それを思うと、ああ言われるのも仕方の無いことだろう・・・
だが、これからずっとあのれいむやまりさやありす等に恨まれたままではゆっくりできない。
ゆっくりできるようになるには、あのゆっくり達に許してもらうしかないだろう。
しかし、それは恐らく無理であろう。番や恋ゆっくりを失ったことの埋め合わせなどできはしない。
えーりんは決心した。
「なんだと!?」
「えーりん・・・」
「むせきにんすぎるけれど、いままでわたしはここがゆっくりできるからいたの。
だからこそ、ほかのゆっくりのけがやびょうきをなおしてゆっくりさせてあげたかったの。
でも、これからはきっとここじゃあゆっくりできない」
「きみがいなくなったら・・・このむれのけがやびょうきはだれがなおすっていうんd」
「・・・私は止めないわ。」
「ゆ、ゆかりんさま?!」
「ただし、その前に、えーりん、利用できる薬草の知識を私に授けてくれてからね」
「!?」
「怪我は無理でも、その知識さえあれば病気はなんとかできるでしょう?」
「・・・わかったわ」
3日後。
ゆかりんに全ての薬草の知識を授け終えた日の夜。
ゆかりんに見送られて、
これからは、あのお兄さんのお家でゆっくりさせてもらいながら、
あの村のゆっくりの怪我や病気を治す役目を任せてもらおう。
他のゆっくりをゆっくりさせるという点では、やることは大して変わりない。
心配ないだろう。
そして、ゆっくりぷれいすのみんな、ごめんなさい。
そう思いながら、えーりんは群れから去っていった。
あとがき
本家の紫って発想次第ではD4Cみたいなことも出来るよね。
以前スレで
「もこうはカレー、かぐやはシチュー、えーりんはアロエ軟膏」
ってレスを参考に・・・と言ってもえーりんだけだけど書いてみた。
ここで心配なのは、アロエ軟膏は切り傷に有効なのかということと、
粘着効果はあるのかという点かな・・・
感想をお待ちしています。
今まで書いたもの
ゆっくりへの階段
ふらんうーぱっく
なずーりん
まむまむについての考察
byめーりん萌えの人
最終更新:2009年06月08日 03:37