ゆっくりいじめ小ネタ513 ある日の惨劇

                  ある日の惨劇




「むきゅー、ゆっくりしていってね!」

「「しちぇいっちぇね!」」

ある晴れた日、人里に近いさして大きいわけでもない山の中腹に声が響き渡る。
その声の主はバレーボールほどの大きさのゆっくりぱちゅりーと、
その子供であろうピンポン玉ほどの大きさの赤ぱちゅりーと赤まりさ。
親子共々その顔には笑顔が浮かび、今そこにあるゆっくりを存分に享受している。

「おちびちゃん! おとーさんがかえってきたらおひるごはんにしましょうね!
 きょうはてんきがいいからおそとでたべようね!」

「ゆわーい! おしょと! おしょと!」

「むきゅ! おしょとでたべるごはんたとっちぇもゆっきゅりできりゅわ!」

この陽気の中でごはんを食べるのは人間でもさぞかし気持ちが良いだろう。
子供達はすぐそこに迫っているであろう両親との昼食を思い浮かべて飛び跳ね、
親ぱちゅりーはその様子を見て顔をほころばせる。

だが、この家族にはそんな幸せな時が訪れる事はなかった。







まりさは森の中を飛び跳ねていた。妻のぱちゅりーと、可愛い子供たちのための昼食を採集していたのだ。
今日は大漁だった。おいしい草は沢山取れたし、めったに取れないとてもとても美味しい木の実まで拾うことが出来た。
食べきれないなら草は保存すれば良いし、美味しい木の実に子供達は大喜びだろう。
ゆっくり特有のふてぶてしい顔をだらしなく緩ませながら、まりさは家路を急いでいた。
と、その時。

『むっぎゅぅぅぅぅぅ!? お、おちびぢゃぁぁぁえれえれえれえれ……』

家のある方向からとてもゆっくり出来ない声が聞こえてきた。
しかもあの声は妻のぱちゅりーだ。「おちびちゃん」と言う単語も聞こえる。
その後の声は餡子を吐くときの声だ。家族が危ない!
まりさはスピードを上げ、家の方向へと駆け出していった。

「ぱちゅりー! おちびちゃん! 無事なんだぜ!?」

そして、まりさが家にたどり着いたその時。そこには惨状が広がっていた。
体が皮だけになるほどクリームを吐き出して死んでいる赤ぱちゅりー。
体中からあらゆる体液を流しながら虚ろな目で痙攣している赤まりさ。
そして、現在進行形でクリームをもりもりと口から漏らし続けているぱちゅりー。
ほんの少し前までは幸福の絶頂であっただろう一家は、今正に死に瀕していた。

何故だ。どうしてこうなった? 何もないのにクリームを吐いたり痙攣したりするはずがない。
きっと何か原因が……と周囲を見回していると、近くの茂みにゆっくりよりもはるかに大きな生き物が立っていた。
ゆっくりの天敵、れみりゃのような胴体のある、しかしずっと大きなシルエット。人間だ。

あいつだ! きっとあいつが家族を! 怒りに燃えて人間に向けて突進していくまりさ。
しかし、顔の造作がはっきりと認識できる距離まで近づいたところで、まりさは凍りついた。
ありもしない背筋に氷を突っ込まれたような感覚。
数瞬前まで怒りに燃えていた心は冷水を浴びせられたかのようにしぼみ、
代わりにまりさの心を恐怖が支配した。殺される! そんな思いがまりさの中を駆け巡る。

「ゆ、ゆわぁぁぁぁぁ!?」

まりさはその場を逃げ出した。妻の事も、子供達の事も意識から消えた。
ただ恐怖と、生物としての生き延びたいという本能だけがまりさを突き動かしていた。
森をがむしゃらに駆け抜け、開けたところに出たとき。まりさは自分の足元に何もないことに気付いた。
ただひたすらに駆け回った結果、まりさは崖から飛び出していたのだ。
そしてまりさは『もっとゆっくりしたかった』を言う間もなく、
崖の途中に生えていた木に突き刺さって永遠にゆっくりする事となる。

そしてまりさが永遠にゆっくりした頃、まりさの家であった場所の周囲にはゆっくりの屍が積み重なり、
むせ返るような甘ったるい匂いが充満していた。
れいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、みょん、ちぇん。
恐らくこの山の群れであったろうゆっくり達は、あるゆっくりは餡子を吐いて、
あるゆっくりは恐怖のあまりに狂って共食いを初め、またあるゆっくりは逃げた拍子に尖った石を踏んで出餡多量で死んだ。
その他にも、まりさのようにがむしゃらに駆け回った結果木や石にぶつかったり、
空を飛べるれみりゃのような種は木の枝に突き刺さったり等、一言で表すならば地獄であった。
先程の人間はその場に立ち尽くし、その様子をただじっと見ていた。膨らんだ胸元に長い髪、「人間」は女性であった。
そして、彼女はぶるりと身震いするとその地獄に背を向け、その場を立ち去る。
その背中を、地面に転がったどの種のものかも分からない目が見送っていた……







そしてその日の夜、彼女は山の麓にある自宅の自室、そのベッドの上で膝を抱えていた。
その瞳からは止め処なく涙が流れて服を濡らし、
その口からはうわごとのように「ごめんなさい」と言う言葉が繰り返される。
結局、ゆっくり達が悪かっただけでも、彼女に殺意があったわけでもないのだ。
しいて言うならば、あの場にいた全員の運が悪かった。
彼女はただ、ゆっくりが好きなだけだった。あの家族を木の影から毎日観察するのが日課で、
あの日はたまたま赤ゆっくりに見つかってしまっただけなのだ。
双眼鏡などは障害物が多く役に立たなかったのも、赤ゆっくりが普段見ない人間に興味を持ってしまったのも禍した。
彼女には別段特殊な能力があるわけではない。
ただ、目付きが絶望的に悪く体が2mを越す長身で、顔立ち自体は非常に整っているものの
子供が見れば引き付けを起こしてしまいそうなほどに凶悪な印象を与えてしまいそうな顔つきだっただけなのだ。
あの惨状を招いてしまったのも、その顔のせいで赤ぱちゅりーがクリームを吐いて死に、
赤まりさが驚きのあまり痙攣し、そのショックでぱちゅりーがクリームを吐いた。
そしてまりさが逃げ出し、クリームの匂いに釣られてやってきたほかのゆっくり達も同様の最後を遂げ、
次々にゆっくり死に、逃げ出し、狂っていく恐怖で立ち尽くしている間にあのような惨状が出来上がってしまった。
この一件で山のゆっくり達の間には「人間に近づくと死ぬ」という噂が広がり
農家へのゆっくり被害が激減するようになるのだが、それは彼女は知る由もないし、関係のある話でもない。


―――――――――
あとがき
なんとなく、「誰も悪くない話」が描いて見たくなったので。
まあ悪いのはお姉さんなんだけどまあ気にはしない。
最後に自分に問うて見る。整っているけど凶悪な顔つきってどないやねん。


by sakuya

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最終更新:2009年06月08日 03:49
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