ゆっくりいじめ系77 くたばれゆっくりぁあああああ!!!!

『その1 ホームラン』










「ゆっくりしていってね!!!」

「うわ、なにコイツ!?」

「ゆっくりしていってね!!!」

「ちょっと、掃除の邪魔だからあっちに行きなさい」

「ゆっくりしていってね!!!」

「だから、邪魔だってば」

「ゆっくりしていってね!!!」

「だからぁ……はぁ……人の話は聞かないのね」

「ゆっくりしていってね!!!」

「はいはい、ゆっくりゆっくり」

「む゛っ!」

「……なによ」

「ゆっくりしていってね!!! ゆっくりしていってね!!!」

「はいはい、おもしろいおもしろい」

「ちゃんとゆっくりしていってよー!!! もっとゆっくりしていってよー!!!」

「ああもう、いい加減鬱陶しいわよ」

「もっとゆっくりしてね!!! しっかりゆっくり゛ゆ゛ぶっ!??」

「たーまやー、と。あら、よく飛ぶわ」










『その2 ファイナルマスパ』











 本日の幻想卿は晴天なり。



 カランカラン……。

 少々古臭い印象のある、古道具屋――香霖堂の扉が開く。

「香霖、じゃまするぞー」

 言って店の敷居を跨ぐのは、白黒のエプロンドレスに魔女帽子という衣装をした魔法使いの少女だった。

 活発そうな雰囲気を放つ彼女は何時もの如く勝手知ったるなんとやら、とばかりに店内に足を踏み入れたのだが、しかし、出迎えた声は彼女が聞きなれた店主の声ではなかった。

「ゆっくりしていってね!!!」

「うを!?」

 突然上がった大声に一瞬身体を硬直させる。

 思わず少女の顔に怪訝な表情が浮かび、声の発生源は何処だとおもむろに辺りを見回すと、店の奥に店主の姿が見て取れた。

 いつもの定位置にて、彼女の来訪に気付いた店主は、苦笑を浮べながら少女に挨拶を寄こした。

「はは、魔理沙、良く来たね」

 先ほどの大声があった為か、少しばかり構えた態度で魔理沙と呼ばれた少女は店主に視線を向けた。

 見ると、その傍らになにやら奇妙な物体があるのが目に映る。

「ゆっくりしていってね!!!」

 大きな、一抱えほどもある丸い物体。

「……………………」

 魔理沙はおもむろにそれに近付き、ずっしりと重みを感じるソレを持ち上げる。

「ゆっくりしていってね!!!」

「……なんだこりゃ。新手のまんじゅう妖怪か?」

 じろじろと観察してみる。

 一言で言えば、巨大な饅頭に顔がついているような印象だった。

 金の頭髪に、黒の魔女帽子。

 ――鏡を見れば視界に映りそうな見てくれだった。

 両手で持ち上げられたソレは、輝くような笑顔を浮かべ口を開く。

「ゆっくりしていってね!!!」

 思わず溜息を吐き、店主に視線を移した。

「いつから香霖堂はこんな珍妙すぎる妖怪を飼うようになったんだ?」

「飼うようになったというか、気が付いたら居たのさ」

 今朝早く、倉庫の品物の整理をしている内に、いつのまにか店内に居座っていたらしい。

 それなりの大きさで、外に出すにも一苦労をし、追い出そうとしても勝手に戻ってくるので放置していたそうだ。

「あまり実害は無いみたいだしね」

「ゆっくりしていってね!!!」

 妙な生き物だ、と魔理沙は微妙な表情を作り、再び溜息を吐いた。

「はいはい、勝手にゆっくりしていくさ」

 同じ言葉を只管に連呼する物体を床に下ろし、戸棚に歩み寄る。

 なぜか足元に纏わり着く物体が少々煩わしかったが、それ以上気にする事も無く戸に手を伸ばし、横に滑らせる。

 その棚自体は古い物のように見受けられたが、店主の手入れが良くされている為か、戸はすんなりと溝を滑っていった。

 中を確認する。

「ん?」

 何も見当たらない。

 次いでその奥へと手を伸ばしてみるが、望んだ感触は得られなかったらしく首をかしげて店主を振り向いた。

「香霖、茶筒が無いぞ」

「あー魔理沙、お茶かな?」

「それと煎餅だ」

 私のお気に入りだったのにと、憮然とした表情を浮べる魔理沙に対して、香霖と呼ばれた店主はどうしたものかと視線を彷徨わせる。

 次いで頬を人差し指で掻く仕草をし、おもむろに脇でにこにこと妙な笑顔を振りまく物体に視線を落とした。

 その意味が分からず、仕方ないとばかりに今度は別の引き戸を開けて湯飲みをとりだそうとする魔理沙。

 茶葉も煎餅も、別に切らしているわけではない。

 魔理沙が自分用にと取っておいた分が無くなっていただけで、この古道具屋にはまだあった筈だった。

 そう思って魔理沙は愛用の湯飲みを取ろうと引き戸を開けるが、

「あれ?」

 開けた戸の中は、またも空だった。

 これには益々表情を険しくし、少々拗ねたような口調で店主へと口を開いた。

「湯飲みも無いぞ」

 その台詞を受けて、店主は再び傍らの物体へと視線を向けた。

「魔理沙、すまないんだが実は――」

 と、店主が口を開いたのと被せるようなタイミングで、

「おいしかったー!!」

 物体はにっこりと笑顔で、事実を口にした。

「……………………」

「……………………」

「とってもおいしかったよ! また食べたいな!」

 妙な沈黙に包まれる二人、対して物体は上機嫌で笑顔を飛ばしている。

「……湯飲みもか?」

「……………………」

「ごめーん! ゆるして!」

 無言で傍らの物体を指差す店主。

 物体は特に悪びれた様子も無く、笑顔を魔理沙に向けている。

 自分の行動に悪意を感じていないのか、責任があると思っていないのか、魔理沙の心情を慮ることもせずに物体は彼女に擦り寄ってくる。

 魔理沙は本日何度目かになる溜息を吐いた。

「ちゃんと喋るんだな、こいつ――って違う。実害、あるじゃないか……私に対して」

 実害が無いのは香霖、お前に対してか。と胡乱な瞳を向けられ、しかし店主は苦笑を返しただけだった。

「少し見ていると気付くと思うけど、その妖怪は見た目どおりに魔理沙の真似をしたがるんだよ」

 店主は呆れたような表情で説明をする。

 その妖怪は、魔理沙の使用品に興味を示し、なんでもかんでも使って見せようとしていたらしい。

 見れば、店主の隣にあったのは魔理沙がいつも敷いている座布団だ。

 そこにあったということは、先ほどまで目の前の物体がそこに座っていたという事だった。

 その他にも、その座布団の周囲には色々と見覚えのある物品が散らかっていた。

 思わず、魔理沙の額に青筋が浮かぶ。

「――湯飲みを割ったのは、お茶を飲もうとしてだろうね。ただ、手が無いからどうにかこうにか湯飲みを取り出した後に、小突いて割ってしまったんだ」

 手が無いから湯のみが持てず、工夫しようとしているうちに体当たりで砕いてしまったそうだ。

 煎餅はそのまま食べて、茶葉もそのまま食べたらしい。

 どうやら雑食のようだ、と、店主は語った。

「あー、あー、あー……と。じゃあ、何か。このままこいつを放置しておけば、引き続き似たような目に私が遭うってことか」

 魔理沙は妙な気迫の篭もった胡乱げな瞳を店主から物体へと移した。

 対する物体は、やはり魔理沙に邪気のない瞳を向けている。

 じっと物体を見つめた後、まあ害意が無いのは見れば判るがな、と口にして魔理沙は物体に背中を向けた。

「香霖、少し外で運動してくる。まんじゅう、お前もついて来い。遊んでやるぞ」

 言って魔理沙は歩き出す。

 言われた物体は嬉々として魔理沙の後を追って飛び跳ねていった。

「ゆっくりあそんでね! いっぱいあそんでね!」

「ああ、いってらっしゃい」

 店主はぱたぱたと手を振って二者を見送る。

 分かりきっている結果を予想して特に止めようとしないあたり、彼も少しは迷惑だと思っていた様子が見て取れた。

 カランカラン……。

 一人と一匹は店の扉を開けて外へと出て行った。



 …………



「じゃあ、遊んでやるから、そこにいろ。いいか、動くなよ」

「なにしてあそぶの? はやくあそぼうよ!」

「ああ、分かった分かった。だから動くな」

「うん! ゆっくりあそぼうね! いっぱいあそぼうね!」

「ん? なんだあれ」

「どうしたの? なにかあったの?」

「なんだろうな? ほらアレを見てみろ」

「どこ? どこどこ? なにがあるの?」

「後ろだ。お前の後ろ。ほら、後ろ向いてみろ」

「んー? なんなのー? なにがあるのー?」

「魔砲――」

「みえなーい! どこにあるのー?」

「――ファイナルマスタースパーク!!!」

 ――じゅっ



 …………



 カランカラン……。

「やっぱり妖怪は退治するに限るぜ」

 肩を回して店内へと足を踏み入れるのは魔理沙一人。



 本日の幻想卿は晴天なり。










『その3 見てみろ妹紅』









「ほら、見てみろ妹紅」

「ゆっくりしていってね!!!」

「なんだそれは」

「うむ。最近人里で悪さをしているという妖怪らしい何かだ」

「何かか」

「ああ、実のところ妖怪か如何かすら分からん」

「そうか」

「中身は餡子だ」

「そうか」

「つぶあんだ」

「どうでもいいな」

「そうだろうか」

「それで、こいつを如何するんだ」

「燃やしてくれ」

「分かった」

「あつーい!!!」



「ほら、こっちも見てみろ」

「ゆっくりしていってね!!!」

「おまえに似てるな」

「ほら」

「しゃきーん!!!」

「角が生えたな」

「ほら」

「しゅーん!!!」

「角が引っ込んだな」

「どう思う」

「むかつく笑顔だ」

「そうだろうか」

「ああ」

「どうする?」

「燃やす」

「あつーい!!!」










『その4 たぶんおそらく兎の話』










 先ず喰い荒らされたのは、竹林に青く芽吹く竹の子だった。

 次に喰い散らかされたのは、兎達が丹精込めて育てた人参畑だった。

 更に喰い潰されたのは、薬師が手間隙を掛けて管理していた薬草畑だった。

 果てに喰い捨てられたのは、姫が趣味で植えていた盆栽だった。



 永遠亭、被害甚大。



「あー居ますね、また」

 そう言って目の前の進む先を指差すのは、兎の少女。

 竹篭を背負い包みを両手で抱えた彼女は、傍らに並んで歩く薬師へと声を掛ける。

「なんか、物凄い笑顔で竹の子食べてますね」

「生のまま食べて美味しいのかしら」

 首を傾げながら薬師は呟いた。



 …………



「むーしゃ♪ むーしゃ♪」

 巨大な饅頭のような体躯に、どこぞの紅白巫女や黒い魔法使いの格好をした物体が数匹、採り頃まで育った竹の子へと群がっていた。

「一、二、三、四……と、五匹ですか」

 指で差して数を数えながら、二人は物体達へと近付いていく。

 と、物体達も自らへと向かってくる人影に気付いたのか、その内の一匹が竹の子から口を離し、二人の方へと向き直る。

「おねいさんたちだれ! これはわたしたちがみつけたんだよ!」

 言って、齧りかけの竹の子を庇うように前へと進み出る物体。

 二人がこの竹の子を狙ってやってきたと思ったのだろう。

 顔に警戒を浮べて威嚇を試みる物体。

 そんな様子を眺め、薬師はくすくすと笑みを漏らしながら口を開く。

「あら、そんなものよりもっと美味しいものがここにあるわよ」

 薬師が物体に差し出されたのは、丸い餡子玉。

 つい先ほど、此処に来る前に作った代物だった。

 一瞬、差し出された餡子玉をじっと見つめていた物体だったが、薬師がそれを置いて一歩下がると、釣られるように餡子玉へと近付き、それを口に含む。

「むぐむぐ」

 浮かんだ表情は、喜色。

「しあわせー!」

 至福の色を瞳に宿し、声高らかに幸福を叫ぶ。

 竹の子よりも甘いそれは、目の前の物体達の嗜好に大変合う様子で、恍惚の表情を浮べた物体を見て、周りの物体達もそれを羨ましがる。

 先ほどまで齧りついていた竹の子を放り出し、薬師へと向かって飛び跳ねて向かってくる。

「あ! わたしもたべたい!」

「おねいさん! ちょうだい!」

「ゆっくりたべさせてね!」

「いっぱいたべるよ!」

「はいはい、それじゃあこっち来て下さいねー」

 手を打ち鳴らしながら言って、兎の少女は両手で抱えていた包みを物体達の前へと下ろす。

 その包みの結び目を解き圧布を広げると、中からは一抱えほどもある餡子の塊が姿を現した。

 物体達の瞳が輝く。

「わあい!」

「おねいさんありがとう!」

「おいしくたべるよ! ゆっくりたべるよ!」

「むーしゃ♪ むーしゃ♪」

「あまあまー!」

 目の前に餡子が現れた瞬間に飛び掛り、一心不乱にそれを頬張り口を動かす物体達。

 頬を餡子で汚しながら、ただ只管に貪り食らう。

 そんな様子を、どこか呆れた表情で眺め続ける二人。

 やがて、場に盛られた大量の餡子が無くなった頃、物体達は薬師と兎の少女に向かって口々にお礼を述べ始めた。

「げふー!」

「おいしかったね!」

「とってもおいしかったね!」

「ありがとうおねいさん!」

「ごちそうさま!」

 心底満足したという物体達の様子に、どのような意味でか薬師の表情に笑みが浮かぶ。

 一回りほどその身を膨らませ、色艶も良くなった物体達を前にして、さらに魅惑の言葉を投げかける。

「ねえ、貴方達、もっと沢山食べたいと思わないかしら」

 その言葉に物体達は益々表情を明るくし、喜びを全身で表現するべく上下に飛び跳ね始める。

「もっとたべるよ!」

「おいしくたべるよ!」

「いっぱいたべさせてね!」

「たくさんたべてあげるよ!」

「ゆっくりたべてあげるね!」

 と肯定の言葉を聞き、浮べていた笑みを深くする薬師。

 兎の少女が背負っていた竹篭を指差し、言葉を続ける。

「それじゃあ、あの籠の中に入って頂戴ね」

 薬師がそう言うと、兎の少女が物体達にとって入りやすいようにと竹篭を降ろして横に倒す。

 覗き込めば、妙に奥へと深い竹篭だった。

「はいはいどうぞどうぞー」

「うん! ゆっくりはいるね!」

 そんな竹篭の様子を疑問に思う事も無く、兎の少女に案内されるまま、先ずは一匹が返事を返し竹篭の中へと飛び込んでいく。

 そのまま二匹目、三匹目と物体達が続き、やがて全員が竹篭の中へと収まった。

 兎の少女は五匹目が中へと入っていくのを見届けると、その竹篭に手を掛け、縦に引き起こす。

 竹篭の中で物体達がごろごろと転がる振動を兎の少女は感じていたが、特に気にする様子も無くその縁に手を置き、頷く。

「はい、捕獲完了です、と」



 …………



「それにしても手間が掛かって面倒ですね」

 兎の少女は先ほど物体を収めたばかりの竹篭に両手を入れ、その中から一匹の物体を取り出す。

「ゆ?」

 物体は、入ったばかりですぐさま取り出されるという状況に、首を傾げるように身を傾けて疑問符を浮べている。

 それを両手で抱え、薬師へと差し渡す。

「逃げ出そうとするのを捕まえる事だって、それなりに手間はかかるのよ」

 だからこうやって自分から捕まりに来るように仕向けないと、と薬師は言う。

 そのまま、兎の少女から手渡された物体を、餡子が無くなったままに広げられていた圧布の上へ据え置いた。

「ゆ?」

 依然その頭の上には疑問符が浮かんでいる。

「うー、他の皆も協力してくれると助かるんですけどねー」

 傍らに置いた竹篭を眺めながら、どこか疲れた様子で呟く兎の少女。

「てゐが嫌うのよ、こういうのを」

「あー」

 会話を続けながら、薬師は何処に持っていたのか鋭く磨かれた円刃刀を取り出し、物体へと宛がって見せた。

「ゆ?」

「あの兎は、他の兎がこういう事に加担させられるのを快く思わないから」

 相手は、その自らに突きつけられた刃の意味も分からずに、身体を斜めに傾げながら刃と薬師とを見比べている。

「なにをしてるのおねいさん? おいしいものはどこ?」

 身に添えられた刃の感触を疑問に思うことも無く、ただ沢山の餡子を待ち望み薬師へと瞳を向ける。

 次いで、先の甘くて美味しい食べ物はどこにあるのだろう、と周囲に向けて視線を動かし、期待に胸踊るといった印象で瞳を輝かせていた。

 薬師はにっこりと微笑みながら、言葉を返す。

「ええ、すぐに取り出してあげるから、少し待ってなさいね」

「うん!」

 薬師は笑顔をそのままに、相手へと宛がった刃を深く沈み込ませる。

「ゆ゛……!!??」

 瞬間、苦悶の表情を浮かぶまもなく身体を二つに断たれ、先ずは顔面が着いた方へと薬師は手を伸ばす。

 黒く湿った中身を指を使ってごっそりと掻き出し、広げられた圧布の上へと手際よく盛り付けていく。

「!!? い゛だ――――――――」

 叫び声を上げようとするも既に時遅く、中身を抜かれた後の瞳はすぐに力を失い、苦悶に歪んだままの表情が残される。

 それを傍らに置き、次いでもう片方へと手を掛ける。

「あの嘘吐き兎が好きなのは、飽くまでも悪戯までなのよ」

 後頭部の中身を片割れと同じように掻き出しながら、先の言葉の続きを言う。

「兎達を使ってコレを追い払ったり捕まえたりするのは良いみたいだけど、こういう光景を見せるのは駄目だ、って」

 目を見開き、歯茎を剥き出し、泣き叫ぶ寸前で固まったままの表情は、見るものに不快感を与えるような気持ち悪さを漂わせていた。

 饅頭の生地を肉厚にしたような肌触りのそれを手に取り、兎の少女へとぷらぷらと振って見せる。

「うわぁ……私も凄い駄目ですよ」

 目の前で揺れる死に面を眺めながら、微妙そうな表情で言ってみせる兎の少女。

 対して、くすくすと笑みを浮べる薬師。

「ウドンゲ、あなたは私の弟子でしょう?」

「そうでしたね、師匠」

 どこか苦笑いの表情で兎の少女は答えた。

 薬師は手に持ったソレを適当に後ろへと放り捨てる。

 これは見せしめのようなものだ。

 竹林へと足を踏み入れればこのような姿になるという警告。

 これがどの程度の効果を上げるのかは分からないが、まあ、この次は捕まえた相手で色々と実験を試してみようかなどと薬師は考えていた。



「はい、それじゃあ次を寄こして頂戴」

 そう薬師は手を差し出して、二人は暫し作業を続けた。










『その5 ビビる⑨』










「ここは、わたしがみつけたおうちだよ! はやくでていってね!」

「うわ、な、なによあんた」

「でていってね! さっさとでていってね!」

「え、あ、なに? まんじゅう?」

「ちがうよ! ぜんぜんちがうよ! だからでていってね!」

「なにさ、別にいいじゃないのよ」

「ゆっくりしていってね! あっちでゆっくりしていってね!」

「むむむ、ここはあたいがいつも遊んでる場所なのよー!」

「そんなのしらなーい! むこうでゆっくりしていってね!」

「邪魔なのはそっち! ほら、さっさとあっち行って!」

「そんなのしらなーい! ここはわたしのおうちなの!」

「だーかーらー出て行けー!」

「これからおひるねするの! うるさいからでていってね!」

「むかちん!」

「おお、こわいこわい」

「むっかー!」

「おお、こわいこわい」

「きー!!」

「おお、こわいこわい」

「しゃー!!!」

「おお、こわいこわい」

「チルノ、どうしたの?」

「あ、レティ」

「なにかしら、これ。大福妖怪?」

「はなしてね! ゆっくりおろしてね!」

「レティ、貸して」

「はい」

「なにするの!? やめようね! ゆっくりおろそうね!」

「てりゃっ!」

「あら投げた」

「たかーい! おそらをとんでるみたい!!」

「よく飛ぶのね。なんなのかしら、あれ」

「むかつくやつ」

「そうなの?」

「うん、そう」

「って、あら」

「あ」

「わあい! たかいたか――――つぶっ!?」

「池に落ちたわ」

「ふふん!」

「ゆっくりたすけてね! はやくたすけてね!」

「あらあら」

「ざまみろー!」

「すぐにたすけてね! さっさとたすけてね!」

「? なんだか段々と膨らんできてないかしら」

「ばーか! ばーか!」

「ゆっくりのびるよ! だんだんのびるよ!」

「すごくぶよぶよしてるわ、よ……」

「ばーか! ばーか! ばーか、ぁ……うわー」

「ゆ゛ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ」

「……き、気持ち悪いわね、チルノ」

「……う、うん」

「……あっちで遊びましょうか」

「……うん」

「ぶくぶくぶくぶくぶく…………」










『その6 投げっぱなし唐突百合エンド』










 がしゃがしゃと鉄籠を揺らすのは、先日捕獲したよくわからない物体達だった。



 紅魔館の門番長である紅美鈴が館の門前でウロウロとしている物体たちを捕獲してきたらしい。

「だってパチュリー様、こいつら追い払っても追い払っても近付いてくるんですよ。だったら昇天させるか捕まえるかぐらいしかないじゃないですか」

 と言って門番は捕獲の方をえらんだ様子だった。



「それで、なんでそれがここにあるのでしょうか?」

 傍らに控えた小悪魔が問う。

「そんなの、面白そうだからに決まっているでしょ」

 見なさい、と差し出された二匹の生き物。

 一方は大きな赤いリボン。

 もう一方は黒い魔女帽子。

「何処かで見たことの在る格好ですね」

「でしょう?」

 視線を合わせ、パチュリーはその物体へと声を掛けてみた。

「ねえあなた達、名前はあるのかしら?」

 少女の問いには間髪いれずに答えが返ってきた。

「わたしのなまえはゆっくりれいむ!」

「わたしのなまえはゆっくりまりさ!」

「ゆっくりさせてあげるよ!!!」

「ゆっくりかわいがってね!!!」

「うわー」

 と子悪魔。

「な、なんだかむかつくわね」

 とパチュリー。

 しかし直に気を取り直し、興味深げに二匹へと視線を這わせた。

「なんで紅白と黒いのの格好なのかしら?」

「いっぱいいますしね」

 後ろを振り向く小悪魔。

 紅魔館にある巨大図書館の一室であるこの部屋の隅には鉄の下りがいくつか積み重なっており、その中身はこの二匹。

 ゆっくりれいむとゆっくりまりさがみっちりと収められていた。

 ゆっくり達は各々に口を開く。

「だしてー! ねぇだして!」

「ゆっくりしようね! ここからだしてね!」

「おなかすいたよー! おうちかえしてー!」

「……中国もたくさん捕まえたものね」

 呆れた様子のパチュリー。

 ふと思いついた様子で小悪魔は問いかける。

「出してみましょうか」

「酷い事になるわよ」

 溜息を吐いて止めておきなさい、と主に言われ特に落胆した様子も見せずに子悪魔は引き下がる。

「まあ、最近暇だったし、色々と観察してみましょうか」

 ゆっくりまりさを持ち上げ、パチュリーは言う。

「たかーい! いいけしきー!!」

「わたしも! わたしも!」

 ゆっくりれいむもその様子をみてパチュリーへと擦り寄っていく。

「あーはいはい」

 言ってパチュリーは気だるそうに子悪魔へと視線を向けた。

 その意を汲んだのか、小悪魔はゆっくりれいむを手に取り、高々と持ち上げて見せた。

「すごーい! いいけしきー!」

「こんなので喜ぶなんて、お手軽な脳味噌してるのね」

 呆れたように呟くパチュリーに対して、ゆっくり二匹は笑顔を振りまいて楽しげな表情を見せていた。



 …………



「すっぱーい!」

「酢は大丈夫、と」

「からーい!」

「唐辛子も大丈夫」

「しょっぱーい!」

「醤油も平気ね」

「あまーい! おいしーい!」

「砂糖も食べる、と」

「もっとたべたい! ちょうだい! ねえちょうだい!」

「はいはい」

 パチュリーの指示を受けて小悪魔がざらざらと砂糖袋から砂糖を皿へと盛る。

 それを二匹のゆっくりは二人並んでぺろぺろと舐め始める。

 なぜか色艶がよくなっている気がする。

 やはり醤油や酢などよりも、砂糖の方が食えた物であるためか。

「ゆっくりー!」

「ゆっくりー!」

 二匹は二人そろって仲良く叫んでいた。



「まずーい!」

「一応、草とかも食べるのね」

「おいしくなーい!」

「カブトムシも、有り」

「むぐむぐ、んぐんぐ」

「生肉も平気、と」

「おいしーい! すごくおいしいー!」

「お菓子は良く食べる、と」

「もっとちょうだい! もっとたべたい!」

「もう無いわよ、後は私たちの分」

 目の前に紅茶と共にあるのは、紅魔館のメイド長が手掛けた焼き菓子が数枚。

 持ってきた分の半分をゆっくり達へと与えたから、残りはパチュリーとその傍らに控える小悪魔の分だった。

「むーっ!」

「むーっ!」

 なんでもっとくれないの、と足元でむくれる二匹のゆっくりを見て、やれやれとシュガーポットへと手を伸ばす。

 蓋を開け角砂糖を二つほど取り出すと、ゆっくりの頭上へ向けて落として見せた。

「?」

「?」

 頭の上の弾んだ感触に上を向き、目の前に転がってきた白い立方体をしげしげと眺め、やがて口に含む。

 そして、その表情に喜色が浮かんだ。

「あまーい!」

「ありがとーパチュリー!」

「安い自尊心ね」

 くすくすとパチュリーが苦笑を浮べるすぐ下で、二匹のゆっくりはパチュリーに擦り寄るように笑顔で騒いでいた。



 …………



 今日一日観察してみて、分かったことを口にしてみる二人。

「雑食ね」

「雑食すぎますね」

 あの後も様々な食べ物を与えてみて、生魚や芋虫、ついでに血液や人肉ケーキなども与えてみたが、美味い不味いの反応はあったものの、二匹のゆっくり生物はすべからく胃袋に収めてしまっていた。

 食の観察をしてみれば、雑食この上ないという結果だった。

 次は何をしようかしら、とパチュリー。

 ああそういえば、と思い付きを口にする子悪魔。

「共食いとか、するんでしょうか?」

 ちらりとパチュリーの足元に視線を向ける。

 ゆっくりれいむとゆっくりまりさがそれぞれ寝息を立てて横に転がっていた。

 それは、この雑食すぎる二匹のゆっくり生物に対して沸いた只の疑問であって、特に本心から思ったものでは無かった。

 しかしパチュリーはどことなく冷やかな視線を足元に向け、口を開いた。

「試してみる?」

「え、宜しいのですか」

「宜しいのですかって何がかしら」

「万一にも共食いをしたら、どちらかが居なくなってしまいますよ」

「別に、私はペットを飼う心算は無いわよ。ティータイムのクッキーが減るのも、嫌」

 咲夜の作ったお菓子は美味しいもの、と特にどうでもよさそうな事を呟いてパチュリーは指を振って何言かを唱えた。

 二匹のゆっくりはふわふわと揺れるように浮かび上がり、パチュリーが着いている丸テーブルの上へと案内された。

 未だ夢見心地の二匹を眺め、口を開く。

「まぁこの程度で情なんてモノが沸いていたら、百年も魔女なんてやっていないわよ」

 つん、と指先でゆっくりの頬を優しくつつき、冷淡な微笑みを湛えて見せた。



 …………



 1日目

「せまいよ! もっとひろいところがいい!」

「おなかすいたよ! あまいのたべたい!」

「えーと、特に異常無しですね」



 2日目

「ゆっくりしようよ!!」

「なんでゆっくりさせてくれないの!?」

「ゆっくりしてますよー、私はー」



 3日目

「おねいさん! だしてよ!」

「もっとゆっくりしようよ! ねえ!」

「それにしてもこの時間は暇ですねー、パチュリー様に習って本でも借りてきましょうか」



 4日目

「だして! ここからだして!」

「ひどいやつ! パチュリーにいいつけてやる!」

「そうですねー、パチュリー様はお優しいですからー、知ったらきっと出してくださると思いますよー」



 5日目

「パチュリー! たすけて!」

「わるいやつがここにいるの!」

「んー、しぶといと言うべきでしょうか、本日も異常無し」



 6日目

「だずげでえええ! バヂュリ゛ー!」

「お゛な゛がずい゛だよ゛おおおお」

「さて、次はどの本を読みましょうか」



 7日目

「い゛や゛だあああ! ゆ゛っぐり、じだいいいい」

「も゛う゛い゛や゛あああ! ゆ゛っぐりざぜでえええ」

「異常無しですか。んー、これはもしかすると――」



 …………



「すっきりー!」

「すっきりー!」

「すっきりー!」

「……………………なにしてるんですか、パチュリー様」

「あら、戻ってたのね」

 なにやら高速で振動している三匹のゆっくり。

 良く見なくても、パチュリーの魔法の仕業であることが分かる。

 妙に頬を高潮させているゆっくり。

 そして何故かその周囲には飛沫が舞っていた。

「ほら、こうすると発情するのよ」

 高速で振動していたそれが、さらにその運動を激しくさせる。

「ゆっ……! ゆっ……! ゆっ……! ゆーー!!」

 がくがくと震え初め、その丸い物体の下部から液体が飛び散り始める。

「す、すっきりー!」

「ほらね、これで、えーと……八回目かしら?」

 うわぁ……と微妙そうな表情を見せる小悪魔にたいして、その主は笑顔を浮べ、言う。

「面白いでしょう?」

「……………………」

「……冗談よ。それで、今日の様子も変わり無いのかしら」

 そう拗ねた様子で言って見せたパチュリーに対して、小悪魔は別室に隔離したゆっくりれいむとゆっくりまりさの様子を伝える。

 といっても、七日目である今日の様子はといえば、ただ只管に泣き叫ぶだけだった。

「まあ、共食いといっても別に期待していたわけではないから、そういう生き物だったってだけよね」

 そろそろ出してあげるのも良いかしら、と口にするパチュリー。

 傍らで振動を続ける三匹のゆっくり達は、二人の会話中もそのままだった為か、白目を剥いて泡を吹き始めていた。

「これを掃除するのは、私なんでしょうか」

 小悪魔の目の前には、色々な液体で水浸しになった一面の床と、その上で失神中の三匹のゆっくり達。

 思わず溜息が零れた。



 …………



 がちゃり、と扉が開かれ、その奥から気だるげな印象を備えた少女が姿を表した。

「バヂュリ゛イイイイ!!!」

「バヂュリ゛イイイイ!!!」

「ひさしぶりね、貴方達。随分と痩せてしまったみたいだけど、大丈夫だったかしら?」

 パチュリーの姿を目にした途端、跳ね起きるようにして鉄の格子に身体を押し付け、泣き叫ぶようにして助けを求めるゆっくり。

「だずげでバヂュリ゛ー!!!」

「わ゛る゛い゛や゛づがい゛る゛の゛おおお!!!」

「あらあら、まだまだ元気いっぱいね」

 困ったような笑顔を浮べたパチュリーは二匹のゆっくりが収められている鉄籠に近付き、その扉に掛けられた錠前を魔法で切断してみせた。

 籠の扉はその上部についており、そこから中を覗き込むとゆっくりが笑顔を浮べて此方を見上げているのが見て取れた。

「ゆっ! ゆっ!」

「ゆ……っ! ゆ……っ!」

 二匹のゆっくりが、真上に開かれた出口から飛び出そうと一生懸命飛び跳ねて見せるが、あと少しという所で届かない。

「ほら、そんなに慌てなくても、手伝ってあげるわよ」

 言うが早いか、ゆっくりれいむの体がふわりと浮き上がり、出口を潜ってパチェリーの胸元へと導かれる。

 やさしく抱きとめられるゆくりれいむ。

「バ、バヂュリ゛ー!」

 涙と鼻水でずるずるになったその表情をパチュリーの胸板へと押し付け、ゆっくりれいむは嗚咽を我慢せずに泣き始める。

 思わず溜息を零し、パチュリーはその視線を期待に溢れた表情を浮べているゆっくりまりさへと向けた。

「はぁ……まりさは少しまっててね。れいむを置いてくるから」

「うん! まりさまってるよ! いいこだから! でも、はやくもどってきてね!」

「ええ、すくに戻ってくるわよ」

 笑顔を浮べてゆっくりまりさに答えると、パチュリーはゆっくりれいむを抱えて部屋の入口へと向かっていった。

 入ってくる際に開け放しのままにしておいた引き戸を潜り、廊下へと足を進める。

 こつこつこつ、と暫し進む。

 と、パチュリーの直傍らに佇む影が現れる。

「どうでしたか?」

「あっ!!」

 小悪魔が声を掛けるのと、ゆっくりれいむがその姿に気付くのは同時だった。

 パチュリーが小悪魔に言葉を返そうと口を開こうとするが、それを遮ってゆっくりれいむが大声で叫ぶ。

「パチュリー! こいつだよ! わるいやつ! やっつけて!」

 敵意を剥きだしにして子悪魔を威嚇するゆっくりだったが、その様子を気にも留めずに小悪魔はパチュリーの衣装を気遣う。

「ああ、パチュリー様の御召し物をこんなに汚してしまって、駄目ですよ」

「パチュリー! はやく! こいつがれいむをいじめたの!」

「ほら、そのまま持っていてはさらに汚れてしまいます」

 そう言ってパチュリーに向かって両手を差し出してみせる小悪魔。

 ゆっくりれいむはその動作に一瞬身体を震わせ、その身をさらにパチュリーへと押し付けた。

 口を開き、叫びを吐く。

「なにしてるの!? たすけてパチュリー!! こいつをやっつけて! はやく!!!」

 一生懸命にパチュリーに懇願するゆっくりと、その様子をどうとも思っていない子悪魔。

 やれやれ、とパチュリーは首を振り、至極あっさりとゆっくりれいむを手渡した。

「はい」



「――ゆ?」



 何が起こったのか、はて? と首を傾げるゆっくりれいむ。

「……?? ……????」

 辺りを見回し、パチュリーの顔を眺め、上を向いて子悪魔の顔を視界に納める。

「パチュリー様、御着替えでしたらあちらに咲夜様が居られますので」

「わかったわ」

 パチュリーが小悪魔とすれ違い、離れていく。

「????」

 何が起こったのか、全く理解できていないのだろう。

 疑問符を浮べたまま、去っていくパチュリーの後姿を眺め続けるゆっくりれいむ。

「さて、台所を借りましょうか」

 小悪魔は、直傍を通り過ぎたメイドの一人へと声を掛け、その足を厨房へと進めた。



 …………



「ごはんですよー」

「あっ! わるいやつ!」

 パチュリーがゆっくりれいむを抱えて去っていった室内。

 静かにパチュリーが戻ってくるのを待っていたゆっくりまりさの前に姿を現したのは、望んだパチュリーではなく悪い奴である子悪魔だった。

「パチュリー! はやくきて! わるいやつがここにいるよ!」

 パチュリーに知らせる為であろうか、大きく音を立てるようにと鉄籠を揺らすべく上下に運動を繰り返すゆっくりまりさに対して、小悪魔は片手に持ったトレイから一枚の大皿を取り上げて見せる。

「そんな事は無いですよ、ほら」

 言ってゆっくりまりさに差し出された大皿の上に載せられていたのは、輪になった生地に大量の餡子が詰められた、しいて言えば巨大な饅頭を輪切りにしたような何かだった。

「むっ」

 ゆっくりまりさは格子を挟んだ向かい側、小悪魔が置いた食べ物らしき物体を凝視する。

 空腹の為か、暫しソレを見つめ続け、次いで小悪魔へとその視線を移す。

 これは何なのか? どのような意味なのか? といった視線だった。

「これはパチュリー様からですよ」

 まるで花が咲いた様に笑いかける小悪魔。

「パチュリーから!?」

「私もあなたに意地悪したことを怒られてしまいましたし」

「おこられたの!?」

「ええ、はい。それはもう」

「パチュリー! ありがとー!」

 思わず飛び跳ね、勝ち誇った笑みを小悪魔に向けるゆっくりまりさ。

「おもいしったか!!」

 あらあら、と小悪魔はその笑みを益々深くする。

「それじゃあ出しますよ」

 小悪魔の両手にて持ち上げられるゆっくりまりさ。

 大皿の直傍に降ろされ、差し出された輪切り饅頭に齧り付く。

「むーしゃ♪ むーしゃ♪」

 その表情に喜色が宿る。

「どうですか?」

「あまーい! おいしーい!」

 ゆっくりまりさの胴回りと同じくらいのそれは食べ物としては巨大だったが、ゆっくりまりさにとっては久しぶりの甘味である為か瞬く間にその量が減っていく。

「まだまだありますよ」

 巨大な何かを食べきった際に、さらに差し出される同じ形のソレ。

「ぜんぶまりさのー! むーしゃ♪ むーしゃ♪」

 笑顔を浮べ、その量をさらに消化していく。

 三つ、四つと食べきっていき、やがて差し出された大皿の中には最後のひとつが残されていた。

 輪切りにされた何かの端。

 げふー、と喉を鳴らしてそれに齧りつこうとするゆっくりまりさに向かって、小悪魔は口を開く。

「おいしかったですか?」

 どこか、確認を求めるような声色だった。

「おいしかったー!」

「ソレも食べますか?」

「たべるの! ぜんぶまりさの!」

「そうですかー」

 言って相変わらずの笑顔を貼り付けたままの小悪魔。

「でも、これ、裏返しですね」

「?」

「ほら、こちらが表です」

 最後の一切れを、裏返す。



「……………………え?」



 そこに何を見たのか、ゆっくりまりさの動作が止まる。

「……? ……??」

 首を傾げ、首を振り、目を瞑り、目を開き、今まで食べたものを思い起こす。

「……??? ……????」

 次いでカタカタと小刻みに震え始め、言葉にならない音がその口から漏れ始めた。

「れ……れ?」

「れ――なんですか」

「れ、れれ、れい、れい、む?」

「はい。正解です」

 そこには、まるでこの世の全てに絶望しきったような愕然とした表情を貼り付けた、ゆっくりれいむの顔面部分があった。

 薄く切り取られたその表情は、どこか虚空を見つめたまま、動くことは無い。

「……!? ……!?」

 たまらず魚の如く口を開閉させるゆっくりまりさの様子を気にも留めず、小悪魔は大皿にのせられたゆっくりれいむ表情を相手へと進めてみせる。

「どうしましたか? これもあなたのものですよ? ほら、食べないと」

「……!! ……!!」

「これで最後ですよ、ほら、あーん」

「っ……!! ……パ」

「パ?」

「パチュリイイイ!!! わるいやつが!!! わるいやつが!!! れいむを!!! れいむがああああ!!!」

 目を剥いて子悪魔を威嚇し、ゆっくりれいむの切れ端の直傍にて上下に飛び跳ねるゆっくりまりさ。

 そんな突然の態度の豹変を受けても、小悪魔はにこやかな姿勢を崩さない。

 にこにこと笑顔を浮べ、しかしその手段は強行だった。

「はやくきて!!! パチュリイイイ!!! はやくきて!!! こいつをやっつけて!!! パチュムグッ!??」

「はい、どうぞ♪」

 小悪魔は片手をゆっくりまりさの口内に突っ込みこじ開け、もう片方の手でゆっくりれいむの切れ端を掴み、丸め、その開いた口内へと無理矢理押し込んだ。

「んぐ……っ!? むぐ……っ!! むー……っ!!!」

 ゆっくりまりさは押し込まれるソレを舌で押し返そうと一生懸命抵抗するが、それも虚しく、小悪魔は強引にソレを押し込んでいく。

 やがて口いっぱいに押し込まれていったソレは、ごくり、と嚥下されていった。

 小悪魔が唾液の滴った手をゆっくりまりさの口から引き抜く。

「ごちそうさまでした♪」

 両手を合わせ、首を傾げてゆっくりまりさに微笑みかける小悪魔。

 ゆっくりまりさは目の前の空になった大皿を呆然と眺め続け、動かない。

 さてそれでは、と子悪魔がゆっくりまりさを抱えあげるも反応はなく、そのまま室内を出ようとした所でようやくゆっくりまりさが呼び続けた人物が現れた。

「あら、パチュリー様、どうかなさいましたか?」

「……パチュリー?」

 子悪魔に呼ばれたその名前に反応し、顔を上げるゆっくり。

 はたしてそこには、ゆっくりまりさが待ち望んだ人影があった。

「パチュリー!!!」

「あっ」

 予想外の勢いで小悪魔の懐から抜け出したゆっくりまりさは、一目散にとパチュリーへと飛び跳ねていった。

「パチュリー! たすけてパチュリー! わるいやつが! ひどいやつが! もうぜんぜんゆっくりできなーい!!!」

 扉を抜けてパチュリーへと縋りつくべく精一杯の速度で飛び跳ねるゆっくりまりさ。

 目の前のパチュリーまであと少し。

 傍らに見知らぬ人影が二人分あったが、そんなのは思考の外であった。

 しかし、次に聞こえてきた声にその身は震わされた。



「うー! うー!」



 ゆっくり生物の共食い種。

 ゆっくりれみりゃの登場である。

 何処に居るのか、とゆっくりまりさが冷や汗を流しながら辺りを見回すと、パチュリーの直傍。

 見知らぬ人影の内、片方、桃色の衣装を纏った少女の足元に、ゆっくりれみりゃは存在していた。

「レミリア様も御一緒だったんですね」

「ええ、私も、おもしろいものを見つけて、ね」

 小悪魔の問いに対してレミリアと呼ばれた少女は、今現在ゆっくりまりさをおいかけまわしている何かに向かって視線を向けていた。

「うー! うー!」

「だずげでバヂュリ゛ー!!」

 上機嫌に追い掛け回すゆっくりれみりゃと、パチュリーに助けを求めるべく当人に飛びつこうとするゆっくりまりさ。

「あら貧血」

 パチュリーの胸板へと飛び込んできたゆっくりまりさを、ふらりとよろめく姿勢でパチュリーは回避する。

 パチュリーはレミリアの傍らに控えていた銀髪のメイドに抱きとめられ、迎えられることの無かったゆっくりまりさの身体は空中を浮かぶ。

「ゆ゛!?」

 べしょ、と床に顔面から墜落するゆっくりまりさ。

 思わずレミリアから失笑が零れる。

「ふふふ、やっぱり、あの白黒とは似ても似つかないわね」

「うー! うー!」

 追いついてきたゆっくりれみりゃに食いつかれ、悶絶し、暴れだすゆっくりまりさ。

「い゛、いだい!! やめ゙てやめでね゙…!!!」

「うー! うー!」

「…や゙め゙…!!……ばな゙じ…!!…ゆ゙…ゆ゙…ゆ゙!!!」

「うー! うー!」

「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛……!!!」

 ぶちっ、と身体を引き千切ってその身の安全と確保するゆっくりまりさ。

 おもわず前のめりに躓くゆっくりれみりゃを放置して、そのままの勢いで駆け出していく。

「あら、やるものね」

「でも、そろそろ飽きたわ」

 指を伸ばし、言霊を紡ぐパチュリー。

 皆に背を見せてゆっくりれみりゃから一目散に逃げ出そうとしているゆっくりまりさの身体がふわりと持ち上がる。

「な゛、な゛に゛!?」

 空を切った感触に一瞬思考に隙間が出来るが、くるりとその身体を反転させられ、目の前に現れたその姿にゆっくりまりさの心に希望の火が灯った。

「パ、パチュリー!! たすけてね! ゆっくりたすけてね!」

 ゆらゆらと波間を漂うように揺れながら、ゆっくりまりさとパチュリーの距離が縮まり、もう少しで届くかという所で、その真下から一人と一匹の触れ合いを妨害する声が上がった。

「うー! うー!」

 思わず冷や汗を垂らして強張った表情を貼り付けたゆっくりまりさが、恐る恐る自らの下へと視線を向ける。

 ゆっくりまりさの傷口から溢れ出た餡子を直下で待ち構え、零れ落ちて来たそれを頬張っているゆっくりれみりゃ。

 慌ててパチュリーに向き直り、唾を飛ばしながら必死な形相で懇願をし始めるパチュリー。

「た、たすけてパチュリー! あいつがまりさをいじめるの!! あいつをやっつけて!!!」

 そう言ってパチュリーに助けを求めるが、パチュリーは笑みを浮べたまま動こうとはしない。

 そればかりか、先ほどからゆっくりまりさとパチュリーとの距離は縮んでいない様に感じられた。

「なにしてるの!? はやく!! はやくたすけてパチュリー!!」

 既に完全に恐慌状態に陥っているゆっくりまりさに対して、パチュリーはようやく口を引く。

 笑顔から一転、呆れたような表情を見せて、一言。



「あなたの相手をするのは凄く疲れるわ」



 向けられた視線は冷やかだった。

「パ、パチュリー? ……?」

「自分勝手で我侭なのは別に構わないわ。食いしん坊な所も馬鹿な所も、ね。でも、一々人に頼るのは止めて頂戴。凄く疲れるから」

「……? ……?? ……??? ……????」

 ぱくぱくと声にならない音を漏らし、その表情に何を浮べるべきか定まらないゆっくりまりさ。

 何を言っているのか、何を言われたのか。

 理解できない、理解したくない。

 愕然とした表情のまま、ゆっくりまりさの精神が停滞する。

「あなたは興味深い生き物だったけど、もうおしまい。ほら、あの子に食べられれば寂しくないわよ」

 あなた以外の子は、みんなあの子が食べちゃったんだから、と。

「うー! うー!」

 ゆっくりれみりゃの声が聞こえる。

 くるりとパチュリーが指先一つでゆっくりまりさを反転させると、その三寸先に、ゆっくりれみりゃの顔が浮かんでいた。

「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ……!??」

「うー! うー!」

 ぱたぱたとその背中の羽を動かして、ゆっくりまりさと同じ高さに浮かんだゆっくりれみりゃは邪気の無い表情を相手へと向けている。

 おいしい食べ物を目の前にして、その機嫌は上々の様子だった。

 何を思ってか、ゆっくりまりさのその表情が酷く歪む。

「ゆ゛っ゛ぐり゛……!!」

 ゆっくりれみりゃが大きく口を開く。

 何か、黒い塊を吐き出すように、まるで原型を留めていない表情でゆっくりまりさは吼えた。

「ゆ゛っ゛ぐり゛ざぜでえええええええ――――づぶ」



 暗転。



「さすがにこれは酷いですねー」

「お嬢様……」

「な、何よ二人共、散らかしたのはこの子よ」

「うー?」

 そういってゆっくりれみりゃを抱えあげるレミリア。

 ここは紅魔館の一室。

 パチュリーが捕まえられたゆっくり達を観察していた、ゆっくり観察部屋だった。

 部屋の彼方此方に散乱しているのは中身の無い鉄籠。

 中身は空である。

 しかし、注目すべきは其処では無い。

 部屋の全体に向かってぶちまけられる様に散乱した、大量の餡子。

 見れば、赤いリボンや黒い魔女帽子の残骸も部屋の彼方此方に見て取れた。

 このような有様になったのはつい先ほど。

 パチュリーがゆっくりれいむの涙と涎でずるずるになった衣服を着替え、この部屋へとやってきた際、レミリアが一匹のゆっくりを連れてこの部屋を訪れた。

 そのゆっくりがゆっくりれみりゃである。

 どうやらパチュリーがゆっくり達を構っているのを見て、自分でも一匹ほど飼ってみたくなったらしい。

 中国にお願いして一匹捕獲してもらい、それがゆっくりれみりゃであったそうだ。

「――それで、ほかのゆっくり達と遊ばせようと思って籠を開けたら、片っ端から食べられてしまった、と」

 まさに、阿鼻叫喚の地獄絵図だったらしい。

 逃げるゆっくり達。

 追いかけるゆっくりれみりゃ。

 種類の差だろうか、立ち向かうという思考すら浮かばないらしく、パチュリーやレミリアの陰に隠れ必死に懇願を繰り返すゆっくり達。

 もりもりと上機嫌でゆっくり達を喰い散らかしていくゆっくりれみりゃ。

 泣き叫ぶゆっくり。

 逃げ惑うゆっくり。

 飛び散るゆっくり。

 喰いまくるゆっくりれみりゃ。

 物凄い光景だったらしい。

「――ああ、それではあの部屋の前を通りかかったのは」

「咲夜を呼びに言った帰りね」

 部屋の掃除のために、と主人。

「はぁ……」

 とは従者の呆れである。

「それにしても、紅白巫女や白黒魔法使いの他に、レミィのゆっくりも居るなんてね」

「うー?」

 わたしに似たゆっくりも居るのかしら? と言ってレミリアの腕の中に納まっているゆっくりれみりゃへと腕を伸ばすパチュリー。

 と、

「うまうま!」

 むーしゃ♪ むーしゃ♪ とゆっくりれみりゃ。

「あ」

 と子悪魔。

「あら」

 とは腕を丸齧りされているパチュリー。

「パチェ!!」

 ばん、と大きな破裂音を残して、ゆっくりれみりゃの姿が掻き消える。

 部屋の壁一面に盛大な染みが生まれ、飛び散る肉汁。

 腕を振りぬいた姿勢のレミリア。

 その顔は青い。

「あ、あぁ、なんて事……だ、大丈夫? ねえパチェ」

「このくらい何とも無いわよ、レミィ」

「こんなに血が出て、なんて痛ましいのかしら」

「やさしいのね、レミィ」

「あぁ、パチェ……」

「レミィ……」

 見詰め合う二人。

 触れ合う両手。

 近付く唇。



 …………



「……さっさと片付けましょうか」

「……そうですねー」



 紅魔館は今日も平和だ。










『その7 一人芸』










「シャンハーイ」

「え、何? この生き物は何かって」

「ホラーイ」

「うん。今朝魔法の森で見つけたのよ」

「シャンハーイ」

「何で黒焦げなのかって? さあ、拾った時にはそうだったから、そこまでは私にも判らないわ」

「ホラーイ」

「如何するのかって? ふふふ、ねえ見て、この生き物、何かに似てると思わない?」

「シャンハーイ」

「うーん、判らないかしら」

「ホラーイ」

「あら、正解よ」

「シャンハーイ」

「ふふふふ、ね? ほら、魔理沙に似ていると思わない?」

「ホラーイ」

「くすくすくすくすくす……さあ? どうしてくれようかしら」



「……………………ゆ…………ゆゆ」

「ん? あら」

「ゆっ……ゆっ……」

「目が覚めるのかしら」

「ゆっ……?」

「あら、おはよう」

「ゆっくりー……?」

「ゆっくり?」

「こ……」

「こ?」

「ここ……」

「ここ?」

「ここはどこなの? おねいさんはだれ? おうちかえして!」

「そんな一遍に言われても答えられないわよ」

「…………」

「?」

「おねいさんのばーか!」

「うわ」

「おなかすいた! おうちかえる!」

「ふーん」

「ゆっくりしたいの! おうちかえる!」

「へぇ」

「ゆっくりするからね! おうちかえる!」

「あら、こんな所にショートケーキが」

「ゆっ!? それちょうだいね! おいしくたべるよ!」

「シャンハーイ」

「あー、人形に持っていかれちゃったわ」

「む゛っ!」

「あら、あんな所にモンブランケーキが」

「ちょうだい! それちょうだい! おねいさんあれとって!」

「ホラーイ」

「あー、人形が取って行っちゃったわ」

「む゛ーっ!」

「あら、そんな所にシュークリームが」

「ゆっくりー!!!」

「味はまあまあね」

「あー!!!」

「ん? どうしたの? 何をそんなに騒いでいるの?」

「わたしの! それわたしのシュークリーム!! なんでかってにたべちゃうの!!!」

「…………は?」

「ひどーい! おねいさんひどい!!」

「うーん……始めて見た時から予想してたけど、想像以上の自分勝手ぶりね。さすがは魔理沙モドキといった所かしら」

「む゛む゛む゛!」

「やれやれ……」

「シャンハーイ」

「ゆ?」

「ホラーイ」

「ゆゆ!!」

「まあ、お人形さんがあなたにケーキをあげるって。よかったわねぇ」

「わーい!」

「シャンハーイ」

「ホラーイ」

「ふふん! おねいさんにはあげない! これはわたしの! いいでしょ!!」

「そうね、羨ましいわ」

「むーしゃ♪ むーしゃ♪」

「酷い食べっぷりね」

「むーしゃ♪ むーしゃ♪」

「なんて不細工なのかしら」

「むーしゃ♪ むーしゃ♪」

「まるで人面饅頭ね」

「むーしゃ♪ むーしゃぶぶっ……!?」

「……? どうしたの?」

「か、かかかか」

「かかか?」

「からーい!!! おみず!! おみずはどこ!!」

「あらまあ」

「おみず!! おみず!! はやくしてね!! さっさとしてね!!」

「水、ね。何処にあったかしら」

「くちのなかがひりひりするの!! はやく! おねいさんはやく!」

「ごめんなさい。お姉さんちょっと物忘れが激しくて」

「どこ!!? おみずはどこ!! はやくおもいだしてね!! すぐにおもいだしてね!!」

「はぁ……全然思い出せないわ」

「ばーか!! おねいさんのばーか!!! ばかばかばーか!!!!」

「…………」

「シャンハーイ」

「ホラーイ」

「へえ、お人形さんがトマトジュースでよければあるよって。よかったわねぇ」

「わあい!」

「シャンハーイ」

「ホラーイ」

「ふふん! おねいさんのばーか!!」

「はいはい。さっさと飲みなさい」

「ゆっくりのむよ! おいしくのむよ! ありがとうおにんぎょさんたち!!」

「シャンハーイ」

「ホラーイ」

「ゆっくりー! …………ごくごくごくごくごぶぶぶっ!!!??」

「ふふふっ、どうしたのかしら? ねえ?」

「~~~~~~~!????」

「シャンハーイ」

「ホラーイ」

「あら、お人形さんがごめんなさいって。トマトジュースじゃなくてタバスコだったって」

「……!!! ……!!?? ……!????」

「うーん、何言ってるのか全然分からないわ」

「∂∫∬¥$¢£Å‰ξ……!!!」

「うわ、瞳孔開いてるわよ」

「シャンハーイ」

「よっぽど辛いものが苦手なのかしらね」

「ホラーイ」

「泡まで吹き始めたわ……って、流石にこれは気持ち悪いわ。どうしようかしら」

「シャンハーイ」

「え? 何処かに捨ててきましょうかって? ……そうね、このままガタガタゴトゴト五月蝿いのも煩わしい事だし――」

「ホラーイ」

「――折角だから、使わなかった辛子団子と山葵饅頭も押し込んで放り出しましょうか」

「シャンハーイ」

「はい、ありがとう。ほら、そこの魔理沙モドキ口を開きなさい」

「……ゆ゛? ……ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛????」

「はい、そこで捻じ込んで」

「ホラーイ」

「……!!!??? ……!!!!!!!」

「ごちそうさま、と。じゃあ口を開かない様にぐるぐる巻きにして、そこら辺の藪の中にでも転がしておこうかしら」

「シャンハーイ」

「ホラーイ」

「ぐるぐるぐる、と」

「シャンハーイ」

「ホラーイ」

「行ってらっしゃい、なるべく物騒そうな所に捨ててくるのよー」

「シャンハーイ」

「ホラーイ」

「…………ふー。んー、なんだか久しぶりにすっきりした気がするわー!」










『おわれ』



駄文製作者:ななな

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最終更新:2008年09月14日 05:14
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