ゆっくりいじめ系171 ゆっくり家庭崩壊(後編)



「ゆっくり家庭崩壊」(後編)





それから一週間。
相変わらず、偽母れいむと10匹の子れいむは仲良くゆっくりしている。
部屋から出ることは禁じているので、ご飯を与えるのは僕の役目だ。

「ゆ!!たくさんおいしいものがあるよ!!」
「みんなでゆっくりたべようね!!」
「あ!!それはれいむのだよ!!ゆっくりたべないでね!!」
「ゆゆ!!これはれいむがたべるの!!」
「みんな!!けんかしないでね!!たべものはたくさんあるからね!!」

食べ物をめぐって喧嘩を始めた子れいむたちを、偽母れいむが仲裁する。
そんな光景も、仲のいいゆっくり一家ならではだ。

食事が終わると、子れいむたちは部屋の中にある遊具で遊び始める。
子れいむたちのお気に入りは、“シーソー”と呼ばれる遊具だ。
形は上皿天秤に似ていて、そのシーソーの両端には子れいむたちが乗っかることが出来るように皿を取り付
けてある。
子れいむたちは地面を蹴ることが出来ないから、自ら左右に飛び移ることによってシーソーは上下運動を繰
り返す…そういう構造だ。

「ゆゆ!!ゆっくりうごくよ!!」
「たのしいね!!そらをとんでるみたい!!」

高いところから部屋を見渡すのは、とても気持ちがいいのだろう。
その様子を遠くから眺める偽母れいむも、嬉しそうに微笑んでいる。

…そんな和やかな日常も、今日で終わるわけだが。

僕は、くくっと笑いをこらえながらリビングに向かう。
そこでは、涙と汗がしみこんで皮がぐじゃぐじゃになった実母れいむが、ぴったりと箱に収まったまま
テレビに向かって泣き喚いていた。

「ゆーーーー!!!おがーざんはごごだよ!!!ゆっぐりへんじしてね゛!!」

テレビに映し出されるのは、幸せそうにゆっくりしている偽母れいむと自分の子供。
『ゆっくりしていってね!!』と朝目覚めてから、『ゆっくりねむろうね!!』と眠りにつくまでの一日。
それを一週間絶え間なく、強制的に見せられてきた。
箱にぴったり収まっているので、視線をそらすことも出来ず、目を閉じることも思いつかず…
ほとんど休まず偽母たちの一家団欒を見せ付けられたため、実母れいむの精神は確実に磨り減っていた。

「やあ!ゆっくりしてるかい!?」
「ゆっぐりでぎないよ!!!はやぐごごがらだじで!!おうぢがえる!!」
「まあまあ、そう言うなって。今から子供たちに会わせてあげるからさ」

僕はぐいっと、実母れいむが収まっている箱を持ち上げた。

「ゆ!?ほんとう!?はやくこどもたちにあわせてね!!」

と笑って見せるが、相変わらず涙と汗で酷い顔をしている。
僕としては、そんなこと気にならないぐらい面白いことがこれから始まるから、別にいいんだけど。
箱に入ったままの実母れいむを持って、僕はさっきの部屋に戻る。

そこでは、遊び終えた子れいむたちが偽母れいむの周りでゆっくりしていた。

「ゆ~、みんなでゆっくりしようね!!」
「おかーさんもいっしょにゆっくりしようね!!」

なんていう風にゆっくりしていたのだが、僕がやってきたのに気づくと一斉に視線をこちらに向ける。
僕が抱えているものの中身を見て、子れいむ10匹は何かを思い出したようだった。

「ゆゅ?……あ!おかーさんだ!!」
「おかーさんだ!!もうけががなおったんだね!!」

僕が床の上に実母れいむの入った箱を置くと、その周りに子れいむが群がってきた。
おー、ちゃんと自分の母親を覚えてたか。
餡子脳の癖に一週間も記憶を維持できるなんて、お兄さん感激したぞ。

箱の中の実母れいむの周りで、一斉にゆっくりし始める子れいむたち。
実母れいむも子供たちと一週間ぶりに再会できて嬉しそうだ。

「はやくここからだして!!こどもたちとゆっくりしたいよ!!」
「おにーさん!!おかーさんをゆっくりだしてあげてね!!」
「これからほんとうのおかーさんとゆっくりするからね!!」

それを無視してしばらく傍観していると、遅れて偽母れいむがやってきた。

「なにやってるの!?おかーさんといっしょにゆっくりしようね!!」

目の前の箱の中にいるれいむが実の母だと知らない偽母れいむは、自分がお母さんだと言い張る。
だが、子れいむはそれを聞き入れようとしない。

「なにいってるの!?れいむたちのおかーさんはこっちだよ!!」
「おねーさんはうそつきだね!!うそをつくひととはゆっくりできないよ!!」
「うそつきはあっちにいってね!!れいむたちはおかーさんとゆっくりするよ!!」

その言葉を聞いた瞬間、偽母れいむは固まってしまった。
子れいむたちに弾き飛ばされ、そのままころころ転がって壁にぶつかる。
自分こそが母親だと信じきっていたのだろう…強烈なショックを受けたようだ。

「ゆ…おかーさんはれいむなのに……れいむがおかーさんなのにいいいぃぃぃ……!」

ひとり、ぼそぼそ独り言を言っている偽母に、子れいむたちは見向きもしない。
すると…怒りに膨れた偽母れいむは、大きくジャンプして実母れいむが入った箱の上に飛び乗った。

「みんなのおかーさんはわたしだよ!!はこのなかのれいむは、にせものだよ!!ゆっくりりかいしてね!」
「ゆ゛っ!?なんでそんなごどいうの!?ほんとうのおかーさんはわたしだよ!!」

偽母と実母が言い争いを始める。
言葉では解決しないと感じた偽母れいむは、箱の上でどすんどすんと跳びはね始めた。

「にせものははこのなかでゆっくりしんでね!!れいむはこどもたちとゆっくりするよ!!」
「やめでよねえええええええええ!!!ゆっぐりでぎないいいいいいいいいいいい!!!」

箱の外から与えられる衝撃に、実母れいむは怯えてしまう。
しかし、それを黙ってみている子れいむたちではなかった。

「おかーさんをいじめるな!!にせものはどっかいってね!!」
「うそつきのにせものはゆっくりしね!!ゆっくりしね!!」

10匹が協力して偽母れいむに体当たり。
その強烈な攻撃を受けた偽母は、いとも簡単に落とされてしまった。
勢いのままごろんごろんと転がっていき、壁に当たってやっと止まる。

「どおじでええええええ!!おがーざんはわだぢなのにいいいいぃぃぃぃ!!!
 おにーざんもなにがいっでやっで!!ほんとうのおがーざんはわだぢだって!!!」

懇願する偽母れいむに、僕は優しく微笑みかける。
そんな僕の顔を見て何か期待したのだろう、偽母れいむの表情が一気に晴れた。
しかし…

「お前は偽者のお母さんだよ!!偽者の嘘つきはゆっくりどっかいってね!!!」

偽母れいむの期待を一気に打ち砕く、僕の言葉。
ゆっくりの口調を真似て、偽母れいむを蹴飛ばす。
かなりの勢いで蹴飛ばされた偽母れいむは、壁にべちゃっとぶつかって所々餡子をもらし…そのまま動かな
くなった。

「ゆぎゅ……おが……ぢゃん………なのに゛ッ…!」

まだ死んでいないが、これぐらいで許してやる。殺すのが目的ではないからだ。

「おにーさんありがとう!!これでゆっくりできるね!!」
「こんどはおかーさんをはこからだしてあげてね!!ゆっくりはやくしてね!!」
「そんなことより皆、向こうに楽しい遊び道具があるから、向こうでゆっくりさせてあげるよ!!」

一家の要望を華麗にスルーして、子れいむたちを遊具に案内する。
『ゆっくりできる』と甘い言葉で誘えば、ゆっくりなんて簡単に誘導できるのだ。

「ゆ!どこどこ!!ゆっくりしたいよ!!ゆっくりあんないしてね!!」
「れいむもゆっくりあそびたいよ!!」
「そう慌てるなって、ほら…これだよ」

僕が案内したのは、大きな水槽。子ゆっくりが100匹ぐらい入れるほどの大きさだ。
中には、子れいむたちお気に入りの“シーソー”が、大きな台の上に置いてある。
それを見て、子れいむたちは驚きの声を上げた。

「すごい!!いつものしーそーよりたかいよ!!」
「ゆっくりあそびたいよ!!おにーさん!!れいむをしーそーにのせてね!!」

水槽の中にあるため、自力でシーソーに乗ることは出来ない。
僕は子れいむを一匹ずつ掴んで、順番に水槽の中のシーソーに乗せてやった。

「ゆゆ!!たかいたかい!!すごいよ!!」
「わぁい!!おそらをとんでるみたい!!」

いつものシーソーより高い視線。部屋全体を見渡せる眺望は、子れいむたちにとっては新鮮だろう。
置き去りにしていた母れいむも箱に入れたまま持ってきて、水槽の近くに置いた。
さっきまでは、『箱から出して!』と騒いでいた母れいむだが…
楽しくゆっくりしている子供たちを見て、そんなことは忘れてしまったらしい。

「ゆゆぅ!!おかーさん!!れいむたちはゆっくりしてるよ!!」
「おかーさんもゆっくりしていってね!!」
「ゆ~ゆゆ~♪ゆゆゆっゆ~ゆ~♪」
「おかーさん、おうたじょうずー!!」「もっとうたってー!!」

母れいむはよほどご機嫌なのだろう、終いには下手糞な歌を歌い始めた。
箱を叩いて黙らせてやろうかと思ったけど、それより面白いものを見るために準備を始める。
僕は台所の水道に繋いだホースを引っ張ってきて、水槽の中にホースの口を投げ入れる。
そして、水道の栓を開くと…数秒経ってから、水槽の中に水が流れ込み始めた。

「ゆ!?おにーさんなにしてるの?」
「涼しくなるように、水槽に水を入れてるんだよ。暑いとゆっくりできないからね」
「ゆ~!すずしいね!!」「おにーさんありがとう!!」

母れいむの疑問に答えると、子れいむたちは口々にお礼を述べながらシーソー遊びを再開した。
この一家はまだ気づいていない…水の水位はゆっくりだが確実に上がっていることに。
そして、子れいむたちは気づいていない。自力でシーソーに乗ることが出来ない、ということは…
自力でシーソーから降りることが出来ないのだ。その現実に、こいつらは気づいていない。

しばらくすると、遊びつかれた一匹の子れいむが声をあげた。

「ゆゆ…つかれたからゆっくりやすむよ!!」

いつものようにシーソーから飛び降りようとするが、シーソーの下には水がなみなみと溜まっている。
このまま飛び降りれば、溺れ死ぬのは目に見えている。
子れいむの小さな餡子脳だって、それは理解しているのだろう。

「お、おにーさん!!れいむはゆっくりやすむよ!!ゆっくりおろしてね!!」
「まぁまぁ、そう遠慮するなって。ゆっくり遊んでいってね!!」
「ゆ…ゆっくりあそぶよ!!」

まだ体力に余裕があるのだろう、その子れいむは再び他の子れいむに混じってシーソーで遊び始めた。
左右の皿に飛び移るその動作は、ゆっくりにとっては重労働だ。
楽しい遊びだとはいっても、疲れるものは疲れる。
本当に疲れたら、お兄さんに頼んでシーソーからおろしてもらえばいい…
そう考えているから、子れいむたちは後先考えずに遊んでいられるのだ。

しかし、状況は時々刻々と変化する。
水槽の中の水位がどんどん上がっていき、シーソーのすぐ下まで迫っているのだ。

上下運動を繰り返すシーソー。
ついに、下に下がったほうの皿が水の中に沈むところまで、水位は上がってきた。

「ゆゆ!!おにーさん!!みずをいれるのをとめてね!!」
「おお、そうだな、このままだと溺れちゃうもんな。今止めるよ」

最初に危機を感じ取ったのは、水槽の外の母れいむだ。
それに応じて、僕は台所まで水を止めに行く。

…水位の上昇は止まった。しかし、子れいむたちの危機は終わっていない。

「ゆぶっ!ゆっくりそっちにとぶよ!!」
「ゆ!?こんどはこっちがしずんじゃうよ!!むこうにとぼうね!!」

何が起こっているのか、正確に理解しているのは僕と母れいむだけだ。

シーソーの上で10匹の子れいむが左右に飛び移る。
すると、重いほうの皿が下にさがって水の中に沈む。
その皿の上にいる子れいむは、当然反対側の皿に飛び移るだろう。
そうすれば当然子れいむの密集した皿のほうが重くなり、今度はその皿が水の下に沈んでいく。
以下繰り返し。エンドレス。

つまり、子れいむたちは休むことの出来ないシーソー地獄の中にいるのだ。

「ゆっ…ゆっ…!!つかれたよ!!おにーさんここからだしてね!!」
「れいむもつかれた!!ここからだしてゆっくりさせてね!!」

シーソーの上でゆっくりしてたら、水に沈んで永久にゆっくりできなくなる。
だからどんなに疲れても、子れいむたちは休むことが出来ない。

「またまた遠慮しちゃって!!そんなこと言わずに、ゆっくり楽しんでね!!」
「もうやだ!!おうぢがえる!!ここじゃゆっくりできないよ!!」
「つ…つかれたよ!!ここからゆっくりおろしてよ!!」

疲労の色を見せているが、まだ動けるらしい。もうしばらく観察することにした。

「おにーさん!!こどもたちがかわいそうだよ!!ゆっくりおろしてあげてね!!」

水槽の外にいる母れいむが、箱の中から抗議の声を上げる。

「じゃあ、子供たちが水槽の中でゆっくり出来る方法を考えようか」
「ゆ!?そんなほうほうがあるの!?」
「実は、ひとつだけシーソーの動きを止める方法があるんだ」

実現可能かどうかは別として、とにかくシーソーの動きを“止める”理論的な方法はある。
小学生でも分かる簡単なことだが、果たして母れいむにわかるだろうか?

「ゆっくり考えてね!その方法が分かるまで、子供たちはゆっくりできないよ!!」
「ゆっ…ゆっくりかんがえるからまっててね!!」

ゆっくりなんて、よく悠長な事を言ってられるな。
そうして考えている間も、子れいむたちの疲労はどんどん蓄積していくというのに…

「ゆ゛!!もうつかれたよ!!おにーさん!!ここからおろして!!」
「ゆふっ…んゆっ……もうどべないよぅ!!ここからたすけてえええぇぇぇ!!!」
「んふっ……ゆぐっ!!もうおろして!!ここじゃゆっくりできないよ!!!」
「ま、まってね!!おかーさんがゆっくりできるほうほうをかんがえるからね!!」
「おかーさん!!ゆっくりしないでたすけてねえっ!!」

疲労はもう限界まで来ている。でも、休息は許されない。
そんな子れいむたちを見て、母れいむは焦り始めた。
早くしないと、子供たちが水の中に落ちて溺れ死んでしまう。
アホ餡子脳でも、目の前の状況を見れば一発で分かるのだろう。

と、そこへ先ほど蹴り飛ばして壁に張り付かせてやった偽母れいむが、ニヤニヤしながら跳ねてきた。

「ゆ!?」

その表情を不思議がるのは実母れいむ。
一方子れいむたちは、藁にもすがる思いで偽母れいむに助けを求める。

「お、おねーざん!!ごごがらだじげで!!ゆっぐりでぎなひよ!!」
「ゆぐっ…ゆっ…!!もうっ…むりだよぅ!!おろじでよぅ!!」

10匹が10通りの言葉で、偽母れいむに助けを請う。
しかし、次に偽母れいむが吐いた言葉は、れいむ一家にとって信じられないものだった。

「ふん!!みんなはもうれいむのこどもじゃないから、たすけてあげないよ!!
 ほんとうはれいむがおかーさんなのに!!うそつくこどもはゆっくりしねばいいよ!!」

つい先ほどまで仲睦まじくゆっくりしていたはずなのに…
一週間共に過ごし、共に遊び、共に食べ、共に眠った。家族のように過ごしてきたというのに。
偽母れいむはあっさりと態度を変えて、子れいむたちを罵り始めた。
先ほど裏切られた恨みを、今度は自分が裏切ることによって晴らしているのだ。

「どおじでそんな゛ごどいうのおおおおおおおお゛お゛お゛お゛お゛お゛!??」
「ゆ゛っ!!ひどいよ!!こどもたちをゆっくりたすけてあげてね!!」

子供たちへの罵声に怒り心頭の実母れいむも、偽母れいむを怒鳴りつける。
しかし、それは偽母れいむの怒りを増幅させるだけだった。

「おまえがわるいんだよ!!にせもののおかーさんはゆっくりしね!!!!」

ばんばんと透明な箱に体当たりをする偽母れいむ。
ぎっちりと箱に収まっている実母れいむは、怯えながら我慢しているほか無かった。

「さて、そろそろ思いついたかな?シーソーを止める方法」
「…んゆ!?わ、わからないよ!!それよりおにーさん!!こどもたちをたすけてあげて!!」

箱の中の実母れいむに問うが、やはり思いつかなかったらしい。
うーん、そうかそうか。それなら仕方ないな。
と独り言をもらしながら、僕はシーソーの上で必死に跳びはね続ける子れいむたちに近づく。

「ゆ!?たすけてくれるの!!」「おにーさん!!ゆっくりおろしてね!!」
「いやぁそれがさ、お母さんは君達を助ける方法を考えてたんだけど、全然思いつかないんだって。
 お兄さんも君達を助ける方法分からないし。だから助けてあげられないよ…」

そうしている間も、疲労は溜まっていく。
ちょっとでもジャンプの加減を間違えようものなら、水の中へ真っ逆さまだ。

「なにいっでるの!!わかんないよ!!はやぐおろじで!!」「ゆっくりじないでおろじでね゛!!」
「だからぁ、お母さんが馬鹿なせいで君達は助からないんだよ!!
 お母さんはさっきから外で君達を見てるだけで、全然助けてくれないよね!!馬鹿なお母さんだね!!」

ぷんぷん、とゆっくりの真似をして怒ってみせる。
疲労の蓄積した子れいむたちに正常な判断が出来るはずも無く…

「おっ…おがーざんのせいだっ!!れいむたちはおがーざんのせいでゆっぐでぃでぎなび!!」
「ゆぐっ…じね!!おがーざんなんがゆっぐりじね!!たすけでぐれないおがーざんはしね!!」
「ゆぐぐぐぐ!!どおじでそんなごどいうのおおおおおおおおおおお゛お゛お゛お゛!!??」

子れいむたちによる一方的な罵倒が始まった…と思ったそのときだった。

ボチャン!!

「ゆばっ!!みずはやだよ!!はやぐだずげでよおおおおおおおお!!!」

ついに、疲労の限界に達した子れいむが一匹落ちてしまった。
最初の一匹が落ちると、もう雪崩のように次々と子れいむが水の中に落ちていく。
体力が残っているため、何とか浮いていられるが…だんだん水が染み込んでいき、ぶくぶくと醜く膨らむ。

「いやだあああああああああ!!!じにだぐないよおおおおおおおおおお!!!」
「おがーじゃん!!!ゆっぐりじでないでだずげでよおおおおおおおお!!!」
「ゆっぐりじね!!おがーじゃんのぜいでゆっぐりできながっだよ!!!ゆっぐりじね゛!!!」

まだ母親を罵る体力は残っている。が、それも最初のうちだけだ。

「いやあああああああああああ!!!おにーざん!!ごどもをたずげで!!!」
「でも、君が方法を思いつかなかったから助けられないんだよ!!」
「どぼじでえええええええ!!!おねがいだがらだずげでよおおおお゛お゛お゛!!」
「方法が分からないなら無理だよ!その方法をれいむは思いつかなかったんだよ!
 だから、子供たちが死んじゃうのはれいむのせいだよ!!ゆっくり後悔してね!!」
「ゆギゃああああああアアアああああああああああ゛あ゛あ゛あああああああ゛あ゛あ゛!!??」

狂った絶叫と共に、バンバンと箱の中から体当たりをかます実母れいむ。
箱の中に閉じ込められていては、水槽に近寄って励ますことも出来ない。
実母れいむは、絶望の底に叩き落された。

「ゆ……たず…げで…」「じにだぐ……ないよ…」

ぶよぶよになった皮が破れて餡子が漏れ出し、力尽きた子れいむから水槽の底に沈んでいく。

「あ……あぁぁぁ……れいむのっ……れ゛い゛む゛の゛ごどもが……あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛…!!」

もう悲鳴を上げる体力も無い実母れいむ。
自分がこの家を自分達の家にしようとしたばっかりに。
自分が柵に挟まって、この人間に見つかってしまったばっかりに。
子供たちは……皆死んでしまった。

半年前、『ゆっくりちていってね』と産声を上げて生まれた10匹の赤ちゃん達。
最初は苦労させられたけど、何とか母親として一家を引っ張ってきた。
母親である自分が食料を集めて、巣まで運んで食べさせてあげたこともあった。
夜になれば一箇所に集まって、子守唄を歌ってあげたりもした。

でも、今まで頑張って育ててきた子供たちは…もう、いない。

その隣では…

「ゆゆ!!みんなしんだね!!うそをつくからいけないんだよ!!
 ほんとうのおかーさんをにせものっていうからだよ!!あのよでゆっくりはんせいしてね!!」

きゃっきゃと笑うのは、偽母れいむだ。
自分に屈辱を味わわせた子れいむたちの死を、心の底から喜んでいる。

「ゆふぅ…これでやっとゆっくりできるよ!!」

「……」

僕は、無言で透明な箱の鍵を開けた。

箱の中から無言で出てくる、実母れいむ。

あの世の子供たちをあざ笑う偽母れいむに視線を向けると…








「……ゆっぐりしねええええええええええええええええええええええ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」







(終)



あとがき

子れいむを期間限定で養子に出してみた!!

あと、ちょっと長すぎるので半分ずつに分けました。







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最終更新:2009年01月07日 12:06
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