ゆっくりいじめ系2922 決死のゆ虐

決死のゆ虐





「すーやすーや」

一匹のゆっくりれいむが膝の上で気持ち良さそうに寝息を立てている。
俺はそのれいむの頭に手を載せながら、沈痛な面持ちで、一度大きく
溜息をついた。

「俺は間違ってたんだろうか」

呟き、空を見上げる。
見上げた空に星は見えなかった。









話は二週間前に遡る。
二週間前、俺は防音完備の自室で、一匹のゆっくりれいむと対峙して
いた。

「ゆっくりしていってね!」
「ヒャア! 我慢できねぇ虐待だぁ!」

そう、俺は虐待お兄さんだった。
俺の言葉の意味がわからずに首を傾げるれいむに向かってチェーンソ
ーを振り下ろす。

「すっぱりー!」

チェーンソーの刃は何の抵抗もなくれいむを両断し、フローリングの
床を削りオガクズを部屋中に撒き散らした。

「ふぅ。今日もいい虐待をしたぜ……痛っ」

チェーンソーにこびり付いた餡子を舐めて格好付け、舌を切りながら
そう呟く俺。
舌から伝う血を拭っていると、背後から信じられない声が上がった。

「ゆふー。しぬかとおもったよ」

そのゆっくりした声に俺はすぐさま振り返る。
するとそこには、もみ上げで冷や汗を拭っているれいむの姿が!
俺は思わず叫んだ。

「貴様何故生きている?!」

するとれいむはニヒルな笑みを浮かべながらこう答えた。

「ずんぼーがなければそくしだったよ!」
「れいむは帽子被ってないでじょーーー?!」
「ゆっ、れいむうっかりさんだね」

てへっと舌を出し、もみ上げで頭をこつんと叩いてなにやら角が丸い
お星様を出すれいむ。
俺はそれを見てこのれいむが只者ではない事を感じ取った。
だが、いつも簡単に虐待されてしまうゆっくりに飽き飽きしていた所
であった俺は、むしろ望むところだと思い、その日かられいむとの生
活が始まったのだ。
チェーンソーという神すらも虐殺可能な兵装を用いても虐待できなか
った俺は、道具ではなくシチュエーションで虐待する事にした。

水の中。

「ぶーくぶーく。おみずさんきもちーよ!」
「どぼじで溶けないのーーー?!」

れいむは水槽の中で見事なバタフライを披露した。

空の上。

「ゆわーい! おそらをとんでるみたい!」
「どぼじで本当に飛んでるのーーー?!」

森で一番高い木のてっぺんから放り捨てられたれいむはりぼんをぱた
つかせて空を滑空した。

火の中。

「こんがりー♪」
「どぼじで日焼けで済むのーーー?!」

紐で吊るして炙られたれいむはこんがり小麦肌になった。

雷を浴びせたり。

「ふぃーばー!」
「しーびしーび!」
「もっとてんこをしびれさせてね!」
「バチィ! はゆっぐりでぎまぜんー?!」
「どぼじで喜んでるのーーー?! あとお前ら誰だーーー?!」

いくさんの雷を浴びたれいむは肩こりが治り(肩って何処だ)、更に
何処からか沸いた二匹のゆっくりと仲良くなっていた。

地震とオヤジを使ったり。

「ゆわーい! ゆっくりかったよ!」
「どぼじで大門使って負けるのーーー?!」
「ちょううけみしかやらないからかんたんによめたよ!」

コマ投げの直前にジャンプされり対空をしゃがんで避けられたり超受
身と同時にバックステップから突進乱舞を食らわせたり、散々な結果
に終わった。
そして、

「ば、万策尽きた……」

俺は旧型のやたらとデカくて邪魔なPS2の前で膝をついた。

「俺にはれいむを虐待する手段は……無い……」

そう呟き、瞳に涙を滲ませる。
悔しかった。己の非力さが。恥ずかしかった。ゆっくり一匹虐待でき
ない癖に虐待お兄さんを名乗り世間から白い目で見られた事が。
俺は所詮、饅頭に踊らされた哀れな犠牲者の一人に過ぎなかった。そ
れを痛感させられてしまったのだ。たとえ虐待お兄さんであったとし
ても、虐待お兄さんという名の貧弱一般人だったのだ。
れいむは、orzになって落ち込む俺の周りをうろうろしながら困った
ような顔で言ってきた。

「ゆ、ゆ? おにいさんげんきだしてね? おにいさんがおちこんで
るとれいむかなしいよ」

そして俺の頭に優しくすーりすーりする。


 そ の 時 、 俺 に 電 流 走 る !


「そうか! その手があったか!」

俺はがばっと起き上がり、右手で固くガッツポーズを取る。
正しく天啓。俺の脳内を先のれいむの言葉が駆け巡る。
『おにいさんがおちこんでるとれいむかなしいよ』
れいむはそう言い、本当に哀しそうな顔をしていた。
そうだ、俺が落ち込めばれいむはゆっくりできなくなる。
なら、俺が酷い目に会えば会うほどれいむはゆっくりできなくなるは
ずだ!
俺はその恐るべき虐待法に戦慄を覚えた。なんて斬新で画期的な虐待
法なのだろう!
ほの暗い絶望の淵で見つけた一条の光。そして、その光が己の破滅へ
と向かう事等知る由も無いれいむは、俺が元気を取り戻したのをまる
で自分の事のように喜んだ。

「ゆわーい! なんかおにいさんがげんきになったよ!」






それから、俺の天国かつ地獄が始まった。

「サラリーマンやめて少年ジャンプに連載を始めたがキツすぎるよ!
高校通いながらこんなの続けられる奴は人間じゃねぇよ! 俺なんか
血尿が出た!」
「ゆっくりやすんでね! おいしゃさんのいうこときいてね!」

れいむは血尿たれながしで原稿に向かう俺の背後で必死に跳ね上がり
ながらそう訴えた。
俺は無視した。

「ヤクザとの麻雀で5回連続倍プッシュしてきたよ! 勝てたからよ
かったものの下手したら死んでた! ストレスで胃に穴が開いちゃっ
たよ!」
「むちゃしないでね! やくざさんだってめんつがあるんだよ!」

恐怖に失禁しながら胃を抑えて蹲る俺に、れいむは瞳から涙を零しな
がらすーりすーりをした。

「シャドウゲイトを攻略法みないでクリアしようと思ったけどできる
わけないだろこんなの! すぐ死ぬわ!」
「でいぶがおじえであげるっでいっでるのに……」

テレビに映るしにがみに向かってコントローラーを投げつける俺の横
でれいむが寂しそうな顔で呟いていた。

「何の気の迷いか腕に公衆トイレって刺青をしてみたよ! もう取り
返しがつかないね!」
「どぼじでぞんなごどじだのーーー?! おにいざんのたまのおはだ
がきずになっぢゃっだでじょーーー?!」

れいむは公衆便所に涙して叫びを上げた。

「えぇい! こんなウマい飯が食えるかー! 今日から俺の飯はイヌ
のエサでれいむの飯は毎日フレンチのフルコースだ!」
「やべでねーーー?! おにいざんおながごわじぢゃうでじょー?!
ぞれにでいぶもおにいざんどおんなじごはんがいいよーーー?!」

れいむは哀しそうな顔で、地面に這いつくばってクソマズイ犬のエサ
を貪り床まで舐めだす惨めな俺の姿を見てこの世の終わりのような表
情を浮かべた。

「ゲボォ! よっしゃ! ケツからだけじゃなく口からも血がでるよ
うになったぞ!」
「ゆ゛わ゛ぁーーーーー!!! おにいざんがーーーーー!!!!!
びょういんがぎでねーーーーーーー?!?!」

口から血を吐きながら異様なテンションで笑う俺を見て、れいむは混
乱し意味のわからない言葉を吐きながら、盛大に泣いた。



そして、昨日。

「四時間かけて掘った穴を四時間かけて埋める仕事は身体はもちろん
精神にクる……刺身の上にタンポポを乗せる作業やドモ掘るンリンク
ルの垂れてくる雫を一滴ずつ観察する仕事にも似た虚無感に襲われて
……凄くイイ……!」

俺は身も心もボロボロになり、愛用の椅子に腰掛けれいむを膝の上に
乗せながら真っ白に燃え尽きていた。

「もうむりじないでねー?! おにいざんじんぢゃうよー?!」

れいむはゆっぐえぐと呻き声を漏らしながら俺に向かって訴える。
長く一緒にいたからわかる。それは間違いなく俺の為を思った言葉だ。
俺はふっと微笑んで、優しく答えた。

「だが断る。俺今むっちゃ充実してるからね!」
「どぼじでーーー?! ぢっどもゆっぐりでぎでないのにーーー?!」

そして俺は、れいむが寝るまでの間ずっと俺の事を心配し労わろうと
するれいむの要求を悉く却下し続けた。
そして、そのまま日付が変わり、現在に至る。

「俺は間違ってたんだろうか」

ぼそっと呟き、空を仰ぐ。
空にはもう星は見えない。……いや、
もう俺には空すら見えない。
空に向かって伸ばした手の、輪郭くらいはなんとかわかる。
その手も、やがて伸ばしているのが辛くなり、意思とは関係なく膝元
まで降りてしまう。
俺は心の中でもう一度自問する。
俺は間違ってんだろうか。
れいむに拘らず、他のゆっくりを虐待すればよかったんだろうか。
いや、そもそもれいむに出合った時点で虐待をやめてしまえばよかっ
たのだろうか。
いやいや、そもそも虐待なんて何の得にもならず、世間に誇れもしな
い趣味を持たなければよかったのだろうか。
……いや――




そして、朝日が昇る。
膝の上に寝ていたれいむが、身体をぐにょりと伸ばしながら欠伸をし
て、朝のゆっくりしていってねをする。そしてその場でくるりと振り
かえると、俺にもゆっくりしていってねをしようとして……俺の異常
に気付き、顔色を変えた。

「おにいさん、おにいさん……おにいさん!」

俺は、れいむのその顔を見てニヤリと笑ってやりたかったのだが、
残念ながら、俺にはもう表情筋を動かす力もなかった。
俺は心の中でだけ、蒼白な顔で俺を見つめるれいむに向かって指差し
て爆笑した。
そして、最後に。最期に。
声にならない声を上げた。


――やはり、私は



間違っていなかった……







が、ま……
















彼の体に縋りついて、れいむは決壊したダムのように、とめどない涙
を流しながら叫んだ。

「ゆ゛あ゛ぁーーー!!! お゛に゛い゛さ゛んがずっどゆっぐりじ
ぢゃっだーーーーー!!!!!」

そこには彼が求めてやまなかった、ちっともゆっくりできていないれ
いむの姿があった。……最も、もう彼にはそれを見ることができない
のだが。



こうして彼は、れいむに見守られて安らかに息を引き取った。
だが見てください、この嬉しそうな死に顔を。

「おにいざーーーん! おめめあげでよーーーーー!! おねがいだ
がらゆっぐりじでーーーーーーーー!!!」

あなたは、こんな顔で死ねますか?


おわり


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最終更新:2011年07月28日 12:36
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