ゆっくりいじめ系223 ゆっくり記念日(後編)

「ゆっくり記念日」(後編)


(7月22日 作者により一部改訂)
(12月1日 作者により一部改訂)



「そぉい!!!」


ベシャアァ!!!

僕が腕を大きく振り下ろすと、床には円形の餡子の跡が残った。
皮が裂かれて飛び散ったのか、ところどころ肌色の塵が混ざっている。
残り11匹となったゆっくり一家は最初ぽかーんとしていたが、徐々に状況を把握し始めた。

「ま、まりざのあがぢゃんがああああああああああぁああぁぁ!!!!!」
「ありずの゛!!ありずの゛がわいいあがぢゃんがああああああああぁぁぁぁぁ!!」

2つの箱が仲良く震えている。いい響きだ。
残り9匹の赤ちゃんゆっくりも、その目に焼き付いた光景に怯えきっていた。

「どぼじで!!どぼじでまりじゃを!!」「あっぢいっで!!おにーざんはゆっぐりぎえでね゛!」
「いぎゃああああああぁぁぁぁ!!!」「まりじゃがじんじゃっだあああああぁぁぁぁ!!!」

「でもしょうがないじゃん。君達ゆっくりしたかったんでしょ?
 その代わりにまりさがゆっくりできなくなったの。だからこれは君達のせいだよ!!」
「ゆ…!?なにいってるの!!へんなこというとおこっちゃうよ!!」
「君達9人は、多数決で“自分達だけゆっくりする”って決めたでしょ?
 だからあのまりさはゆっくり出来なくなっちゃったの!かわいそうだよねぇ…しくしく♪
 まりさも一緒にゆっくりしたかっただろうに、“君達が決めた”せいでゆっくりできなくなっちゃった!!」
「ゆぐっ!!ゆわあああああ゛あ゛あ゛あ゛あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

さも残念そうに、僕は餡子の爆心地を見下ろしながら言う。
赤ちゃん9匹は最初、自分のしたことの重大さに気づいて発狂したような声を上げていたが…
次第に沈黙を取り戻し、相変わらず何か言いたげだが…無言のままお互いを見つめ合っている。

「さーて、次はどの子がゆっくりできなくなるのかなぁ…この子にしよう!」

適当に赤ちゃんありすをつまみ上げフォークに突き刺す。もちろん死なない程度に、だ。

「ゆぎゃああああああぁぁぁぁ!!いだいいだいいだい!!ぬいでおおおおおおおぉぉぉぉ!!!」

用意したカセットコンロに火をつけて、フォークに刺さった赤ちゃんありすを火あぶりにしていく。

「ゆんぎゅああああああぁぁぁおおおあお!!!!あづぐでゆっぐりでぎゅないいいぃぃぃぃ!!!」
「ふふふ、ゆっくり焦げてね!ありすたちがお兄さんの家を荒らすからいけないんだよ!」
「なんでえええぇぇぇぇ!!!ごごはありしゅたぢのおうdいだあああああづいいいいいぃぃぃぃ!!!」

不適切な発言があったので、もっと炎に近づけてやった。
おっといけない。あんまり炎に近づけると餡子まで焦げて、不味くなっちゃうね。
丁寧に丁寧に、餡子が焦げないように、皮がパリパリになるように焼いていく。

「おねがい!!がわいい゛あがちゃんをおろじであげで!!やぐのやめでね゛!!」

箱の中から汗や涙など数種類の体液をばら撒きながら、まりさとありすが懇願してきた。
それを聞いて、僕は一旦赤ちゃんありすを焼くのを止めて、フォークに刺さったまま床に押し付けた。

「ゆべっ!!」
「じゃあこれからお兄さんが出す問題に答えてね!答えられたら焼くのを止めてあげるよ!」
「ゆ…わかったよ!ありすといっしょにかんがえれば、どんなもんだいでもこたえられるよ!!」
「そうだよ!!とかいはのありすはものしりだから、かんたんにこたえちゃうよ!!」
「「だからさっさともんだいをだしてね!!」」

その自信がどこから出てくるのか、頭を切り開いて探してみたい。
ま、それは機会があったらと言うことで。

「では問題です。『3+3-す=?』はなーんだ?ゆっくり考えてね!」

僕は再び赤ちゃんありすを火あぶりにし始めた。

「ゆ!!ゆっくりしないでかんがえるよ!!えーと!さん+さん…」
「ありすもかんがえるからね!!サン+サンが…」

両親がない頭を必死に使って考えている間に、赤ちゃんありすの接地面が焼き終わった。
次は背中だ。背中、頭頂部、左右、最後に顔面を焼くのが美味しい焼き方なのだと教わったことがある。
当時はまだこのゆっくりたちを愛していたから、焼くなど恐ろしくてできなかったが、今は…

「ゆぎゃあああああぁぁぁぁぁ!!!もうやべで!!ありずじんじゃうううううぅぅぅぅ!!!!」

この悲鳴を聞くたびに、胸がキュンってなるから不思議だ。
特に、火に近づけた瞬間の声がたまらない。僕は一旦、赤ちゃんありすを火から遠ざけた。

「ゆ?たしゅけてくれるの?」
「さて、お母さん達が考えてる間に、ありすもお勉強しようか…質問です。ここは誰のおうち?」
「ゆ!!ここはありしゅたちのおうちだyうぎゅええええああ゛あ゛おあおあ゛お゛あおあおあお!!」

不正解だったのでペナルティを与える。いい具合に焼けているので、香ばしい匂いが漂ってきた。
こうして正解するまで焼き続ければ、賢い赤ちゃんになる頃には全身丸焦げになっているだろう。

「もう一回聞くね!ここは誰のおうち?」
「ゆぎゃあああああああ!!!ごごば!!!ありじゅのうんげtrがえおうろあおああああ!!!」
「もう一回聞くね!ここは誰のおうち?」
「どうぢで!?ごごはありじゅのおうぢなあtgじゃじgじおあえじgじおあいじじょr!!!!」
「もう一回聞くね!ここは誰のおうち?」
「うわああぁぁぁぁぁぁ!!!ごごはありじゅだちのおうぢおあえじおrgじおあえじおgじお!!!」

この悲鳴があれば、同じ質問を何回しても退屈しない。
赤ちゃんありすの目に浮かぶ涙は、流れ出る前にジュウっと蒸発する。
何十回同じ質問をしただろうか…赤ちゃんありすはやっと正答してくれた。

「もう一回聞くね!ここは誰のおうち?」
「ゆぶっ…ごごは!…おにーしゃんのっ!…おうちでずううぅぅぅ…」
「はい正解です!!ご褒美に顔面を焼いてあげるね!」

そう言って、顔面から炎に突っ込んでやる。
赤ちゃんありすはもう声も出せず、代わりに両親ゆっくりの悲鳴が聞こえてきた。

「ゆぎゃあああああああぁぁぁ!!!おにーざんそれいじょうやめでえええええぇぇっぇ!!」
「さっきの問題の答えはわかった?」
「わがらないよおおおおぉぉぉ!!!ぞんなのいいがらあがぢゃんやがないでえ゛え゛え゛!!!」
「それじゃダメだな。赤ちゃんは助けられないね!」

そのまま赤ちゃんありすの顔面を焼き続ける。そして…

「えびゅえあおあおあいりいりいいいいい!!!ゆっぐりぢだがっだおおおおぉぉぉ……!!!」

赤ちゃんありすは、ぴくりとも動かなくなった。“ゆっくりの丸焼き”の完成である。

「上手に焼けましたー♪」
「あがぢゃんがあああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ありしゅのおねーたんがあああああぁぁあ゛ぁぁ!!!」
「まりしゃのいもうどがどうじでええええ゛え゛え゛ぇぇぇぇぇ!!!」

一家の悲鳴をBGMに、僕はご機嫌な口笛を吹きながらゆっくりの丸焼きを包丁で真っ二つにする。
それをひとつずつ、親ゆっくりが収まっている箱の穴から中に入れてやった。

「ほれ、お腹すいただろう。食べていいよ!」
「ゆぎゃあああぁぁぁ!!いらない゛!!!あがぢゃんはだべないよ゛!!!」
「とがいははじぶんのごどもはだべないんだよ!!ゆっぐりごごがらだじで!!」

丸焼けになった子供には見向きもせず、僕に訴えかけてくる。
まだ理解できていないようなので、僕は身の程を教えてやることにした。
もちろん、赤ちゃんゆっくりには聞こえないように…である。

「それを食べないと他の赤ちゃんを殺すよ。それとももっと食べたいの?くいしんぼさん♪」
「ゆっ!このこだけたべるからね!!ゆっくりたべるから、ほかのあかちゃんはやかないでね!!」

まりさとありすは、目に涙を浮かべながら赤ちゃんの丸焼きを食べ始めた。
それを見て周りの赤ちゃんが何も言わないわけがない。

「どうじで!!どうじでおがーじゃんがおねーじゃんをだべるの!!ゆっぐりやめで!!」
「ひどいよ゛!!だべじゃうなんでひどいよ゛!!」

「ゆぐっ…ごめんね……あのよでゆっくりしてね…!!」

必死に“元”赤ちゃんを飲み込もうとするまりさとありすに、赤ちゃん達の声は届いていない。
あの世へと旅立った自分の子供に、繰り返し謝りながら飲み込んでいく。
精神的には自分の赤ちゃんなど食べても美味しくないのだろうが、僕が料理上手だったおかげで
身体はすんなりと焼き饅頭を受け入れている。

「ゆ゛っ!たべおわっだよ゛!!もうひどいごどじないでね゛!!」
「ゆっぐりごごがらだじでね゛!!あがぢゃんどゆっぐりざぜでね゛!!」

食べ終えた両親は、涙目で僕に訴えてくる。
最後の準備もあるので、一旦まりさとありすを箱の外に出してやった。
途端に赤ちゃん達へと駆け寄っていくのだが…赤ちゃん達はそんなまりさとありすから離れるように後ずさりした。

「ゆ!?どうしたの!?おかーさんたちたすかったよ!!」
「もうこわくないよ!!いっしょにゆっくりしようね!!」

そう呼びかけても、赤ちゃん達は逃げていくばかり。
理由?そんなの聞くまでもないだろう。

「こどもをだべるおがーさんどはゆっぐりでぎないよ!!ゆっぐりどっかいってね!!」
「もうおがーざんはおがーざんじゃないよ!!ゆっくりしんでね!!」
「どうじで!!どうじでぞんなごどいうの゛ぉ!!おがーじゃんがだじげであげだのに゛いぃ!!!」
「ひどいよ゛!!がんばっでだずげであげだんだよ゛!!??」

両親にしてみれば、他の子を助けるために既に死んでいた子を食しただけなのだが…
それを見ていた赤ちゃんの目には、自分の子供を食べる酷い親という風に映ったのだろう。
僕はそんな親子のやり取りを聞きながら、最後の準備を終えた。

床に置かれているのは、空っぽの水槽と大きなバケツ。
バケツのほうには溢れんばかりの水が入れてある。

「さぁ、悪いお母さん達は放っておいて、こっちでゆっくりしようね!!」

パンパンと手を叩いて8匹の赤ちゃんゆっくりを呼び寄せる。
『ゆっくり』という言葉に誘われた赤ちゃんを、一匹ずつ水槽に入れてやった。
いつもなら文句を言うところだが、大き目の水槽だからなのか今回はちょっと様子が違った。

「これでゆっくりできないおかーさんからはなれられるね!!」
「ひどいおかーさんとさよならできゆよ!!」
「わりゅいおかーさんはどっかきえてね!!」

水槽の中に収まった赤ちゃん達は、逆に喜んでいる。
よっぽど子供を食べた母親が許せなかったのだろうか。ここまで来ると両親がかわいそうだ。

「よいしょっと!」

僕はバケツを持ち上げて、少しずつ水槽に水を入れていく。
途端、中の赤ちゃんゆっくりたちが大声で騒ぎ始めた。

「おにーさん!!みずをいれないでね!!ゆっくりできなくなっちゃうよ!!」
「ここじゃゆっくいできないよ!!ゆっくりここからだちてね!!」

異常を察知したのは、子供達だけでなく親もだ。

「みずをいれないでね!!みずをいれたらあかちゃんがゆっくりできないよ!!」
「ありすのかわいいあかちゃんをいじめないで!!ゆっくりそこからだしてあげてね!!」

あれだけ罵倒されたのに、まだ赤ちゃんが恋しいらしい。
そこまで言うなら仕方ない、助かる可能性を提示してやろうじゃないか。
僕は水を入れるのを止めて、まりさとありすを見下ろした。

「それじゃまりさとありすがバケツの中に入って水を全部飲んでね!!
 そうすれば水槽に水を入れられなくなるから、赤ちゃん達は助かるよ!!」
「ゆぐっ!!…ゆゆゆ……!!」

唸りながら考え込む、まりさとありす。
バケツの中に入る…それは、自分の身体が水に侵されるのに耐えながら、水を飲まなければならないということだ。

「おかーしゃん!!ゆっくりたちゅけてー!!」
「がんばってね!!がんばってありしゅたちをたすけてね!!」

さっきまで親を罵りまくっていた赤ちゃん達も、手のひらを返したように言うことが変わった。
そういう自分の言動の矛盾に、ちょっとは違和感を感じないのだろうか…?

「ゆ!!わかったよ!!まりさはみずをのむよ!!」
「あ、ありすもてつだうよ!!まりさだけにつらいおもいはさせられないよ!!」
「おー、素晴らしいね、その子を想う気持ち。じゃあ今からバケツに入れてあげるけど…
 もしどっちかが『助けてー!』と言ったら僕は君達を助けてあげる。その代わり、残った水は全部あの水槽の中だ」

僕が指差した水槽の中では、8匹の赤ちゃんゆっくりが震えてこっちを見ている。
そんなまなざしが、まりさとありすの決意を後押しした。

「わかったよ!!ぜったいあきらめないよ!!ゆっくりまりさをバケツにいれてね!!」
「そのつぎはありすのばんだよ!!ありすもバケツにゆっくりいれてね!!」

2匹の要求どおり、僕は2匹をバケツの中に入れてやった。
そんなに喉が渇いていたのだろうか、必死に水を飲み始める。
最初は順調だ。まだ水が身体に染み込んでいないからな。

「ゆっきゅりがんばれー!!」「がんばれおかーしゃん!!」

水槽の中の子供達も応援している。その声援を受けて、2匹の親はさらに必死になるのだ。
必死になったところでどうにかなる量じゃないけどね。

「ゆっぷ!あっぷ…ぐ、ぐるじいよ…だず、…な、なんでもないよ!!」

いつものクセで助けを求めそうになるありす。しかし、寸前でその言葉を止めた。
バケツを覗いてみると、水位が1センチぐらい下がっている。
なかなか根性があるじゃないか。だが…無駄な抵抗だな。
その証拠に、2匹の身体は水が染み込んだせいでぶよぶよになっている。
水分を含んだ部分が膨らんでくるのも時間の問題だ。

「ゆあっぷ!!まだ…のめるよ!!」「ゆっぺ!…のむよ…がんばるよ…!」

問題はそれだけではない。そもそも2匹の身体の大きさからして、数リットルの水を飲みきれるわけがないのだ。
腹が膨れて飲めなくなるのが先か、バケツの中で餡子を吐いて死ぬのが先か、ギブアップするのが先か。
どう転んだとしても、僕にとってはどうでもいい。

…と思っていたが、このまま待っているのも退屈なのでちょっと手を加えることにした。

「それ!」

僕はまりさの頭を抑えて、水底に押し込んでやった。
びくびくと震えたところを上げてやると、苦しそうに呼吸し始めた。

「ゆっぷ!!おにーさん…やめてね…くるしくてしずんじゃうよ…!」
「止めないよ。止めるとお兄さんが楽しくなくなっちゃうし」
「や、やべで!まりざだのじぐない!ゆぶぶ…ぶはっ……いやっ…やめ゛!」

同じようにありすも水の中に押し込む。交代交代に押し込むと、交互に悲鳴が聞けてなかなか楽しい。

「おいおい、さっきから水が減ってないぞ。本当に子供を助ける気、あるの?」
「ゆっぶ!だ、だじゅげるよ゛!!だがらじゃまじないでね゛!!」
「あぶぶ…ごくんっ…ごくんっ!!まだまだのめるよ゛!!」

水槽の子供達は、まだ期待している。その顔を見れば分かる。
このままいけば自分達は助かる、ゆっくりできる…そういう期待の顔だ。最高にイラっとさせてくれる。
…僕は、その希望を打ち砕くことにした。

「そーれ!」
「ゆぶぶびゃばがああばああ……!!」

ありすを思い切り水の中に押し込み、バケツの底に押し付ける。
痙攣がだんだん強くなっていくが、酸欠では死なないのでそのままにしておく。
僕の手にありすの身体がぶよぶよ膨らむ感覚が伝わってきて…僕はその手を離した。


「ゆばはあああ、はあぁぁ、もうだめだよ!!たずげでぇ!!!」


その瞬間、あたりがしんと静まり返った。

「わかった!助けてあげる!」

僕はにこっと微笑んで、2匹をバケツから引き上げた。
既に至るところが水を吸い込んでぶよぶよに膨らんでいる。よくここまで耐えたもんだ。

「さて、約束どおり…」
「まってね!!まりさは『たすけて!』っていってないよ!!まだみずをのめるよ!!」
「勘違いするなよ。僕は『君達を助ける』って言ったよね。『君達』ってことは、まりさとありす2人だよ。
 別々に助けるなんて、一言も言ってないよね!ゆっくり理解してね!」

僕の説明をゆっくり理解した2匹は、その場で固まってしまった。
バケツを持って水槽のそばに立つと、赤ちゃんゆっくりたちが潤んだ目で僕を見つめる。

「あーあ、役立たずのお母さんのせいで、君達はゆっくりできなくなっちゃうね!!」
「お、おにーさん!!ゆっくりやめてえ!!」
「おがーざんのばがー!!どうじてあぎらめるの゛!!もっどがんばっでよ゛!!」
「ゆっくりみてないで!!おにーさんをやっつけてよ゛!!」

はっとした親2匹は、僕の元へ来ると脚に突進してきた。
僕をどうにかして倒して、水槽に水を入れさせないようにするため…自分に出来る最後の努力。

「ゆっくりやめてあげてね!!あかちゃんをたすけてね!!」
「ありすのかわいいあかちゃんをいじめないで!!」

だが、自分が敵う相手かどうかを考える頭はないらしい。
僕はにこにこしながら、2匹を適当に蹴り飛ばした。

「ゆべっ!!」「ゆっぎゅり!!」
「さーて、赤ちゃんたちとは永久にさようならでーす!!はい、水投入♪」

ザバアアァァァァン!!

バケツの中の水が、水槽を満たした。
波に飲み込まれながらも、赤ちゃんゆっくりたちは必死に水面を目指している。

「ぷはっ!た、たちゅけてよぉ!!じにだぐないよぉ!!」

「無理無理♪だって、君達のお母さん君達を助ける気ないもん!」

「ゆびゃああああぁ!!じぬぅ!!みずはいやあああ゛あ゛あ゛!!」

「本当に助ける気があったら、バケツの水ぐらい全部飲めちゃうのに!」

「おがーぢゃああぁぁぁん!!みでないでだじゅげでよおおおぉぉ!!」

「今だって、ほら。本当に助ける気があるなら僕に頼めばいいのに。『水槽に入れて!』って」

「おがーじゃんのばが!!ゆっぐりじでないでだじゅげでええぇぇぇぇ!!!」

「お母さん達は君達を助けようとしない、酷いお母さんだね!!」

「おがーしゃんなんかしんじゃえ!!だじゅげでぐれないおがあぢゃんはゆっぐりじね゛!!」


水槽の中の子供達の罵る声。『しね』『ばか』と際限なく母親に降り注ぐ。
水に飲み込まれて苦しむ様を見て、まりさとありすは驚愕の表情で固まっていた。
動くのは口だけ。その口が、絶望の悲鳴を奏でる。

「あ…あぁ…ああああぁぁぁっぁぁぁあ!!!!」
「ゆがあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

数分後…赤ちゃん達は次々と水槽の底に沈んでいき…

「ゆぶ…もっどゆっぐりじだがったよ゛お゛お゛お゛お゛ぉぉぉ……!!!」

最後まで、母親を憎しみの目で見つめながら…最後の赤ちゃんが水底に沈んだ。



赤ちゃんの壮絶な最期を見届けて、なお微動だにしないまりさとありす。
水槽に餡子屑を、じっと見つめている。

「どうして…どうしてこんなことをしたの…!?」
「ここまでされてまだ分からないの?僕は君達が昨日したことを怒ってるんだよ。
 部屋を滅茶苦茶にしたでしょ?花瓶割ったでしょ?土で汚したでしょ?」
「ひどいよ!!それぐらいでおこらないでね!!」

瞬間、僕は拳でありすの頭を一気に押しつぶした。
致命傷には至らないが、苦しそうに餡子を吐いている。

「ゆぎゃあああぁあぁぁぁいだいいいぃぃぃぃ!!!!」
「今まで一年間ずっと楽しく過ごしてきたのに。お兄さんは君達を信用してたのに。
 昨日まで、僕は君たちの事とっても好きだったのに…昨日お部屋であんなことされちゃったから、
 お兄さんは君たちの事すっごく嫌いになった。だからこういうことをしたんだよ」

水槽に浮遊する8匹の残骸。親2匹の腹に収まった焼き饅頭。床の上に同心円状に広がった餡子のペースト。
ただ殺すだけでは意味がない。たくさんたくさんたくさん苦しめなければならない。
親に苦しんでもらうためには、子供を苦しめるのが一番だった。それだけだ。

「ゆっぐ……………まりさたちは…きのうをゆっくりたのしみにしてたのに!!」
「昨日…?」
「“きねんび”だよ!!まりさたちがおにーさんにはじめてあったときの“きねんび”だよ!!」

昨日が“記念日”。
それは、僕とまりさ、ありすが会った日。僕が“ゆっくり記念日”と名づけたものだ。
ちょうど一年がたって、昨日がゆっくり記念日だった。
どうせ覚えていないだろうと思って、2匹に黙っていたのだが…まさか覚えていたのか?

「“きねんび”だから、おにーさんにありがとうっていおうね!って、ありすとがんばっでじゅんびじだの!!」
「とかいはのごーでねーとなら、おにーさんよろこんでくれる゛っておもっだの゛!!」

まりさとありすの口から、ゆっくりと真相が語られる。
昨日、僕の帰りを待っていた2匹は、記念日のパーティの準備をしていたらしい。

『ゆっくりじゅんびしようね!!』
『きねんびのぱーてぃのじゅんび!!おにーさんきっとよろこぶよ!!』

あの部屋の荒れ様は、ありすが提案した『都会派のコーディネート』なのだとか。
一年間、ゆっくりさせてくれた僕に対するお礼の気持ちをこめて…

『きょうはおにーさんをゆっくりさせてあげようね!!』
『ふたりでおにーさんに「いつもゆっくりありがとう!」っていおうね!!』
『じゃまなものはどかそうね!てーぶるのうえのものもじゃまだからどかすよ!!』

ガシャーン!!

『ゆっくりできるように、つちをもってこようね!!』

ドサァッ!!

『じゃまなものをどんどんおとすよ!!とかいはのこーでねーとだよ!!』

2匹で一所懸命頑張った。パーティで僕に伝える言葉も決めていたらしい。
そして僕が帰ってきて…あとは僕の知るとおりだ。弁解の機会も与えず追い出したのだった。

「なのに!!なのに゛!!おにーざんは!!おにーざんはああぁあっぁぁぁぁ!!!」

僕は…今まで壮大な誤解をしていたということか。
こいつらは、人間らしい心を忘れずに持っていたのだ。
一年ぶりの記念日を、僕に対する感謝をもって、ゆっくり迎えようとしていたのだ。
なのに、僕はたったひとつの誤解で…記念日の翌日の今日、まりさとありすの赤ちゃんを皆殺しにした。

信頼を裏切ったのは、僕のほうだったんだ…



もし、昨日までの僕だったら、誠心誠意2匹に謝っていただろう。

だが、残念なことに……“昨日までの僕”は、ここにはいない。

ここにいるのは、今日からの新しい僕だ。

「あー、そういうことね。あのさ、そういうの気持ち悪いから、やめてくれる?」
「ゆ゛!?」
「低脳饅頭のクセに一年前の記念日覚えてるとか、正直引くんだよね」

そこらへんに落ちていたスリッパでぺちぺちと2匹の頭を叩く。
その都度「ゆ゛っ!」「びゅ!」と声を漏らすので、面白くて止められなくなる。
これはもう中毒と言ってもいい。僕はこいつらを虐めることに病み付きになってしまっていた。

「お前らさ、ゆっくりの分際でどうして一年前のこと覚えてるの?そんなのゆっくりじゃないでしょ?
 ゆっくりならゆっくりらしく、身分を弁えないで自分の主張を繰り返す図々しい饅頭じゃなきゃダメでしょ?」
「おにーさん!!なにいってるのぶべぇっ!!」
「今はお兄さんが話してるの。口を挟まないでね!」

強くスリッパで叩くと、ありすの頭が足型に凹んで面白い顔になった。
僕はまりさの帽子を脱がせて頭を叩きながら、お説教を続ける。

僕の笑顔を見て、2匹は何故か震え上がっていた。

「君たちはゆっくりらしくゆっくりしていってね!
 お兄さんはお兄さんらしく、君たちを“かわいがる”ことにするから!」

僕は今までの自分の愚かさに気づいた。
今までの僕のゆっくりに対する接し方は間違っていたんだ。
そういえば、友達も何度か忠告してくれていた。『ゆっくりはそうやって扱うものじゃない』って。
友達の言うとおりだった…ペットみたいに優しく接していた僕がバカだった。
だって、こうやって虐めて虐めて虐めまくって、悲痛な叫びを聞くほうが何百倍も楽しいじゃないか!!
あー愚かだった愚鈍だった能無しだったクズだったアホだった間抜けだった!
この1年という時間を返して欲しい!!どうして僕はこんなにも無駄な時間を過ごしてしまったのか!
それもこれも、こいつら2匹が無駄な躾を受けていい子に育てられていたのが悪いんだ!

もう、2匹が何をどう考えているかとか、部屋を滅茶苦茶にしたとか、そういうのはどうでもいい。
2匹を思う存分虐めて悲鳴に耳を傾ける…その劣情に近い快感の虜になってしまった。
その事実だけで、他は何も関係ないし意味もない。僕の欲求だけが、まりさとありすを支配するのだ。

ふと後ろを振り向くと、まりさとありすが今まさに逃げ出そうとしているところだった。
僕は2匹の頭をむんずと掴んで、無理やりこちらを振り向かせた。

「ゆ、ゆっくりはなしてね!!まりさはありすとゆっくりするからね!!」
「ゆっくりでていくからね!!おにーさんはひとりでゆっくりしていってね!!」

そんなまりさとありすに対して、僕は満面の笑みを向ける。

「そんな寂しいことを言うなよ。ゆっくりかわいがってあげるから…さ」

極上の笑みを、見せてあげた。



それから。

お兄さんと、まりさ、ありすの新しい生活が始まった。

まりさとありすは、今までどおりゆっくりしていたが…何か粗相をすると、いつもお兄さんに虐められた。

不味いご飯を食べさせられた。お風呂に入れてもらえなかった。

外に出してもらえなかった。遊んでもらえなかった。砂を食べさせられた。熱湯を飲まされた。

目にわさびを塗られた。舌にからしを塗られた。ほっぺをちぎられて餡子を吸われた。

舌をちぎられた。目を片方えぐられた。タバコの火をなくなった目のほうに押し付けられた。

髪飾りを取られて届かないところに置かれた。髪の毛を引きちぎられて丸坊主にされた。

もはや見分けがつかないので、2人まとめて『坊主』と呼ばれるようになった。



それでも。

2匹は逃げようとしない。逃げることが出来ない。

逃げられないように、身体に穴が開けられて紐を括り付けられ、テーブルの脚に固定されていたからだ。

それにこの姿では、もう外に出たところで他のゆっくりには相手にされないだろう。

ガラス越しに外を眺めると、そこにはゆっくり親子が外でゆっくりしている姿。

『ゆっゆっゆ~♪』と親子仲良く歌を歌っている。

その姿を見て、まりさとありすは片方だけになってしまった目から涙を流し、一年前を振り返る。

そこにいるのは優しいお兄さん。そして仲良くゆっくりしているまりさとありす。

まりさとありすが一番ゆっくりしていた頃。お兄さんがおかしくなる前の、幸せな日々。

どうやったらあの頃に戻れるのか。どうしてこんなことになってしまったのか。

少なくなった餡子で考えても、まったくわからなかった。



今日はゆっくり記念日。

まりさとありすがお兄さんに出会ってから、二年が経った。

お兄さんが一年ぶりにカメラを取り出して、写真を撮ってくれた。

もちろん、撮るのはお兄さんと2匹が仲良く並んでの記念写真だ。

撮った写真を、お兄さんは大事そうに写真立てに仕舞う。

大切に飾られたそれを、お兄さんは毎日眺めてはにこにこ笑う。

真ん中のお兄さんの両隣で、目が片方ない同じような饅頭が不気味に笑っている…そんな写真。




ゆっくり記念日の、記念写真。

それは、今もお兄さんの机の上に大事に飾られている。



(終)



あとがき

ゆっくり虐待中毒…あるきっかけで虐待紳士になってしまったお兄さんのお話でした。

作:避妊ありすの人

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最終更新:2008年12月01日 21:49
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