ゆっくり加工場系7 ゆっくりいじめプロローグ

ゆっくり達がアリスの家を遊び場にしてから季節が一回りした。
ゆっくりパチュリーが疲れないように普段からアリスの家にすんでいるゆっくり魔理沙とパチュリーは晴れの日は庭で、そして雨の日は元アリスのベットで眠り。朝は家の周りに集まってくる蝶を追い掛け回しながら食べ、お昼と夕食は午前中から遊びにやってくるゆっくり達がもってくる食事を一緒に食べる。
今は殆ど使われることの無いキッチンだが、たまにやってくる魔理沙やその友人が食事を作ってくれる時などに使っている。

満月の綺麗な夜、大きな木の根元に横と張りながら話すゆっくり魔理沙。
すっかり傷の癒えた今では、二匹とも以前のようにニコニコと話し込んでいる。
「パチュリーと霊夢ゆっくり眠ろうね」
その言葉が合図だった様に姦しかった三匹は寄り添った体を更にすり合わせて眠りに着いた。
こちらを覗いているモノが居る事など気にも止めずに。

「……さ、おき……」
眠っていたゆっくり魔理沙は自分を呼ぶ声で目を覚ました。普段は寝坊することの無いゆっくり魔理沙だが時々寝坊した時は二匹が起こしてくれる。
「ゆっくりおきちゃった!!!」
元気よく起きたゆっくり魔理沙は直ぐに違和感に気づいた。昨日は外で寝ていた筈なのに今は屋内、しかもここは……。
見覚えのある壁、そして柵。まさに、以前アリスに連れてこられたゆっくり加工場のそれだった。
「どっ、どうしてここにいるの?」
「魔理沙がまだ寝てるときに、おじさんがここであそぼうって言ってきたの」
「魔理沙が寝てるからびっくりさせようと思って寝てる間につれてきたの」
ニッコリと笑うゆっくり霊夢とパチュリー。 当然、自然の中で暮らしてきたゆっくり達は、このような施設がある事など知らない。 そして人を疑う事も知らない。アリスのことで芽生えたかと思われたそれは、その後の人間達の行動によりすっかり枯れてしまっていた。皮肉な結果だ。
「おじさん、魔理沙おきたよ!!!」
「魔理沙ゆっくりおきたよ!!!」
二匹が無邪気に声をかけた相手は、去年案内してもらった時のあの男だった。当然ゆっくり魔理沙もよく覚えている。
「二人とも、ここはだめだよゆっくりできないよ!」
「そんな事ないよ。魔理沙もゆっくりできるよ!!!」
ふたりともどうしてそんな事いうのか分からないと言った表情で聞き返す。
「ああ、お前さん以前ここに来たゆっくりかい? あれからうちの会社は変わってねぇ、今は飼われているゆっくり達を都合の悪い時に預かる仕事もしてるんだ。これから天気が大荒れになるからあの家じゃ危ないって事である人に依頼されてね。だから連れてきたんだよ」
工場職員の男は以前の様な愛想笑いを浮かべてゆっくり魔理沙に説明した。周りではゆっくり霊夢とパチェリーがしきりによかったね、と言って跳ね回っている。
「おじさん、どんな人がお願いしたの?」
「金髪の綺麗な魔法使いの女性だったよ。……たしか紫色の魔女も一緒に来てた様だけどね」
これだけで、三匹のゆっくり達には理解した。時々アリス邸を訪ねてくる人、一緒に来た人はおそらく始めて連れて来た友人だ。
「魔理沙が頼んでくれたのか」
「「よかったね!!!」」
ゆっくり魔理沙は今度こそ安心した、何気なく檻の遥か上にあるはめ込み式の採光窓を見ると、確かに風も雨も酷くなっている。殆ど手入れのされていないアリス邸では本当に危なかったかもしれない。
「安心してゆっくりできるね!!!」
笑顔の二匹も。
「ゆっくりできるね!!!」
と笑顔で返した。
「それじゃあ、他のゆっくりが襲うと大変だから、鍵をかけておくよ。おそらく明後日には天気はよくなってると思うからね」
見ると既に鍵はかかっていた、おそらく三匹を入れた時にはもうかかっていたのだろう、起きていたふたりは、初めから信頼していたのであろう。
「それじゃあ、私は他の仕事があるから。」
「おじさんもゆっくりがんばってね!!!」
去り際に自分達の柵に食事、隣の柵にペロペロキャンディを投げ入れ、手を振る男に体を大きく跳ねさせて答える三匹、その表情にはもう疑いの文字はない。
ふと、残りのゆっくり達の事が頭をかすめたが、以前は自分達もこの天気の中、雨宿りできる場所を探してずっと話していた事を思い出し、大丈夫だろうと結論づけた。
「ゆっくりしていってね!!! ゆっくりしていってね!!!」
柵といっても適度に動き回るスペースはある、森を駆ける様、とはいかないが三人ともとても楽しそうだ。
「うー。うー」
夕暮れ、あれからずっと動き続けて、さすがに元気がなくなって休んでいた時それまでは騒ぎで気付かなかった隣の声が聞こえた。
「泣いてるよ」
「どうしたのかな?」
「ゆっくりしていってね!!!」
お決まり台詞を言ったのを合図にまた追いかけっこが始まった、体の弱いゆっくりパチェリーに気を遣うから声は賑やかになる。
それはもう、隣の泣き声が聞こえない程に……。
「ごはんですよ」
といって朝と夜に食事を提供しに来る従業員(ちなみに黒い佃煮では無い)に、「ゆっくりたべるね!!!」と今回で四回目になる返事をする。隣には毎回お菓子の類が投げ込まれている。採光窓からの久しぶりの朝日に映る食事は今までよりも少し豪華なものだった。
「豪華だね」
「今日でお別れだからかな?」
「魔理沙、霊夢、ゆっくり食べようね!!!」
今日でここともお別れ、特に不自由は無かったけれど、やはり今まで慣れ親しんだ森の中の方が居心地がいい。
帰ったら何をしようかと考えて食事を食べる。
(やっぱり、魔理沙たちにお礼をしないとね!!!)
霊夢が遊びつかれているパチュリーに自分の食事を少し上げるのを見ながらそんな事を思う。
「帰ったら魔理沙たちにお礼をしようね!!!」
「「うん、しようね!!!」」
「「「ゆっくりしていって貰おうね!!!」」」
三匹とも同じタイミングで声を出す。やっぱりこのふたりと友達でよかったと新ためてゆっくり魔理沙は思った。
「おーい、お前達、引き取りに来てるぞ」
と同時に開いた扉、逆行で顔は見えないが初日に会った男の声だ、隣には二人の人影も見える。
「魔理沙達だね」
「ここで、お礼いえるね」
「「「ありがとう、おねえさん達。おかげでゆっくりできたよ!!!」」」
とびっきりの笑顔でお礼をいった三匹、まだここまで着ていないのでちょっぴりフライングだったかなと思ってまた三匹で大笑い。
その言葉を聞いた二人の少女は言う。
「あら、それはよかったわ。ねぇパチェリー?」
「そうね」
刹那、ゆっくり魔理沙の思考が止まる。同時に悪寒がはしる。他のふたりは後ろにいるので見ることは出来ないが、おそらく同じことになっているだろう。
「どうしたの、そんなに震えて? 久しぶりに再開したのがそんなに嬉しいのかしら?」
依然見たそれとは違うとても感情のある笑顔だった。まるで心から再開を喜んでいるような。
「おっ、おねえさんどうしてここにいるの?」
もっともだ、確かゆっくりレティが食べた筈。
「食べられたから?」
先ほどとは一転感情も抑揚も無い声。
「やっぱり、あなた達は頭が悪いのね。以前貴方と一緒に見た光景を忘れるなんて、ねぇ」
ゆっくり魔理沙が思い出した光景自分達の仲間がゆっくりレティに食べられる光景、しかしあまりに衝撃的でその後は覚えていなかった。
「本当に覚えていないのね。せっかく一緒にお出かけしたのに……」
いつの間にか彼女の方に乗っていた上海人形が両手で顔を覆う。
「あのおおきなゆっくりが寝込んだら後ろに穴を開けて絞り出したのよ。まぁ、私も一回見ただけだったから上手く出来るか判らなかったけれど魔法で眠らせて人形で穴を開けたら直ぐに開いたわ。さすがに疲れたからパチェの所に着いたら直ぐ眠ってしまったけれど」
愕然とした表情のゆっくり魔理沙。確かに暫く経った後、戻ってみたらレティは眠っていた。てっきり食べて眠くなったんだとばかり思っていたのに。
アリスは更に話を続ける。
「あなた達に襲われた時、万が一の為に蓬莱に手紙を持たせてここに向かわせたの。内容は、家に天然のゆっくりが数種類いるから頃合をみて捕獲して構いません、こんな感じね、頃合はパチェリーが見てくれていたの、初めは魔理沙に無理やり連れて行かれたように装ってね。あっ、そうそう私は今までずっとヴワル図書館にいたの、だって壊れた上海を直さないといけないでしょ。初め壊された時は本当にムカついたわ、お友達を大型カッターに固定してあなたを重石にして切り刻もうかと思ったくらいよ、でも幸い式の部分は無事だったから許すけど。もう悪戯しちゃだめよ♪ 丸々一年もかかっちゃったんだから、おかげでずっと篭りっきりだったんだから私、でもやっぱり図書館はよかったわ、色々な魔道書もあるし、それに」
早口言葉のように一気に話した後、何か出来事を思い出しているように黙り込んだ後。
「小悪魔から色々な話も聞けたしね」
余程為になったのだろう話した後も何度も反芻するように頷いている。
「お、おねえさんが連れて行くの?」
と、ゆっくり霊夢。彼女は寝ている時に餡を取り出された為殆ど記憶が無い、故にまだ好奇心の方が高いのである。
「そうよ、久しぶりのお家ね、私も楽しみだわ。あぁ、あなたには悪いことをしたわね、人形が勝手に悪戯していたみたいで、私はお庭で遊んでいらっしゃいって言っただけなのに。それより、あなた達は食べ物何が好き?何でも作ってあげるわよ」
「おねえさんとは帰らないよ。魔理沙が来るまでゆっくりするよ!!!」
そうだ、魔理沙がきたら助けてくれる。今までは怖かったから本当の事は話してなかったけど、ちゃんと話そうゆっくり話せば判ってくれるよ。
「あらあらわがまま言っちゃだめよ」
そんな希望も。
「だって」
打ち砕かれる。
「魔理沙には一年前に言ってあるもの、ゆくりたちが住み着いたから暫く家を譲る、恐縮させるといけないから居なくなった様に振舞ってねっ、て」
だけど家に帰ればまた仲間が助けてくれる。
いや、今度は自分から立ち向かおう何度も頼りっぱなしじゃいけない。
「それに、パチェにゆっくり達を見て貰ってるって言ったでしょ」
アリスが一緒にいた男から紙を受け取った、数字が何個も書いてある紙だ。
「あら、こんなにいいんですか? これだけ有れば家の補修に遣ってもかなり余裕がありますよ」
「いえいえ、こちらも貴重な天然モノ、しかも数種類卸してもらったのですから、この位は当然です。あぁ、今回の三匹のお預かり代も無料で結構です」
もちろん三匹には聞こえない声で、これも別に聞こえても良いのだが、小悪魔がまだ言わない方がいいですよ、と言っていたからだ。
「あの時きちんとみんなにいってたら良かったのにね」
その言葉の意味が判らないまま鍵が開けられた。他の二匹も状況が摘めていないらしい。
隣の扉も開かれた様だ、パチェリーが預けていたのだろう。れみりゃ種に体が着いているような生物。檻の札には「希少種」と書かれている。
檻の中にはお菓子が散乱していたがどれも余り手を付けていないようだ。
「まぁ、今まで屋敷で食べていたお菓子に比べたら味は落ちるでしょうけど、これからはこれで我慢しなくちゃいけないのよ。……レミィ」
「まるで私の料理が下手って言っている様ね。……まぁ良いわ、さぁお家に帰りましょう」
ゆっくり魔理沙を抱きかかえるアリスパチュリーも魔法でも使っているのだろうか、それとも着やせした胸にでも上手く乗せているのか、ゆっくりれみりゃを抱きかかえて並んで歩く。
どうやら今日は一緒にアリスの家に向かうようだ。他の二匹は先ほどの言葉が効いたのか嬉しそうに跡をつけている。
「あぁそれと魔理沙、まだ帰りたくなって言ってると……」
知っている扉が開かれる。中も以前と同じだった。そういえばあの男は預かる仕事もしていると言っていた。
「……そう、大人しくしていなさい抱えてる方も楽じゃないんだから」
とても優しい笑顔だった。
……やっぱり逃げるのは無理だったようだ。
いま、ゆっくり魔理沙は他の仲間が助けてくれることと、本当にアリスが優しくなったかもしれないという希望に賭けるしかないと思った。

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最終更新:2009年06月10日 23:18
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