Ⅰ.タケコプター
「ぱちゅりー、これはな~に?」
「むきゅ!! これはたけこぷたーというものよ!! これをつかうと、おそらをとぶことができるのよ!!」
「ゆゆっ!! おそらをとべるの!! まりさ、おそらをとびたいよ!!」
「れいむもとびたい!!」
「わかったわ!! ちょうどふたつあるから、まりさとれいむでおそらをとんでみてね!!」
ぱちゅりーはそう言うや、まりさとれいむの頭にタケコプターを乗せてくれた。
ちなみにれいむは問題なく乗せられたが、帽子をかぶっているまりさはどこに乗せればいいか迷い、結局トンガリ帽の天辺に乗せることにした。
永沢君の帽子みたいである。
ぱちゅりーが舌でスイッチを押してあげると、プロペラが回転し、2匹が浮かび上がった。
「すご~い!! おそらをとんだよ!!」
ちなみに、まりさは帽子を被っているのに何で帽子だけ飛んで行かないのとか、重力に引かれてグニャアアァァと体が下に伸びないのとか、空気の読めないことを言ってはいけない。
そんなこと言ったら、ダメ太君やパンチラちゃんも、空中頭吊り自殺を何度敢行したか分からない。
すべては神(原作)の思し召しである。
大空を舞った2匹は、存分に空の旅を味わった。
しかも、慣れてくると自在に操れるようになり、どこにでもすんなりと飛ぶことが出来た。
高い崖の上にも行けるし、湖すれすれにも飛ぶことが出来る。
人間の畑に降りて野菜を食い荒らし、怒った人間が襲って来ても、すぐに手の届かないところに逃げることが出来る。
今の2匹には、いけない場所は何もなかった。
「まりさ!! きもちいいね!!」
「ゆ~!! とりさんは、いつもこんなけしきをみているんだね!!」
空から雄大な景色を眺め、黄昏る2匹。何とも生意気なゆっくり達だ。
しかし、のんびり空の旅も、気がつけば山に夕日が掛かり、カラスが鳴いている。
もう日暮れは、すぐそこだ。
「れいむ、そろそろもりにかえろうね!!」
「そうだね!!」
今日は存分に楽しんだ。明日もまた、大空を楽しもう。
れいむとまりさは、森への帰路についた。
あと少しで森に着くかという頃、まりさの頭上でカタカタという妙な音が鳴り響いた。
「ゆっ? なんのおと?」
まりさが上を向くも、空には雲しか掛かっていない。
れいむに聞こうとしたら、なぜかれいむはまりさより高い場所を飛んでいた。
なんでれいむはあんな所にいるんだろう?
自分たちは並列して飛んでいたはずなのに?
まりさはれいむの元に行こうとしたが、なぜか制御がきかず、むしろ2匹の距離は遠くなっていった。
「まりさぁ!! なんで、したにおりていくのぉ? まだもりじゃないよぉ!!」
れいむも気になったのだろう。
高度を下げてまりさの元にやってきた。
「まりさにもわから……」
まりさの言葉は、すべてれいむに伝えられることはなかった。
言うより先に、まりさの体は地面に落ちて行ったのである。
「ゆああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――!!!!!! おちるよおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ――――――!!!!」
訳が分からない。
何でいきなり落ちるのだろう。操作を間違ってはいないはずだ。
しかし、そんなことはこの際どうでもいい。
このまま落ちるということは、地面と激突して死ぬということだ。
「れいむうううぅぅぅ――――!!! たすけてえええぇぇぇぇぇ――――――!!!」
恐怖にかられ、まりさはれいむに助けを求める。
れいむもよく分からないが、まりさが危険な目に合っているということは理解出来た。
すぐに、まりさの元に駆けつける。
自由落下のまりさより、タケコプターのれいむのほうが早かったようで、れいむは地面に着く前にまりさの元に辿り着いた。
「まりさ、ゆっくりまっててね!! れいむがしたからもちあげるからね!!」
「ありがとう!! れいむ!!」
れいむは落下するまりさの下に体を持ってくると、全身でまりさを支えに掛った……が、
「ゆぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――!!!!!」
まりさの絶叫が、れいむのすぐ上で聞こえてきた。
しかも、絶叫と共に真っ黒な訳の分からに物が、たくさん下に落ちて行く。
それはれいむの体にも付着し、何だろうとれいむが舐めてみると、甘く美味しいものであった。
れいむはまりさの居る真上を見上げた。
しかし、どこにもまりさの姿は見当たらなかった。
「ゆっ? まりさ、どこいったの?」
今まで感じていたまりさの重さも無くなり、れいむは不思議に思った。
すると、下のほうから、微かな声が聞こえてきた。
「れい…む……なに……する………の?」
そこには、なぜか半身がボロボロになったまりさの姿があった。
皮は破け、餡子が空中でどんどん放出される。
れいむは訳が分からず、空中でまりさを見つめていた。
まりさは、地面に落ちると、ベチャッと生々しい音をたてて、餡子を弾かせた。
言うまでもないだろうが、まりさの傷はプロペラに巻き込まれたもので、れいむが真上を見るということは体全体を傾けることであり、まりさはれいむの後ろを落ちて行ったのである。
まりさが落ちた原因は、これまた説明するまでもないが、バッテリー切れである。
30年も経つんだし、そろそろリコール対象製品になることを切に願う。
Ⅱ.どこでもドア
「ぱちゅりー、これはな~に?」
「むきゅ!! これはどこでもどあというものよ!! これをくぐると、どこでもすきなところにいくことができるのよ!!」
「ゆゆっ!! どこにでもいけるの? それじゃあ、ゆっくりできるところにもいけるの?」
「もちろんいけるわ!!」
「すごいよ!! れいむ、ゆっくりできるところにいきたいよ!!」
「まりさもいきたいよ!!」
「わかったわ!! それじゃあ、どあのまえでいきたいところをさけんでね!!」
れいむとまりさはどこでもドアの前に来ると、一緒に叫んだ。
「「ゆっくりできるところにつれていってね!!!」」
れいむとまりさの言葉を受けて、ドアがゆっくりと開き出した。
ちなみに、はっきり場所を指定せず、こういう曖昧な表現を使うと、ドアがランダムで場所を選んでくれる。
そこはまだ見たこともない、ゆっくりのゆっくりによるゆっくりのための場所に違いない。
れいむはドアが開ききるのを、今か今かと待っていると、隣のまりさがドアに突撃した。
「まりさ!! まだどあが……」
「ゆっへっへ!! もうまちきれないよ!! まりさはもうなかにはいるよ!!」
思いっきり地面を蹴り、まりさは中を見ることなく、ドアの中に飛び込んで行った。
慌ててそれを追いかけるれいむ。
そこはなんと……
「ゆぎゃああぁぁぁぁぁぁぁ――――――!!!! たすけてええぇぇぇぇ―――――!!!!」
まりさは必死で助けを求める。
ドアから出ずに中を覗くと、まりさが水の中でもがいている姿が目に入った。
いや、水から湯気が出ているし、この纏わりつく熱気からするに、どうやらお湯のようだ。
まりさは、お湯の中で溺れているのだ。
「なんでえええぇぇぇぇぇ―――――!!!! ゆっぐりできるところっていっだのにいいいぃぃぃぃ―――――――!!!!」
お湯の中で、必死で暴れ狂うまりさ。
しかし、ゆっくりの体の仕組み上、泳ぐことなど物理的に不可能。
さらに、足が底に付かないほど深く、まりさに助かる手段は皆無だった。
れいむは、まりさが溶けて消えるまで、ドアのところで叫び続けているしかなかった。
「まりさ……」
ポツリとつぶやくれいむ。
どうしてこんなことになった?
自分たちはゆっくり出来る場所ってお願いしたのに。
れいむが自問自答していると、ドアの中から声がしてきた。
「親父。風呂に入る前に、浴び湯くらいしろよ!!」
「うるせえ。そんなまどろっこしいことしてられるか」
「きたねえなあ」
「はあ~~、極楽極楽。やっぱり温泉は最高だな」
「全くだ。ホントゆっくり出来るぜ」
「……………」
Ⅲ.スモールライト
「ぱちゅりー、これはな~に?」
「むきゅ!! これはすもーるらいとというものよ!! これからでるひかりをあびると、なんでもちいさくなるのよ!!」
「ゆゆっ!! なんでもちいさくなるの? それじゃあ、れいむもちいさくなれるの?」
「なれるわよ!! ものでもゆっくりでも、じゆうじざいよ!!」
「れいむ、ちいさくなりたいよ!! ちいさくなって、うまれたばっかりのあかちゃんとあそびたいよ!!」
「れいむだけずるいよ!! まりさも、ちいさくなってあかちゃんとあそぶよ!!」
「わかったわ!! じゃあ、そこにならんでね!!」
ぱちゅりーはライトを地面に置くと、射光口をれいむとまりさのほうに向け、スイッチを押した。
光線を浴びて、2匹の体が徐々に小さくなっていく。
「ゆゆっ!! ほんとうにちいさくなったよ!!」
「おかあしゃあたちも、れいみゅやまりしゃたちと、おんなじおおきちゃになっちゃね!!」
赤ゆっくりと同じ大きさになった2匹。
赤ちゃんの時のように、周りの物すべてが大きく見える風景に初めは少しばかり恐怖を感じるも、次第に慣れるにつれ、それも無くなっていった。
親2匹が小さくなったのを見て、傍にいた赤ゆっくり達も大喜びだ。
その後、れいむとまりさは、赤ゆっくり達と大いに遊びまくった。
赤ちゃんの大きさでしか入れない場所に入ったり、同じ大きさの頬をスリスリ擦り合わせたり、最高の時間を過ごした。
半日もたった頃だろうか? 一家は、空腹を感じた。
「おかあしゃん!! れいみゅ、おなかがちゅいたよ!!」
「おかあさんもだよ!! そろそろ、ごはんにしようね!! おかあさんたちがごはんをとってくるからね!!」
れいむとまりさは、赤ゆっくりを巣の中に置いて、2匹で狩りに出かけた。
お腹もグーグーだし、今日は近場で狩りをしよう。
2匹は、巣のそばにある、狩りの定番スポットに足を運ぶ……が、
「まだつかないのおおおぉぉぉぉぉ―――――――!!!!!」
「づがれだよおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ―――――――――――!!!!!」
2匹はまだ狩り場に辿り着けないでいた。
本来の姿なら、10分程度で辿りつける場所だ。
しかし、小さくなったことでジャンプ力は低下し、普段なら軽く飛び越せるような場所も、巨壁の如く2匹の前に立ちふさがった。
しかも、歩幅も狭いので、どんなに進もうとなかなか到達しない。
れいむとまりさは挫けそうになった。
しかし、可愛い赤ちゃんのためにもここで諦めるわけにはいかないと、互いに励まし合って狩り場に赴いた。
やっとの思いで2匹は狩り場に着くも、またも試練が襲いかかる。
普段なら簡単に取れる物が、大きくて取ることが出来ないのだ。
木の根元に生えたキノコはとてもでないが持つことは出来ないし、花の上を飛んでいる蝶になど届きもしない。
仕方がなく、2匹はキノコや木の実を口で千切り、持てる分だけ確保し巣に急いだ。
帰りは、口や帽子の中に含んだ食料もあって、行きの倍の時間がかかった。
「あかちゃんたち!! ごはんをもってきたよ!!」
「おちょいよ!! おかあしゃんたち、ゆっくちししゅぎだよ!!」
「ごめんね!! いまごはんをあげるからね!!」
れいむは取った食料を口から吐き、まりさは帽子の中から取り出した。
「ゆっくりいっぱいたべてね!!」
2匹は満面の笑みで赤ゆっくり達の前に差し出す。
しかし、赤ゆっくり達は食料に食いつこうとしない。
「どうしたの? おなかがすいてないの?」
れいむは、気になって赤ゆっくりたちに聞いた。
すると、考えもしなかった答えが返ってきた。
「こんなちゅくないんじゃ、ゆっくちできにゃいよ!!」
れいむとまりさは、それを聞いてよく意味が分からなかった。
自分たちは、いつも通り口いっぱい帽子いっぱいに食料を詰め込んできた。
普段ならそれだけ持ってくれば、赤ゆっくり達が食べきれなくて残すくらいなのだ。
しかし、確かに見てみれば、目の前に置かれた食料は、赤ゆっくり1匹分の食糧にも満たない量だった。
狩り場に行く時にしても、巣に帰る時にしても、そのことに思いつかないあたりが、実に餡子脳らしい。
「おかあしゃんたちだけで、ゆっくちたべてきちゃんでしょ!!」
「ち、ちがうよ!! だって、これだけしかもってこれなくて……」
「うしょだ!! ほんちょうは、まりしゃたちにないしょで、ゆっくちおいちいもにょをたべてきたんだ!!」
「ちがうってば!! これでも、いっしょうけんめいもってきたんだよ!!」
「うしょをちゅくおかあしゃんなんて、れいみゅのおかあしゃんじゃないよ!!」
「しょうだよ!! うしょをちゅくおかあしゃんは、ゆっくちちね!!」
赤ゆっくり達は、2匹に襲いかかった。
親達は、時機に赤ゆっくり達も分かるだろうと、逃げなかった。
赤ゆっくり達がどんなに力を入れても、自分たちに敵わないことを理解していたからだ。
しかし、それはあくまで自分たちが、元の大きさでいる場合に限る。
2匹の大きさは、今や赤ゆっくり達と何ら変わらないのだ。
それが、何匹も一斉に襲い掛かってきたらどうなるか。
「ゆぎゃあああぁぁぁぁぁぁ――――――!!!!! なんでえええぇぇぇぇぇぇ―――――――!!!!」
憐れ、親2匹は赤ゆっくり達の下敷きとなってこの世を去った。
親が居なくなったことで、赤ゆっくり達も餌を取ることが出来ず、すぐに親の後を追う結果となった。
元の大きさに戻るということを思いつかない所が、ゆっくりのゆっくりたる所以である。
まあ、ビッグライトが無いから、元に戻れないんだけどね(笑)。
※このスモールライトは、劇場版・宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)のスモールライトとは異なり、ビックライトと合わさっていません。
Ⅳ.ビッグライト
「ぱちゅりー、これはな~に?」
「むきゅ!! これは、びっくらいとというものよ!! これからでるひかりをあびると、なんでもおおきくなるのよ!!」
「ゆゆっ!! なんでもおおきくなるの? それじゃあ、れいむもおおきくなれるの?」
「なれるわよ!! ものでもゆっくりでも、じゆうじざいよ!!」
「まりさ、おおきくなりたいよ!! おおきくなって、どすまりさになるよ!!」
「まりさばっかりずるいよ!! れいむも、おおきくなりたいよ!!」
「わかったわ!! じゃあ、そこにならんでね!!」
ぱちゅりーはライトを地面に置くと、射光口をれいむとまりさのほうに向け、スイッチを押した。
光線を浴びて、2匹の体が徐々に大きくなっていく。
「ゆゆっ!! ほんとうにおおきくなったよ!!」
「これで、まりさもどすまりさになったよ!!」
「まりさ!! どすになったんだから、にんげんのところにいこうよ!!」
「ゆっ!! それはめいあんだよ!! どすまりさになったまりさに、にんげんたちはおそれおののいて、しょくりょうをたくさんくれるよ!!」
2匹は嬉しそうに、森の木々を倒しながら、人間の里に向かった。
「どすまりさがきたよ!! ゆっくりはやく、たべものをもってきてね!!」
人間の里に着いた2匹は、手近にいた人間を捕まえ要求した。
声をかけられた男は、とても驚いた。
この付近の森には野生のゆっくりはいる物の、ドス級のゆっくりは今まで確認されなかった。
そんなドス級が、一度に2匹も現れたとなれば、男が慌てるのも無理はない。
「お、俺の一存では決められない。今、村長を呼んでくるから待っててくれ」
「ゆっくりりかいしたよ!! えらいひとをつれてきてね!!」
男は2匹から逃げるように離れていく。
まりさとれいむは、里の入口のところで、村長が来るのを待っていた。
しばらくして、男が老人と他数名を引き連れ、2匹の元にやってきた。
ちなみに、2匹の位置からは見えない場所で、里の若い連中が弓や鍬や竹やりを手に隠れている。
無論、すぐに飛び出すような馬鹿なことをする気はない。
ドスと言えば、ビームを吐いたり透明になったりと、普通の人間では敵わないような力を持っている。
それが2匹もいるのだ。
全員で掛かれば負けはしないだろうが、人間側も深手を負うことは確実だ。
最悪の場合、共倒れにもなりかねない。
穏便に済ませられるなら、それに越したことはない。
「わ、わしがこの村の村長じゃ。それで、いったい何の用で来なすったのかな?」
「まりさたちは、ごはんをもらいにきたんだよ!! ゆっくりごはんをもってきてね!!」
「ご、ごはん? 協定を結びに来たのではないのか?」
いきなり食料を要求する2匹に、村長たちは不審に思った。
隣の里では、ドス級が来て不可侵条約を結ばされたと言っていた。
てっきり、このドス達も条約や協定を結ぶつもりだと思っていたのだ。
「きょうてい? そんなのほしくないよ!! まりさたちは、ごはんがほしいんだよ!!」
「食料か……して、どのくらいの食料が欲しいんじゃ?」
協定の話は出ない物の、ドスの必殺技などで脅されて不平等条約を結ばされるくらいなら、多少の食料を持っていかれたほうが、どんなにマシか分からない。
村長は、多少の出費は我慢して、まりさ達に食料を与える覚悟でいた。
しかし、まりさ達はと言うと……
「ぜんぶだよ!! ここにあるしょくりょうは、ぜんぶまりさとれいむのものだよ!!」
「な、なんじゃと!!」
これには、村長はおろか、周りの連中も唖然とした。
まさか食料すべてを要求されるとは、一体誰が想像するだろう。
ドス級は、ゆっくりの中では比較的知能が高い。
人間一人より強くても、数人の人間に一斉に攻撃されては敵わないことも、重々承知している。
そのため、引き際を見誤るようなことはしない。
なのに目の前の2匹と言ったら、自信満々で人間達を見下ろしている。
この村の人間すべてをを相手にしても、勝てるだけの力を持っているということなのだろうか?
「ぜ、ぜんぶは、いくらなんでも無茶というもの!! せめて1/10くらいなら、かき集めればなんとかなる。それで我慢してくれ」
「だめだよ!! まりさとれいむは、おなかがすいているんだよ!! ぜんぶよこさないなら、みんなやっつけちゃうよ!!」
「む、むりじゃ!! いくらなんでも、ぜんぶなんて……」
「それじゃあ、まずおじいさんからしんでね!! いくよ!! どすぱーくをくらえ!!」
まりさは大口を開けて、スパークを放つ態勢に入る。
村長や周りの男たちは、逃げられないと体を固めた。
しかし、一向にスパークは発射されなかった。
村長や男たちは、チラリと2匹を見上げる。
そこには、未だ大口を開けたまりさの姿があった。
「まりさ!! はやくどすぱーくをうってね!!」
じれったく思ったのか、隣のれいむが早く撃てと言ってくる。
しかし、まりさは大口を閉ざすと、れいむのほうを振り向いた。
「れいむ!! どすぱーくって、どうやってうつの?」
「ゆっ? れいむもわからないよ!!」
まりさは口を開けて、力みさえすれば、ドスパークが放てると考えていた。
事実、以前まりさが見たドスまりさは、力みながらスパークを放っていたのだ。
なかなか出ないスパークに、まりさ自身が戸惑いを感じている。
しかし、この好機を逃さなかったのは、里の人間たちだった。
2匹のやり取りを見て、こいつらはただデカイだけのゆっくりで、ドスなどではないと分かるや、人間たちの行動は早かった。
「今じゃ!! 攻撃を開始しろぉ!!」
村長の言葉を皮切りに、陰で待機していた武器をもった人間たちが、一斉に飛び出してきた。
相手がドスでないなら、所詮こいつらは大きいだけの饅頭に過ぎない。
溜まりに堪った鬱憤を吐きだすかの如く、2匹に襲いかかった。
まず、竹やりを持った人間が、2匹の目を潰しに掛る。
「ゆぎゃああぁぁぁぁぁぁぁ―――――――!!!」
深々と2匹の目に刺さり、まりさとれいむは、痛さと何も見えない恐怖に暴れ狂う。
さすがに重量が重量なので、近寄って巻き込まれれば、怪我では済まない。
そこで、人間たちは遠くから弓を構えると、2匹に向かって次々放った。
的がでかいので、実に当りやすい。
「ゆぎいいいぃぃぃぃぃ―――――――!!!! いだいいだいいだいいだい…………!!!!」
矢が突き刺さり、余りの痛さに我を忘れる2匹。
「もうおうじにがえるうううぅぅぅぅぅ―――――――!!!!」
人間の強さを知った2匹は、これ以上この場にいたら命はないと、森にかえろうとした。
とは言え、そこは目の見えない2匹だ。
どの方向に行けばいいのか分からず、とにかく矢の飛んでこない方向に逃げていく。
しかし、場所が悪かった。
この里の入口の前には、大きな川が流れていた。
里は川に橋をかけて、そこからしか入れないようにすることで、妖怪や野生生物から自衛していたのだ。
目の見えない2匹は、橋の上まで来ることは出来た物の、運悪くそこから橋の下に落下してしまう。
「ゆあああぁぁぁぁぁ――――――!!!! みずだよおおおぉぉぉぉぉ―――――!!!!」
「なんでこんなところに、みずがあるのおおおぉぉぉぉ―――――――!!!!」
2匹は何とか川の中から抜け出そうともがくが、底がぬかるみ足場が安定しないことと、水が負荷となって重く圧し掛かり、思うように抜け出せない。
更には、人間たちがそのまま川に沈めようと、武器や農具で2匹が出れないようにめった打ちしてくる。
「いだいよおおぉぉぉぉぉ――――――!!! ゆっぐりやめでえええぇぇぇぇぇ――――――!!!!」
あまりの痛さに泣き叫ぶも、一度里を襲ったゆっくりを人間たちが許すはずもなく、哀れ2匹は川の中に溶けて行った。
大きくても、所詮ゆっくりはゆっくりである。
~fin~
ぱちゅりーに突っ込んじゃ駄目だよww
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最終更新:2022年05月03日 15:28