さわさわと、木々のざわめきだけが静寂の中に、命の存在を伝える。
ここは珍しい。今やどこに行っても何かにつけて耳につく、あの不快な音

「ゆっくりしていってね!」

が聞こえない。

果してそうだろうか?
よく耳を澄ましてごらん。虫の声も、葉の擦れる音も、静寂の中には幾つもの声がある。きっと聞こえてくるだろう。あの声も。


「・・・・・・・・・ゆっくり・・・・・・・して・・・いってね・・・・・・・・・」

ほら。かすれるように小さな声が聞こえてきた。これはどこから聞こえてくるのかな?
普通、ゆっくりは辺り構わずゆっくりゆっくり鳴き叫び、捕食種や野の獣を呼び込んでがつがつと食べられてしまう。
街中だと、下水に放り込まれたり車に轢かれたり保健所に回収されたり、野生より酷い目にあうのがほとんどだ。

でもここではゆっくりの声はとても小さい。明らかに、敵になる生き物を警戒しているのがわかる。

え?饅頭にそんな知恵があるのかって?
ないよ。

ゆっくりが知恵をつけるのは、どうしても生存に必要な時だけ。大抵は食料の問題に直面したとき。

もう一つあるんだ。

それは死にたくても死ねないような拷問、いや、虐待をうけた後だ。

君もそうだからわかるだろうけど、虐待はゆっくりの扱いとしてはごくごく当たり前のものだ。
僕は研究者だから単なる快楽だけでやってるわけじゃないけど、行為自体は虐待そのものだっていうのは認めてるよ。

さておき、虐待をうけて尚、生き延びたゆっくりはどうなるか。
まぁ虐待したゆっくりをおめおめ野に放す人は少ないし、放しても傷やトラウマのせいでまず生存はできない。
鬱憤晴らしに口では言えないような虐待をしたゆっくりを放してやったら、すぐ先にある木に一直線に向かって、ものすごい速さで何度も何度も体をぶつけて自殺したって話もあるよ。
自殺なのか、もう人間から一刻も早く遠ざかりたかっただけなのか、なんにせよ精神を病んじゃったのは確かだね。

話が逸れすぎちゃったけど、つまりは虐待されたゆっくりはまず死ぬ。ってことなんだ。

でも、たまにハンディキャップを克服したり、幸運に恵まれて生き延びるゆっくりがいるんだ。
そんなゆっくりは一人じゃ生きていけない。まず生き延びること自体が誰かの助けを必要とするから。
とはいえまともなゆっくりの群れは虐待されたゆっくりを受け入れない。まぁ餡子頭だから深い意味もなく、ただ気持ち悪いとか気に入らないだけなんだろうね。

だから、被虐待ゆっくりは自分と同じような境遇のゆっくりと群れを作るのさ。

そう、それがここなんだよ。
見てごらん。
あ、そんな頭を上げないで。気づかれるよ。そうそう…茂みから覗いてみて…見えるかい?


うん。洞窟があるだろう?被虐待ゆっくりの群れは崖下の洞窟、木の根元に掘り抜いた巣穴、水辺のぬかるんだ辺り、三角州…
普通の群れがあまり近づきたくないところに集まるんだ。じゃないとまともなゆっくりに見つけられたら追い出されるからね。
この群れは僕が確認したところでは、あの洞窟とすぐそばの木の何本かに巣穴を掘ってるみたいだね。
数は…生まれた子供も合わせて50くらいかな?少ない?虐待されたゆっくりのほとんどは生殖能力を失ってるからね。
あの群れで繁殖できる個体はたぶん2,3体だと見るね。

あ、でてきた…。帽子のないまりさ種だ…。うん。ここでは帽子のないゆっくりも大丈夫なんだよ。みんな似たり寄ったりだからね。
しゃべって意思疎通ができるか、髪飾りで個体が判別できるものならなんでも受け入れるみたいだね。このルールは群れごとに違うらしいけど。

次は…うお!

おっと、変な声が出ちゃった…見た?あのゆっくり。そのまま、饅頭だったね。髪飾りと髪の毛を完全に取り除いたうえで、眼球もくりぬいたんだ。そのあと、小麦粉で完全に癒着させて…
無事なのは口だけか…。妖怪にそういうのいた気が。ぬっぺほっふ?だったっけ?
よくあんな個体が生き延びられたな…。僕もあんなのが動いてるのははじめて見たよ。え?よくやる?ふーん。そうなんだ。

とりあえずあのゆっくりたちは巣のまわりの見回りかな?饅頭ゆっくりは多分、聴力が発達してるんだと思うよ。実験で視力を失くしたゆっくりは聴力が上がるって結果が報告されてるからね。
視力と聴力、両方で巣の安全を調べてるんだ。そうしてみるとなかなか頭のいい個体が群れを統率してるみたいだな。


ここでじっと見てるだけじゃよくわかんないんだよな。あの洞窟の中を実際に見てみないと…
そう。そこで君の出番だよ。君がつくった”あれ”で監視カメラをあの洞窟の中に仕掛けるんだ。頼むよ…。


虐待お兄さんはリュックの中から一匹のうーぱっくを取り出した。これはうーぱっく型にこしらえたラジコンである。こいつの背中(?)に三種の小型カメラを搭載し、洞窟上面、左右面にカメラを仕掛けようというのである。

お兄さんはスイッチを入れ、慎重にメカうーぱっくを操縦した。ゆっくりふらふら飛んでくるうーぱっくを見てまりさが慌てて饅頭ゆっくりを引っ張って洞窟の中に逃げた。
うーぱっくはゆっくりの味方だが、他のゆっくりに自分たちの場所をむやみに知られたくないからである。
メカうーぱっくは洞窟の中に入っていく。洞窟の中ではどうやらうーぱっくに早く出て行けと警告しているようだ。お兄さんはうーぱっく視点をもとに、洞窟内にカメラを仕掛けると、ふらふらと出て行った。

よし。うまくいったね。うーぱっくは基本的にゆっくりの味方だから、あのゆっくりたちもあまり詮索しないだろう。

それじゃ場所を変えてカメラの様子を見ようか。



ところ変わってここは森に設置されたゆっくり観測所。加工所の研究の一環で建てられたもので、森のゆっくりの個体数観測や野生での成長過程などを調査している。



さぁ、テレビのスイッチをON…!映った映った。感度は良好、ゆっくりたちがばっちり見えるよ。



モニターに映っているのはじめじめとした洞窟の中で身を寄せ合い、ほとんど言葉も発しないゆっくりたち。

洞窟内のゆっくりは種別や虐待の度合いによらず、みな渾然としている。おかげでどんな個体がいるのか判別しにくい。
まずは帽子のないまりさ種がちらほら目立つ。虐待の基本だからだろう。片目のものも多い。これも基本だ。動かないのは底部を火で焙られたのが多いからだろう。
一つ一つ見てみると

あるまりさは髪がざんばらだった。ゆっくりの髪は成長するが、大人になると長さが一定になり生え換わらなくなる。
このまりさはところどころハゲが目立ち、長さも不揃いだ。適当にバリカンで頭皮ごと削られたのだろう。
また、口元が大きく左右に裂けていた。笑えばハロウィンの南瓜みたいで不気味だろう。

あるちぇんは両目にピンポン玉を嵌め込まれていた。中途半端に押し込められ、小麦粉を塗って完全に癒着している。
無駄に丁寧にピンポン玉の表面には下手糞な目の絵が描かれていた。それから尻尾が20本くらいに増やされていた。
他のちぇんから引きちぎったのをぶっ刺されたのだろう。もちろん底部は焙られて真黒になっている。

あるれいむは底部に4体、ちょうど足のように赤ゆっくりが埋め込まれていた。しかも生きている。おそらく赤ゆっくりの頭部を切り飛ばし、
母親の底部をくりぬいた穴に嵌め込んだものだろう。これでは飛び跳ねることも這うこともできない。赤ん坊が成長したら子供たちが親の体を御輿のように持ち上げて移動できるかもしれないが。

あるゆっくりはもはや種別もわからない。全身を真っ青に塗りたくられてビー玉を40個くらいあちこちに埋め込まれている。意味がわからん。
髪もない、飾りもない。顔だけで判別はできないし、口もない。代わりにパイプが眉間に突き立てられている。そこから食料を入れてもらうのだろう。なんで受け入れられてるの?

あるみょんの顔はいい男だった。おそらくどっかの職人が整形したのだろう。腹ん中がぱんぱんになりそうなくらいのいい男である。

眼球えぐり、底部焙り、飾り・毛髪除去、発狂(両目が左右逆の方向を向いてよだれをたらしているだけ)、合体、整形、…

ここには様々な虐待を受けたゆっくりがいた。その中に、わずかにまともな姿の赤ん坊がいるが、その将来はどうなるのかわからない。他のまともなゆっくりとは一緒に生きていけないだろう。


続いていい?
















おはようかな?こんにちはかな?こんばんはかな?
VXの人です。
観測者の立場から被虐待ゆっくりを書いてみました。虐待されたゆっくりたちは僕の夢の中にでてきたゆっくりです。
いつもこんなことを考えてます。




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最終更新:2022年05月03日 15:54