※これは以前投稿したSS「ミカン」の修正版です
 下りに不満を感じたため修正していたんですが・・・・・こんな話だっけ?
 よもや後半別話です、ワケワカメ。また他SSより一部設定をお借りしています。
 それでも構わないという方は是非お読みください。




ミカン(温州版)




「あー・・・冬はやっぱこれだな・・・」

炬燵の上には熱いお茶に煎餅、そしてミカン。冬の定番スタイルである。
半纏を羽織った男は一人茶を啜る、こんな寒い日は家でのんびり過ごすのに限る。

ドムドム・・・

不意に戸に何か当たるような音が響く、はて?と男が戸口に向かうと

「ゆ!あいたよ!」
「ここはゆっくりできそうだね!」
「ゆっきゅり~」
「ぬくぬく~」

「「「ゆっくりしていってね!!」」」

そこにいたのはゆっくりだった。
大きいまりさとれいむが1匹ずつ、そしてそれらの赤ちゃんと思わしき小さなゆっくりが各種3匹ずつ。
どうやらこの饅頭一行は家族らしい、何のようかと男が考えていると

「ゆゆ!?なんでれいむたちのおうちににんげんがいるの!?」
「にんげんはさっさとまりさたちのおうちからでていってね!ここでゆっくりしたいならごはんをよういしてね!」
「ちょーだちょーだー!」
「まりちゃたちのためにごはんよういちてね!」

開口早々のおうち宣言、あまつさえ食べ物を要求してくるとは流石饅頭、これが噂の餡子脳とやらか。
ここで潰してもよかったが、男もちょうど暇をしていたところなのでゆっくりたちを部屋へと上げることにした。

「ふむ、なら食べ物を用意してあげるからこっちにきなさい。ここよりも暖かいしね。」
「わかったよ!ゆっくりついていくよ!」
「おいしいごはんたくさんよういしてね!」
「れいみゅいっぱいたべりゅよ!」
「おねぇちゃんじゅりゅい!まりちゃだっていっぱいたべりゅよ!」

ワイワイガヤガヤやかましく男についていく饅頭一家。
途中、この一家に冬篭りをしないのかと尋ねたところ

「もりはたべものもないし、さむくてゆっくりできないよ!」
「これからはここでゆっくりするんだぜ!おじさんもまりさたちのけらいにしてとくべつにゆっくりさせてやってもいいんだぜ!」

俺まだ20なんだけどなぁ、男はぼんやりとそんなことを思う。
どうやらこの一家は越冬の準備をせずゆっくりし続けていたようだ。
そしていざ冬になり、にっちもさっちもいかず人里へと出てきたらしい、計画性のないやつらめ。

「さて、それじゃミカンを食べさせてあげるから皆口をあけてね。」
「ゆっくりわかったよ! ゆっくりはやくおくちにいれてね!」

久々の食事にありつける、その思いにゆっくり達の目はキラキラと輝く。
そしてミカンを持った男の手が一家へと伸びた次の瞬間

「ばるす」
「「ゆぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!?」」
「「ゆゆゆゆゆ!? おとーしゃんおかーしゃんどーじだのぉぉ!?」」

男は手に持っていたミカンの皮を勢いよく絞り汁を飛ばしたのだ。

「ゆごおぉぉぉぉ!! い”だい”い”ぃ”ぃ”ぃ”ぃぃぃ!!!」
「まりさのおめめがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

まりさは激しく首?を振るように転げまわっている。
れいむに至っては顔面を畳に激しくこすり付けている、いいリアクションするなぁ。
そんな両親の奇行に恐怖したのか、あるいは潰されてはたまらないと思ったのか赤ちゃん達は部屋の隅で小さく固まっている。

「おとーしゃんたちはゆっくりこっちにこにゃいでにぇぇぇ!!」
「そっちでゆっくりしててにぇぇぇ!!」

「「どおじでぞんなごというのおぉぉ!! ゆっくりしないでだずげてよおぉぉぉぉぉ!!!」」

うわぁ、赤ちゃんドン引きしてるよ、てか泣きはいってるし。
そうして暫らくこの苦しみは続いた。




「ゆはぁ・・・ゆはぁ・・・」
「くぉはぁ・・・くぉはぁ・・・」

数分後、ようやく痛みも和らいだようで2匹は落ち着きを取り戻した。

「いきなりなにするのぉ!!」
「ひどいことするじじいはさっさとしねぇ!!」
「ちょーだちょーだ! ゆっくちできにゃいじじぃは まりちゃちゃちにょ おうちかりゃでてっちぇにぇ!」
「ゆっくちちないでちゃっちゃっとちんでね!」

あーもう読みにくいなぁ。
ここで先程まで両親を見捨てていたちび達も手を返して攻勢に出始める、現金なもんだ。
饅頭一家がぷくっと膨らんでプンプンと言いながらぼむぼむと跳ねている様は、中々にシュールである。
しかし、この光景に水を差すように両親達が奇妙な声を上げた。

「・・・ゆ? なんで・・・?」
「ゆ? どうちたのおかーしゃん?」
「・・・うそなんだぜ?・・・どうして?」
「ゆうぅ? おとーしゃんもどーちたの? しゃっしゃとじじぃをやっつけようよ!」

「「どうじで れいむ(まりさ)のおめめが みえないのおおおおおおおお!!!???」」
「「ゆゆゆゆゆゆゆゆううううううぅぅぅぅ!!???」」

なんとこのゆっくり達、ミカンの汁で失明してしまったらしい。
んな馬鹿な、男がれいむを手に取り強引に目蓋を持ち上げる。

「ゆぎぃ!?」

どうやら目玉の表面が溶けてしまったらしい。人間でも確かに痛い、しかしまさかこれで失明するとは・・・。
そういえばゆっくりの眼球は寒天らしい、寒天の強度ではミカンの酸に耐えられなかったのだろうか?

「ゆべぇ!?」
「れいむぅー!?」
「「おかーしゃーん!!」」

うーんと唸りながら男はれいむを床に放り投げた。
れいむは見えないこともあり上手く着地できず、二転三転してようやく止まった。

「ゆっぐぢやべでぐだざいいぃぃぃ!!」
「もうまりざだぢにひどいこどじないでぐだざいぃぃぃ!!」

とうとう両親は泣き出してしまった、さっきまであんなに強気だったのに折れるのが何とも早い。
だが、これ以上こいつらを痛ぶって餡子が飛び散って汚れるのも面倒だ。
何より目が見えないなら、しばらく放って置いたところで逃げられはしないだろう。
男はそう判断し、次の獲物へと向かっていった。

「うー☆ たーべちゃうぞ~♪」
「ゆゆゆ!? こっちにこにゃいでえぇぇぇ!?」
「ゆっくちちゃちぇてよおぉぉぉぉ!?」
「ゆー!?あかちゃんたちにひどいことしないでね!?」
「みんなゆっくりしないではやくにげてねえぇぇぇぇぇ!!!」

赤ゆっくり達は慌てて逃げ始める。 
しかし部屋の中ではそれも限界があり、健闘虚しくあっさりと追い詰められてしまった。

「おねがいじまずうぅぅぅぅぅ、れいぶはどうなっでもいいでずがらあかちゃんたちにひどいことしないでぐだざいいいいい!!」
「まりざも!まりざもどおなってもいいでずがら! おねがいじまず、おにいざんんんんん!!」
「・・・ふむ、君達のお母さん達はああ言ってるぞ、いい親を持ったね。」
「ゆぅぅぅ、おがーじゃんありがおおぉぉぉぉぉ!!」
「まりじゃだちだずがっだよぉぉぉぉぉ!!」

ゆーんゆーん
途端始まる大号泣、なんとも感動的ではないか。

「「おに”い”ざんあり”がどう”ございまずうぅぅぅぅぅ!!」」
「「あ”り”がどお”ぉぉぉぉごじゃい”まずうぅぅ!!」」

男は一息つき赤ゆっくり達へと近ずく、ちび達は助かったものだとニコニコして男を見上げている。
そして手の届くほど近づいて、男はにこりと優しく微笑みを浮かべた。

「だが断る」

ピュピュッ

「「!!???  ゆぎゃあああああああああ!!!!!」」

「いぢゃいぃぃぃぃ!!」
「あぢゅいぃぃ!? あぢゅいよおぉぉぉ!!」
「ど、どうじだのおぉぉぉぉ!?」
「おにいさん!! ゆるしてくれたんじゃなかったのおぉぉぉぉ!?」
「ん?何が?」
「なにがじゃないよ”おぉぉぉぉぉ!!」
「あかちゃんだぢはゆるじでぐれるっていっだのに”いぃぃぃぃ!!」
「いやいや、俺一言もそんなん言ってないよ?」
「ゆゆ”うぅ!?」
「俺はいい親持ったねって言っただけだし。」
「ゆ”ぎいぃぃぃ!? だまじだねぇぇぇ!!?」
「うぞづぎのじじいはいまずぐじねえぇぇぇぇぇ!!!」

両親は体をぐにゃりと潰し力を蓄えた。
その次の瞬間、ゆっくりらしからぬすごい勢いで鬼の形相の2匹は激しく飛びついた!!!


      • 炬燵に。


「「ゆべぇ!?!」」

あーあー、目が見えないのにそんな激しく動くから・・・うっわぁ顔へこんでるよ。あ、餡子吐いた。

「「ゆ”っぐぐぐぐ・・・よけるなひきょうものぉ!!」」
「いや、俺動いてないし。」
「「う”があ”あぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

余程気に触ったのか顔を真っ赤にし暴れだし、ついには狂ったように炬燵の足に体当たりをしはじめた。


「おいおい、ものに八つ当たりするとか、お前ら子供かよ。」
「「うる”ざいぃぃぃ!! おま”え”はざっざどじね”え”えぇぇぇぇぇぇぇ!!」」
「ププッ 俺に当てられないからって物壊して満足ですか。 おお、無様無様(笑」
「「ぶぎい”いぃぃぃぃぃ!!!!」」
「ブギーって豚かよ(笑 いや、こんなこと言ったら豚に失礼だな、ごめんねぇ~、ぶ・た・さ・ん☆キラッ」
「「・・・・・!!!!!!!」」

目が見えなく耳に頼っている分、なまじ言葉に対して敏感になっているのだろう。
返す言葉もなくなったか、ついには只黙々と炬燵を攻撃するのみになってしまった。
しかしそれすら饅頭には叶わぬらしい。

ダバダバッシャァ!!
「「あ”ああああぢゅぢゅぢゅぢゅぢゅぢゅぢゅうぅぅ!!?」」
「ぶふぅっははははははははは!! おま、おまえらねーって!! 」

卓上に置いてあった急須と茶碗が見事に直撃したのだ! なんという奇跡!!

「ちょっ!ちょっとまじで勘弁してくれ!! 腹筋がつる!!」
「「わ”ら”うな”あぁぁぁぁぁぁ!!」」

ゼーハーゼーハー
あーびっくりした・・・まさか饅頭ごときに殺されかけるとは・・・腹筋鍛えて置いてよかったわ・・・。
畜生に神は居ないと言う人が居た、ならゆっくりは畜生でない。俺は奴らに笑いの神が憑いているのを見てしまったからな。
男が落ち着きを取り戻し改めて暴れ饅頭に目をやる頃には、2匹はゅーゅーと力なく呻くだけになっていた。

「よし!」

男は二度三度深呼吸をし、放置していた赤ゆっくりの元へと向かった。

「ゆげ・・・あぢゅいよおぉ・・・」
「まりじゃの・・・まりじゃのほっぺがあぁ・・・」

長いこと放って置いた為かかなりぐったりしている。
いかん、あちらに気を取られ過ぎたかと男が反省していると

「・・・ゆぎゅ!? あ”あ”あ”ああぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」

ブピュー!

「まりじゃあああぁぁぁぁぁ!?」
「いぎなり”どおじだのおぉぉぉぉ!??」

突如一番小さな赤まりさが餡子を噴出しはじめ、ざわめき立つ赤ゆっくり。
どういうこと・・・? 男にはわけがわからなかった。

先程男がミカン汁を赤ゆっくり達にお見舞いする際、親の時のように目だけをピンポイントで攻撃できなかった。
これは、目前で親に起こった惨劇を見た赤ゆっくり達がいくら馬鹿でも男に対し警戒を示していたからだ。
一度助かったと安堵しきったちび達を、一気に絶望に叩き落すという「持ち上げて落とす」心理効果のためには気取られてはいけない。
そこですばやく全てのゆっくりに苦しみを与えるため、狙う余裕がなかったのだ。
そのために、ちび達は目はもとより体中にコレを浴びることとなった。
では何故に餡子汁の間欠泉をおこしたのか?
風船にミカン汁をかけると破裂するという理科の実験をお知りだろうか、アレと同じ原理である。
特に小さいゆっくりは皮が薄くちょっとしたことで破れてしまう。
成長したゆっくりならともかく小さな個体には少量のミカン汁でも充分な脅威となるのだ。
また小さなゆっくりは中の餡子も水分が多く、ちょっとした傷でも餡子が激しく流出してしまう。
結果・・・

「ゆゆ! れいみゅがらみょあんこでてるうぅぅ!?」
「だめえぇ!! ゆっきゅりできにゃぐにゃ”っぢゃう”ぅ!! 」
「あんこさんゆっっぎゅりどまっでぇぇぇ!! ゆっぎゅりじでっでよおおおお!!?」

次々と餡子の噴水をあげる赤ゆっくり達、まさに阿鼻叫喚である。

「おに”いじゃんみでないでだじゅげでよおぉぉぉ!!」
「おにぇがい”じまじゅうぅぅぅ!!」
「おいおい、君達ゆっくりしてないなぁ。 ゆっくりしていってね!」
「「ゆ”っぐぢできにゃ”い”いぃぃぃぃ!!」」

この時、男の言うようにゆっくりじっとしていれば餡子の流出もゆるやかになり死ぬことは無かっただろう。
だが餡子の流れ出る恐怖と焦り、そして酸が体を溶かす痛みに耐えかね赤ゆっくり達は騒ぎ続けた。
暴れては餡子が飛び出し、これにより心身共に傷ついてゆく。これに耐えかねさらに暴れて・・・。
数分後、ちび達は満足に動けなくなってしまった。
そして

「「・・・もっどゆっぎゅりじだがったぁぁぁ!!」」

最後にこう言い残し、終いには二度と動くことはなくなってしまった。

「さて・・・と。」

男は赤ちゃん達だったものに一瞥くれると、親の元へと向かった。

「ごろず・・・ごろず・・・」
「じね・・・じね・・・」
「あらら、こりゃもうだめだな。」

2匹の親ゆっくりは壊れたレコーダーのように恨み言を繰り返すだけになってしまっていた。
これ以上いじっても大した反応は望めないと思った男は、叩き潰そうかと考えたが

「・・・ふむ。 あんなに笑わせてもらったし、せっかくだからもっとゆっくりさせてあげよう。」

と2匹を掴み上げ玄関へと向かっていった。
もはや2匹に抵抗する力は無く、されるがままであった。

そして外に出た男は2匹を雪の上へ、まるで割れ物でも扱うよう丁寧に置いた。 
もっともこの行為は優しさからでなく、さっさと死なれても詰らないと考えたからだった。

「ここなら死ぬまでゆっくり出来るよ。 それじゃゆっくりしんでいってね!」

男はそう言い残し家へと入っていった。

「・・・・・なに、これ?」

冷静になった男に待っていたのは、飛び散った餡子にぶちまけられたお茶。
壁や畳に留まらず、炬燵布団にまでぐっちょりと大きな染みを描きあげている。


「ゆっくりいじった結果がこれだよ!!」


一方・・・
残された2匹にシンシンと雪が降り積もり、それに伴い煮えたぎっていた餡子もヒンヤリーと冷めていった。
人間でもそうだが、どんなに興奮していてもふとした瞬間に我に帰ることというのは多い。
餡子が冷えるにつれ2匹は冷静さを取り戻していった。
しばらく横になっていたせいだろうか、体力も幾分か回復したようだ。
そして余裕が生まれた2匹の取った行動とは

「まり”ざがにんげんのどごろ”に”な”んでいごうっでいうがらああぁぁぁぁぁぁ!!」
「もどはどいえばれいぶがざむぐなっだのに”ごはんあづめだりじながっだがらじゃないいいぃぃぃ!!」

罵りあい、責任の擦り付け合いである。
この期に及んでこのような行為を行えるとは、ある種の感嘆さえ感じてしまう。
そうこうしてたっぷり罵りあった2匹は、これにより戻った体力も空になってしまった。
そんな2匹に無情にも雪は降り積もる、こうして今度こそ饅頭達は動かなくなってしまった。


冬の終わり
雪が溶け始める頃、男は玄関先で奇妙な饅頭を見つけた。
それはカチコチニに凍った何ともキモイ冷凍饅頭(2個いり)であった。

「そーいやこんなんあったなぁ・・・。」

男は記憶をさかのぼった
(ミカン汁かけたら大騒ぎして炬燵に突っ込み急須直撃、アレは笑えたな)
思わず口元が緩む、だが・・・
(いやでもあの後掃除大変だったんだよな・・・畳の染みは取れないし、炬燵布団カビちまったし・・・)
思い出し笑いは10秒で思い出し怒りに変わった。

「があぁぁぁぁぁ!!何か腹立って来たあぁぁぁ!!!」

男は力任せに饅頭夫婦を踏みつけた

ピシピシ  メコッ

「んあ?」

「・・・・・だいたいまりざがもっどごはんあつてめればよかったんだよ! かいしょうなし!!」
「・・・・・ゆぐぅ!? れいむなんがかりもじないでたべでばかりのひまんまんじゅうのくせにぃ!!」
「「ゆがあぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

何と2匹は蘇生したのだ。

  • 餡子が流出するような致命傷を負っていなかった
  • 氷付けになり活動が停止することで体力が温存された
  • 雪に埋もれることで野犬やカラスから身を守れた

これらの偶然が重なり、2匹は生き長らえた。 もっとも、もとより生き物なのかそれすら解らん存在である。
ちょろっとしたことで死ぬ半面、ちょろちょろっとしたことで命を繋げる。 何とも適当なことだ。

「よ! お前ら久しぶり! ゆっくり出来たか?」
「ゆゆ!?そのこえはおにいさん!?も”うゆる”じでぐだざいぃぃぃぃ!!!」
「ゆっぐりざぜでぐだざいいぃぃぃ!!」
「お、ゆっくりのくせに覚えてるだなんてやるじゃないか、感心感心。」

実際は冷凍されていた2匹にとっては、去る虐待が今さっきの出来事なだけなのだが。
ここで男は閃いた。

「なぁお前達、そんなにゆっくりしたのか?」
「「はい”いぃぃぃぃ!! ゆっぐり”じだいでずうぅぅぅ!!!」」
「よし。ならゆっくりさせてやろう! 遠慮するな、死ぬまで面倒みてやるって。」
「「ゆぎいいいぃぃぃぃぃ!!?」」

男は2匹を持ち上げると家の中へと帰っていった。



晩春
「よーし、今日もお前達のカワイイ赤ちゃん貰っていくぞ~☆」
「やべでぐだざいいぃぃぃぃ!! あがぢゃんもっでがないでえぇぇぇ!!」
「ばりざのがわいいかちゃんんんんんん!!」

そこに居たのは男、そして顎から下が土に埋まり紐で体を鉢に固定されたゆっくり。
2匹が叫んでいる内容から男が彼女達の赤ちゃんを奪ったことが伺える。
だが奇妙なことにそこに赤ちゃんゆっくりの姿は無かった。

「むーしゃーむーしゃーしあわせー♪ あー、れいむとまりさの赤ちゃんとってもおいしいよ!!」
「ゆぎぎぎぎぎ、ぼうやべでぇぇぇぇぇ!!」
「あがぢゃんにげでえぇぇぇぇぇ!!」

男の手にあるのはミカン、どうやらこれを赤ゆっくりと思い込んでいるようだ。

「げぷ、それじゃお礼に栄養補給してあげるね!  ばるす」
「「ほごおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!?」」

そう言うと男はそれぞれのゆっくりの両目にミカン汁をお見舞いしてあげていた。
見えなくても痛いものは痛いらしい。



戻って晩冬
男は以前ゆっくりの木化と言うのを本で読んだのを思い出した。
何でも茎の生えたゆっくりを土に半分植えると根を張り体も硬くなるのだとか・・・。

「と言うわけだ、存分にすっきりしていってね!」
「「ゆゆゆゆゆっゆうっゆうゆううううう!!」」

男は2匹をくっつけると激しくシェイクしはじめた。
2匹はあっというまに「「すっきりー!!」」した、だが男は止まらない。

「ほらほら、まだれいむしかにんっしんっしてないじゃないか!家族は多いほうが楽しいだろ?」
「「も、もうむりいぃぃぃぃぃ・・・!!!!!!ずっぎりいぃぃぃぃ!!!!!」」

こうして男は2匹が茎ボーボーになるまで強制すっきりを行った。
途中黒くなる度にオレンジジュースをかけていたので、命を落とすことは無かった。
そして用意していた鉢に植えこみ、固定したまではよかったのだが・・・。

「かひぃっ・・・かひぃっ・・・」
「ゆへ・・・ゆへ・・・」

茎の大半は翌日には実を付けることもなく枯れ落ちてしまった。
残った茎も元気なく萎びており、実をつけそうな気配は皆無であった。

「こりゃダメかなぁー、うーん・・・あ。」
「ゆっほおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

男が茎を弄っていると根元近くでポリッと折れてしまったのだ。
断面から餡子が勢いよく流れ出し、放っておいても止まりそうにない。
ここまでの労力が無駄になるのはゴメンだと、男は咄嗟に手にあるもので栓をした。
それはさっきまで食べていたミカン(温州)のヘタだった。
何故こんなのを持っているかというと、何となく指先で転がしていたのだ。 そういう事あるよね?
かくして辛くも止血?を終えた男は満足げに床に着いた。

翌朝、男は奇妙な光景を目にした?

「これは一体・・・なんじゃらほい?」

数本の茎が青々と元気になっているではないか! 
そこまでは良かった、だが

「このー木なんの木?」

どうもゆっくりの茎とは何かが違う、茎には数本の棘があるなど見れば見るほどゆっくりらしくない。
そうして観察するうちに男はついに気付いた。

「そういやここって昨日ポリったところだよな・・・え? これ温州ミカン???」

どうやら適当に刺したミカン(温州)のヘタがさながら挿し木のように根付き一気に成長したらしい。

(しかし、饅頭に挿し木って、そもそもあれヘタだぞ? つか一晩でこんな伸びねぇよなぁ?でもミカンぽいし・・・)

男はしばらく考えた、そうして辿り着いた結論は

「生命の神秘だな、自然の力はすごいわぁ・・・」

であった。

(オレンジジュースで回復するくらいだし相性いいんだろう、多分。同じ柑橘類だし。)

もといこの饅頭に常識は通じない、細かいことなど気にしてられないのだ。
今はこのミカンの活用法を考えることのほうが有意義である、男はそう判断した。


再び晩春

「しっかしここまで育つとはなぁ・・・」

今では2匹の頭には立派なミカン(温州)が生えている。
木の大きさ自体は大したことないが、如何せん着果量と収穫までのサイクルがとてつもなく早いのだ。
それはいわゆる、ゆっくりの妊娠から出産までのサイクルと同程度であった。
また目が見えないとは言えゆっくり達がミカンを赤ちゃんと認識していること、
ストレスが果実の甘さに反映されているあたりを考えると、全く無関係でもなさそうである。

このミカン(温州)の肥料は、ご飯と称し口にねじ込む生ゴミと食後のミカン汁。
あとは思い出した頃にお茶をかけるくらいである(トラウマらしくかけると面白い)。

そろそろ暑くなって来た、もうすぐ夏の日差しが照りつけるだろう。
そうしたら夏ミカンでも刺してみるか、あるいはスダチやユズも便利かもしれない。

男は律儀に約束を守っている、この2匹は死ぬまで一歩も動くことなくゆっくりしていくだろう。
今日も元気に夫婦は叫ぶ

「「あがぢゃんもっでがないでええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」」







終われ



作者・ムクドリの人

他に書いたの
  • ゆっくりディグダグ
  • ゆっくりディグダグⅡ
  • ミカン(修正前)
  • キャベツ
  • 和三盆

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最終更新:2022年05月03日 16:02