森から山から大量のゆっくり達をトラックに積める。
「おじさん!!どこにいくの!?」
「ここはくらいよ!!あくるくしてよ!!」
「まりさたちをゆっくりだしてね!!!」
トラックからはゆっくりたちの声が耐えない。
本当、近所迷惑この上無い。
俺はゆっくりを無視しトラックを走らせた。
「お、来たか」
暫くしてゆっくりを乗せたトラックは馬鹿でかい、しかし人通りは無いホテルに到着した。
「随分と早かったじゃないか。3時間も前だぞ?」
その男は随分と驚いていたようだ。
「ええ、準備の時間等を考えるとこのくらいが良いかと・・・悪いことをしたでしょうか・・・」
「いやむしろ好都合だよ。礼としてとっておきたまえ」
俺は封筒を渡される。中には随分と入っているようだ。
「あの・・・申し訳ありませんが、これはお返しします」
「何?」
「その代わり、私もこのイベント、ご一緒してもいいでしょうか?」
男はくすりと笑い、
「構わんよ。しかしその服装ではなんだ、ちゃんとした服を用意してあげるから来なさい、ゆっくり達は部下に運ばせよう」
「あ・・・ありがとうございます!」
俺はトラックから自分の荷物を下ろすと男についていった。
「遅くなりました、着慣れない服だったので・・・」
「ん、大丈夫だ、まだ開催まで時間はある。ゆっくりしていくといい」
見ると舞台の準備は既に終わっているようだ。周りの席にはいかにも富豪な御方がワイン片手に悠々としている。
「しかし・・・いいんですか。俺みたいなのが特等席だなんて・・・」
男はふふっと笑い、
「いや、君みたいなのだからこそ、だ。君はこの方々とはきっと話が合わないだろう、私なりの配慮だ」
「はぁ・・・ありがとうございます」
男なりの配慮。
確かに富豪の人と俺の生活はかけ離れているだろうし、会話の内容もかみ合わないに決まってる。
俺は素直に男の配慮が嬉しかった。
「よし、ではそろそろ始めようか・・・」
そう言うと男は立ち上がり、マイクを手に取る。
「えー皆様、本日は貴重な時間を割いて本会場へ御来場いただき、誠にありがとうございます。」
周りの人々は軽く会釈する。どうやらこの男、相当上の立場の人間のようだ。その後も暫く男の挨拶は続く。
「では、これよりゆっくり競馬を始めます」
その宣言を合図に俺の下の階、1階ホールの上に設けられた大きい台の上にゆっくりが投下されていく。
「ゆゆ!!?やっとあかるくなったよ!!!」
「ゆ!!!?おじさん、おばさんたちだぁれ?ゆっくりできる?」
「ここひろーい!!ここをれいむたちのおうちにしようよ!!」
「そうするー!ここならゆっくりできるね!!」
一気に会場が騒がしくなる。俺は顔をしかめるが、他の人は平然としている。前々から行っているためもう平気なのだろうか。
「えー、まずは聞けゆっくり達。お前達には今から少しお遊びをしてもらう。」
男がそう言うとゆっくり達は更にさわがしくなる。
「ゆ!?いまからあそぶの?」
「ゆっくりあそぼうね!!」
男は騒々しいゆっくりたちの声を軽く流して説明に入った。
「いいかよく聞けゆっくり達よ。今からお前達に向こうの台まで渡ってもらう。奥のゴールまで辿り着けば美味しいお菓子をやろう」
ゆっくり達の前には板があった。板といってもそれなりの強度はあるようだが。
「ゆゆぅ!!?おかし!まりさおかしたべたい!」
「れいむたちもたべたい!おじさんゆっくりたべさせてね!」
「ゅー♪」
ゆっくり達はお菓子という単語を聞いた途端全員が満面の笑みでこちらを見てきた。
目の前にある恐怖を知りもせずに。
「ほう、元気なゆっくり達だな。この板は1匹ずつしか渡れないくらいしか幅が無い。慎重にいくことだな。」
「「おかしおかしー♪」」
中の二匹は威勢よく橋を渡っていく。
「ゆ!?ずるいよ!おかしをひとりじめしようとしてもだめだからね!!」
それに伴い4,5匹も橋を渡る。
更にそれに伴って全てのゆっくりが橋をわたりそうだが、その前に事は起こった。
「ゅ”っ!!?」
先頭のゆっくりまりさが板から転落する。
「ゆぅっ!!?まりさ・・・!?」
その板から下までは20m。人間が落ちても打ち所が悪ければ重傷を負う可能性もある高さだ。
当然、饅頭であるゆっくりが落ちた先に待っている運命は―――
ベチョッ
「まりざぁああぁああ!!!」
潰れるしかない。人間のように「打ち所が良ければ助かる」なんてことはない。ゆっくりは全てが急所なのだ。
そして潰れたまりさを見て他のゆっくりも泣き喚く。
「まりざあぁぁああ”あ”あ”!!!しんぢゃいやあぁあああ!!」
「なんでおぢだのぉおおぉおおぉぉぉ!!!!」
しかしその中の一匹が違う言葉で泣き喚いた。
「あんな”ふう”になりだぐない!!ここからもどるよ!!!!」
板に乗ってしまっていたゆっくりだった。一度渡った板からさっきまでいた所に戻ると言い出したのだ。
「ゆゆっ!!そうだね!おちなきゃいいんだもんね!!!!」
他の板を渡ったゆっくりも賛同して引き返そうとする。
しかし、ゆっくりは人間のように二本足があるわけではない。
ゆっくりの方向転換は最低でも自分の体のもう一つ分くらいのスペースが横に無いと成し得ない。
それを考えずに方向転換しようとしたゆっくりは、
「ゅっ!!!」
落下。
1匹を残して板を渡った他のゆっくりは、全て落下してしまった。
「どおじでもどれn」
「どおじでおぢd」
悲鳴は途中でかき消される。全て言う前に落ちて潰れてしまった。
「うひゃー、すごいですねこれ。やっぱりゆっくりって馬鹿ですね」
俺はこれほど愉快なことは無かった。
前々からゆっくりは気に入らない所があったし。
「なぁに、こんなのは序の口。これから更に面白くなるさ。」
板に残ったのは1匹だけ。その1匹は地に着いたまま方向転換するのではなく、一回飛んで半回転するという技を成し得た。
「ゆ!!これでゆっくりもどれるね!!」
なかなか頭がいいのかもしれん。このゆっくり。
そしてそのゆっくりはゆっくりと元いた場所へと戻った。
「おじさん!!!そんなところでみてないでさっさとたすけてね!」」
「そーだそーだ!おうちかえる!!」
「はやくおかしちょうだいね!!!」
台に残ったゆっくりたちはさまざまな文句を浴びせてくる。
しかし男は笑っている。嘲笑という笑いを。
「おいおい・・・、何故渡らない?後ろの恐怖に気が付かないのか・・・?」
「ゆっ・・・?」
「おい、カーテンを開けろ」
男がそう言うと係員の黒服がゆっくりたちの後ろにあるカーテンを開く。
そこには柵で遮られたゆっくりゃの大群が涎を垂らして待っていた。
「うー♪たーべちゃーうぞー♪」
「うびゃあぁあぁあああぁぁあ!!!おがああぁああざぁあああん!!!」
「その柵が開くのは今から25分後!あちら側に辿り着けばお前らをゆっくりゃから隔離してやる。渡り着いた者はお菓子を食べられる。渡らない者はゆっくりゃに食べられる。」
そして最後に男は力強く言い放つ。
「放たれよっ・・・・・・・・・!勇ましいゆっくりたちの道・・・・・・・・・!Brave men roadへ・・・・!」
男の一言はほとんど届かなかった。
ほとんどのゆっくりは泣き喚いていて話を聞くどころではなかった。
一部「ざわ・・・ざわ・・・」などと意味の分からない言葉を放つゆっくりもいたが。
「いやぁあああ!!わたりたくない!!でもたべられだぐないぃいいいぃいい!!!!」
「それは無理だ。お前らに残された運命は渡って食べるか、渡って落ちるか、渡らず食べられるか、この3択しかない。」
「ならわだるぅ!!だべられだぐなぃいいぃい!!」
「いや"あ”ぁ”ぁ”あ”あ”!!!!!!」
ほとんどのゆっくりは泣く泣く板を渡っていく。
勿論そこからこぼれて落ちてしまったりバランスを崩して落ちてしまうゆっくりが少しずつ出てきた。
俺達側の人間はそれを肴にしワインを飲んでいた。
しかし、台の上に4匹ゆっくりが残っていた。
「おじさん」
その中の一匹が男に冷静な口調で話しかけてきた。
「・・・なんだ」
「このおあそび・・・そこのいたをのぼれとはいってないよね」
その発言に他の3匹も頷く。
何を言い出すんだ、このゆっくりたちは。
「・・・ああ。向こうの台まで辿り着きさえすればOKだ。問題ない」
ああっ・・・!!!
なるほど、確かにそうだ・・・!!!
さっきの説明でも男は『そこにある板を渡れ』とは言っていない・・・っ!!!
そのゆっくりに負けた感じがして俺は猛烈に腹が立った。
しかし、周りに向こうまでたどり着けるような足場は無いように思えた。
しかし、その4匹はとんでもない足場を渡っていった・・・!!!
ざわ・・・ざわざわ・・・ざわぁ・・・ざわ・・・ざわ・・・
次回、『襲撃』・・・・・・・・・っ!!!
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あとがき
なんかもう色々とごめん
お詫びのワンシーン
「おじさんたちとはゆっくりできないよ!ゆっくりしね!!!」
「おお、こわいこわい。しかし人間様に逆らうゆっくりには仕置きが必要だ・・・」
「ゆっ!!?なにするの!?ゆっくりはなしてね!」
「ふふふ・・・ゆっくりよ、これを見るがいい」
「これなぁに!!?とってもあつそうだよ!!さっさとれいむをはなしてね!!!」
「はなしてやるとも、そぉい」
「ゆ”っ!!?あついあつい!!ごごぢがうよ”ぉおぉおぉお!!!」
「さぁそこに顔をつけろ!!!そしてごめんなさいと10回言え!!!そうすれば助けてやる!!」
「ぎゅうぅううぅううぅぅぅうう!!!・・・!!!???--っ!!っー!!!!」
「まぁつけたらつけたで顔が焼け付いちゃって何も言えなくなるけどね」
さーせん
最終更新:2022年05月03日 18:45