御神炎


鼻歌を歌いながらお姉さんは田んぼの畦道をのんびりと歩いている。
右手には風呂敷、左手には紙を持っていた。

「うーん、この辺のはずなんだけどなあ・・・・道間違えてるのかしら・・・?」
そう言いながらお姉さんは左手の紙・・・地図を見ながら歩く。
お姉さんは隣村の外れにある神社を探していた。
その神社はご利益があることで有名な所で、村長から御神符をもらってくるように頼まれたからだ。

「う~、やっぱりさっきの分かれ道を曲がらなくちゃいけなかったのかなぁ・・・・」
お姉さんは地図とにらめっこをしながら歩いているとむにゅっとした変なものを踏んだ感触がした。
あれ?っと思うと同時に悲鳴が聞こえてきた。

「ぴぎゃああぁぁぁぁ・・・・・!」
お姉さんは何かと思い足元を見るとゆっくりまりさが踏み潰されていた。
まりさは帽子ごと真ん中を踏まれ、口から餡子を出しながらぴくぴくと痙攣をしている。

「ちょっ、ちょっと大丈夫?」
お姉さんは慌てて足を上げてまりさの様子を見る。

「ゆ゛っ・・・ゆ゛っ・・・ゆ゛っ・・・・・ぼっ・・う・・・だ・・・だべぇ・・・・ゆっぐ・・・・じだ・・・っだ・・・・・・」
まりさはそう言うと痙攣が弱くなっていき永遠にゆっくりしてしまった。
お姉さんは悪いことしちゃったなあ・・・と思いながらまりさを道の真ん中から畦の方に寄せてやった。
そしてまりさの近くに落ちていた枇杷を添えた後、目を瞑って手を合わせる。
ごめんなさい。ゆっくり成仏していってねと祈ったあとに目を開けると目の前にゆっくりれいむがいた。
番だった子だったのかしら?とお姉さんは思い、声をかけようとするといきなりれいむがまりさに向かって叫びながら体当たりをし始めた。

「れいむがおそなえしたものをもっていくからこんなことになったんだよ!とうぜんのむくいだよ!とっととじごくにおちてね!!」
このれいむの言い方にお姉さんはビックリした。
お姉さんは恐る恐るれいむに声をかける。

「あの・・・?れいむ・・・?この子はあなたのだーりんじゃないの?」
お姉さんが尋ねるとれいむは鼻息の荒いままお姉さんの方に向いた

「ちがうよ!わるいことをするまりさがだーりんのわけないじゃない!わるいことしたからこんなむくいをうけたんだよっ!」
そう言いながられいむはぷくーっと膨れた。
お姉さんはれいむの剣幕に驚きつつ、どうしたのかと尋ねた。
話を聞くとこいういうことらしい。
れいむはいつも通っている神社に『明日もおいしいご飯が食べれますように』とお願いをする為、枇杷をお供えにいったらしい。
そしていつも通り賽銭箱の前に枇杷を置き、目を瞑ってお祈りをしているとスッとれいむの目の前を何かが通った気がした。
何かと思い目を開けると目の前にあった枇杷が無くなっていたのだ。
慌てて周りを見るとまりさが枇杷を咥えて逃げていくのが見えたのでれいむも必死に追いかけてきたのだという。

「なるほどねぇ・・・・。」
お姉さんは悪い子だったと聞くと少し罪の意識が薄れた気がした。
お供え物を取ったんだからしょうがない。罰が当たったのだろう。
そう思った時、はっと気づいた。

「ねえ、この辺に神社あるの?もしよかったら場所を教えてくれない?もちろんお礼もするわよ」
お姉さんはれいむに道案内をお願いした。
れいむはお礼と聞き、二つ返事でお姉さんを神社に案内してくれることになった。
「ゆっくりのひ~♪すっきりのひ~♪まったりのひ~♪ゆ~ゆ~♪ゆゆ~ん♪」
お姉さんとれいむは歌を歌いながらゆっくりと歩いていくと遠くに神社の鳥居が見えてきた。

「おねえさん、ついたよー。」
れいむは鳥居の前までぴょんぴょん跳ねて行き、くるんとお姉さんの方に振り返る。
お姉さんはれいむにお礼を言い、お姉さんがお弁当に持ってきたおにぎり取り出し、竹の皮に包んでれいむにあげた。
れいむは枇杷とおにぎりを頭の上に乗せると喜んで神社の中に入って行った。



お姉さんも神社の中に入ると敷地内の光景に驚いた。
敷地の中に一つの群れがいるんじゃないかという位、たくさんゆっくりがいたのだ。
何事なのかと思って鳥居の下で呆けていると社務所から神主さんがやって来た。

「こんにちは。ああ、ここのゆっくり達ですね。うちは五穀豊穣と安産祈願ですからね。
 多産で有名なゆっくりですし、境内を汚したり悪いことをしない限り駆除しないんですよ。
 ところで今日はどうされたのですか?」
神主さんはにっこりと微笑みながらお姉さんに尋ねた。
呆けていたお姉さんは顔を赤らめ、しどろもどろになりながら御神符を授かりに来ましたと伝えて、
風呂敷の中の初穂料と村で取れた野菜を神主さんに渡した。
そうですか、ちょっと待ってくださいねと言って神主さんは本殿の中に入っていった。

お姉さんは神主さんが戻ってくるまでに参拝することにした。
参拝を終えた後、神社の敷地を見回すとゆっくりが特に固まっているところがあった。
分社の前だ。
驚くべきことにゆっくり達がちゃんと列を作って分社の前を並んでいるのだ。
よく見るとさっき道案内してくれたれいむも並んでいる。
先頭のほうを見ると丁度ゆっくりぱちゅりーが参拝をしようとしているところだった。
ぱちゅりーはお賽銭箱の前にいくつかのキノコをお供えすると二礼し、目を瞑って何かを祈っているようだ。
そしてそれが終わると一礼し、キノコを帽子の中にしまって石灯籠の近くまで跳ねていった。
お姉さんは興味深げに眺めていると神主さんが戻ってきた。

「お待たせしてすみません。こちらが御神札です」
そう言って神主さんはお姉さんに袋に入った御神札を渡す。
お姉さんは神主さんにお礼を言うと、目の前の分社について尋ねてみた。

「あの分社ってゆっくりに人気ありますよね?どんな神様が奉られているんですか?」
「ああ、あそこの分社はご祭神は判らないんですが、ご利益のある御神炎が奉られているんですよ。ちょっと覗いてみます?」
そう言って神主さんは分社の前に歩いていくのでお姉さんも付いて行った。
分社の前に立つと、中から青白い光が漏れている事に気づいた。
風に煽られた蝋燭の炎のように光が揺らめいている感じがする。
神主さんは懐から鍵を取り出し、分社の扉を開けた。

「こちらが御神炎ですよ」
そう言って神主さんはお姉さんに御神炎を見せた。
分社の中で御神炎の青白い炎が燃えていて、その炎の中にゆっくりれいむが居るのだ。
お姉さんは驚きながら観察をする。
御神炎に包まれたれいむは穏やかな表情をしながら目を瞑っていた。

「これ・・・?熱くないんですかね・・・?」
お姉さんは炎に包まれたれいむの顔見ながら神主さんに尋ねる。

「ええ、穏やかな表情をしているでしょう。大丈夫なんですよ。
 この御神炎には特別な力がありまして、人間や良いゆっくりには熱さを感じないんです」
「はぁぁ・・・・」
お姉さんは感心した。
周りのゆっくり達も御神体の顔を見て「すごくゆっくりしたれいむだね」「いいゆっくりだよ」と感嘆の声をあげている。
お姉さんは感心しながら御神炎を眺めていると境内のほうでゆっくり達が言い争う声が聞こえた。
何かと思って神主さんと境内の方をみると2匹のゆっくりが何かを言い争っていた。

「何かあったみたいですね」
神主さんは2匹のゆっくりの元に向かう。お姉さんも興味津々な顔で後をついていく。
2匹のゆっくりはゆっくりちぇんとゆっくりありすだった。

「ちぇんのキノコをたべたでしょー。うそつかないであやまってほしいんだよー」
「ありすはしらないわよ!ほかのゆっくりにたべられちゃったんじゃないの?」
ちぇんが泣きそうになりながら問い詰めているが、ありすはそんなこと知らないわとそっぽを向いている。

「どうしたんだい?ちぇんのご飯を食べちゃった子がいるのかい?」
そんな光景を見た神主さんは2匹に尋ねる。
ちぇんは神主さんの足元に駆け寄って泣き出す。
一方ありすは神主さんを見ると妙にそわそわし始めた。
どう見ても挙動不審だ。

「すみませんがその2匹を見てていただけますか」
神主さんはお姉さんにそう言うと分社の方に歩いていった。

「あ、ありすはそろそろおうちにかえらなくちゃ・・・。い・・・、いとしいまりさが、ま・・・、まっているんだったわっ」
そう言ってこの場を離れようとするありすを見て、お姉さんは抱えてあげて逃げられないようにした。

「は、はなじでぇぇぇっ!ばりざがあでぃずをまっでいるのよぉぉぉ・・・・!」
そう言ってありすは暴れてお姉さんから逃げ出そうとするが、お姉さんの手から逃げられない。

「はぁぁぁなぁぁぁじぃぃでぇぇぇぇぇ・・・・!」

暴れるありすを抑えているうちに神主さんが帰ってきた。
戻ってきた神主さんは手にお札を持っていて、そのお札がメラメラと青い御神炎が燃えている。

「このお札の炎でどちらが嘘ついているか判るからね。ちぇん、ちょっとごめんね」
そう言って神主さんはちぇんを持ち上げてひっくり返し、ちぇんの底部に炎のついたお札を置いた。
ちぇんの底部で青い炎が燃えているがニコニコしている。

「なんかあたたかいんだよー」
そう言っているちぇんを見て神主さんは「ごめんね。ありがとう」と言ってちぇんを起こしてあげた。
そしてお姉さんから暴れるありすを受け取りひっくり返した。

「やっ、やっ、やべでぇぇぇ!ひっぐりがえざないでぇぇ!」
ありすをひっくり返すと焦げた痕が3ヵ所あった。
神主さんはその火傷の痕をみるとむっとした顔になり、ありすの底部にお札を置いた。
お札の炎が青から赤に変わったかと思うと底部からぶすぶすと煙があがり、ありすから大きな悲鳴があがった。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛じゅぃぃぃぃいいい!あでぃずのあじがあぢゅぃぃぃぃぃ・・・!は、はやぐどがぢでぇぇぇぇ・・・!」
神主さんはお札をありすからどけるとお札の炎は元の青色に戻り、しばらくすると燃え尽きた。

「あじゅい゛ぃぃぃぃ・・・・!」
ありすはさらに悲鳴をあげている。
お姉さんがありすの底部をみると焦げ痕が3つから4つになっていた。

「ちぇん、ありすがやっぱり嘘をついててちぇんのキノコを食べたみたいだよ。後で代わりのご飯をあげるから境内で待っていてね」
神主さんはありすを持ち上げながらちぇんにそう言う。
ちぇんは「わかったよー」と言うと境内の方に跳ねていった。


「ありすを押さえて頂いてありがとうございます」
神主さんはお姉さんにお礼を言った。
お姉さんは抱えられて震えているありすを見ながらありすどうするのか尋ねる。

「この子はもう悪いことしてばかりなので特別室行きですねぇ・・・・」
神主さんはありすの口を手で塞ぎながらお姉さんにそう言った。

「あの、見学させてもらってもよろしいですか?」
お姉さんはどうなるのかちょっと興味を持ったので神主さんにお願いをする。
神主さんはちょっと困ったような顔をした後、特別ですよと言ってため息をついた。


神主さんは社務所の横の建物まで歩いていくと扉の前にあった金網の箱にありすを入れて蓋をする。
そして壁にかけてあった蝋燭立てをとると蝋燭に火を付けた。
箱に入ったありすをお姉さんが持ち上げて神主さんと一緒に建物の中に入る。
建物の中に入ると地下に下っていく階段があった。


「この先に特別室があるのですが・・・・そうですね。降りながら説明をしていきましょうか」
神主さんはそう言って階段を下って行く。お姉さんも神主さんに続いた。
神主さんは階段を下りながらお姉さんに説明をし始めた。

「まず分社にあった御神炎なのですが、あの炎は普通の燃料では燃えないんです。」
神主さんの説明を聞きながら下っていくと少し先に青い光が見えてきた。

「それではあの炎は何に燃えるかということになるのですが・・・実はゆっくりの欲なのです」
しばらく下っていくと階段の途中に壁に扉があった。
神主さんはここで立ち止まるとお姉さんに「中を覗いてみてください」と言う。
お姉さんは扉の窓から中を覗いてみると、分社にあった御神炎と同じように目を瞑ったゆっくり達が炎に包まれて青く燃えているのが見えた。

「この子達は分社の御神炎の予備みたいなものですね」
神主さんはそう言ってまた階段を下っていく。

「それでゆっくりがこの炎に包まれるとだんだん欲を吸い取られていくんですよ」
神主さんとお姉さんはさらに下ると一番底に着いたようで目の前に分厚そうな鉄の扉があった。

「でも欲が強いゆっくりがあの炎に包まれると炎の質が変わって勢いよく燃え上がってしまうんです」
そう言って神主さんが扉を開けるとゆっくり達の悲鳴が地下の中をこだました。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛・・・・・・。」
「あ゛づぃぃぃぃ・・・・・。ごべんなざいぃぃぃぃ・・・・。もうわるいことじまぜんんんん・・・・」
「だれがぁぁぁぁ、だずげでぇぇぇ・・・・。もういやだぁぁぁぁ」
部屋の中を覗くと金網の箱に入れられたゆっくりが赤い炎に包まれながら燃えていた。
髪の毛の先から黒くなっていき悲鳴を上げて箱の中を跳ねようとしているもの。
あんよから焦がされ、必死にもがいているもの。
金網に顔を押し付け、包まれた炎から逃げようとするもの。
黒焦げになって姿形では既に判別できないものなど、様々だ。
お姉さんはそのおぞましい光景に絶句し、ありすも今まで青かった顔を一層青くしながらだらだらとちーちーを漏らした。

神主さんはお姉さんからありすを受け取ると部屋のテーブルに箱を置いた。
そして箱からありすを取り出すとありすのカチューシャを外してお札を貼り始める。
お札を貼られながら、これからの自分の未来を知ったありすは泣きながら叫び始める。

「いやぁぁぁぁ、もやされてくるしむのはいやぁぁぁ!みにくくしんでいくなんてとかいはじゃないいぃぃぃぃ!」
がくがく震えるアリスを神主さんは無表情な顔で見ながらそっとありすに顔を近づけて囁く。
「大丈夫だよ。あの子達は死なないから。そこのまりさを見てごらん」

神主さんはありすを押さえながら、まりさが見えやすいように位置をずらす。
そこには黒焦げになった丸い物体があった。
まりさと判ったのは箱の上に帽子が乗せてあったからだ

「・・・ぁ゛・・・・ぁ゛・・ぁ゛・・・・・ぁ・・・・」
まりさらしき黒い物体が赤い炎に包まれながら呻いている。
その呻き声ももう止まるだろうと思ったそのとき、赤い炎が青い炎に変わる。
黒焦げだったまりさは青い炎に包まれた瞬間、黒焦げだった部分がじわじわと焼ける前の肌に戻っていく。
無表情だった顔にだんだんと赤みが戻ってくるとまりさは泣き叫び始めた。

「びゃああぁぁぁ・・・・っ!ぼう、ぼう、ばでぃざはあづいのやだぁぁぁ!ごろじでぇぇ・・・・!」
まりさは金網に顔を押し付ける。
顔に金網の跡がつくがそこから出られるわけでも死ねる訳でもない。
じわじわと元の姿に戻っていくと青い炎がまた赤く燃え盛りまりさを焦がし始めた。
「い・・・い・・・いやあああぁぁぁぁ!やべでぇぇぇ・・・・!」

「ほら、大丈夫だろう?」
そう言いながら神主さんはお札を貼っていき、ついにありすの目以外はお札で埋まってしまった。
ありすは滝のように涙を流していもがいている。
神主さんはありすを持ち上げ、他のゆっくりたちと同じように金網の箱に入れる。
金網の蓋を閉めた後に箱の上にありすのカチューシャを置いた。

「さて、これから君の体に張付いたお札に御神炎を着けるわけなんだけど、君はいい子だったかな?
 もし何かの間違いでここに連れてこられたんだったら君の体は青い炎に包まれて熱い思いをしないよ。
 でも逆に欲深く、悪い子だと赤い炎に包まちゃうからね」
神主さんは持っているお札を近くの燃えているゆっくりに近付け炎を移す。
ありすはその炎を見ながら目を大きく開き、もがもがと言いながらぶるぶる震えている。

「それじゃゆっくりしていってね」
そう言って神主さんはありすのお札に炎を移した。
青い炎は瞬く間に赤い炎に変わり、ありすを一瞬のうちに火達磨にした。
「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛・・・、あ゛づぃぃぃぃ・・・!あ゛でぃずのうづくしいがみがぁぁぁ!はだがぁぁぁ・・・・・!い゛やぁぁぁぁ・・・・!」
口を塞いでいたお札が燃えたのだろう。ありすの悲鳴が一際高く特別室に響いた。



お姉さんと神主さんは社務所に戻っていた。
神主さんは縁側で青ざめているお姉さんにお茶と羊羹を出した。
お姉さんはお茶を啜ると少し落ち着いたようだ。

「すみません。やはり刺激が強かったようですね」
そう言って神主さんはお姉さんに謝り、お姉さんの隣に座った。

「あの子達はどうなるんですか?ずっと御神炎に燃やされたままになるんですか?」
お姉さんはまだ少し青い顔で神主さんに尋ねる。

「いいえ、ずっとこの神社にいるわけではありませんよ。
 そうだ、ちょっと分社のほうに行ってみませんか?」
そう言ってお姉さんを分社に誘う。



「さて、多分そろそろだと思うんですが・・・・」
神主さんは分社の扉を開ける。
青い炎に包まれたれいむ。よく見るとうっすらと目を開けている。
そのままじっと見ていると段々まぶたが上がっていき、完全に開いた瞬間炎が消えた。

「ゆっくりしていってね。れいむといっしょにゆっくりしようよ!」
れいむは神主さんをみつけると目をキラキラ輝かせながら、神主さんの腕の中に飛び込む。

「こんにちは。れいむのおかげでゆっくりしているよ」
神主さんがそう言って撫でてあげるとれいむは嬉しそうな顔をした。
お姉さんもその笑顔に惹かれれいむを撫でてあげる。

「さて、れいむ。そろそろ君達の世界に戻らなくちゃいけないよ」
神主さんは高い高いをするように持ち上げてあげるとれいむは「わかったよ!」といって浮かび始めた。
そして淡い光とともにお姉さんたちの前からふっと消えた。

「どこに行ってしまったんですか?」
お姉さんは神主さんに尋ねる。

「あの子はたった一つの欲しか無くなってしまったんで、ゆっくり達が元々いた世界に戻っていったんですよ。
 最初こちらの世界に来たゆっくりは他のものをゆっくりさせたいという気持ちだけだったんですけどね。
 それがこちらの世界のものに惹かれて留まっているうちに欲にまみれて元の世界に戻れなくなってしまったんです。
 でもこれであの子も元の世界に戻れた。きっとまたこちらにひょっこり現れて色々なものを癒しに来てくれますよ」
神主さんはれいむが消えた空を見上げた。



(おまけ)
お姉さんが帰った後、神主さんは境内に歩いていった。
境内にはちぇんが待っていた。

「やぁ、待たせちゃったね。ごめんね」
待たせていたちぇんに声をかける

「いいんだよー。ぜんぜんだいじょうぶだよー」
ちぇんは嬉しそうに神主さんの足元に駆け寄る。
神主さんはちぇんを抱えて社務所の縁側に歩いていった。

縁側の前には七輪が置いてあった。
神主さんはちぇんを縁側に置くと社務所の奥に入って輪切りにしたタマネギとスライスしたニンジンを持ってきた。
七輪の網の上に持ってきたタマネギとニンジン置くとじっくりと焦げないように焼いていく。

「いいにおいなんだよー。おいしそうなんだよー」
そう言ってちぇんはよだれを垂らしている。
神主さんは焼けたものから皿に置いてあげるとちぇんはハフハフしながら食べている。
ちぇんを見ながら神主さんも焼けたタマネギを肴にお酒を飲み始めた。
今日も一匹送れたなあと思いながら神主さんは夕焼けを眺めた後、ふとちぇんを眺める。

目の前にいる子は良いことも悪いこともあるが慎ましやかに暮らす顕世の普通のゆっくりだ。
一方元の世界に戻れたれいむは多分ゆっくりの中でも有頂天の存在だろう。
だがまた欲に負けてしまえばまた奈落の底に落ちることになるのだ。
神主さんは両方のことを思いながら呟く。
「どっちが幸せなんだろうなあ・・・」

そんなことを思いながら神主さんは杯を重ねた。

(おわり)



豊作の話と火の話でリンクさせようとしたのですがどうにもならず、挫折して別の話にしてしまいました。
あとオチがもう少しうまく付けられればよかったのに付けられませんでしたorz

書いたもの。
ゆっくりいじめ系2468 豊作祈願
ゆっくりいじめ系2502 ゆっくり玉

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最終更新:2022年05月03日 23:29