注意:この話にはむかつくゆっくりが出てきますが、虐めはあっさり風味です




「んー、今日も一日よく働いたな」

そう言って青年は大きく伸びをした。
畑で取れた西瓜が良い値で売れ、しばらくは贅沢できるだろう。
そう思うとニヤけるのが止まらない。

青年はパンパンになった財布を叩き、鼻歌を口ずさみながら帰路へとつく。
途中無邪気に走り回る少年たちとすれ違い、自分にもそんな頃があったなと苦笑する。
夕暮れのせいか妙な感傷に浸りながら、青年はポケットから家の鍵を取り出した。

「ん? ……また入られたか」

それを鍵穴へと差し込もうとした時、家の中から声がする事に気付く。
見苦しい泣き声と、耳に障る怒声。それだけで侵入者の正体が分かる。
溜息を吐きながら青年は扉を開け、家の中へと入り込んだ。
そしてやかましい声のする方へと足を進める。

「ゆっ! おじさん、ここはまりさたちのおうちだよ! ゆっくりでていってね!」

案の定、間抜けな侵入者はゆっくりの家族。
親まりさと親れいむに、大きさの違う子どもが十二匹。
森から離れたこの家まで、よくそんな大所帯でこれたものだ。
距離もそうだが、普通は親が餌を集めて子は巣で待つだろう。
通常のゆっくり以上に頭が悪く、脆弱で身体能力も低い子を連れて外を歩くなど、自殺と何ら変わりはない。
一匹も欠ける事なくここまで来たのは幸運なのだが、その幸運はここまでだ、

「そうだよ、いたかったらおいしいものをもってきてね!」
「とくべつにまりさたちのごはんをつくらせてあげるよ! かんしゃしてよね!」
「ゆっちゅりでちぇいっちぇね!」
「はいはい、分かった分かった。ここに居たくないし、好きにしてくれ」

青年を見つけるとゆっくりたちは口を揃えて出て行けの大合唱。
ゆっくりたちのお望み通り、青年はその場を後にした。

そう、あのゆっくりたちは放っておいても問題ない。
透明な板で区切られているために、ゆっくりたちは狭い空間から出られないのだ。

「あの連中はどうやって出るつもりなのかねー」

馬鹿な連中だ。先ほど泣き叫んでいたり怒っていたのは、あそこら出られないためだろうに。
それも人間を見た瞬間忘れ、自分たちの家だと主張し出す。

何故そんなところにゆっくりたちがいるかと、あの場所は対ゆっくり用の罠だからだ。
家の壁にある、ゆっくり用の入り口が先ほどの場所に繋がっている。
入り口の扉は外からは押して開けれるが、中からでは絶対に開けられない。
つまるところ、簡単に閉じ込められるのだ。

ゆっくりは侵入口が見つからないとなると、石で窓ガラスを割って侵入してくる。
それを防ぐために、予め簡単に侵入できる場所を作っておくのだ。
そうする事によって被害を防ぎつつ、簡単にゆっくりを捕獲できる。
もっとも、外門と塀を築き、窓ガラスが強化できれば手っ取り早いのだが……



そうして青年はゆっくりたちを無視して夕食を作り、自称ゆっくりたちの家を眺める。
十四匹も居れば家は窮屈であり、自由に動き回れない様子だ。
よく見れば子どものうちの半分は泣いているし、もう半分は親に怒鳴っている。
泣いているのはれいむ種が多く、怒っているのはまりさ種に多いようだ。
そんな光景に青年は口元を緩めつつ、こっそり近付いていった。

「おかあしゃんおにゃかすいちゃ!」
「どおじでごばんがないのおおお!」
「れいむにこんなにおなかをすかせるなんて……おお、むのうむのう」
「おかあさんたちのうそつき! ここはおいしいものがたくさんあるっていってたのに!」
「そうだよ! うそつくおとうさんたちはゆっくりしんでね!」

子どもの声は甲高いし、煩わしいにもほどがある。
自分勝手な事を言って親を責めるのは大抵のゆっくりに共通するものだが、醜いものだ。

「どおじでぞんなごどいうのおおお!」
「まりざはわるぐないよ! わるいのばにんげんだよ!」

空腹の子どもたちから責められ、親まりさと親れいむは滝の様な涙を流している。
腹が減ってるのは二匹も同じなのだ。
きめぇ。青年は小さくそう呟き、ゆっくりたちを観察するために腰を下ろした。

「そうだよ! にんげんがおいしいものをよういしてないのがいけないんだよ!」
「せっかくまりさたちがきてあげたのになにもよこさないなんて、よっぽどばかなにんげんなんだね!」

親まりさの人間が悪い発言にすぐさま親れいむも同意し、自分たちから矛先をずらした。
ゆっくりたちの馬鹿な発言に青年は青筋を浮かべ、拳を握り締める。
そもそも自分の家ならば、食料くらい自分で用意しろと。
人間のせいにしているのは、その家が人間のものだと言っている様なものだ。

子ゆっくりならともかく、親ゆっくりはこの場所が自分の家でない事を分かってる。
分かっているからこそ自分の家だと宣言して、元居た者を追い出そうとするのだ。
そう言って威嚇し、言っても聞かないなら実力で追い出せばいい。
もしくは自分たちの奴隷にしてこき使うか。馬鹿なゆっくりらしい思考回路だ。

「そうだね、にんげんがばかなんだね!」
「おばかなにんげんはゆっくり死ね!」
「にんげんなんちぇおとうしゃんがやっちゅけちゃうよ!」
「ゆゆっ! あそこにばかなにんげんがいるよ!」

そんなゆっくりたちを見ながら食事をしていると、匂いにつられたのか一匹の子れいむが青年に気付く。
青年はそれを気にも留めず、ついでに箸も止めずに食事を続けた。

「おじさん、それをゆっくりまりさたちによこしてね!」
「それはれいむたちのたべものだよ! ゆっくりりかいしてね!」
「あとここからだしてね! こんなせまいとこじゃなくてれいむたちのおうちをかえしてね!」

無視していきたいのだが、流石にウザくてしょうがない。
そもそもおうちを返しても何も、ここは青年の家だ。
子れいむの脳内では、何時の間にか家を奪われてあの場に閉じ込められた事になっているらしい。
そのたくましい妄想力に呆れつつ、青年は言葉を返す。

「どうして? 自分の家だったら自分で出れるだろうし、食べ物も用意してあるんじゃないの?
 それとも食べ物も自分で取れなくて、自分の家からも出られない無能なの? 自分の事は自分でやってね」
「ゆゆっ!?」

固まるゆっくりたちを尻目に、青年は見せ付ける様に食事を続けた。
少々焦げてしまったが焼き魚は美味しい、漬物も良い感じにできている。
デザートの西瓜など、自分が作っただけあって最高の味だ。

「どおじでまりざだぢのごばんだべじゃうのおおお!」
「れいむはむのうじゃないのよ! おじさんもこんないじわるはやめてよね!」
「どろぼうするようなにんげんはゆっくりしね!」

ダメだ話が通じない。いや、分かりきっていた事なのだが。
西瓜に齧り付きながら、青年はは口元を緩めた。
だがこれでいいのだ。こうして馬鹿なゆっくりをどん底に突き落とす時ことこそ、何よりも面白い。

「分かった分かった。じゃあこうしよう、まりさと俺が勝負して俺が負けたら餌をやろう」
「ゆゆっ、ばかなおじさんだね! まりさにかなうわけがないのに!」

青年に指差された親まりさは勝ち誇った様に笑い、既に青年を見下している。
まあ、見下していなかった時などないのだが。

「おとうしゃんゆっちゅりがんばっちぇね!」
「やっとおいしいものがたべられるね!」
「やらなくてもわかってるのに、ばかなおじさんだね」
「おもいあがったばかなおじさんにげんじつのきびしさをおしえてあげてね!」

その言葉をそっくりそのまま返してやるよ。
青年はその言葉を飲み込み、ぐっと堪えた。

危ない危ない、言ったら余計調子に乗らせるだけだ。
いや、持ち上げておいて落すのは気持ち良いが、もっと良い言葉がある。

「じゃあ、もしまりさが負けたら何をくれるんだい?」
「おじさんはばかだね! ありえないことをかんがえてもしょうがないよ!」

浮かび上がった青筋をひくつかせながら、青年は拳を握り締めた。
更に親まりさに続いて子どもたちがゲラゲラ笑っているのが癪に障る。
馬鹿どもに今すぐ現実を突き付けてやりたい。そう思うも、後の楽しみのためにぐっと堪える。

「じゃあ俺が勝ったら君の大事なれいむを潰しちゃうよ。それでいいね?」
「なんでもいいからはじめてよ! まりさもれいむもこどもたちもみんなおなかペコペコんなの!」

馬鹿な親まりさの戯言を聞き流し、青年はゆっくりたちの家から親まりさを掴み出す。
そして手の高さから落してやると、ゆべっ! っと汚い声で鳴いた。

「さあ、どこからでも掛かっておいで」
「おなかすいてるからすぐにおわらせるよ! ゆっくりしないでしんでね!」

俺が死んだら誰が餌を用意するんだ。などとは間違っても口には出さず、青年は床に寝転んだ。
そうして体目掛けて体当たりしてくるまりさに目線を合わせ、ニヤつきながら観察する。

「うわーいたいー」
「ゆゆっ! きいてるよ! おじさんもうこうさんしたほうがいいんじゃないの!」
「おとうしゃんちゅよーい!」
「かてないしょうぶをもちだしすなんて、にんげんってほんとばかだねー」
「みのほどをしらないおじさんにおとうさんのつよさをおもいしらせてやってね!」

棒読みで青年が痛がると、ゆっくり脳の馬鹿どもは調子付く。いや、元々調子付いていたか。
親まりさはしばらく体当たりを続けていたが、勝ち誇った笑みを浮かべると青年から距離を取る。
そして助走によって勢いを付け、最後のとどめと言わんばかりに青年の顔を目掛けて飛び掛った!

「ゆっく――」

親まりさがその先の言葉を口にする事はなかった。
何故なら親まりさの顔を、青年の腕が貫通していたのだから。

「しまった、やっちまった……」

目の前の光景が信じられずに呆然とするゆっくりたちを他所に、青年は頭を抱えて立ち上がった。
顔を攻撃されるのが嫌だったのと、あまりにも腹が立つ親まりさの顔を見たのが敗因か。
神速を持って拳を振りぬき、弾き飛ばす事もなくゆっくりを捉える。そのパンチは並の威力ではない。
ただちょっと強めに殴って吹き飛ばしてやるつもりだったのに、予定以上に力が入ってしまった。

「ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおお!
 このまま親まりさを負かして、親れいむに向かって「こんな馬鹿で弱いゆっくりと夫婦とか恥ずかしくないの?」って言って、
 子どもたちには「あーあ、おまえたちの父親が弱いから飯は抜きな。恨むんなら父親を恨めよ」って吹き込み、
 散々親子間で揉めさせた後に「しかたない。餌をやろう。ただし、お前たちの帽子かリボンと交換だ」と提案し、
 「おにいさんばかなの? れいむたちのたからものをあげるわけないじゃない!」と一蹴されて「あっそう。じゃあいいや」
 と言って一晩放置した後にゆっくりたちに顔を見せ、餌を強請ってくるゆっくりどもにもう一度同じ提案をする。
 そして奴らは空腹には勝てずに飾りを差し出し、親か子のどっちの飾りが取られてるかで責める言葉を変えて、
 あきらかに全員が食うには足りない程度の餌を投下して奪い合いをニヤニヤしながら見て、
 JOJOにかざりを奪っていき、全員のがなくなった後は「飾りがないなら誰か一匹と餌を交換するよ」と持ちかけ、
 その頃には家族の仲もボロボロで自分が生きるために家族を売ろうとする連中を見てひとしきり笑ったあと、
 差し出されたやつをその場で潰してその餡子と皮を食わせ、最後の一匹には「君の命と引き換えに餌をあげよ」って
 極上の笑みで言ってやって絶望しながら死んでいく様子を観察したかったっていうのに、俺って奴は!」

腕にまとわり付く親まりさの死骸を振り払いながら、青年は血の涙を流した。
見た瞬間ブチ殺したくなるゆっくりども潰さず、せっかくここまで我慢したと言うのに。

「ちくしょう、しかもこれ腕気持ちわりぃ! 餡子がベタベタするじゃねえか!
 うわっ、しかも結構散らばったし、掃除どうするんだよ!」

せっかくの夕食を作る際に魚が少し焦げる程真剣に、十分程度で考えた作戦がパー。
あくまでも親同士の罵りあいや、親子間での派閥争い。そういったものが見たかったのだ。
そういった意味では裏切り易く、なお家族の中で最も強い親まりさはメインディッシュと言っていい。
それなのに主役が真っ先に死んでどうするというのか。

「まりざあああ! どおじでごんなごとずるのおおお!」
「でいぶのおどうじゃんがあああ!」

泣き叫ぶゆっくりたちの声を聞き、青年はようやく我に返る。
ゆっくりたちは最も強いと疑っていなかった親まりさが殺された事で、パニック状態になっている。
まあ、パニックになっても普段とあまり変わりはないが。主に意味不明な事を言うあたりが。

それを見ていると普段なら虐待したくして仕方なくなるが、今はその気になれない。
やはりせっかくの作戦を自分でダメにしてしまったのが大きい。

「はぁ……仕方ない、もう全員殺しちゃおう」

青年の言葉で、ゆっくりたちの動きが止まった。
そしてブルブルと震えだし、体からは汗の様な液体を流しだしている。
アホで間抜けなゆっくりたちも、先ほどの光景を見て実力差を把握したのだろう。
もっとも、半分は理解していないのか、直ぐに青年に向かって怒鳴り散らしてきたが。

「まずは親れいむからな。親まりさとの約束だったしな」
「ゆっくりやめてよね! ゆっくりはなじで、はなじでえええ! ごめんなざいいい!」
「おがあじゃんがあああ! どおじぢぇごんなごとじゅるのおおおお!」

青年に頭を鷲掴みにされた親れいむは、子とともに汚らしく喚き散らしている。
泣こうが喚こうが、青年の心は変わらないというのに。少なくとも、助ける方向には。

「ゆゆっ! まりさはおにいさんのこどもになるよ! だからゆっくりたすけてね!」

親れいむをどうやって殺そうかと考えて青年が考えていると、一匹の子まりさが変な事を言い出した。
青年はその言葉で、以前ゆっくりを助けた奴が助けたゆっくりに恩返しと称して家を荒らされた事があったのを思い出した。
確かその時の言い分では、可愛い子どもを見せてやれば人間は許してくれると思ったから。

青年も親ゆっくりに「とくべつにれいむのかわいいこどもをさわらせてあげるからたすけてね」などと言われた事が何度かある。
それから察するに、ゆっくりは自分たちが子どもを可愛いと思う様に、他の種も同じ様に思っていると考えているのだろう。

そしてこの子まりさは自分が青年の子になれば自分だけは助けてもらえると思っているのだろうか。
触らせるのですら特別なのだから、ゆっくりたちにとってはとつてもない事なのだろう。
もっとも、この場合は他の思惑からだろうが。
青年に子になれば命は助かるし、頼りない家族からも離れられて餌だって貰える筈。
そう考えているのか、子まりさの目は希望に満ち溢れていた。

なるほど、ありえない話ではない。
元々ゆっくりは自分が不利になれば親が子を、子が親を見捨て、家族の縁の絆は太い様で極細だ。
それにゆっくりは自分の子が識別できず、大きな群れでは子を取り合う事もあるらしい。
その時子が親を選ぶ基準は、自分の記憶か、より強い方だとか。
それを考えれば、この子まりさがより強い保護者を求めるのは不思議ではない。

「まりざっ!? どおじでぞんなごどいうのおおお! まりざはでいぶどまりざのごどもだよ!」
「やくにたたないおやはおやじゃないよ! だからまりさはあたらしいおとうさんとゆっくりするよ!」

泣きつく親を一蹴し、子まりさは透明な板へと擦り寄り、青年に向かっておとうさんと連呼している。
勿論、おとうさんの後には「早くここからだしてね!」「かわいいまりさのためにおいしいものをもってきてね!」
などと馬鹿な事を言っている。結局、人間を見下している様に親も便利な道具程度としか考えていないのだろう。

そして子まりさの言葉を聞き、青年は怪しい笑みを浮かべた。
先ほどまで萎えていた心が一気に復活し、満面の笑みを浮かべてその子まりさを掴みあげる。

「よしよし、俺の子どもになったまりさには美味しいものをあげようね
 食べ終わったらお風呂に入って、その後は一緒に遊んであげよう」
「ありがとうおとうさん。やっぱりおとうさんはたよりになるね!」

子まりさは青年の手の平の上でご機嫌に笑う。
そして自称ゆっくりたちの家を見て、元家族は見下す様に鼻で笑った。

「みんなはそこでゆっくりしんでね!」

そう言って子まりさはゲラゲラと笑い、目尻からは涙まで流している。
元家族が死ぬの事の何がそこまで面白いのか、青年には理解できないところだ。
そして青年はやや大きめな透明の箱へと子まりさを入れてやり、餌として野菜クズを落す。

「そこがまりさの新しい部屋だよ。やっぱり自分の部屋が欲しかっただろ?」
「うん、とってもきれいだよ! おとうさんありがとう!」
「ははっ、いいって。俺はあの役立たずの親とは違うからね」

新しい家とは言っても、元々は虐待用の透明な箱だ。
青年がそれに子まりさを入れたのは、自分の部屋に上げたくないからに過ぎない。
間違っても、こんな馬鹿を自分の家で好き勝手させるつもりはないのだ。

「ゆー……おにいさん、れいむもおにいさんのこどもになるよ!」
「!? れいみゅも、れいみゅも!」
「まりさもこどもになる! こんなおやはいらないよ! ゆっくりしんでね!」
「どおじで!? みんなばでいぶのごどもなのにいいい!」

死から逃れるためか、単に子どもになれば優遇されと悟ったのか。
子ゆっくりたちは口を揃えて青年の子どもになると言い出す。
遂には全匹が青年のこどもになると言い出し、親れいむは狂った様に泣き喚いた。

「しょうがないな。みんな俺の子どもにしてあげるよ」
「それじゃあみんなきょうだいだね!」
「そうだね、みんなでゆっくりしようね!」

先ほどの子まりさの非道な言葉も忘れ、子ゆっくりたちは暖かい言葉を掛け合う。
数が多すぎて透明な箱を用意できないので、自称ゆっくりたちの家から親りれいむを取り出して先ほどの子まりさをそこに戻す。

「馬鹿な親はあそこに閉じ込めておいたよ。だからそこでゆっくりしてね」
「えー、もっとひろいばしょがいい!」
「おとうしゃんもといっしょにねちゃいよ!」

大量の野菜クズを子ゆっくりたちに与えながら、青年はニヤけた口元を隠す。

「急な話だったからね。明日には広い家を作ってあげるから、今日はそこで我慢してね」
「ゆゆっ、しかたないおとうさんだね。でもまりさはいいこだからがまんしてあげるよ」
「そのかわりあしたはおいしいものをたくさんもってきてね!」
「ああ、今日はもう遅いから寝ようか。おやすみ」
「おとうしゃんおやしゅみなしゃい」

子ゆっくりたちに笑って手を振り、青年は部屋を出ようとする。
その時親れいむが何かを言いたそうにしていたので、こっそりと囁いてやった。

「明日になったら子どもは帰してやるよ」

そうして青年はほくそ笑んだ。



「おとうしゃんじょこにいくの?」
「ん、今日は皆でピクニックに行くんだ」

あれから一週間後。
毎日の様に青年に可愛がられ、子ゆっくりたちは自由に育った。
お風呂に入れてもらって美味しい物をもらって遊んでもらって。

質問する赤れいむを軽くあしらいながら、青年は近くの山へと向かう。
この近辺でゆっくりが生息しているところは限られているので、そこにこいつらの家があると目星を付けていた。
まあ、外れてもいいのだが。

「さっすがおとうさん! まえのばかなおやとはぜんぜんちがうよ!」
「そうそう、まえのまやはまりさたちにいつもひもじいおもいをさせてたんだよ!」
「あんなゆっくりは死んだほうがいいよ!」

子れいむの言葉に、青年が抱える鞄がガタガタと揺れる。
子れいむたちは何かと前の親と青年を比較し、青年を褒めた。
もっとも、子れいむたちの本音は前の親を罵倒したいだけだろうが。
震える鞄を見て笑いながら、青年はニヤつきながら足を進める。

「さあ、着いたよ」
「ゆっ? なんにもおいしいものがないよ?」
「そのかばんのなかにはいってるんだよね! ゆっくりだしてね!」

辿り付いた場所は、何の変哲もない場所。
見晴らしいいとも呼べず、ゆっくりたちの食べられるもので溢れかえっているわけでもない。

「もうお前たちを飼えなくなったからね。お前たちをここに捨てにきたんだ」

その言葉に、ゆっくりたちが固まる。
やがて言葉の意味を理解したのか、泣き叫び出した。

「どおじでぞんなごというのおおお!」
「こんなかわいいまりさをすてようなんて、おとうさんはばかだよ!」
「そんなこというおとうさんはおとうさんじゃないよ! ゆっくりれいむにあやまってね!」

ゆっくりに親失格と言われ様が何と言われ様が、正直な話どうでもいい、
青年はにこやかに鞄を地面に下ろし、蓋を開けて中のものを取り出した。

「だから俺はもうお前たちの親じゃないんだよ。昔のお母さんと仲良くやってね」
「まっでよおおお! おいでがないでえええ!」

そう言って青年は親れいむを出すと、ダッシュでその場を離れる。
子ゆっくりたちは追い掛けようと走るが、ゆっくりの足で追い付けるわけがない。
所詮ソフトボールほどの子ゆっくりがどれだけ頑張ったところで、その速度は子どもの歩く速度より遅い。
直ぐに青年を見失い、トボトボと元の場所に戻っていく。

子れいむたちが戻ると、そこには怒った顔の親れいむが仁王立ちしていた。
流石のゆっくり脳でもその雰囲気を察し、話しかけられないでいる。

「ゆ……おかあさん、これからもなかよくくらしてこうね!」

やがて意を決し、子まりさが親れいむへと擦り寄っていく。
その子まりさは一番最初に親れいむを裏切った子であり、親れいむが最も憎む子だ。

「おかあしゃん、いっしょにゆっちゅりしようね!」
「おかあさんがいればみんなゆっくりできるね!」

子まりさが攻撃されないのを見てか、すぐさま他の子ゆっくりたちも親れいむに媚を売る。
何せ子ゆっくりは一匹では生きていけないし、甘やかされていたから餌の取り方も知らない。
だから親から見捨てられる事は死を意味する。それが分かっているからこそ、必死なのだ。

しかし、そんな子たちに何も言わずに親れいむはさっさと跳ねて進む。
行き先は昔の自分たちの家だ。蓄えは何もないが、家がなければゆっくりできない。

「またみんなでいっしょにゆっくりしようね!」」

そんな親れいむの姿を見て、子ゆっくりたちは許されたと安心する。
このままついていけば、また昔の様に暮らせる。そう信じて、親ゆっくりの後を追った。

そしてその後をコッソリ付ける青年。
あれから直ぐに戻ってきて、ゆっくりたちを観察していたのだ。
さあ、これからあの家族がどうなるのか、楽しみで仕方がない。





あとがき
虐待は好きなんだけど上手く虐待シーンが書けない……

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最終更新:2022年05月04日 22:28