『ゆっくりの歌』
「ゆ~ゆゆゆ~ゆ~♪」
またやってやがる。
お店にも畑にもゆっくり対策がされている昨今、ゆっくり達は野生に生えた草木や小さな虫ぐらいしか食べる物がなくなった。
しかし中には人里に現れて人間に食料を貰おうとするゆっくりもいた。
町の中央通りに面する俺の家の前には何故かゆっくりが現れては下手な歌を歌っている。
ここ数日間はゆっくりれいむの家族が歌っていた。
どこで仕入れたのか「たべもの」「おかね」と書かれた箱をそばに置いている。歌に満足したら入れろというのか。
そんな歌で誰か満足するものか。通りすがる人々は皆不快そうな視線を向けて通り過ぎていく。
しかしゆっくり達はめげない。
「おかーしゃん、おうたうまいよ!」
「もっとうたってね!!」
「れいむもいっしょにうたうよ!!」
「「「「ゆゆゆ~♪ ゆゆゆゆ~♪」」」」
今度は子ゆっくり、赤ゆっくりを交えての大合唱だ。
聞くに堪えない。マジでやめてほしい。
お前たちが歌ってるのは俺の家の前なんだぞ!
成果がなければすぐにやめるだろうと一週間我慢したがもう限界だ。
「ゆゆゆ~、ゆっ? おにーさんたべものくれるの? おかねでもいいよ!」
「みんなのうたがうまかったからいっぱいくれるよね!!」
「おにーしゃんほめてほめて!!」
「ああ、いいだろう。俺の家に来なさい」
「ゆ! いいの!?」
「これでゆっきゅりできるよ!!」
「れいみゅたちのおうちができりゅよ!!」
何勝手なこと言ってるんだか。
まぁ、一般家屋にもゆっくり対策がされてるから人の家になんて入れたことないんだろうなぁ。
嬉しそうにニコニコするれいむ家族は開けた戸に向かって駆けっこだ。
だが、荒らすかもしれないお前たちを玄関より奥へは行かせねぇ。
「ゆっ? いきどまりだよ!!」
「おくにいけないよ! どういうこと!?」
すでに玄関には透明な箱をセットしておいたのさ。
ゆっくりが家に入ったときにはすでに箱の中。
俺は全てのゆっくりが箱に入ったことを確認すると入口を閉じた。
「とじこめないでね! ゆっくりだしてね!!」
「これじゃゆっきゅりできないよ!!」
「やめちぇよね!!」「おにーさんゆっくりださないとゆっくりさせてあげないよ!!」
「はいはい、奥へ行くぞ」
れいむ達の抗議なんて無視無視。奥の部屋へと連れていく。
その時いろいろと用意しておく。虐め道具とかいろいろ。
「おじさんもういいでしょ! はやくだしてよね!!」
「もしかしてばかなの? おじさんばかでしょ!!」
「ばーか! ばーか!」
いつの間にかおにいさんからおじさんに呼び方変わってるし。
ゆっくり脳のこいつらにはその程度の罵倒しか思いつかないんだろうなぁ。スイーツ(餡)
「上手い歌を唄えたらゆっくりさせてあげるよ」
「そんなのかんたんだよ! ゆっくりきいてね!!」
「みんなでうたおうね!」
「おじさんきっとこしをぬかすよ!!」
「い~いさ~、い~いさ~♪ ゆっくりでいいさ~♪」
「うん、下手。死んだ方がマシ」
なんだろう。何か分からないけど不快にさせる声とテンポで歌うやつらだ。
俺がれいむ達の歌を否定すると顔を真っ赤にして怒りだした。
「ゆ! なにいってるのおじさん!」
「れいむたちすっごいうまいでしょ!!」
「おんがくせいのちがいだね! おじさんゆっくりふるすぎだね!!」
「おじしゃんゆっきゅりおんちだね!!」
「何でもいいけどさ。俺を満足させる歌を出さない限りずっとそこにいることになるぞ?」
その言葉に自分たちの置かれた状況をようやく理解したらしい。
母れいむなんかは冷汗を垂らしてやがる。
「ゆ! ならおじさんれべるでゆっくりうたうよ!」
「れいむのびせいにききほれてね!」
「ゆゆ~♪ ゆ~♪ かわのながれのゆ~っくり~♪」
今度は人間様の曲をレイプかよ。
それにしても元ネタを知ってるのかこのゆっくりは。
まぁ、どっちにせよ下手だな。でもこいつらが歌えるのはこれで最後かもしれないしもう少し歌わせてやるか。
「ゆゆゆ~♪ ゆゆ~♪」
「ゆゆゆゆゆゆゆゆ~~♪」
三秒で前言撤回。下手なくせに下手な裏声使うな。
「もうやめろ! お前たちを俺がプロデュースしてやるよ!」
「ゆぎゅっ!?」
俺は箱の上蓋を開けて赤ちゃんれいむを片手で一匹ずつ掴んで取り出す。
割と握力かけてるので赤ちゃんれいむは苦しそうだ。
「なにするの! はやくあかちゃんをはなしてね!!」
「そうだよ! いもうとをゆっくりはなしてね!!」
「ゆっくりできないからやめてね!!」
「良い声出せよぉ?」
そう言って赤ちゃんれいむ達を緩やかに握りつぶす。
「ゆぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅ!!?」
「ぎゅるじぃぃぃ!! はな"じでぇぇぇ!!!」
顔を真っ赤にして苦しむ赤ちゃんれいむはさっきの歌よりもずっといい声を出してくれた。
そうそう。ゆっくりの歌と言えばこれが一番だろ。
クラウザーさんがデスメタルを歌えば伝説になるように、ゆっくりが悲鳴を上げればこんなに良い曲になる。
嗚呼、最初からこうやって歌ってくれれば許したかもしれないのに。
「やめでね! あかちゃんぐるじぞうだよ! はなじでぇぇぇ!!!」
「ゆぅぅぅぅ! ゆっぐりできないよぉぉぉ!!」
「はなじであげでよぉぉぉ!!!」
涙を流して赤ちゃんを放してと頼みこんでくる。
こいつらの必死な声もいいハーモニーを奏でてくれるじゃないか。
「何故? 良い歌を歌ってるじゃないか」
「ぎゅぅぅぅうぇぇ!!!」「ゆっぐりでぎな"、い"ぃ"ぃ"ぃ"」
赤ちゃんれいむはその言葉を最後に潰れて静かになった。
もう終わりか。ま、お望みどおりゆっくりできたから良かったじゃないか。
「ゆぅぁぁぁぁぁああ!! なんでごろじだのぉぉぉぉぉお!!!!!」
「おじさんはゆっぐりじねぇぇぇ!!!」
「れいむのいもーどがぁぁぁ!!!」
泣き叫ぶれいむ達三匹だが、構わず子れいむを一匹取り出す。
片手では掴めないので一匹ずつ歌わせてやるとしよう。
「こんどはなにずるのぉぉ!! これいじょうこどもをいじめないでぇぇぇぇ!!!」
「今度はこれだよ」
どこからともなく取り出した釘を子れいむの右目に刺す。
「ゆぎぃぃ!! いだいよ! れいむのめがあぁぁぁぁ!!!」
「ああああ!! なんでごどずるの!!」
「やめでぇぇぇ!!!」
次は左目だ。その次は右頬、またその次は左頬。
両耳穴、足、額、脳天、リボンの結び目と体中に釘を刺し込んでいく。
「ゆぎゃっ、ゆぎぃぃぇぇぇぇぇえ!! ゆびっ!?」
今度は舌を貫いてやった。
全身釘だらけになる子れいむ。今素手で握りつぶそうとしたら主に俺の手がやばい。それぐらい釘を刺し込んでいた。
特に足の部分には重点的に刺してやった。
「やめでね! ぬいであげでよぉぉ!!!」
「みでるごっちもいだいよぉぉぉぉ!! やめでぇぇぇ!!」
「じゃあ抜いてあげるね」
「ゆっ! はやくぬいでね!!」
俺は母れいむの望みどおり子れいむの釘を抜いていく。
抜くとそこから餡子が漏れ出していく。
十本抜いた時点で体中から餡子が洩れていた。
「だ、だめだよ!! あんこがでてるよ!! やめでぇぇぇ!!!」
「えー? 抜いてほしいんでしょ?」
言いながら今度は足の部分の釘を一気に全部抜いてやった。
抜くと同時に重力にまかせて餡子が床へとぶちまけられていく。
「ゆぎぁぁぁぁぁ!!! れいむのあんこがぁぁぁぁ!!! おかーざんだずげでぇぇぇ!!!」
「あああああ!!! これいむぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
「やぁぁぁぁぁぁ!!!」
素晴らしい声だ。高音が綺麗に出せてるじゃないか。
あぁ、もっと聞いていたいが餡子が尽きた子れいむから声が出なくなってしまった。
次の子れいむて続きを奏でなければ。
次の子れいむを箱から取り出してすぐさま金槌で叩く。
「ゆべぇ!? ぎゃめでぇぇ!!」
「もうやめでぇえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
今が盛り上がりどころなんだ。一息でもつかせてたまるものか。
なるべく一度に潰れないように力を加減しながら叩く。餡子が少し漏れるぐらいなら構わない。さらに叩く。
「ゆぎぃ?! ひでぶっ! や、やめで!? いだっい! だたがっ、ないでぇっ!!」
「あっはっは、いいリズムで歌うじゃないか。もっとだ。もっと歌えよれいむ!!」
ノってきたぞ。もっと殴ってやる。
潰れないように潰れないように…潰れないようにぃ!
「ゆぶげぇぇぇっ!!?」
「れいぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
あ、いっけね。勢いあまって潰しちゃった。
餡子が子れいむから大量に流れ出てる。これは死んだな。
「あああああ!!! みんなじんじゃったぁぁぁぁ!!! おじさんはじねぇぇぇ!!!」
「いやぁ、でもいい歌だったじゃないか」
「なにをいっでるの!? くるじぞうなごえだったよ!!!」
「えー、君にはこの良さが分からないのかぁ。音楽性の違いかな」
「じねぇ! ごのゆっぐりごろじ!! ゆっぐりじないでいまずぐじねぇぇぇ!!!」
「まったく。君には良さが分かるよう教育しないといけないな」
そう言ってヘッドホンを母れいむに取り付けた。
ゆっくり用の特製ヘッドホンで、万力のように締めつけて取り付けるのでゆっくりには決して取れない仕様だ。
「ゆっ!? なにもぎごえないよ!!」
遮音性の高いやつだからな。
でも大丈夫。すぐに音楽をかけてあげるよ。
俺収録の『ゆっくりの歌』だ。
音楽を再生すると母れいむはすぐに顔を青ざめた。
すでにこの世にはいないゆっくり達の悲鳴が延々と聞こえることだろう。
『ゆげぇぇぇ、まりざはわるぐないんだぜ! やめぎゅぇぇ!!?』
『ちちちちんぽー!? いたちんぽー!!』
『おかーしゃんだしゅげでぇぇ!!! あちゅいょぉぉぉぉぉ!!!!』
『わがらないよぉぉぉ!! しっぽをだべないでぇぇぇぇぇ!!!』
「やめでぇぇ!! こんなのききたぐないよぉぉぉぉ!!!」
「何、すぐに良い曲だって思えるようになるさ。
そうだ。後でさっき録っておいた君の子供の歌を聞かせてやるよ」
「おじさんなにいっでるのがぎごえないよぉぉぉ!!! ひめいじがきごえないぃぃぃ!!!」
数日後、精神に異常をきたして外部からの刺激に対して何も反応しなくなったれいむが出来上がった。
食事は口元に持ってけばもしゃもしゃと咀嚼する。
ただそこに在って生きているだけの物だ。
つまらん。結局こいつもゆっくりの歌の良さが分からなかったか。
こいつはもういらない。明日の朝には生ゴミと一緒に捨てておこう。
終
by ゆっくりしたい人
短めのを書こうと思った結果がこれです。
考えながら文を書いたので最初と最後で矛盾が生じてるかも。ゆっくりゆるしてね!
最終更新:2022年05月19日 15:14