※これは、ゆっくりいじめ系349の『ゆっくり研究してね!』で出てきた自由研究の一つをSSにしたものです。
 先に『ゆっくり研究してね!』を見てから見てください。

















「ゆっくりはなじでね! おうじがえじでぇぇぇ!!!」
「「「ゆっぎゅりおうぢがえぢでぇぇぇぇぇ!!!」」」
 じたばたと泣き喚く20匹ほどのゆっくり親子を抱えて、少年は楽しそうに走っている。

――これで今回の自由研究は合格間違いなしだ。

 笑顔の少年の脳裏には、慧音先生の優しい笑顔が浮かんでいる。
 先生は凄くキレイだ。特に、笑顔の先生は誰よりも美人で、素敵だ。
 もちろん、寺子屋の仲間にも慧音先生のファンはたくさんいる。いや、大人にもファンは大勢いる。
 だが、ライバルが多くても、負けるワケにはいかない。
 だからこそ、少年は危険を承知で妖怪の山の近くまで足を伸ばしたのだ。
 この自由研究だけは、絶対に成功させてみせる。
 目に火が灯っている様な錯覚に陥るほどに、少年の鼻息は荒かった。





 『ゆっくり研究してね! 赤ちゃん食い研究』





「ただいまー! 自由研究するね!」
「おかえり……あら、ゆっくり? お母さんにも一つちょうだい」
「だめだよ! こいつら研究に使うんだから、あげられないよー!」
「あらそう……じゃあ、食べる時はキチンと洗ってから食べなさいよ」
「分ってるー!」
「本当に分ってるのかしら、もう……」
 穏やかに微笑む母親からは、少年がゆっくりをかなり手荒に扱っている事に対するマイナスイメージが見られない。
 この反応も、害獣、もしくはただの食料かストレス解消生物扱いされているゆっくりだからこそだろう。
 もし他の生物……例えば犬や猫などならば、叱られて元の場所に戻す様に怒られる事は確実だ。
 余談はさておき、少年は母の言いつけ通りにゆっくりを洗ってから、自分の部屋に駆け込んだ。

「ゆぎゅっ! なにずるのぉぉぉ!!!」
「「「ゆっぐぢでぎないよぉぉぉ!!!」」」
 別々の竹かごに投げ込まれて泣き叫ぶゆっくり親子を尻目に、少年は準備を始める。といっても、記録用の紙と鉛筆程度であるが。
「二十匹目っと……よし」
 子供ゆっくりの計算を終えた少年は、かごに近づいた。
 親ゆっくりは膨らんで威嚇し、子ゆっくり達は竹の棒で遮られているにも関らず、親の後ろに隠れようともぞもぞ動いている。
 少年は、そのどちらも気にせず、比較的大きめの子ゆっくり一匹を手に取った。
「ゆっぎゅりばなぢでぇぇぇ!!!」
「ゆっくりやめてね! はなしてあげてね! ゆっくりできないこはしね!!!」
「「「ゆっぎゅりばなぢであげでよぉぉぉ!!!」」」
 親ゆっくりがかごに体当たりを繰り返し、捕まらなかった子ゆっくり達はわんわんと泣き叫ぶ。
 そんな中で、少年は必死に身をよじって逃げ出そうとする子ゆっくりにかぶりついた。
「ゆぎゃぁぁぁ!!!」
「ゆ”あ”あ”あ”あ”ぁぁぁ! ま”り”ざの”あ”がじゃんがぁぁぁ!!!」
「お”ね”え”ぢゃぁぁぁんんん!!!」
 ぶちんと音を立てて噛み砕かれたそれを見て、それぞれに泣き叫ぶゆっくり親子。
 すでに生命維持に大事な部分を食いちぎられたのか、顔が半分になった子ゆっくりは「ゆっ……ゆっ……」と焦点の合わない目で呟くばかり。
 少年は、虚ろな呟きを繰り返すそれの残りを、泣き叫ぶ家族の前で口に運んだ。
 子ゆっくりは、にごった目でどこかを眺めながら、少年の胃の中へと消えていった。
「ゆ”ぎゃあ”あ”あ”ぁぁぁ! ま”り”ざの”あ”がじゃんがえ”ぜぇぇぇ!!!」
「「「お”ね”え”ぢゃんがぁぁぁ!!!」」」
 目を血走らせて体当たりを繰り返す親ゆっくりを眺めながら、少年は紙に現状をあまり上手くない字で書き込んだ。

  • 一匹目、赤ちゃん返せと言いながら体当たりを繰り返している

「じゃあ、二匹目いくかな……」
 呟いた少年の言葉を聞きつけたのか、一瞬で泣き止み、必死に隅の方に寄って他の子ゆっくりを盾にしようと隠れだす子ゆっくり達。
「まりちゃにゆっくりちゃちぇてね!」
「ゆっくりちゅりゅのはまりちゃだよ!」
「おねえちゃんたちはゆっくりちたんだからもういいでちょ!?」
「やめちぇよ! ゆっくりできないよ!」
「まりちゃだけゆっくりちゅるのー!」
「まりちゃのうちろにこないでぇぇぇ!」
 先ほどまで仲良く頬をすり寄せあって遊んでいたとは思えないほどに浅ましく争い合う子ゆっくり達。
 その姿には特に何も感じないらしく、無視して手近な子ゆっくりを取り出そうとする少年に、親ゆっくりは必死に声をかけた。
「まっでぇぇぇ! あがぢゃんはおいじぐないがらまりざをたべでよぉぉぉ!」
 がたがたとかごを揺らしながら少年に頼むその姿は、鬼気迫っている。
 あまりの必死さに興味を抱き、自分の方を向いた少年を見てチャンスとでも思ったのか、親ゆっくりは更に顔をぐちゃぐちゃにして喚く。
「まりざはおいじいがらまりざがらだべでよぉぉぉ! おながいっぱいになるがら、まりざをだべであがぢゃんはにがじでよぉぉぉ!!!」
 姉妹同士で争った子ゆっくりと同じアンコで出来ているとは思えないほど子供への思いやりに溢れる発言。
 一方の子ゆっくり達は「おかあちゃんをたべて、まりちゃたちはゆっくりちゃちぇてね!」と、もう自分達は助かると思い込んでいるらしく、余裕さえ溢れる発言をしている。
 だが、少年に親ゆっくりの言う事を聞く必要も義務もない。
 そもそも、これは自由研究なのだ。
 例え親子が逆の事を言ったとしても、最終的には親の気が狂うまで続けるのだからどちらももう助からないのである。
 少年は、顔をぐちゃぐちゃにして願う親ゆっくりに笑顔で「ダメだよ」とだけ告げて手近な子ゆっくりを取り出した。
 それが余裕の発言をしていたものだという事は、因果応報とでも言うべきだろうか。
「おがあぢゃんをだべでよぉぉぉ! まりざはみのがぢでよぉぉぉ! やべでぇぇぇ!!!」
 もう自分は助かると思い込んでいた子ゆっくりは泣き叫んだが、少年は構わず口に運ぶ。
「やべでぇぇぇ!!! おねがいだがらやべでぇぇぇ!!!」
「「「どうぢでおがあぢゃんをだべないのぉぉぉ!!!」」」
 ぶちんと音を立てて噛み千切ると、だらりとアンコが流れ出した。
 その様子を「あああ……」と嘆きの声をあげながら、親子揃って眺めている姿は非常に哀れがましい。
 二匹目のゆっくりも、二口目で少年の胃に消えた。
「……もうおなかいっぱいでしょ? まりさたちはにがしてよ。まりさがだめなら、あかちゃんだけでもいいから……」
 涙も声も枯れ果てた様子で許しを乞う親ゆっくりを見ながら、少年はまた紙に書き込んだ。

  • 二匹目、泣きながらこっちを見て、自分達を助けて欲しいって言ってる

 少年は、成果を見て満足そうに頷くと、涙交じりに開放を懇願するゆっくり達を無視してそのまま部屋を出た。
「まっで! ゆっくりだしてね! ゆっぐりだずげでぇぇぇ!!!」
「「「ゆっぐりだずげでよぉぉぉ!!!」」」
 パタンと音がしてドアが閉まった。
 子ゆっくり達は、少年が出て行った事を確認してから何とかして外に出ようと必死にもがき始めたが、かごのかさは高く、とても出られそうにない。
「おがーぢゃん、ゆっぐりだづげでぇぇぇ!!!」
「まりざもだづげでぇぇぇ!!!」
「ゆっ……ゆっぐりでられないよぉぉぉ!!!」
 親ゆっくりは、そんな子供達を慰めつつ、静かにする様に必死になだめた。
「おかーさんがなにかかんがえてみるよ! おねえちゃんたちはたべられちゃったけど、みんなでそとにでようね!!!」
 母のなだめを聞いて、どうにか泣き止む子ゆっくり達。
 いつまた少年が戻って来て、今度は誰が食べられるか分からない。
 そんな最悪の環境の中で、親ゆっくりは子供だけは守ろうと、ゆっくりとは思えないほど必死に考えをめぐらせた。
「ゆっ! みんな、いい……」
 親ゆっくりが思いついた策を皆に言い渡した途端、子ゆっくり全員が反対の意思表示をした。
「「「ぞんなのいやだよぉぉぉ!!!」」」
「ゆっくりだまってね! このままじゃみんなゆっくりできないんだよ! だから、ちょっとだけでもゆっくりできるのはこれしかないんだよ!」
「「「……ゆっくりわかったよ」」」
 涙目の子ゆっくり達と、涙を堪えて厳しい顔を作る親ゆっくり。
 彼らの悪夢は、まだまだ始まったばかりである。


 数分経って戻ってきた少年の手には、たっぷりのエサが抱えられている。
 無言でじっと様子を伺うゆっくり親子の目の前でそれを適当に半々にしてから、少年は乱暴にかごの中へエサをぶち込んだ。
「エサだぞ、食え」
「……」
 親子揃って空腹だったが、エサを口にする事はない。少年がどんな仕掛けをしているか分からないからだ。
 毒でも入っていたなら、親子共々簡単に全滅に持ち込む事が出来るだろう。
「食べないならしまっておくからな」
 じっと自分の顔を見つめるゆっくり達を見て不思議に思いつつ、別に一日位食事を抜いても大丈夫だと判断したらしい。
 少年は、そのままエサを置いたまま部屋を出て行った。


 次の日も、少年は子ゆっくりを親ゆっくりの目の前で食べ続けた。
 以下が、その記録である。

  • 三匹目、涙とよだれと汗(?)で顔をぐちゃぐちゃにしながら、出して欲しいってお願いを繰り返している
  • 四匹目、泣きながら出して欲しい出して欲しいとお願いを繰り返しながらも、残った子供の方をたまに見ている
  • 五匹目、なんだかこっちより残った子供の方が気になるみたいで、そっちをちらちら見ながら何か呟いている
  • 六匹目、こっちを見ないで残った子供の方を見ながらぶつぶつ何か呟いている。何か相談しているのかな?
  • 七匹目、残った子供に向かって怒鳴っている。何かあるんじゃないかと思うから、今日はここまでにして様子を見てみる事にする



 こうして、親ゆっくりが考え抜いた作戦は、あまりに怪しい反応を見せたために一日でバレてしまったのである。
「よしっと」
 気合を入れた少年は、夜遅くまで起きる決意を固めた。
 無論、ゆっくり達がない知恵を絞って考えた作戦を叩き潰すためである。
 少年が音を立てない様に気を付けてゆっくり達の部屋の扉の前で待ち構えていると、不意に中からごそごそと何か動く音が聞こえてきた。

――バカだな、これじゃあ寝ていても気付くじゃないか。

 あまりの分かりやすさに軽く失望すら覚えながら部屋を覗くと、子ゆっくり二匹がエサのある場所で何やらこそこそとやっていた。
「このままじゃゆっくりできないよ! だかりゃ……」
「でも、ふたりだけちかのこりゃないよ? みんなは……」
「だかりゃって、ここにいたりゃたべりゃりぇて……」
「やだよ、ゆっくりちたいよ! わかっちゃ、ゆっくりふたりだけで……」
 能天気なゆっくりには珍しく、真剣に何かを話し合っている。
 と、やおらエサを食べようと向かっていく……と思いきや、かごからするっと抜け出した。
 エサに隠して、穴を開けていたらしい。子ゆっくり達は、そのまま少年のいる扉に向かって走ってくる。
 見張っておいて良かったと、少年は心底安堵した。
 次の日にもし普通に少年が部屋に入ったら、かごから抜け出した子ゆっくり何匹かに逃げられていただろう。
 だが、気付かれてしまったのだから、もう逃げる事はできない。
 内心の焦りを隠して、少年は扉の向こうから走ってくるゆっくりを何気ない仕草で捕まえた。
「ゆぎゅ!? ゆっくりはなちて……」
「ゆっ! おねえちゃんなにちたの? おちょらをとんでりゅみちゃいだよ?」
「ゆ……ゆ……ゆ……」
「おねえちゃん、はやくちないとばかにんげんがきてゆっくりできなくなっちゃうよ! あちょんでないではやくおうちかえりょうね!」
 姉の方のゆっくりは気付いたらしく、絶望の表情で少年を見つめた。
 一方の妹ゆっくりは、のんきに早く逃げようなどと姉を急かしている。
 少年は、二匹のゆっくりをつかんだまま、慎重に扉を閉めた。
 もっと硬い箱、ゆっくりの攻撃では壊れない箱を持ってこなければならない。

――お父さんなら何か知ってるかもしれないな。会社でゆっくり使ってるって言ってたし。

 善は急げとばかりにその場を離れる少年と、妹ゆっくりの目が合った。
「ゆっ? ……ゆ、ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
 今更ながら妹も気付いたのだろう。がたがたと震えながら叫び声を上げた。
 子ゆっくりまりさの姉妹二匹は、いつ食われるか分からない恐怖に怯えきっていた。
 だからこそこんな早まった行動を起こしたのだろうが、タイミングが悪すぎたのだ。
「「ゆっぐりばなぢでぇぇぇぇぇ! ごべんなぢゃいぃぃぃ!!!」」
 叫ぶゆっくりの声が他のゆっくり達に聞こえない様に服の中へ隠しつつ、少年は加工所職員の父の元へと向かった。


 次の日、起きたゆっくり達は透明な箱に移しかえられている事に気付き、白目をむいて絶叫した。
「ゆっぐりおうぢにがえれるどおもっだのにぃぃぃ!!!」
「「「おうぢがえぢでぇぇぇぇぇ!!!」」」
 わんわんと泣き叫ぶゆっくり達を眺めつつ、端っこでいつバレるかと怯え続けているまりさ姉妹二匹を手にとり、そのまま食いちぎった。
「お前らが何考えてるかなんてわかってるんだよ、ざまーみろ」
 帽子も食べられるが、少年はわざと親ゆっくりの箱の中へ吐き捨てた。
「ごめんなざいぃぃぃ! まりざがわるいごどじだがらあやまりまずぅぅぅ! だがらおうぢにがえじでぐだざいぃぃぃ!!!」
 泣きながら謝る親ゆっくりを、少年は冷たい目で眺めた。

  • 八匹目と九匹目、逃げ出そうとした子供を二匹一緒に食べた。謝り続けているけど、信用できないからもっと硬い箱に移す事にする
         お父さんに頼んで、会社で使ってる透明な箱を使わせてもらう事にした
  • 十匹目、まだ謝り続けている
  • 十一匹目、半分を過ぎた。ガラガラ声で喚きながら、また体当たりを繰り返している
  • 十二匹目、泣きながらこっちを見ているけど、何も言わない
  • 十三匹目、何も言わないでこっちを見るだけ。反応が薄くなってきている
  • 十四匹目、子供を食べているぼくの方を見ないで、残った子供の方を見てずっと泣き続けている
  • 十五匹目、子供の入った箱にぼくが近づいただけでもゆぎゃーとか叫んで面白い。何度か近づいたり離れたりを繰り返してから食べる事にした
      食べた時は泣きすぎてなのかぐったりしてて、子供の方を見て、悲しそうにゆーって一声だけ泣いた。
  • 十六匹目、ぼくの方も子供の方も見ないで、うふうふ笑い出した
  • 十七匹目、まだうふうふ笑い続けている。今度こそおかしくなったかな?
  • 十八匹目、食べた後でゆっくりを箱から出したけど、動かないでうふうふ笑い続けている。完全におかしくなったみたいだ



「ゆふふふふふふふふふ……」
 休みが半分を過ぎたある日、親ゆっくりはとうとう少年の思う通りのゆっくりへとなった。
 ただ笑い続けるだけのゆっくり。
 穏やかなその表情は、全てのものから開放された幸せに満ちており、とてもゆっくりしたものだった。







 20スレで誰かが18匹でしただけじゃ手抜きしすぎだろうって言ってたので書いてみました。
 やっぱりオチがイマイチになってしまいましたが、お許し下さい。
 5匹位にしておけば良かった……。

 by319

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最終更新:2022年05月19日 15:18