―――ここは幻想郷にある人里
この人里で、俺は便利屋として生計を立てていた。
趣味と実益を兼ねたゆっくりの駆除を行い、甘党な俺は仕事が終わったあとで頑張った自分へのご褒美(笑)に狩ったゆっくり達の餡子でスイーツパーティー(笑)を行うのが恒例行事であった。
しかし・・・最近人里で、とある噂が囁かれている。
「ゆっくり達が消えるのではないか」という噂だ。
幻想郷にある日突然現れた生物(?)であるゆっくり達は「ゆっくりしていってね!!!」という独特の鳴き声をしており、
人語も多少は解するが中身は餡子やらクリームやらであることから人里では甘味の材料として重宝されていた。
実際、以前は人里を少し離れれば頻繁に見かけられたゆっくり達がここ数週間殆ど見当たらないのだ。
本当に居なくなってしまうのだろうか・・・
まぁそれならそれで構わないし、ゆっくりが幻想郷に突如出現するまでは普通に農作業を手伝ったり、獰猛な野犬の駆除などをして生活していたのだ。
その生活に戻ったところで大して困ることも無いさ。

そんな事を考えながら過ごしていたある日、里の少しはずれの畑で農夫の手伝いをしていると森の方から大きな物音が聞こえてきた。
音のする方へ急ぐと、森の入り口に異様に大きなゆっくりまりさがどっしりと構えていた。
巨大ゆっくりまりさの近くにある若木から察するに、身の丈は六~七尺程であろうか・・・ゆっくりとしてはとんでもない巨体である。
俺と農夫が近づくと巨大ゆっくりまりさは声を張り上げて叫んだ。
「よくもまりさたちのおともだちをたくさんころしたね!!!まりさたちをゆっくりさせないにんげんたちはゆっくりしね!!!」
その言葉を発した直後、どこに隠れていたのか大量のゆっくりが「「「「ゆっくりしね!!!」」」」の掛け声と共に巨大ゆっくりまりさの元に現れた。
近頃ゆっくり達を見かけなくなっていたのは、この蜂起の準備をしていたせいなのだろう。
「・・・早く!あなたは里に戻って自警団に報告してください!」
俺はひとまず農夫をこの場から逃がし、ゆっくりの大群と相対した。
ボスまりさの後ろには様々な種類のゆっくりが群れを成している。その総数は二千は下るまい。
「「「ゆっくりしね!!!」」」
近くにいる十数匹のゆっくりが俺にいっせいに飛びかかってくる。
人間を滅ぼそうというゆっくり、それがこの数で飛びかかってきた。
「う・・・うぉわあぁぁぁああぁあああぁぁ!!!」
死ぬ、そう思った。

ボムッ、ボヨォン、ブニッ。「……あれ?」
と思いきや無傷、まったくの無傷であった。
数の多さと勢いで圧倒されるかと思ったが・・・よく考えれば所詮はただの饅頭である。殺傷能力などあろうはずもない。突進の速さも種族の名に違わずスロウリィ。
「・・・ふ、ふふふ、うふ、ふふふふふふ」
と、在りし日の魔法の森の白黒のような笑いがこみ上げてくる。
「ゆ?きもちわるいわらいかたするにんげんはゆっくりしんでね!」「ゆっくりじゃまするにんげんはゆっくりはやくしんでね!!!」
「がぁおー♪たーべちゃーうぞー♪」「ちーんぽ!!!」「わたしたちのあっとうてきせんりょくにぜつぼうしちゃったんだね!!!わかる、わかるよー!!!」
俺の様子を見たゆっくり達が騒ぎ立てるが、ゆっくり達が集まったところで全くの無力。
それを悟った俺には、もうこの状況が―――
「すいいいぃぃぃぃいいぃぃつ祭りィ・・・、開催じゃあああぁぁぁああぁぁああぁッ!!!!!みんなァッ!!!ゆっくりしていってねえぇっ!!!」
―――もはや、大地一杯に広がる甘味畑にしか見えなくなっていた。

大声で「ゆっくりしていってね!!!」という言葉を聞いた途端に動きが止まるゆっくり達、これも種族の性か。
大地を蹴りゆっくり達の群れの中心に飛び込む。手当たり次第にゆっくりをつかみ上げて噛みちぎり、啜り尽くし、薙ぎ払い、踏み潰し、蹂躙する。
「おいちいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!最高でえええぇぇぇぇぇッス!!!」
気分がノってきて、すごく楽しくなってきた。やっぱりゆっくり狩りは最高だね!こんな楽しい事が無くなっても構わないなんて、
最近の俺はどうかしてたね!!!スイーツ(笑)最高おおおおおおおおおおおおお!!!」
「おじさんはゆっくりできてないよ!!!ゆっくりやめてね、こっちこないdぎゅbりゅぎッ!!!」
「ゆっぐりじだげっががごれだよ゙おおぉぉおおぉぉっ!!!」「もっど、ゆっぐり、ぢだがっだよおおおぉぉおおぉぉっ!!!」
「ぢぼっ、ぢんっ、ぢんぼおおおぉぉおおぉぉぉっっ!!!」「わがら゙な゙い、わがら゙な゙いよ゙おおおおぉぉおおおぉぉぉ!!!」
辺りに鳴り響く大量の断末魔、阿鼻叫喚とはこの事を言うのだろう。
「あ、肉まんはいいや、ポイだポイ。」言うと俺はゆっくりれみりゃの両腕を千切り取り、遠くへ投げ捨てた。
「あ゙あ゙あ゙があ゙あぁぁ゙!!い゙だい゙、いだいぃぃぃ!!!でみでゃのぷりぢーなおででがあ゙あ゙ぁぁあ゙ぁぁっ!!!
ざぐやにいいづげでやどぅううぅぅ!!ざぐや!!ざぐやあ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁ!!!」
投げ捨てた両腕に向かって飛んで行こうとするゆっくりれみりゃの両足を捕らえて地面に叩きつける。支える腕の無いゆっくりれみりゃは顔面から勢いよく地面に激突した。
「ぶぎゅる!!がぁおー!!!だべぢゃうぞおおおおおぉぉぉ!!!」
それでも闘志を失っていないのか、それともただやけっぱちになっているだけなのか、恐らくは後者であろう。この期に及んでまだ威嚇などしている。
これ以上時間をかけても面倒なので、手早く頭を踏み潰すと俺は再び他の甘味ゆっくりの蹂躙を始めた。

ひとしきりスイーツ(笑)を堪能し終えた頃、自警団や里の男達が鎌や鍬を携えてやってきた。
俺は里の者達と合流して残党ゆっくりの掃討を始めた。逃げ遅れたゆっくり達が残っている、こいつらも処分しなければ。
「どおぢでええええええええぇぇ…。」
「ゆぎぐがあああああああああああああああああ!!!!!」
残党をあらかた処分し終えた頃、ある事に気付いた。群れを統率していた巨大ゆっくりまりさの姿が見当たらないのだ。
「逃げたか・・・」
ゆっくりまりさ種は自分の身に危険が迫ると群れを犠牲にしてでも逃げる狡猾さで有名だ。
しかし所詮はゆっくり、まだそんなに遠くには逃げていない筈だ。幸いなことに、その巨体の重さ故に巨大ゆっくりまりさの移動跡は大きく荒々しい。
程なくして巨大まりさは自警団に発見・捕縛された。辺りを必死に逃げ回ったのだろう、所々皮が破れて中身が見えている。
「まりざはなにもわるいごどじでないよおおおおおおお!!!ごろずならほがのゆっぐりにじでねえええぇぇぇええぇぇっ!!!」
巨体から発せられる大声を間近で受けて、耳にキーンときた。
なにはともあれ、ここまで人間を恐れるようになってしまえば、もう駆除までの手間は普通のゆっくりまりさと大して変わらない。さっさとバラしてしまおう。
と、ここで巨大まりさの餡が露出した部分から濃く甘い匂いが漂ってきた。なぜだろう、さっきまでゆっくり達を喰い散らかしていたというのに唾液が止まらない。
中身の露出した部分へ腕を突っ込み、手で掬って口へ運んでみる。
「ゆ゙ぎぎぐうぅぅぅっっ!!?」
巨大まりさが耳障りな悲鳴を上げたが、俺はそんなものは意識に入っていなかった。
「これは・・・美味い!凄く甘くて美味い!!」
強烈な甘さ、それに特有の舌触り。この味は―――
「栗だ、こいつの餡は栗の味がするぞ」と、農夫が言う。
そう、栗の味がする。この巨大ゆっくりまりさの中身は通常のゆっくりと違って栗餡なのだ。
おせち料理の栗金団に入っているアレである。
「よし、こいつは持ち帰ってみんなで食べよう。今晩は宴会だァ!!!」
「「「「うおおォーーーッ!!!」」」」
・・・でもまずは、この残骸を片付けないとな・・・。思い切って残業(笑)


その後、生きたまま里へと持ち帰られた巨大ゆっくりまりさの中身の栗餡は里を挙げて行われた夜の宴会にて振舞われた。
―――厨房にて
「もう・・・やべでええええええぇぇぇぇぇ・・・・・・」
特別に用意された十尺四方の檻の中で力なく抵抗する巨大ゆっくりまりさ、もはや暴れる気力も体力も無いようだ。
食べる時は栗餡の鮮度を保つため、食べる分だけを巨大ゆっくりまりさの背中に空けた穴の中からへらを使ってこそぎ取る。
「ゆぎゃが゙あ゙ぁぁぁあ゙ぁ!!!や゙め゙っ、ゆ゙るじでぇぇぇぇぇ…ま゙りざのながみ…なぐなっぢゃうのほお゙お゙お゙ぉぉお゙お゙ぉ…!!」
「こいつは・・・すごいな」ゆっくり加工所勤務の友人が言う。
「そんなにすごいのか?」
「ああ、このゆっくり、エサを口に入れたそばからどんどん消化して栗餡にしてるよ。この特異体質のせいで今まで野性で生き続けられたんだなぁ。これなら死なない程度に餡を取って、エサを与え続ければかなり長い間餡が採れそうだ。子を産ませるのも良いかもな。」
ふたりの会話を聞いた巨大ゆっくりまりさは悟った。「もう自分は二度とゆっくりできない」と。

(ゆっくりしたけっかが・・・・・・これだよ・・・・・・)

きっとこれからも、ゆっくりは人間達に搾取され続けるのだろう。スイーツ(笑)

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最終更新:2022年04月11日 00:17