狩りを終えたゆっくりまりさが元気よく森の中を跳ねて巣へと向かっている。
しばらくしてまりさは背中のほうから何かが近づいてきているのを感じた。
振り返り、いつもの挨拶をする。
「ゆっくりしていっt・・・う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」
後ろをつけてきていたのは人間だった。まりさは人間だと認識すると、顔を強張らせ悲鳴をあげた。
そしてすぐに飛び跳ねて人間から逃げ出した。
男はゆっくりと足を動かし、まりさについていった。
まんじゅうが移動する速度など高が知れている。男はあっという間に距離を詰め、その後はまりさの速度に合わせた。

ぴょんっ・・ぴょんっ・・
ざっ・・ざっ・・

まんじゅうの跳ねる音と靴と地面の擦れる音だけがあたりには響いている。
まりさは振り向かずに必死に逃げていたが、ついに我慢できなくなって後ろを向いた。
「もーっ!!!おにいさんはまりさについてこないでね!!!」
意を決してまりさは訴える。そしてぷくーっと体を膨らまし、精一杯の威嚇をする。
しかし、男は微動だにしない。ただまりさのほうに顔を向け、無言で仁王立ちをしている。
まりさの側からは逆光になっていて男の表情ははっきりとは見えない。
まりさはこれでもかというほど限界まで体を膨らませて威嚇を続ける。
約1分たっただろうか、さすがに疲れたまりさはふぅーっと息を吐き、元のサイズに戻った。
男の反応がないことから、まりさは勝利を確信した。
「わかったらおにいさんもおうちにかえってね!!!」
まりさはくるっと振り向き、今まで向かっていた方向へと跳ねていった。

まりさが動くのを確認すると男も足を進める。
それに気づいたまりさは男を振り切ろうとさっきよりもスピードを速める。

ぴょんぴょんぴょん
ざっざっざっ

ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん
ざっざっざっざっざっざっ

ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん
ざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっざっ

「も゛う゛お゛い゛がげな゛い゛でえ゛え゛え゛え゛!!!!」
気づくとまりさはゆっくりらしからぬスピードで逃げていた。さっき追い払ったはずの人間がずっとついてきている。
だが男は必要以上に差を詰めない。常に一定の距離を置き、歩く早さはまりさに合わせている。
まりさははぁはぁと息を切らせながら全力で逃げているのだが、男が諦める気配は全くしなかった。

まりさの全力もそう長くは続かなかった。一刻ほど同じところをぐるぐると走り回った末、ついに観念したのか
まりさはその足を止めた。
「はあ゛はあ゛・・・どう゛じでぇ・・・どーじでついでぐるの゛ぉ゛!!?」
まりさは分からなかった。なぜ自分は追われているのか。全く心当たりがない。
まりさの問いかけに男はやはり何も答えなかった。
しばらく沈黙が続いた。夕日が山に沈みかけようという時間になっている。早く帰らなければ、その想いが
まりさを次の行動へと駆り立てた。
「ゆぅ~!だまってたらぜんぜんわからないよ!!!ゆっくりこたえてね!!!」
まりさは大きく跳躍し、男の足へ体当たりを食らわせた。
しかし男は全く動かない。まんじゅうの体当たりが痛いはずもなかった。
ぺしぃっぺしぃっと力ない音が響く。
「もうかえって!!!ぜんぜんゆっくりできないよ!!!」
怯むことなく体当たりを続けていたまりさだが、次第にその目は潤んできた。
「なにがじゃべっでよ゛お゛お゛お゛お゛!!!!」
泣きながらも必死に喰らいついていると、ついに男の足が動いた。


「まりさ~?まりさいるの!?はやくかえってきてね!!!」
道の外れの木の生い茂ったほうから別のゆっくりの声が聞こえてきたのだ。男はすぐに声の聞こえるほうへと進んでいった。
「ゆ゛ぐぅ!そっちにはなにもないよ!!!なにもないからもどってきてね!」
まりさは男へ呼びかけるが男は無視し、足を進めた。
「ま゛っでぇえ゛え゛!!」
すぐに男の後を追いかけるが、男はまりさが追いつけない程度の速さで駆けていった。

しばらくして男がゆっくりの巣を発見した。中にはゆっくりれいむが1匹。お腹が丸々と膨らんでいることから
妊娠しているのは明らかだった。
「なんでにんげんがいるの!?まりさー!!!?まりさーーーーー!!!?」
あたりをキョロキョロと見回し、れいむが絶叫する。妊娠して身動きの取れないれいむは必死に助けを乞う。
すると男はれいむの頬を平手で打ち始めた。
バシィーッ
バシィーッ
「い゛だい゛よ゛お゛!!や゛べでえ゛え゛!!」
男が叩き始めてすぐにまりさが到着した。
「おにいさん!れいむをゆっくりさせてあげてよぉ!!れいむはあかちゃんがいるんだよ!!」
いままでゆっくりと育ててきた赤ちゃん。まりさは出産のときを今か今かと楽しみにしていた。
しかしそれが目の前の知らない人間に奪われようとしている。
「ま゛り゛ざあ゛!!はやぐだずげでぇぇ!!!でいむのあがじゃんじんじゃよおおお!!!」
まりさが現れてからも男はれいむを叩き続けた。
男がしばらく叩き続けると、その衝撃のためかれいむの下あごの辺りに産道ができはじめた。
「おにいさんもうやめてね!!いまからあかちゃんがでてくるからね!!!」
人間には敵わないとさっき悟ったまりさはひたすら飛び跳ねてお願いするだけだ。
男は手を止め、まりさのほうをちらっと見たがまたれいむのほうに顔を向ける。
「な゛ん゛でえ゛!?まりざのいうごどきいでよ゛おおお!!!」
そして男は左手でれいむの頭を押さえつけ、右手を固く握った。
そしてれいむの腹へ思いっきり拳を喰らわせた。
「ゆ゛げえ゛!!ぶぶべえ゛!!」
まりさが止めに入ろうとしたときにはもう遅かった。れいむは完全に白目を剥き、気絶した。
「あ゛っ・・・・あ゛あ゛っ・・・・・!」
まりさは絶句し、震えた。まりさはれいむの産道から餡が流れ出るのを見てしまったのだ。
「どう゛じでぇ・・・あ゛っ・・あがじゃんがあああああ!!!!!」
男は気絶したれいむの両頬を掴んで持ち上げ、まりさの前に置いた。
そして頬に手を添えたままれいむにぐっと圧力をかけた。
ぴゅっぴゅっと餡が飛び出る。その餡はまりさにもかかり、辺りを餡が汚していく。
「もうやべでよおおお!!」
まりさに構うことなく男は力を入れ続ける。すると餡が出る出る。男はれいむが元の大きさに戻るまで餡を絞り続けた。
もう餡がほとんど出なくなった頃に、れいむの産道から餡に混じって赤いものが出てきた。
「あ゛!あ゛がじゃんのりぼんがあ゛あ゛あ゛!!!」
それは本来生まれてくる赤ちゃんの髪飾りとなるべきものだった。
男はれいむから手を離し、すっと立ち上がった。
泣きじゃくるまりさを一目見て男は帰っていった。

平和に暮らすゆっくりに突然の不幸をプレゼントするこの男のその後の行方は誰も知らない・・・


End






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最終更新:2022年04月11日 00:24