「全くわけがわからないわ」
猫耳が付いたヘッドホンをつけた少女が支給されたタブレットの説明書を読む。
あのアニメーション映像。内容はともかくBGMや劇中歌は興味を引くものがあった。
が、問題はそのあとのことだ。
「人殺し? No, thank youね」
人が人を殺してはいけない。
倫理・一般常識として当たり前の範疇の知識だ。
それと『どんな願いでも叶える』という権利。
「はっ、くだらないわね」
少女は一言で一蹴する。
彼女は他人に叶えてもらえる程度の願いなど持っていない。
自分の手で叶えてこそ意味があるのだから。
だが、しかし!
彼女にとって、この状況は舐めらてるような気がしてならなかった。
そう、考えるとあの神子柴という奴に対して怒りが湧いてきた。
「神子柴、絶対ぶっ潰す!!!!」
チュチュこと――――『珠手ちゆ』が口に出したあまりにもドストレートな決意宣言。
(ちなみに彼女の言う『ぶっ潰す』とは『相手にギャフン』と言わせる程度のことである、悪しからず)
そのためにチュチュにまず必要なのは……協力してくれそうな人。
チュチュ自身は――――無力なのだ。
悔しいが、自身にはこの状況を覆せるような超常的な力はない。
ましてや、チュチュは根っから……かなりのインドア派。
こんな雨の中、無暗に走り回ったりでもしたら速攻でスタミナ切れするであろう。
そんな中、もし襲われたりしたらまず助からないであろう。
だから、今は状況の整理に徹する。
それしか今できることがないのだから。
さらに言えば…………。
(マイク一つで戦えるわけないでしょ!!)
チュチュに支給された一本のハンドマイク型マイクロフォン。
確かに音楽や言葉には人を動かす力(パワー)がある。
チュチュ自身、それは知っている。
だが、このバトルロワイアルという状況でそれがどれほど通じるのか定かではない。
このマイクで、チュチュの声がどこまで届くかも分からない。
ましてや、それによって危険人物を呼び寄せる可能性も十分にある。
森嶋帆高を探す前に自分の命が危ない。
そんな時であった。
「誰かいるのか?」
「!?」
もう一つ少女の声が聞こえた。
◆ ◆ ◆
雨の中。
少女は一人佇む。
濡れる金の髪。
赤い瞳に映る雨粒。
雨雫が彼女の背負ったCHARMを伝う。
ここは新宿。
なら、新宿御苑にルド女のガーデンがあったはずだ。
しかし、新宿御苑にあるはずのルド女のガーデンはない。
……ここは何かがおかしい。
この新宿にはヒュージとの戦闘の跡が一切見られない。
ここは彼女の知る新宿……本当に日本なのか?
「……野良猫の一匹もいないな」
これからどうすべきだろうか?
『森嶋帆高』という少年を探して保護すべきなのだろうか?
一柳梨璃なら迷わず行動を起こしただろう。
だが、それは本当に自分が今すべきことなんだろうか?
あの老婆の言うことに「はい、そうですか」と素直に従うのも癪だ。
「………ヘックション」
小さくくしゃみをした少女。
考えをまとめようにも雨音が耳障りで何よりも寒い。
ひとまず、どこか雨を防げる場所の入ろう。
そんな時であった。
「神子柴、絶対ぶっ潰す!!!!」
少女の声が聞こえた。
あまりにも清々しいまでの主催者打倒の宣言。
一瞬呆気に取られたが、誰か近くにいることはわかった。
「行ってみるか」
ふらりと声のする店内に入る。
するとそこには…………。
(猫耳!!????)
猫耳を付けた少女がいた。
ちょっと変なテンションになったが、『安藤鶴紗』という少女は猫が好きなのだ。
◆ ◆ ◆
「見たことのない制服だが、お前、どこのガーデンのリリィだ?」
「Garden? Lily? なんのことよ?」
「?」
「??」
互いに疑問符を浮かべる。
チュチュとしては目の前の少女の身の丈に合わないほどの巨大な剣がちょっと怖い。
鶴紗としては目の前の少女の猫耳がものすごく気になる。
それでも、互いにこの殺し合いの場で出会った初めての人間。
「安藤鶴紗。百合ヶ丘の一年生だ」
無愛想ながらも名乗る鶴紗。
『百合ヶ丘』といえば世界的な名門のリリィ教育機関である。
しかし、チュチュには『そういう名前の学校の一年生』としか思えなかった。
「私はこういうものよ」
チュチュは自身の名刺を鶴紗に手渡す。
「『RAISE A SUILEN プロデューサー Chu^2(チュチュ)』……?」
「ええ、略して『RAS』よ、まさか貴女知らないの!?
この大ガールズバンド時代のニューリーダーのRASを!?」
「大ガールズバンド時代……?」
ここでも話が全く嚙み合わない。
だが、互いに嘘をついているような様子もない。
今、ここで嘘をつくメリットが互いにない。
「OK、一先ず、落ち着いて少し話がしたいわ」
「同感だ」
コーヒーを一杯ずつ。
チュチュ達が飲む新宿のコーヒーは苦い。
【珠手ちゆ@BanG Dream!】
[状態]:健康
[装備]:ハンドマイク型ヒプノシスマイク@ヒプノシスマイク
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:神子柴、ぶっ潰す!(殺し合いには乗らないし、主催者の言う通りにもしない)
1:協力者を探す
2:出来れば森嶋帆高も探しておきたい
[備考]
【安藤鶴紗@アサルトリリィ】
[状態]:健康
[装備]:ティルフィング先行量産型@アサルトリリィ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らないが……
1:森嶋帆高を探す?
2:チュチュの猫耳ヘッドホンが(とても)気になる。
[備考]
ハンドマイク型ヒプノシスマイク@ヒプノシスマイク
H法案によって人を殺傷する全ての武器の製造禁止及び既存の武器が廃棄されたヒプノシスマイクの世界において、武器に取って代わり使用される。
このマイクを通したリリックは、人の交感神経・副交感神経等に作用し、様々な状態にする力を持っている。
『ペンは剣よりヒプノシスマイク』。
ティルフィング先行量産型@アサルトリリィ
ヒュージに止めを刺せる唯一の決戦兵器『CHARM』の一種。
ブレードモード、バスターランチャーモード、ショートブレードモードの3段変形が可能。
最終更新:2021年01月31日 01:29