「ふーん、それじゃあここって、トオルくんが通ってる幼稚園なんだ」
「そうなんですけど、でもここは春日部じゃないはずなのにどうして…?」
バトルロワイアルの会場にある施設の一つ。
ふたば幼稚園にいるのは一組の男女。
どちらもまだ幼い、幼稚園児と小学生だった。
少年、風間トオルは最初、唐突に巻き込まれたこの状況に恐怖していた。
これまでにも何度か野原しんのすけ達と共に大事件に巻き込まれる事はあったが、あんな間近で人が死ぬ所を見たのは初めてだ。
普段は5歳児らしかぬ大人びた態度を取っているとはいえ、女性のグロテスクな死に様はトオルの精神を磨り減らすのに十分過ぎた。
それにいつも一緒にいるかすかべ防衛隊の4人がいないのも、トオルの不安を加速させた。
見知らぬ住宅地に一人ぼっち。
恐怖で居ても立っても居られなくなったトオルは、脇目もふらずに駆け出した。
その道中で見つけたのは、自身が通っている幼稚園。
何故こんな所にあるのか疑問はあった。
けれどそれ以上に、ひょっとしたらここにしんのすけ達や先生たちがいるのではという一抹の希望に縋り、
トオルは土足である事も忘れて幼稚園内に飛び込んだ。
しかし希望も空しく、しんのすけ達はいない。
『ん~?誰かいるの?』
代わりにいたのは見知らぬ人物。
トオルよりも年上の、パッチリとした瞳の可愛らしい少女。
足に障害があるのか車椅子に乗っている。
予想していたのとは違う人物の登場に、当初は困惑と警戒を見せていたトオル。
だが少女と言葉を交わす内に、そんな感情は徐々に薄れ、不思議と相手への信頼感のようなものが芽生え始めた。
むしろ少女の甘ったるい声に心地良さを覚える程だ。
冷静さを取り戻したトオルは改めて少女と情報交換をした。
話を聞くと少女自身にも何が起こっているのか分からず、気が付いたら幼稚園の中にいたと言う。
ちなみにふたば幼稚園がここに存在する点については、「あのお婆さんが不思議な力を使ったのでは」、という少女の言葉に一先ず納得する事にした。
現実的に考えれば有りえないのだが、それを言ったら今の状況も十分常識とはかけ離れている。
それにしても、とトオルは少女を見やる。
こんな脚の不自由な女の子まで巻き込む神子柴に、トオルは不信感を抱く。
同時に決意する。
自分がこの少女を守ると。
正直言って今でも恐いし、幼稚園児の自分に何が出来るのかなんて分からない。
家に帰るには映画に出ていたお兄さんを殺さなければならないようだが、それが間違っているとは5歳の自分にも分かる。
けれども、この少女を見捨てて恐怖に逃げ惑うという事だけは、
絶対にしてはいけない気がしたのだ。
そんな決意を伝えると、少女は身を屈めてトオルに顔を近づけた。
「わぁ!ありがとう、トオルくん」
チュッ♥
「へっ?…うええええええええ!!?!///」
「えへへ。がんばるトオルくんに、お姉さんからのご褒美なのじゃ~♪」
頬に伝わった柔らかい唇の感触に、トオルは慌てて真っ赤になった顔を少女に向ける。
悪戯っぽく笑った少女の顔を見てトオルの心臓は高鳴った。
「それじゃあトオルくんは今から可愛い騎士(ナイト)様ってとこかなー?」
少女の言葉にトオルは鼻を伸ばしかけた顔を慌てて引き締め、言葉を返した。
「はっ、はい!ぼ、ぼくに任せてください、モナカさん!」
●○●
(うわキッモ……)
あからさまにデレデレし出したトオルを眺め、塔和モナカは内心で毒を吐く。
騎士などと気取った言葉を使ったが、これなら犬のほうが相応しいかもしれないと思った。
遭遇した時はこちらを随分警戒していたが、そんな相手を懐柔するなどモナカにとっては容易いことだ。
『超小学生級の学活の時間』。
それはモナカの持つ唯一無二の才能。
自身の放つ言葉はまるで甘い毒のように相手の心を侵食し、掌握する。
特に子どもに対して絶大な効果を発揮する力によって、トオルはすっかりモナカに心を奪われてしまっていた。
ついでに車椅子に乗っている姿も、同情を誘うのに効果てきめんだったのだろう。
今まで自分に心酔していた子どもたちと一緒だ。
本当は歩けるにも関わらず、このアイテムを使えば勝手に優しくしてくる。
支給品として与えられた時はどうしようか少し悩んだが、“駒”を確保するのに役立つだろうと思い再度使うことにした。
それにしてもと、モナカはバトルロワイアルについて考える。
森嶋帆高と天野陽菜の処遇を巡り起こるだろう参加者同士の対立。
願いの為に他者を蹴落とし争い合う。
ぶっちゃけコンセプトはそう悪くない。
しかし、自分にまで首輪を付けて参加者扱いするのはちょっぴり不満である。
どうせなら、自分もバトルロワイアルの運営側にして欲しかったと思わないでもない。
(ま、それならそれで、やりようはあるんだけどねー)
生きて帰る為に森嶋帆高を殺す?
森嶋帆高と天野陽菜の恋の為に打倒神子柴を目指す?
願いを叶えてもらう為に神子柴の命令通りに動く?
そんなつまらない真似は真っ平だ。
青臭い恋の為に愚直に突っ走る森嶋帆高も。
天気の巫女としての役目を果たそうとする天野陽菜も。
都合の良い犬と化した風間トオルも。
顔も名前も知らない有象無象の参加者も。
そして、神様気取りで見下ろしている神子柴も。
一切合切めちゃくちゃに搔き回し、一人残らず絶望に叩き落とす。
(二代目江ノ島盾子を名乗るなら、それくらいは余裕でこなさなきゃねー♪うぷぷぷぷぷぷ…)
可憐な笑顔の下に邪悪な本性をかくし、絶望の後継者を名乗る少女は笑っていた。
【風間トオル@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康、使命感
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:モナカさんを守りながら帰る方法を探す
1:モナカさんを守る
[備考]
※映画での出来事を幾つか経験しています。具体的な参戦時期は次の書き手にお任せします。
【塔和モナカ@絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode】
[状態]:健康
[装備]:子供用の車椅子
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:バトルロワイアルをめちゃくちゃに搔き回す
1:次はどうしよっかなー
[備考]
※参戦時期は召使いと共に塔和シティを脱出した後。
最終更新:2021年02月02日 11:29