「天気の巫女、そして神。にわかには信じられませんね」
まず少女から出た言葉は否定。科学の世界に生きるものとしての、当然の返答
「そもそもあの映像が現実の出来事とも言い難いです。ただでさえ天候の操作なんて前例はあれどそれが真実であったが眉唾物でしたというのに、それと同じ『カガク』だとしても分野的な意味での専門外です」
19世紀のアメリカに、チャールズ・ハットフィールドという気象学者が存在した。彼は『人工的に雨を降らせる技術』を開発し、それを商売として実用化していた時期があった。意外にも成功率は高かったという
だが、それでも『雨を晴らす』方法を確立していなかったがためにとある場所で水害を起こしてしまい、それは廃業となった
今回例として上げられたのは『雨を降らす』方法であるが、当時の陪審員ら同様に天候を人の手で操作するなどそれこそ眉唾物である
少女は神子柴の言葉に対して半信半疑。そもそも夢を叶えるという文言すら嘘偽りの可能性の方が高い
説明の際に見せられた異形も、別のカガク者による合成獣だという考えがまず浮かび上がっていた
「……映像の内容は、まあノーコメントですかね」
「でも、二人のシーンに愛莉ちゃん大分見入っちゃってたよね?」
「そ、それはですね――!」
少女のつまらなさそうな呟きにツッコミを入れたのが、まるで魔女と言わんばかりに風貌をした長い金髪の女性。威厳がありそうでそれでいてゆったりしたような雰囲気とは裏腹に、その突っ込みは鋭い
愛莉と呼ばれた少女は思わず顔を赤らめ否定するも、実はこの愛莉という少女は例の映画に大分見入ってしまっていたのは事実
「それとさ、あのお婆さんの言ってること、私はほんとだと思うなぁ」
「私は今でも否定よりですけどね。それは『魔女』としての言葉でしょうか?」
「魔女としてもだけど、一度転生した身でも、ね」
「そもそも魔法やら転生やら死者の蘇生やら……最後はまだ兎も角前の二つはまだ信じきれていません」
女性の言葉に、愛莉は否定気味だ。カガクというのは本来迷信だと思われていたものを解き明かしながら進み、試行錯誤し、成長していった人間の知識の結晶だ
だからこそ愛莉は当初こそ女性の言葉を信用していなかったし、神子柴の言葉も半信半疑であった
『魔法』――科学にとって、真っ向から挑戦状を突きつけるような、そんな埒外の技術に対し
「まあ、仕方ないよね、そういうとこは。でも、少しでも信用してくれただけでも私としては嬉しいかな?」
「あなたのその物腰の良さが信用出来る証拠ではないでしょうか。最も、魔法に対してはまだ半信半疑の類ですが」
けれど、目の前で死者の蘇生とやらを見せられたカガク者・久世愛梨にとって、否応にも魔法というものが存在する事を認めざる得ない結果となった。自分の想い人なら何だかんだで受け入れそうだっていう根拠や、彼ならまず相手側に寄り添ったりという行動を取りそうだろうという、彼女自身も彼に絆された影響もあって
「……と、まあ。お喋りもこれくらいにしておきましょう。前提としてこのルールですが、余りにも粗が多すぎます」
「『粗』って、帆高くんの事?」
「そうです。森嶋帆高がルールの根幹となっているのに、彼もまた私達と同条件というのであれば、あまりにもゲームとしては歪です」
ルールにあったゲームを終わらせる条件は二つ。どちらも森嶋帆高が関わっているが、まず軽く文面だけを見れば森嶋帆高を殺せばゲームが終わるという考えに至る参加者も多いだろう
だが、それが不自然だ。人柱を妨害させない為だけならば森嶋帆高をこんな回りくどいやり方で止める必要もなく、ゲームとしては森嶋帆高と天野陽奈の犠牲さえ許容すれば他の参加者はあっさりと助かる
「それにこの『死滅』という文言。まるで彼が複数いるみたいな言い方じゃないですか」
「うん、それは私も思った。まるで強いスライムみたいに分裂したりするのかなって」
「分裂にしろ、私が思ったのはそれです。ですが映画を見る限り森嶋帆高はそうには見えない。森嶋帆高が私達と同じ条件ならば彼にもこの首輪が填められているはずですから」
『死滅』。ルールには『森嶋帆高の死滅』という言葉が存在していた。まるで森嶋帆高が複数いるような言い方。あまりにも不自然。確かに複数いる前提ならばこの杜撰に見えるルールにもある程度の納得が出来る
「……まさかとは思いますけど、森嶋帆高であることを隠して別の名前を名乗っている人物がいる? でも映画の中でそんな風な描写はなかった」
「誰かが森嶋帆高にされちゃうとか?」
「……その可能性もありうるのも怖いところですね。私としては『ルール』上で森嶋帆高にされるという可能性を敷き詰めていたのですが」
科学者の少女と、魔女の女性が挙げた考察。どちらの考えにしても他の参加者がとばっちりを喰らう面倒くさいルールだ。だがそれならばなおさらルールへの理解も深まる
「ともかくです。これで分かることは、安易な考えでの森嶋帆高の殺害は避けるべき。ということになりますね。誤解の無いように言っておきますけど、私は人殺しなんてするつもりはありませんよ。疑ってたりしませんですよね?」
「疑ってなんか無いよ。だって愛莉ちゃん、見るからに私となんか似てる感じだったから……愛莉ちゃん、結構お人好しだよね?」
「……そう見えますか? これでも私は人間不信な部分もありますよ」
魔女の心配と安心が入り混じった言葉に、愛梨は自嘲気味ながらも答える
かつてカガクの力で世界を幸せにできると考えていた少女は、たった一つの悲劇を切欠にその身をサイボーグへと自ら望んで成り得た
「でも、私はそう思わないかなぁ。だって普通の人が見たら胡散臭さ全開の私なんかの話聞いてくれてさ。魔法なんて眉唾~なんて言ってたのに」
「実際に見たものを最後まで信じきれないほど私は冷酷ではありませんよ。正直まだ信じれていませんですが」
そんな少女の孤独を癒やしたのはたった一人の少年の良心。彼がどのような過去であろうと、彼女は彼の今を見て、彼に救われた事実があるだけで十分だった。例え自分が彼に選ばれなかったとしても
「やっぱり愛莉ちゃんは、いい人だよ」
「……お世辞はそのぐらいにして、行きましょう。首輪の解除には何もかもたりませんし、森嶋帆高に会って事情を聞き出さないといけません」
「はーい。でも私の方が年上なんだから素直に頼ってもいいんだよ?」
「……その時になったら、頼らせてもらいますね」
「そう言ってもらえると嬉しいなぁ。それじゃ、行こっか――――」
「この『ゲーム』をぶち壊しに」
「この『ゲーム』を止めに」
カガクと魔法。決して交わることのない2つの世界
カガク者の名は『久世愛莉』、魔女の名前は『アズサ・アイザワ』
2つの世界が交差する時、物語は始まる
【久世愛莉@カガクなヤツら】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~3
[思考・状況]
基本方針:このゲームをぶっ壊して、遥希さんやみんなの所へ帰る
1:森嶋帆高の捜索、彼から事情を聞き出す
2:首輪解除の手段を模索
※参戦時期は最終話以降
【アズサ・アイザワ@スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~3
[思考・状況]
基本方針:このゲームを止める
1:森嶋帆高を探す。彼から色々聞きたい
2:首輪解除の手段を探す
※参戦時期は後続の書き手にお任せします
最終更新:2021年02月06日 16:31