「おぉ、なかはひろいぞぉ!」
「シ、シノノンちゃん! まだ走らないで、足元暗いから…」
雨止まぬ市街地の中に佇む民家。
そのリビングで走り回る獣耳の少女は、シノノン。
そんなあどけない幼女を慌てて諫めている紅色の髪の少女は、桜内梨子。
梨子はあたふたしつつも、扉付近にあるスイッチがあるのを発見すると、それを押す。
すると瞬く間に、暗黒の空間に人工の光が照らされ、部屋の全容が明らかになる。
梨子にとっては、何てこともない日常にありふれた「部屋の照明を付ける」だけの行為に過ぎなかったが、シノノンにとっては、奇想天外、摩訶不思議な出来事のようで「おぉ~」と感嘆の声をあげたのであった。
(これから、どうしよう……)
そんなシノノンのあどけない反応を見据えつつ、梨子は溜息をつきながら、ここに至る経緯を回想する。
あの最初のホールで映画を鑑賞し、神子柴なり老婆から説明を聞かされた後、気付けばどしゃ降りの雨の中、路上にぽつんと立っていた。
暫く途方に暮れていた梨子であったが、間も無くして、「とぉちゃん」と声を上げて路頭を彷徨うシノノンを視界に収めた。
殺し合いの最中で、こんな幼子を捨て置くことなど出来ず、声を掛けて保護。
まずは腰を落ち着かせる場所を確保したいと、近場の民家へと入りーー今へと至る。
(シノノンちゃんのためにも、今は私がしっかりしないと!)
自分の頬を軽く叩いて、改めて奮起する梨子。
まずは、今後の方針を決めようと思った矢先――。
ドンドンドンドン。
玄関の方から扉を叩くような音がして、梨子はビクリと震えた。
シノノンは「だれかきたのかぁ」と口をあんぐり開けている。
「シノノンちゃんはここにいて。私が様子見てくるから」
「おぉ、わかったぞぉ!」
元気よく返事をするシノノンをリビングに残して、梨子は玄関に向かったが、梨子が玄関の前に立つ頃には、ドアを開けようとする音はすでに鳴り止んでいた。
ガチャリ、と恐る恐る扉を開けて、外の様子を窺う梨子。
「何じゃいね、人がいたんかいな」
「っ!?」
玄関先にいたのはアロハ服を着込んだ金髪の中年男性。
梨子を訝しげに見つめるその目付は鋭く、お世辞にも品性の良い類の人間とは言えない――所謂チンピラと称されるような男であった。
その風貌に怯みつつも、梨子は恐る恐る話しかけてみる。
「あ、あの…あなたもこのゲーム参加者なんですか?」
「そんなもん首輪見りゃわかるやないか、ボケがッ!!!」
男からの恫喝めいた返答に、梨子はビクリとたじろぐ。
そんな梨子の様子など知ったことかと、男は更に言葉を畳み掛ける。
「おい、おどれ! この中にあの穂高とかいうガキはおらんかいね?」
「い、いませんけど…」
「チィッ! あのボケ、どこにおるんね…」
「あの…森嶋君を見つけたら、どうするつもりなんですか?」
「あぁん? んなもん決まっとるね、歩けないように痛めつけんね。 ゲームやら何やら知らんが、とっとと儂は帰りたいんね」
「っ!?」
一切躊躇いもなく他人を傷つけると言ってのける男に、梨子は戦慄し--やはり、目の前の人物は悪い人間だと悟る。
とそこで、金髪の男は何かを思い出し、勢いそのまま梨子へと詰めよった。
「そういやワレェ、主催者から支給品貰っとるやろ? それを渡さんかい」
「えっ? ど、どうしてですか…?」
「おどれ、大方この家に籠もって、誰かがあのガキシバくのを待つ魂胆やろ。 支給品も宝の持ち腐れやね。 それなら儂が有効活用したる言うてんね!」
「ち、違います! 私は――」
自分にはそんな邪な考えなどないと否定しようとする梨子。
しかし男は聞く耳など持たず。
「じゃかあしいわッ! 黙ってて渡しゃあええねんッ! 家の中にあるんか!?」
あたふたする梨子を押し退けて、開放されたままの扉から家の中に押し入ろうとする。
シノノンがいる家の中に、このような粗暴な男の侵入を許してはいけないと、梨子は男にしがみつき、引き止めようとする。
「ちょっ、止めてください!!」
「放さんかいなぁ、このダラズがぁッ!」
瞬間、男が怒声とともに梨子の顔面目掛けて横殴りに拳を叩きこんだ。
梨子は「きゃあっ!」と小さな悲鳴とともに、地面に倒れ伏せる。
これまでの人生において、男に全力で殴られたことなどなかった梨子。
涙を滲ませ、殴られた頬を手で抑えて、「うぅ……」とその痛みに悶える。
「この糞ボケがッ! 大人しゅうしとけば痛い目にあわずに済んだんね!」
男は、すすり泣く梨子に更なる罵声を浴びせて、ツバを吐き捨てた。
その時であった。
「りこを、いじめるなぁ!!!」
家の奥底より、シノノンが大きな叫び声とともに姿を現した。
「何じゃいね、このガキはッ!」
「シノノンちゃん、来ちゃダメ! 逃げて!」
予期せぬシノノンの登場に、男と梨子は異なる反応を示す。
しかし、シノノンはそんな二人の反応を気にすることなく、キッと男を睨み付けたままである。
「何じゃい、その目はぁッ! 前歯へし折られたいんかいッ!」
男は激昂し、幼女を蹴り飛ばさんとズカズカと家の中に入り込んでいく。
「だ、駄目―――!」と梨子の悲鳴が木霊するが、シノノンは特に臆した様子はなく「んしょ、んしょ」と傍らから黒色に光る大型銃のようなものを引っ張り出した。
「な、何じゃいねッ!!? それはっ!?」
想像だにしなかった得物の登場によって、男は怯んだようでその場で固まるが、これはシノノンによって好都合――銃の重さにグラつきながらも、そのまま銃の照準を、棒立ちの男に定めてその引き金を引いた。
そこに一切の躊躇はなかった。
「ぐわぁああああああああああ!!!」
男は悲鳴を上げて、その全身はたちまち光に包まれる。
そして次の瞬間――。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「っ!!?」
男の服装は一変――女性が着るようなピンク色のハイレグカットの水着を着こんだ姿となり、両手を股間のラインに合わせてV字に引きながら、謎の掛け声をただ発する存在となっていた。
奇怪な現象に目を丸くし、呆然とする梨子。
シノノンは「おおぉ!」と感嘆の声をまた漏らす。
「シノノンちゃん、これは一体……?」
「これはオレのしきゅうひんだ。よくわからないがうまくいったようだな」
ハイグレし続ける男は放置して駆け寄ってきたシノノンは、困惑する梨子に銃の説明書のようなものを見せてきた。
そこには以下のように記載されていた。
ハイグレ光線銃:光線を浴びた人間は10分間ハイグレ人間となり、無心でハイグレし続けます。連射は出来ませんのでご注意ください
「ハ、ハイグレ人間って……」
正直ゾッとするような効果だし、眼前の光景も見るに堪えられないとてもおぞましいものではあるが、この破廉恥な支給品に助けられたのは事実だ。
しかし、悠長にはしてられない。
説明書には洗脳状態は10分経過すれば解除されるとのことだ。
自我を取り戻した男がまた逆上して襲い掛かってくるのは目に見えている。
「シノノンちゃん、一旦ここから離れるわよ」
「おお、りこ。ついていくぞ~」
梨子とシノノンは互いに手を繋ぎ、民家から急いで離れていった。
二人の少女の苦難はまだ始まったばかりーーー。
【桜内梨子@ラブライブ!サンシャイン!!】
[状態]:健康、顔面打撲(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには反対。森嶋君は助けてあげたい
1:とにかく今は逃げる!
2:シノノンちゃんは私が守らないと!
[備考]
※参戦時期は第二期5話以降からとなります。
【シノノン@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ハイグレ光線銃(クレヨンしんちゃん)、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:とぉちゃんをさがす
1:しばらくは、りこについていくぞぉ!
2:ほだかも、りこも、オレがまもってやるぞぉっ!
[備考]
※参戦時期は帝都奪還以降となります。
【支給品紹介】
【ハイグレ光線銃@クレヨンしんちゃん】
ハイグレ魔王軍が使用する銃。
撃たれた相手の衣服はハイレグレオタード姿に変わり、「ハイグレハイグレ」の掛け声と共に強制的に卑猥なポーズを取る。
本ロワで主催者側により細工が行われており、ハイグレ洗脳は10分で解除され、服装も元に戻る。
また連射は不可とされており、一度利用するとリチャージに時間が掛かるようになっている。
◇
民家に取り残された男――北条鉄平は無心になり、卑猥なポーズをとりつつ、声高らかに叫び続ける。
「ハイグレ!ハイグレ!」と。
彼に刻まれた洗脳が解除されるまで後5分―――。
【北条鉄平@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康、ハイグレ洗脳中
[装備]:ピンクのハイレグカット水着
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:帰還するため穂高を妨害する
1:ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!
[備考]
※参戦時期に関しては次回以降の書き手様にお任せします。
最終更新:2021年02月06日 19:11