コツコツコツ……

不安げな表情で無人の図書館を歩く一人の少女がいた。
引っ込み思案な性格とは裏腹に自己主張の強すぎる豊満な胸が特徴的な彼女の名前は神楽鈴奈。
メビウスからようやく現実世界へ帰れたというのに
こんな恐ろしいゲームに参加させられ、恐怖で彼女の心は張り裂けそうだった。
怖くて怖くて、涙が溢れてくる。

(どうして私……こんな所に……助けて、小森くん!)

図書館を歩いていると思いだす、彼の事を……。
オスティナートの楽士である少年ドール、小森と鈴奈は図書館で出会った。
そして鈴奈と小森はその場所で約束を交わした。

『一緒にお弁当を食べよう』と――

彼の事を思うと少しだけ勇気が出てきた。
怖がってばかりいても何も始まらない。
今は図書館の探索だけでも、と鈴奈は歩き続けた。

「……これは?」

部屋を一つ一つ調べているとディバッグが落いてある部屋があった。
誰かが捨てて行ったのか?それとも忘れて行ったのか?
気になった鈴奈はディバッグの置いてある部屋へと入った。

すると扉の前では暗くて気付かなかったが
部屋の隅に大きな壷が置いてあった。
図書館には不釣り合いなほど大きな壷である。

どうしてこんな所に壷があるんだろう?
神楽鈴奈は頭にはてなマークを浮かべながら近づく。
壷の中は暗くて見えない。
鈴奈が壷の中へ手を伸ばした、その時――

すずなはツボをしらべた
なんとツボはツボックだった!

ガブリ!

右手に鋭い痛みが走った。

「ひっ!?い、いやあああああああああ!!!!」

壷の中から不気味な顔が出現し
サメのような鋭い歯が鈴奈の右手首に齧り付く。

「やめてぇえええええ!!離してくださぁぁあああい!!」

歯が皮膚を突き破り、骨まで食い込む。
泣き叫ぶ鈴奈の悲鳴を他所に腕を左右に振り回し、齧る力が更に増す。

メリメリメリ……ブチッ

「――ッ!きゃああああああああ!!!!」

右手首から先が千切れた。
壷からはボリボリと咀嚼音を響かせる。

この壷はただの壷では無い。
ダンジョンに入り込んだ冒険者に向けて用意されたトラップモンスター。
その名もツボック、壷の中のアイテムを目当てに来た冒険者に襲い掛かる性質を持つ。
落ちていたディバッグもツボックでは持ち運べない為に、放置されていたものだ。

「壷の……お化け?逃げないと……」

鈴奈は右手の痛みに耐えながら部屋から出ようとする。

すずなはにげだした。
しかしまわりこまれてしまった!

「いや……」

ツボックに回り込まれ退路を塞がれた鈴奈。
カタルシスエフェクトを発動させ、戦おうとするよりも早くツボックは行動した。
逃げるのに失敗したら1ターンは魔物だけしか行動出来ない。

『バギマ』

室内なのに突風が吹き荒れる。
鈴奈の体は何ヶ所も切り裂かれて壁に叩きつけられた。
後頭部を強く打ち、意識が飛ばされそうになる。

「いたい……いたいよぉ……、あがっ!!」

ツボックの飛びかかり。
勢いよく鈴奈の背中にのしかかり
ゴキャッという音と共に背骨が砕け散る。

「ごふっ……こほっ……たすけてぇ……こもり、くん……」

肺が押し潰され、呼吸も満足に出来ない。
絶え絶えの息で必死に助けを求めるも、彼女のピンチを救ってくれるヒーローは現れない。

視界が黒く染まる。
生暖かい息をかけられる。
ヌルヌルとした唾液が頭にかけられる。


顔中に鋭い激痛が走る!!


「ああああああああああああああっっっっ!!!!痛い!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!」

ツボックが鈴奈の頭部に噛み付いた。
鈴奈の鼻と目の間からツボックの歯が突き刺さる。
首をへし折らんが勢いで頭を引っ張りながら齧り続ける。

「ひぎいいいいいいいいいいいいいいいいっっ!!やめてぇえええええええええええ!!!!」

ぶつんっ

何かが切れる音を聞いたが最後に鈴奈の意識が消失した。

ボリボリ、ムシャムシャ、ごっくん

頭蓋骨を噛み砕き、脳味噌を咀嚼し、脳漿をごくごくと飲み干す。
鈴奈の頭部を味わったツボックは満足しながら別のエリアへ移動する。
死体の傍にいては他の参加者に警戒される事はツボックでも理解できた。

ダンジョンではレアなアイテムが多数手に入る。
ただしトラップモンスターにはご用心を

【ツボック@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:無し
[思考・状況]
基本方針:ツボに近づいた参加者を攻撃する。
1:図書館のどこかで待機する

【神楽鈴奈@Caligula -カリギュラ-(アニメ版) 死亡】

※右手と頭部の上半分が食い千切られた神楽鈴奈の死体が図書館で放置されています。
※神楽鈴奈とツボックの支給品図書館で放置されています。
最終更新:2021年02月07日 07:29